ホシノ「ユメ先輩はすぐ悪い大人に騙されるし、年下の私よりも弱いし……もう先輩とアビドス生徒会やってられませんよ!」
ユメ「ホシノちゃん……それ、本気で言ってるの?」
ホシノ「本気で言ってたら、今もこうして一緒にアビドス生徒会やってませんよ」
ホシノ、ユメ「えへへ……///」
ユメ「ひぃん!ひぃん!!」ホシノ「年上の先輩がこんな情けない声で泣くんですね」
アビドス高校。
かつてはキヴォトスで最も長い歴史を誇り多数の生徒が通うキヴォトス最大の学園として名を馳せており、圧倒的な兵力や資金を誇るほどの繁栄を謳歌していた。が、それはもう過去の話。
大体数十年ほど昔に突然発生した原因不明の砂嵐によりアビドス全体とまでは行かないがほとんどの土地が砂漠化してしまった。
進む砂漠化対策のために大量の資金を使ったが何も変わらず、さらに膨らみ続ける借金のせいで学園の経営は悪化し、生徒の殆どが転校や退学するなど、地区全体が衰退してしまった。
そんな悲しい過去を持つ学園に私は救難要請を受け取り車で向かっているのだが、
「……はぁ」
どう考えてもこの時期のアビドスにトリニティの生徒である私がいるのはおかしすぎると思うんだが。しかもそこら辺の生徒ではなく、百合園セイアが。こんなのもう原作回避とか呑気なこと言っている場合ではない。
原作崩壊なんてことなんてなってしまったら、それ即ち死。私が知ってる原作が全部無駄になってしまうわけだからね。
だが、救難要請を受け取ってしまった以上、そして協力を約束してしまった以上、今さら逃げ出すわけにもいかない。Uターンして逃げてもいいが、それで『暁のホルス』の矛先がトリニティに向いてしまったら、それこそ私の死につながるわけなので、逃げることさえ許されない。*1
「ああ、もう……」
なんであの時に逃げずに協力してしまったんだろう。過去の自分を殴りたくなった。……なんて思っているうちにアビドス高校が見えてきた。
「さっさと終わらせて帰ろう」
しかし、まだこの時の私は一日の事件に巻き込まれることを知らない。
──数日前────────────────────────ー
ドカンッガッダダダダッ
「やばいっす!!団長!!ヌルヌルヘルメット団のほぼ全員がやられました!!」
「だからアビドスはやめとけって言ったn」バンッ
「……これで最後かな。いつまでも懲りないね、お前ら」
真夏になり暑さが目立ってきた頃。……いやここはいつでも暑いか。
アビドス高校の門前で私はいつものように攻めてきたヘルメット団の相手をしていた。今回は自信があったようだが、結局は寄せ集めの集団って感じで全然連携などが取れておらず正直に言ってしまうと無茶苦茶弱かった。
ちなみにユメ先輩は盾からはみ出た胸を狙われそこでぐったりと伸びている。何をやっとるんですか。
「お前がリーダー?」
この中で一番目立ったヘルメットをかぶっていたヤツに声をかけた。
「く、ぅ」
「なんでここを襲ったか、聞いてもいい?ま、どうせ目的なんてないんだろうけど」
「……が……のに」
掠れた声で何かを喋り始めた。私はリーダーの顔の近くに自分の顔を持って行った。
「情報と、違うじゃ、ん」
そう言うとリーダーは気を失った。
「それにしても情報、か」
最近、スケバン共は妙に計画性がある襲撃を繰り返している。このリーダーらしき人物が言ったことと照らし合わせれば……
「上がいるってことになりますね」
正直、こんな奴らがいくら来ようと問題はない……いや、あるな。
「弾薬って後どれくらい余ってましたっけ」
そう、どれだけこちらが強かろうと、弾丸には必ず終わりが来る。 借金まみれのこの学園には、弾薬を大量購入できるほどの資金など、どこにも残っていない。もし上にいる何者かが、こちらの弾薬を枯渇させるためにスケバンを使い捨ての駒として送り込んでいるのだとしたら、次に大きな襲撃が来た時、私たちは引き金を引くことさえできなくなる。
先輩に相談しようにも、伸びているところを無理やり起こすのはやめておいたほうがいいと言うのはわかりきっていることだった。
「なら…誰に……」
その時一人の人物が頭に思い浮かんだ。
『必ず助けてくれる人はそばにいる。 少なくとも、私はそれを保証するよ』
以前、どこかの外交の場で、その少女は私にそう言ったのだ。、それでいてどこかお節介なあいつ。
……こんな学園にそんな言葉をかけたのが運の尽きだね。私はニヤニヤしながらスマホを取り出した。
「……あ、トリニティですか?………」
───現在─────────────────────────────────ー────
私は校門前に車を停め、校舎を見た瞬間私は自分の目を疑った。
「えっと、私の見間違いならいいんだが」
「アビドスはいつから処刑場になったんだ?」
『たすけ……て…』
『して……おろして…』
何人ものスケバンたちがアビドス高等学校の窓から縄で吊るされていた。……は?
