もしかしたらこれからも、ちょくちょく改善するかもしれないです。
すいません許してください!何でもしますから!
"ブルーアーカイブ"の世界に来てから早三ヶ月が経とうとしていた。
入学式の頃の暖かさはどこへ行ったのか、とても暑苦しい日々が続いている。
まぁ、今は暑苦しいというか息苦しいのだが。
私は、校舎の陰で繰り広げられている"原因"を、物陰からそっと盗み見た。
「あら、ごきげんよう。お困りのようですわね?」
サンクトゥス分派の生徒たちが、フィリウスの生徒を円状に取り囲んで笑う。
「見てくださいまし、この怯えた顔。まるで捨てられた野良犬のようですわ。そんなに震えているなら、わたくし達が温めてさしあげましょうか? 熱々の紅茶を頭から被せて。」
「やめて……お願い、許して……っ」
「あら、許してほしいなら、まずはその不愉快な口を閉じなさいな。 貴女の吐く息を吸うだけで、わたくしの肺が腐ってしまいそうですもの」
今は夏。この季節にはティーパーティの傘下が新たに入るため、新人を消すという目的で各派閥の落とし合いが始まる。トリニティ総合学園は原作でも派閥の内外を問わず互いの足をすくい合うような騙し合いや、陰謀策謀渦巻くドロドロとした人間関係が垣間見えるが、画面から見るのと実際で見るのとでは生々しさが違う。言葉自体はオブラートに包まれているが、完全にいじめと言って差し支えないだろう。
もちろん私は巻き込まれたくないため、いじめ現場から立ち去ろうとした瞬間
「それ以上、その子をいじめるのは許さないよ」
どこからともなく現れた聖園ミカが、被害者の生徒を庇うように立ちはだかった。
「聖園……ミカ…」
「早くそこを退いてください、貴方ごと撃ってもいいんですよ」
「へぇ……いいよ。私これでも結構強いんだよ」
今すぐにでも喧嘩が勃発しそうなほど両者に火花が散っている。
正直、これなら余裕でミカが勝利しそうだったので、そそくさと立ち去ろうとした。
「…でも、いいんですか?聖園家の恥」
放たれた一言に、私の足が止まった。
「入学式に遅刻したという汚名。それに加えて、学友への暴力行為。……これ以上の不祥事は、流石の聖園家も庇いきれないのではなくて? 貴女のような能無しでも、その後の『末路』は理解できるでしょう?」
「ッ……」
ミカの表情が曇る。今の彼女は、名家としての看板があるからこそティーパーティ候補としての地位を保てている不安定な状態だ。 "規則"と"品行"を重んじるトリニティにおいて、入学式の失態と、今ここで起こそうとしている暴力沙汰は、致命的なスキャンダルになりかねない。
「そうですね……いっそここで聖園ミカまで潰してしまうというのは?」
「いいですね、そうしましょう。では、行きまし」
「待て」
……無意識に、声が出ていた。
私の目的は原作の過酷な運命から逃れることだ。しかし、目の前で人が心無い言葉で踏みにじられるのを黙って見過ごせるほど、私は大人になれなかった。
「セイアちゃん!?」
驚きに目を見開くミカの前に、私は一歩踏み出す。 そして、ポケットからスマホを取り出し、録音済みの画面を突きつけた。
「それ以上ミカを虐げるのなら私が相手になろう。それとも……」
「……君たちは、ティーパーティから永久に追放されるのがお望みかな?」
私は薄笑いを浮かべた。
「あれ、百合園セイアでは?あの……」
「あぁ!あの……では早く引いた方がいいのでは…」
私の姿を確認した途端、三人組は顔を青くして逃げ去っていった。いつの間にか、助けられたフィリウスの生徒もいなくなっている。
「セイアちゃん!ありがとう!」
「いや、礼には及ばないよ。立てるかい?」
私は地面に膝をついていたミカに手を差し伸べた。ミカはぱぁっと顔を輝かせ、その手を力強く握り返した。
「それにしてもどこから見てたの?」
うぐっ…痛いところを疲れてしまった。ここで最初から見てましたと伝えたら、私の命が危ないので適当に誤魔化しておいた。
「ふ~ん…あ、そうだ! セイアちゃん、ティーパーティーに入らないの? ナギちゃんも私も、もう籍を置いてるんだよ」
「ティーパーティ……まだ保留かな」
実は、実家の百合園家からも『早く所属を確定させろ』と連絡が来ているのだ。
入るとしても、原作のような中心人物ではなく、背景のモブのように目立たず過ごしたいのだが……。
「え〜、セイアちゃんなら絶対似合ってると思うんだけどな〜……あ、ナギちゃんから電話だ」
ミカのスマホから着信音が鳴った。
「ナギちゃん、どうしたの?…え?セイアちゃん?ここにいるけど。…うん…うん…わかった」
「私がどうかしたのか?」
「ナギちゃんが、今すぐセイアちゃんを連れてきてほしいって。お話があるんだってさ!」
「ナギサが、私を?」
嫌な予感しかしないが、ミカの勢いに押されるまま、私はティーパーティの場へと連行されることになった。
──────
「お待たせ!ナギちゃん!セイアちゃんを連れてきたよ!」
ミカに案内された場所は、トリニティの中でもひときわ豪華な応接室……ではなく、なぜか書類が山積みになった妙に殺伐とした一室だった。
「……来てくれましたか、セイアさん。急な呼び出し、失礼いたしました」
扉の先にはティーパーティの服装を着こなしていたナギサが優雅にティーカップを傾けていた。しかし、その姿はどこか高圧的だった。
「別に私はなんてことないよ。それより、ナギサはここのところ変わったことなどはあるかい?」
圧に負けないように少し余裕そうに私は言った。
「変わったこと……まぁミカさんが問題行動を起こさない限り私にはありませんね」
「ヒュ〜ヒュ〜」
ミカが気まずそうに下手な口笛を鳴らした。
原作のようにミカがナギサを振り回す関係は昔も健在ということが読み取れた。
