いや今回はメリークルシメマスかもしれないです。
けど思いついちゃったからにはモウ…ネ…。
[if] Black lily
「へー、これが噂の先生かー。あんまり私たちと変わらない感じなんだね?」
「なるほど、ふーん……うん、私は結構いいと思う!!ナギちゃん的にはどう?」
「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ」
"…"
トリニティ。
ミレニアム、ゲヘナと並ぶマンモス校の一つで、粗暴で自由気ままな問題児が多いゲヘナとは違い模範的な生活をしている生徒が多い印象だ。
私はそんなトリニティのティーパーティに招待されていた。
「愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」
「うぅっ、それはまあ確かに……」
育ちの良さからなのか、とても上品な振る舞いをしているのが「桐藤ナギサ」。
それとは対照的に活動的なのが「聖園ミカ」だ。
正反対な性格にも関わらずどちらも仲が良いということは会話でなんとなく推測できた。
「……トリニティの外の方が、このティーパーティの場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです」
「普段はトリニティの一般の生徒達も簡単には招待されない席でして……」
「あー、何それナギちゃんちょっといやらしい!恩着せがましい感じー!」
「…」
…やっぱり気のせいだっただろうか。
「…それはさておき、こうして先生をご招待したのは、少々お願いしたいことがありまして」
"お願い?"
「♪」
ミカはナギサの言葉に待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「先生、補習授業部の顧問になっていただけませんか?」
"補習授業部?"
「はい。つまり、落第の危機に陥ってしまっている生徒達を救っていただきたいのです。"部"という形ではありますが、今回は顧問というより"担任の先生"と言って方が良いかもしれませんね」
「トリニティ総合学園は、昔からキヴォトスにおいて"文武両道"を掲げる、歴史と伝統が息づく学園です」
「それなのにあろうことか、よりにもよってこの時期に、成績の振るわない方がなんと四名もいらっしゃいまして…」
ナギサはため息をつきながらそう言った。
「そこで、噂の先生ってわけ!」
ミカが急に話に入り込んできた。
「新聞で知ったんだけど、カイザーグループの陰謀からアビドスを救ったり、ミレニアムの地下で眠っていた機械達を沈めたりとか!」
「そんなすごい事を難なくやってのける先生ならきっと面倒ごとを任せられそうだなって!」
"…"
私はこのミカの発言について少し思うとこがあったのだが、問題はそこではない。
なぜミカはミレニアムの件を知っているのかだ。
アビドスはわざと新聞に載せカイザーを刑務所送りにしたが、ミレニアムの件については他言無用で終わったはずだ…
「で、先生。私たちのこと、助けてくれる?」
私が黙っているとミカが私にそう問いかけた。
"…もちろん。私にできることがあれば喜んで"
私が抱いた疑問に蓋をしながらそう言った。
「やった!ありがとー先生!」
「えぇ、ありがとうございます、先生。では、こちらを」
ナギサから生徒の名簿を受け取った。
「つまり、そこに載ってるのがトリニティの厄介者ってわけ!」
またもやミカが不穏な発言を口にする。ナギサはそれを否定することなく、黙って紅茶を口に運んでいる。ミカが少しやんちゃなだけなのか、それとも……。私はあえて、その違和感を口に出さなかった。
「…詳しい内容についてはまた追ってご連絡いたします。他に気になる点はございませんか?」
ナギサが私に問いかけてきた。
"二つあるんだけど、いいかな?"
「どうぞ、わたしたちで答えられるようなことであれば」
"エデン条約……って、何?"
