短編集 赤い帝国   作:デブレツェン

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キュゥべえに気付けない理由

皆さんは、「魔法少女まどか☆マギカ」をご存知ですか?魔法少女の作品に衝撃というスパイスを加え、一斉を風靡した名作です。

その作品で最も興味深いと考えるのは、キュウべぇ。女の子が契約して、魔法少女になる、言わばマスコット的存在。しかし、そのキュウべぇがかなり酷いことをするのです。一体何があったのか、それは一旦置いておき、この言わば「魅力的な詐欺」は、もはや前代未聞とも言えます。何がどう前代未聞なのか、それはこの後解説します。

ここで最も大事になるのが契約の様式と、成立条件です。まずはそれを分かりやすく解説していきましょう。そして、一旦このキュウべぇの契約が正しいのかも証明します。

 

 

 

契約の成立条件は、意思表示によって決まります。要は合意です。Aさんが「このコッペパンをください」と言い、Bさんが「いいよ」と言えばそれは契約成立です。契約書は実は必要ないということは、結構知られているのでしょうか。とりあえず、合意こそが契約において最も大切になります。

キュウべぇはどうでしょうか。契約を持ちかけたのはキュウべぇ。女の子が同意した上で願いを叶えて魔法少女にしているので、これだけならば問題ありません。ですが、意思表示が全て正しいとは限らないのです。キュウべぇは、その最たる例でしょう。

意思表示の欠缺または意思の不存在は、言うなれば意思表示の食い違いです。例を挙げると内心コッペパンを買いたいAさんが間違えて「おにぎりをください」と言ってしまったとしましょう。これが錯誤といい、間違えて契約してしまうケースです。もう1つは心裡留保というものです。売る気のないBさんの内心に気づいておきながら、しつこく「コッペパンをよこせえ」と迫り、Bさんが「いいよ」と売ったとします。Aさんは、この食い違いに気づいて居ましたが、分かった上で契約を迫ります。これが、「心裡留保」という状態です。3つ目に、通謀というケースがありますが、これは非常に難解だし、あまり関係しませんので今回は端折ります。とりあえず、どれも意思の不存在もしくは意思表示の欠缺です。

さて、意思表示クリアしてもこういう事もありますよ。例えばこのAさんが「このコッペパンカビてるねえ。きっと売れないけど俺は気にしないから半額で買うよ」と言って、Bさんが「いいよ」と言ったとします。カビたパンを食べようとするAさんもAさんですが、実際にはこのパンがカビてなかったとします。つまり早い話詐欺。このような場合を「瑕疵ある意思表示」といいます。瑕疵、とは傷という意味です。さらにこれは言葉巧みに騙しているため「詐欺による売買の意思表示」となります。こう言った契約は、原則として取消することができるのです。

キュウべぇはどうでしょう。これをキュウべぇに当てはめると、魔法少女になることで、恐ろしい魔女と戦うという事を言われましたね。実際に命の危険がある事も分かりました。しかし、意思表示に欠缺がないとも言えない。

最終的に魔法少女はソウルジェムが濁り切ると、魔女になるという残酷な運命を迎える。だがそんなことを一言も言ってはないし、それを隠して居ました。これは、明白に瑕疵ある意思表示です。それを言うと、きっと止めると分かっていたのでしょう。つまり取り消せます。

さらに、キュウべぇが相手にしたのは未成年者です。未成年は制限行為能力者であるため、こうして契約した場合は取り消せます。

キュウべぇに対して契約取消(さやかちゃんを元に戻して)を要求した鹿目まどかを非難した者が居たりしましたが、この主張は真っ当です。取り消せる要素しかありません。ですがキュウべぇの返答は「ボクにも無理だ。」というもの。これは、立派な不法行為ではないか。美樹さやかの親族は損害賠償請求を起こせるでしょう。

 

 

 

さて、ここまでは正直テンプレートです。このキュウべぇが、何故凄いのか。それを証明します。

まず魔法少女の契約は、事前に「魔女を倒す代わりに願いを叶えてもらう」という物だと伝えられました。しかし、実際はそうではない。魂が絶望に落ち魔女になる代わりに願いを叶える、言い換えれば「魂を売る代わりに願いを叶える」契約とも言えます。

ここで最初に提示した契約の種類に、この二つを分類してみましょう。まず、「魔女を倒す代わりに願いを叶えてもらう」という契約は、おそらく委任契約もしくは請負契約にあたります。魔女の殲滅を目標とするか(仕事の完了を目的とするか)は正直分からないですが、どちらかであることは変わりありません。

重要なのは、この契約は本来なら売買契約のはずです。しかし、キュウべぇはそれを「魔法少女」という言葉で韜晦し、まるで「委任契約」であるように見せかけたのです。これは、正直前代未聞です。我々がなぜキュウべぇの所業に意外性を感じたか。それは、想定できないから。もう既に、「委任契約」に見えて居たから、まさか魂云々の話(売買契約)が出てくるとは思ってもみない。そう考えれば当然の摂理です。つまりこれは、虚淵玄による第二の伏線。民法を彼が知って居たのかは分かりませんが、言わばこれは計算し尽くされた民法上の「魅力的な詐欺」だったのです。

 

 

 

 

民法は日本の日常生活に常に結びついて居ます。もちろんそれは周知の事実です。しかし、キュウべぇのようにそれは意外な所に、身を隠して居たりするのですよ。

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