時間というのは不思議である。私は小学生の頃、ぽつりと思った。
時間とは脆いのか、強いのか。当時の私の愚直な意思は、そんな抽象的な物であった。強い。脆い。それはふと、漫画本をソファで読んだ時に考えていたことである。
話は変わるが、もしタイムマシンが手に入ればどうしたいか。私は、名だたる歴史人物に会いたいと考えている。ホルティ・ミクローシュ、イオニアス・メタクサス、ミハイ一世、などなど、有名どころでないだけに正直資料がない。近所の図書館中ひっくり返すほど漁り、受付が親切心で探してくれてなお1頁に満たない資料のみが出てきた。しかも大抵が名前だけの出演だったので悲しい。あの時の受付さん、申し訳ない。
他には、映画を見たいと思っている。私は自称記憶コレクターであるので、様々なる記憶を作りたいと考えているのだ。それに、ある程度の収集気質のある私にとって、リアルタイムとはまた違う一定の意味と風情があって良い。特に「エルム街の悪夢」「ジオウvsディケイド」「魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語」。結局それらが一番だ。
兎に角、特別変わった回答はないと言うことは分かったと思う。そんな夢と浪漫に溢れたタイムマシンと時間は、創作物でも大きく取り上げられている。例えば、先程の仮面ライダージオウ、魔法少女まどか☆マギカもそうだ。そんな創作物を私はいくつも読んでいるうちに、私はある疑問点に辿り着いた。それが、「時間軸の種類」である。
まずは、私の知る限りの「時間」を書き出してみた。これらの作品を比較対象として今回進めていく。
まずはこれらの時間軸を整理することから始める。小学生の私が言う「脆い」それと「強い」それ。一体何が違うのか具体例を用いて説明しよう。
まずは脆い方から解説する。当たる作品は、仮面ライダージオウ、ドラえもん、レッドアラート3などが該当する。
何も難しいことはない。ただ、「過去がすぐに変わる」こと。それが脆い時間軸である条件だ。例えば、仮面ライダージオウでは、ツクヨミという女性が未来からタイムトラベルして、将来最悪の魔王になる主人公を説得しに行く。これは、過去を変えれば未来も変わるという発想のもとに成り立っているわけであるから、この脆い時間軸を逆手に取った判断とも言えよう。
他にも、レッドアラート3の例がある。レッドアラート3は、タイムマシンを開発したアメリカが、第二次世界大戦の悲劇をなき物にしようと考えて、過去にタイムトリップし、ヒトラーを殺す物語である。
その結果生まれたのは独ソ戦がなく一切の弱体化がなかったソビエト連邦。こちらは都合よく変えることは叶わなかったが、それでも未来が変わったことに変わりはない。
ドラえもんもそうだ。過去に戻り、父を留学させて有名画家にしようと試みたのび太だが、その条件に出資者の娘との結婚があったと知る。ここでドラえもんは、「このままではのび太は消えてしまう」と言った。のちにより詳しく解説するが、結局過去が変わってしまうと未来も変わることに変わりはない。
いずれにせよ、行動で未来を変えようとすること、そしてその未来も変わること。それらはこの「脆い」時間軸の特徴といえよう。
これを私は仮称、「脆弱型」と呼ぶ。
では、「強い」時間はどうだろうか。該当作品は、魔法少女まどか☆マギカ、運命の巻戻士、戦国自衛隊などだ。
こちらは、「脆い」のとは別で頑張っても未来がなかなか変わぬ、ある意味厄介な時間だ。例えば魔法少女まどか☆マギカ。物語の登場人物、暁美ほむらは何度も時間をやり直す所謂タイムリーパーだが、彼女の目的は残酷な運命から主人公を救うこと。裏を返せば、彼女はこれまで一度も主人公を「救えなかった」のである。要するに、これが「強い」時間。何か外的営力を受けても、何事もなくけろりとしていられる、そんな時間軸だ。
同じような例に運命の巻戻士が存在する。これも、過去、不慮の事故や事件で亡くなった方を助けると言う内容の漫画だ。だが、これもそう簡単には行かない。主人公含め巻戻士は、紆余曲折の末にボロボロになって助けるか、諦めることもザラだ。
つまり、先ほどの逆。都合よく変えることが、そもそもできないまたは限りなく難しいということ。
ところが、突飛な例が一つあった。それが、戦国自衛隊1549。その名の通り、戦国時代へ自衛隊がタイムトラベルする物語だ。小銃と刀剣と騎兵とヘリが交わるカオスな様が好きな人には是非ともおすすめしたいが、本題はそこではない。
大事なのは最期だ。彼らは唯一、この時間軸に戦国武将としての織田信長がいないことを突き止める。これは、とんでもないタイムパラドクスに繋がりうるのでは。主人公も、私もそう思った。しかし事実は違う。
なぜか。それは本来史実で暴れるはずだった織田信長の代役を、タイムトラベルした自衛隊がはたしてしまったのだ。要するに、史実が変わるなどと言うのは単なる杞憂に過ぎず、変わることはなかったのだ。
何者も変えることを能わない時間軸。それが、「強い」時間である。これを「強固型」と私は呼ぶ。