私がそう聞くと二人は"あー"とでも言いそうな顔をした。
しばらくした後、ミカが口を開いた。
「エデン条約っていうのは簡単にいうと、ゲヘナとトリニティで仲良くしようっていう条約を結ぶの。ほら、先生も聞いたことあるよね?トリニティとゲヘナは犬猿の仲、とか」
「ミカさん…」
「あっ、言っちゃダメだっけ?ごめん。先生も聞かなかったことに…」
どうやらこの条約の詳細は、ティーパーティ内でも機密事項に近い扱いらしい。聞かなかったことにするのは難しいが、配慮はする。そう伝えて、話を切り替えた。
"あと、ティーパーティのもう一人の生徒会長は?」
「!」
「…」
空気が凍りついた。 ミカは視線を彷徨わせ、ナギサの持つティーカップは小刻みに震え、ソーサーと触れ合ってカチカチと乾いた音を立てた。
「…私たちに答えられる範囲までですので、その質問は答えることができません」
"…そっか、聞いちゃってごめんね"
「いえ、別に先生が謝ることでもありません。…して質問は終了ですか?」
"うん、今聞きたいのはこれぐらいかな"
「では準備が整い次第、先生にはトリニティ総合学園に派遣という形できていただくことにできればと」
「先生のご協力感謝します」
「じゃあね〜先生」
私は席を立ち、ティーパーティの場を出た。
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私は廊下を歩きながら考えた。
ティーパーティのもう一人のホスト"百合園セイア"。
彼女のことはホシノやヒナ、その他の生徒達からよく聞いていた。
彼女はトリニティという立場なのにも関わらず、アビドスを支援していたり、ゲヘナと仲が良かったという。
他にも、キヴォトスで行われた大イベントの開催者を務めたりやトリニティ内でも印象が良かったらしい。
しかし、聞こえてくるのは明るい話ばかりではない。
ホシノやヒナの情報によると、去年キヴォトスで開かれたイベント以降彼女はトリニティから姿を消している。
何か予兆があったわけでもなく突然だったため、マスコミが大きくこれの話を取り上げた。
が、トリニティがこの話題を強引にもみ消し始めたのだ。
わずか二日で騒動は鎮火し、それ以降、彼女の話題が公に出ることはなくなった。 学園の不祥事か、親族の意思か……憶測は飛び交ったが、彼女と親交のあった他校の二人の見解は、もっと根深いものだった。
『うへ〜あれね。多分だけど……』『先生、これは私の憶測なのだけれど』
『『これは先代のティーパーティの仕業ね(だよ)』』
先輩の生徒会長達、つまりミカやナギサの先輩ということになる。
"…"
ホシノとヒナの忠告を思い出す。
『先生、今トリニティは多分とても不安定なの。誰かが突くだけで誰にも矛先が向いてしまうほど』
『おじさんもタチの悪い人たちはいっぱい見てきたけど、あれは異常だよ〜』
『『だから…気をつけてね』』
"……忙しくなりそうだ"
キヴォトスの青い空を見上げながら、私は一歩を踏み出した。 この先に待っているのが、どんなに冷酷な真実だとしても。彼女たちが"先生"と呼んでくれるなら、私はその手を離すつもりはなかった。
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先生が去った後のティーパーティの場には、不敵な笑みを浮かべるミカと、青ざめた顔のナギサが残されていた。
「ん?どうしたの、ナギちゃん。私の顔に何かついてるの?」
ミカはいつも通りの、無邪気な声で問いかける。
「ミカさん…本当に…やるんですか?」
ナギサのその声は、もはや幼馴染に向けるものではなかった。怯えを隠せない声と言った方が正しいだろう。
「…」
ナギサはミカを警戒するように、言葉を絞り出す。
「確かに計画したのは私です。でも、これはセイアさんのためにならなー」
「ナギちゃんうるさーい」
「ッ!」
ナギサの話はミカによって遮られた。
ナギサは、震える手でティーカップをソーサーに置いた。
「……ミカさん。私は、セイアさんのためと言えば何でも許されるとは思っていません。先生を、私たちの……いえ、エデン条約に巻き込むなんて、やはり正気の沙汰ではありません」
ナギサは明らかな"抵抗"と"罪悪感"を示した。しかし、ミカはそれをあざ笑うかのように言った。
「えー、今さらそんなこと言うの? セイアちゃんを行方不明にさせた"犯人"を見つけるには、これしかないって言ったのはナギちゃんだよ?」
ミカがナギサを睨んだ。
「補習授業部のあの子たち……あの中に裏切り者がいる。先生は"おとり"。先生が彼女たちと仲良くなればなるほど、あぶり出しやすくなるでしょ? それとも何? ナギちゃんは、セイアちゃんよりも、たかだか外から来た大人のほうが大事なの?」
「っ……! そんなわけ、ありません!」
ナギサは、縋るように叫んだ。
「セイアさんのためなら、私は……私は、どんな汚名だって。たとえ先生に恨まれることになっても……」
「あはは!そうそう! その意気だよ、ナギちゃん。さすがトリニティのホストだね」
ミカは満足げに微笑み、席を立った。
「先生には"落第寸前の生徒を救ってほしい"なんて綺麗な嘘をついて、実際には"裏切り者の容疑者"を押し付けた……。ねえ、ナギちゃん。先生が真実を知ったとき、どんな顔をするのかな? 」
「…」
去っていくミカの背中を見つめながら、ナギサは震えが止まらなかった。 セイアが消えてから、ミカは少しずつ狂い始めていた。ナギサは、そんなミカを少しでも支えたい、救いたいと願って一つの提案をした。 だが、それは間違いだった。 目の前で冷え切っていく紅茶を前にナギサはただ、後悔に打ちのめされていた。
Black lily:黒百合
花言葉:裏切り
この世界線はTS転生セイアちゃんが何もできずに終わった世界線ですね。
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話をアビドス編まで
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飛ばそう
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飛ばすな