「あ、セイア。やっと来たね」
その惨状の真ん中で、こともなき顔をして立っていたのは、小鳥遊ホシノだった。
「……ホシノ。いきなりで悪いが、一つ聞いていいか。あれは何だ? 現代の学園で見られる光景ではないと思うんだが」
「これ? さっき攻めてきたヌルヌルヘルメット団の生き残り。ほら、ちゃんと吊るしておかないと、砂に埋もれて掃除が大変でしょ?」
「……いや、そうではなくてね。人権とか、平和とか、そういう概念がアビドスには残っていないのかい?」
「あっちから、攻めてきたんだよ。これぐらいこらしめなきゃまた懲りずにまた攻めてくるし」
ホシノは吊るされた何人かを見ながら呟いた。
「……これがアビドスクオリティか」*2
「それほどでもないですよ……///」*3
「褒めてないよ、これ」
──数分後────────────────────────────
「それではアビドス定例会議を始めます。……って言っても二人しかいないけどね。ユメ先輩も気絶してるし…」
それから、ホシノに校内の会議室に案内された。室内は案外快適で、普通に郊外交流部なんかよりもずっと清潔だ。
「それで、今回セイアに来てもらった理由は、最近スケバンが毎日のように攻めてくるんだよね」
「それぐらいホシノ一人だけでいいのでは?」
仮にも『暁のホルス』の呼び名がついているからね。それぐらい余裕なのでは?
「実はそうじゃないんだよ。気づいたのは数日前、それだけだったら確証は持てなかったんだけど、この数日間で確証が持てた。今攻めてきているスケバンは上からの指示できてるね」
「上?」
「そう、全員から脅して聞いても『こんなに強いなんて知らなかった』だの『全然聞いてたのと違うんだけど!?』とか……アビドスも舐められたもんだね」
ホシノの顔つきが険しくなった。
それよりも上がいる、か。スケバンは学校を中退したり、いじめが問題で辞めてしまった人が多い。結局のところ、スケバンたちが最も必要とするのは富とか名声とかそんな大層なものではなく、金。金があればここら辺のスケバンなど容易く操ることができるだろう。しかし、ホシノの言葉を聞く限り数がとても多い。つまりかなりの金が必要となる。つまり目的のために大金をポンっと出せるところといえば……
「カイザーコーポレーション……!!」
「へぇ……」
私の独り言を聞いていたのかホシノがこちらを目を開きながら見ていた。
「なるほど、カイザーか……確かにあそこなら全然有り得る。」
ホシノが顎に手を当てながら考える素振りを見せた。
「…いや、それよりよく知ってるね。カイザーなんてトリニティでは無縁なんじゃないの?」
「あ」
失言してしまった。それはそうだ。ティーパーティトップは知らないが、トリニティでカイザーの名を聞くことはない。
「いや、事前学習だよ。旅行でもよくするだろう。あれだよ」
「ふーん……」
なんとか誤魔化せた。多分。
「……じゃあ、ユメ先輩が起きてから色々試してみよう。私はユメ先輩の様子を見てくるよ。ちょっと待ってて」
そういうと、ホシノは会議室を出て行った。
「それにしてもカイザーか……ん?」
カイザー?あの?ストーリーで何度も敵側として出てくるあのカイザー?