この二つはボールに例えると非常に分かりやすい。強固型は、空気が十分入ったボール、脆弱型は空気のない萎んだボールだ。
空気の入ったボールを高いところから落としても、弾むだけで形は変わらない。ところが空気の入っていないボールは、落とせばぐにゃりと変形して、二度と戻ることはないだろう。
強固型も同じように、歴史がなかなか変わらない。そして、脆弱型はすぐに変わる。
さて、後回しにした問題を解決せねばなるまい。それは、ドラえもんにおける問題。「結婚相手が変わると、その子孫も消える」という問題だ。
これもまた非常に解釈しやすい。例えば、夫婦のAさんとBさんが居たとする。しかし、過去に戻ってAさんが別の人、Cさんと結婚するように仕向けたとしよう。すると、AB夫妻間の子供はどうなるだろうか?ドラえもんでは、「消える」と説明されている。
つまり、これは重要なタイムパラドックスを引き起こすトリガーとなり得るのである。ところが、同じくドラえもんにおいて、セワシはジャイ子とのび太間の子供であるのにも関わらず、のび太としずかちゃんとの婚姻を望んでいる。それについて、「例えば大阪に行くとして、いろいろな道のりがあるが方角さえ正しくば大阪につく」と説明していて、これは私の言う強固型に当たるようにも思える。だが、一方でドラえもんはのび太の父と出資者の娘の婚姻をあれほど憂いていた。であれば、この総則は適用されるべきだ。なのに違う。完全なる矛盾だ。そう、ドラえもんは世にも珍しい両立型時間軸なのである。
さて、ここまでつらつらと話した後妹がふと口にした。これが無くばきっとこの文章もここになかろう。
タイムマシン開発も単なるSFに留まらぬ現代、この時間軸は「強い」のか「脆い」のか。
正直に言うと私はわからない。いや、私だけでない。内閣総理大臣も、科学者も、東野圭吾もきっと預かり知らぬことだろう。
タイムマシンがなければ正直わからない。ところが、常識的に考えて先ほどのドラえもんの例を、子供云々の脆弱型を適用すべきである、という意見もごもっともだろうし私もそれが正しいと思っていた。今でも少し思っている節がある。つまるところ、現実の時間軸は多分脆弱型だ、となるのが自然である。
しかし、しかしだ。この法則は実は絶大な欠点がある。それは、あるものを分解すれば直ぐに分かることなのだ。そのあるものとは、「意見」。そう、意見とその論理構造こそが脆弱型の弱点を裏付けている。
ここからは反証のためこの世が脆弱型である前提で進めていく。
私は最初のように「タイムマシンができたら」どうしたいか聞かれたら極めて平凡な回答をするでしょう。しかし、「タイムマシンができたら」どうなるか聞かれたら、私は確実にこう答える。
『意見の作り方が変わる』と。
意見の作り方は簡単だ。物事への問題提起、解決策を出し、最後に事実を元にした論拠を出す。ここだ。こここそが脆弱型の弱点を裏付けている場所そのものだ。
タイムマシンがあれば、どうだろうか。タイムリーパーがいれば、どうだろうか。現状では、事実を最大の根拠とし、論を展開する。何故なら客観的事実は何人も崩すことを能わないからだ。
私の先生は先ずこれを私たちに教えた。「例えばここ、机に時計があるよね?これは誰が何と言おうとここにあるだろ?それが強い根拠になるんだ。」
ところが野比のび太が馬鹿を起こしてか、あるいは暁美ほむらが舞台装置の魔女か何かと戦うためか知らんが過去で先生の時計を奪ったとする。すると、先生の時計がそこにあった「客観的事実」は消え失せるのだ。これは、非常に恐ろしい。
だが、現状では事実を最大の根拠として論理を作る。それを論理性と云い、信憑性のある意見とソースを信用する。先生もそう教えたし、そうじゃなきゃ我々にはもっと良いことを教えるはずだ。つまり、この世が脆弱型か強固型かなんて誰も知らぬし存ぜぬが、少なくとも、少なくともだ。この世が脆弱型でなくて、強固型だと頭の奥底、深淵では信じているはずなのだ。でなくば、きっと私は今論理国語演習の授業で「事実以外を最大の根拠とする意見の作り方」でも習っているであろう。
要するに、意見が成立するのは少なくとも大多数の人間が、心の奥底では事実が歪まないことを願う−即ち強固型であると信じているのだ。頭の中でそれだけ脆弱型を信じようが、今、この瞬間意見を言うこと。我々はそれだけで強固型を肯定する証人となり得てしまう悲しい運命にあるのだ。
時間とは不思議なものである。今回もこれで完成とは決して言えない。様々な観点から、どんなに解き明かしてもまるでキリがない。やはり時間とは、まるで無限に続く見えない壁のようで面白い。そして今日もまた時間が過ぎてくのである。
参考文献
アニプレックス 魔法少女まどか☆マギカ
東映 仮面ライダージオウ
藤子不二雄 ドラえもん
Electronic Arts Inc Command&Conquer:RedAlert3
東宝・東映 戦国自衛隊1549
木村風太 運命の巻戻士