「さて、このままお話を続けても良かったのですが……あいにく先輩方から急ぎの案件らしいので、本題に入らせていただきますね」
ナギサは持っていたティーカップを置き私の目をみた。
「単刀直入に言います。ティーパーティに入りませんか?セイアさん」
「……はえ?」
一瞬理解が遅れたため、
「な……なぜ?」
「貴方の先日のアビドスでの一件、そしてゲヘナの風紀委員長との会話……。あなたの知略と冷静な判断力が先輩方から評価されたのですよ」
ナギサは私の問いに答えた後、書類の山から一枚の書類を差し出した。
書類には………率直に言うとゲームを始める時の契約書のように文字がびっしり書かれていた。
「それだけではありません。シスターフッドの活躍、そして誰にも手がつけれなかった正義実現委員会の生徒の悩みを解く………無所属にはもったいない才能です」
「いや、正義実現委員の件は知らないんだが」
私がツッコむとナギサが『なるほど……ぶつぶつ』と呟き始めた。
それにしてもティーパーティか……結局、原作と関わっていることに私は焦りを覚えた。何かないだろうかと頭を悩ませた。
(どうすれば……あ…)
そこで一つ名案を思いついた。
「……なるほど、そこまで言うならやってやろうじゃないか」
「つまり……ティーパーティに所属される、ということでよろしいですか?」
「あぁ、その認識で間違いない」
「本当!? セイアちゃん、やってくれるんだ!」
先ほどまで黙っていたミカが嬉しそうに飛び跳ねる。ナギサも満足げに頷いた。
しかし 百合園セイアには 狙いがあった。
私は原作を思い出していくうちに一つの物事を思い出した。そう、セイアは病弱という理由で何度も欠席しているということを。つまり、私も同じように行動すれば病弱という理由で欠席し続けれる。これで私の未来は確定した。
と、思われていた。
私がそう勝ち誇った顔をしていると急にナギサがもう一つの書類を渡してきた。
「では、これからも外部学園交流部の部長としてよろしくお願いしますね」
「え?」
私は耳を疑った。なんて?外部学園交流部?
「待ってほしい。……聞き間違いでなければ、今、交流部と言わなかったか?」
「はい?そうですが?」
ナギサは私の実者に不思議そうに首を傾げた。
「これまでのティーパーティは、内政に重きを置きすぎていました。ですが、キヴォトス全域で混迷が深まる今、必要なのは先ほども言ったように他学園との高度な政治交渉ができるような人材なのです。先輩方がセイアさんを推薦したのもこれが理由ですよ?」
ナギサは淡々と言い放ったあと、先ほど渡された書類を指差した。すると端っこに『なお、本役職は他学園との交流を主な活動目的とし、積極的な外出を義務付ける』と驚くほど小さな文字で書かれていた。
「えぇ!!ナギちゃん、これはもう詐欺の領域じゃない!?」
隣にいたミカがナギサにドン引きしていた。
「まぁ、本当のことを言うと先輩方たちが全て作って私に命令したのですが……」
そんなナギサの嘆きは風に消えていった。
私はトリニティだけでなく他学園の激務の最前線に放り出されてしまったことに、絶望しながら次に渡された書類に目を通した。
────────────────ー
ティーパーティ(外部学園交流部員)
部長:百合園セイア
副部長:聖園ミカ
────────────────ー
「……なぜミカは副部長なんだ?」
「理由は二つあります。一つは、先ほども申し上げた通り、セイアさん一人では他学園の野蛮な連中に押し負けてしまう懸念があること。つまり、ミカさんは貴女の『盾』であり、物理的な『抑止力』です」
「抑止力……(暴走特急の間違いでは?)」
「二つ目は、ミカさんのイメージ向上です。先ほどのような派閥争いに首を突っ込むくらいなら、公的な役職を与えて、その有り余るエネルギーを対外的な貢献に使わせる方が建設的でしょう?」
「えへへ、ナギちゃんに期待されちゃってるのかな、私!」
ミカが隣で嬉しそうに鼻を高くしているが、今のナギサの目は全く笑っていない。
「……ということで、明日から活動してもらうのですが……なんともうこの部に依頼が来ていまして……アビドス生徒会からの依頼ですね」
アビドス……こんな夏なのに灼熱の砂漠に行かなければならないのか……
「なんでも、セイアさんをご指名で依頼されていますね……ではよろしくお願いします」
「………ウッ」
ナギサの後ろに積まれている無限の量の書類。これからの活動。そして原作回避作戦失敗。この三つのことを考えただけで私の意識は消えていってしまった。
──???にて──────────────────────────────
「クックック……予想外の展開でしたが、まぁ、結果が全てということで」
「そうかな、私としてはアビドスと関わるのはマイナスと考えているのだが」
形のない闇の中で、二つの静かな声が交差する。一方は愉悦に満ち、もう一方はどこか憂いを含んだ、聞き覚えのある涼やかな声だった。
「そうですか?私は逆にここで『暁のホルス』と関わっておくことで……」
「それは、君の研究の話だろう。その過程で彼女を利用しないで欲しいのだが」
「……あなたがそれを言いますか?」
「……」
二人の前にあるスクリーンに砂漠へ向かう準備をさせられている「彼女」の背中が映し出されていた。
「ククッ、まぁいいでしょう。我々は、彼女が予定された終焉をどこまで遠ざけてくれるのか」
「その時が来るまで、待ち続けるだけです」
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話をアビドス編まで
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飛ばそう
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飛ばすな