そう、私はそこでとんでもないことに気づいてしまった。このままカイザーが黒幕とわかってしまったら自分まで巻き込まれるんじゃないかということに。
「まずい。非常にまずい……!」
カイザーコーポレーション。 彼らがアビドスを執拗に狙う理由は、アビドスが抱える天文学的な借金を利用した土地の買収……そしてこの砂漠の地下に眠るオーパーツ。私がここで「黒幕はカイザーだよ」と確定させてしまえば、ホシノとユメ先輩は間違いなく正面突破を仕掛けるだろう。そして返り討ちに遭うか、より深い泥沼に沈む。私がここでやるべきは、適当な理由をつけてトリニティに帰ることだ。
私は平静を装いながら廊下を歩き、校門へと向かった。 校門前には私が乗ってきた愛車が停まっている。これに乗り込みさえすれば、私の勝ちなのだ。
しかし、校門まであと数十メートルというところで嫌な音が鼓膜を震わせた。
キュルルルルッ!!
「……ん?」
見れば、校門の外から猛烈な砂煙を上げて、改造バイクに跨ったスケバンたちが突っ込んでくるのが見えた。ヘルメットの色合い的に別のチームだろう。
「ヒャッハー! 運がいいぜ!高級車が止まってんじゃねぇか!!」「おい!!窓の連中は回収した、早くずらかるぞ!!」
まずい。 私は焦ってポケットからスマートキーを取り出そうとした。だが、焦れば焦るほど、指先が言うことを聞かない。
「くっ、……こういう時に限って……!」
ようやく指にかかったキーを抜き出し、解錠ボタンを押そうとした瞬間、背後から、さらに別のスケバンが飛び出してきた。
「おい、そこのキツネ! そのキラキラしたの、こっち寄こせ!」
「なっ……!?」
後ろからの襲撃で私は突き飛ばされてしまった。
「あだっ……!」
尻餅をついた私の手から、スマートキーが砂の上に放り出された。 それをスケバンが空中で鮮やかにキャッチする。
「よし!」
「待て! やめろ、それは……!」
叫びも虚しく、解錠音が鳴り響く。 スケバンたちは私の愛車に雪崩れ込み、慣れない手つきでアクセルを踏み込んだ。
ブオォォォン!!
重厚なエンジン音と共に、私の愛車はあっさりと砂漠の彼方へと消えていった。
「………………」
砂まみれになり、空になった自分の手を見つめる。 車がない。予備の鍵も、通信機も、すべて車の中だ。 アビドスの灼熱の砂漠を、百合園セイアの貧弱な体力で踏破するなど、不可能というより「死」そのものである。
「……あれ? セイア、何してるの? そんなところで」
背後からホシノの声がした。 その隣には、目を覚ましたばかりのユメ先輩が、ふらつきながら立っている。
「……あ、ああ。いや、その。アビドスの地質調査をね。ティーパーティーとしては、環境問題にも関心があって……」
「へぇ、熱心だね。……ところで、セイアの車がないみたいだけど?」
「……奪われたよ」
私の様子にホシノが呆れたようにため息をつき、ショットガンの銃口で砂漠の先を指した。
「……あいつら、うちの近隣を根城にしてる、カタパルトヘルメット団だね。あそこ、陰湿な手口使うから今の私たちだけじゃ手出ししにくかったんだけど……」
ホシノはニヤリと笑い、私の肩を叩いた。
「でも、ちょうどよかった。セイアの車を取り返すっていう正当防衛のついでに、あいつらの拠点を叩き潰そうよ。君の知恵があれば、弾薬に制限があっても勝てるでしょ?」
「……正当防衛の、ついで?」
「そう。協力してくれるよね? ……ちなみに、アビドスに遭難者用の部屋とかあるからそこで寝泊まりできるよ。ま、協力してくれたらだけど」
私は天を仰いだ。
「結局はこうなるんだな……わかった、協力しよう。」
「あんまり暴力はいけないよ?」と言っているユメと「正当防衛なんで」と言うホシノを横目に見ながら私は薄い苦笑いを浮かべた。
アイドルは何回やっても出なかったのに、臨戦ヒマリとホシノはそれぞれ10連と20連でお迎えできました。飴と鞭の差よ。
そんなことより前回とプロローグのいくつかの話を少し修正しました。もし「あれ?なんか違うぞ?」と思ったら、すぐに報告してくれると嬉しいです。
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話をアビドス編まで
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飛ばそう
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飛ばすな