「…」
「おい!何黙ってんだよ!」
「ビビってんのか!?あ!?」
(どうすればいいんだ、この状況…)
面倒ごとには関わらないと今決めたはずなのに、秒でその決まりを破った。
後ろからも前からもスケバンがジリジリと迫ってきており、とても逃げれそうにもない。
(なら…戦うか…)
いや、それは一番ダメな選択肢だ。
転生ものならここで力に目覚めて敵を倒す展開…かもしれないが、そんな兆しは1ミリもない。そもそもの話、どこぞの"アビドスユメモドキ"やそこで気を失っている"トリニティピンクゴリラ"とは違って、原作でもセイアはストライカーであるもののアタッカーではなくサポート役として強いのだから、バトルには向いていないのだ。
じゃあどうするか。それは簡単。
(ナギサの鞄より高い物を渡して、立ち去ってもらうか…)
そう思い鞄を探った。つまり賄賂だ。その時、
「いやぁリーダー!鴨がネギ背負ってきたってこういうことっすね!」
「あぁ、まさにその通りだ!!」
あれ?これ…金目の物どころか、渡しても無理な流れでは?
「こいつら二人を拉致して、トリニティに知らせれば……儲かるって寸法よ!」
「さすがリーダー!あったまいい!!」
なるほど、私とミカを拉致してトリニティに「金出さないとどうなるかわかってるな?」と脅す気らしい。
それはまずい。失敗して帰れても、ティーパーティが黙っていない。
……というか、ミカはなんでそこで倒れてるんだ!? いくら一年生でももう少し抗えただろ!!
…やはり戦わなくてはならないらしい。
でもどうやって…あ…
試行錯誤するとともに一つの案を見出した。
そして、私は一つの案と覚悟を決め動き出した。
―――――――――――――――――――――――
失敗した。
私は縛られた手を見ながら呟いた。
そもそもはナギちゃんと登校中のことだった。
「ナギちゃんどうしたの?元気ないじゃん?」
「ああ…すみません。朝ごはんを食べていなくて…」
「へぇ、ナギちゃんでもそういうミスするんだ。」
そして、最寄りのコンビニに、朝ごはんを買ってくれば?と提案すると、ナギちゃんは最初こそ反対していたものの、空腹に耐えられなかったのか私に鞄を預けコンビニに向かって行った。
その直後だった。
ゴッ。
首元に強烈な痛みが走り、意識が揺らぐ。
「リーダー!鞄は奪ったけど、こいつどうします?」
「抵抗されると困る。縛っとけ。」
そこから記憶が途切れ、気づけば路地裏にいた。
「お、起きたか。でもまあ、その状態じゃ起き上がれねぇだろ。」
体を見ると、手錠・鎖・縄、ありとあらゆる物で縛られていた。
「ッ!」
「大声出すなよ?さもねぇと、こいつ撃つ。」
ショットガンを頭に押し当てられた。 ヘイロー持ちでも、頭を撃たれればただじゃ済まない。
どうしよう…と考えていると。
「これ、この鞄の持ち主の連絡先?」
声の方向を見ると、ナギちゃんの連絡先メモを持っている。
「名前は…桐藤ナギサ!あの有名な桐藤家の!?」
「ブラックマーケットに売れば金になるな!」
私は息を呑んだ。これ以上放置すればナギちゃんに計り知れない被害が及ぶ。 そんなのは絶対にダメだ。私は手錠に力を込めた。
「おい!手錠が壊れてるぞ!」
「やばいやばいやばいどうすんだよ――」
バンッ!
銃声が路地に響く。
「慌てんなよ。頭に一発くれてやるだけでしょ?」
「さすがリーダー!かっちょいい!」
「返せ…それは…ナギちゃんの…」
ああ、もう少しだったのに。
ごめん、ナギちゃ――
意識が飛びかけたその時。
「ミ…カ…!」
「ッ!」
(あれ…セイアちゃん!?)
政治に疎い私でも、苗字と名前だけは知っていた。トリニティに入学した人の中でもトップクラスの頭脳を持ち、予知夢が見れるとかなんとか…
それよりもなぜ彼女がここにいるのだろう?
「誰だっ!」
「あっ、しまった……」
その声からして、彼女も予定外らしい。
それでもあの噂があっているなら何か秘策があるのかと思い私は彼女を見守ることにした。
普通に囲まれてる。
(いやなんで来たの!?)
そう思っていたのも束の間、彼女は唐突に鞄を探り始めた。
何を出すんだろうとその様子を見ていると、
(何か爆弾とかそういうの…ってお札じゃん!?)
(お金で見逃してもらうってことじゃんね!?)
心の中でツッコミを入れていると、
「いやぁリーダー!鴨がネギ背負ってきたってこういうことっすね!」
「あぁ、まさにその通りだ!!」
「こいつら二人を拉致して、トリニティに知らせれば……儲かるって寸法よ!」
「さすがリーダー!あったまいい!!」
リーダーが嬉々としてそう語った。
(これ、ますます事が悪い方向に進んでない!?)
もうダメか…と思っていると、
「君がリーダー、で合ってるかな?」
ついにセイアちゃんが口を開いた。
「ああ…そうだが。」
「リーダー…ここからミカと私を逃がしてくれないか?」
「ああ?んなもん無理に決まってるだろうが!」
セイアちゃんが一瞬「え。」と言ったのは気にしないでおこう。
「なら…一つ勝負をしないかい?」
「勝負?」
「内容は…そうだね。時間は二十分。今いる君たち全員が私を狙い、私の意識を落とせたら君たちの勝ち。私たちの身は君たちに委ねるよ。しかし、もしも時間内に私を倒せなかったら、私たちを解放するとともにその鞄を返してもらおう。」
(いやいや、無理でしょ!)
そう私は心の中で叫んだ。こんな人数から一斉に攻撃されたらひとたまりもないし、噂だがセイアちゃんは病弱と聞いたことがある。
「へぇ、わかった。やろう。」
「えっ!やるんですか!?」
「うるさい!私がやると言ったらやるんだよ!それに、私らがそこまで弱いって思われてんなら、黙ってらんないでしょ!」
(乗るの!?)
「…五時の鐘が鳴ったならスタートだ。」
セイアちゃんが関わった瞬間物事が早く進みすぎて、私の脳内はパンク状態だった。
しかし、そんな私を置き去りにセイアちゃんとスケバンたちに静寂が走った。私もその状況をじっと見つめていた。
ゴーン!!
鐘がなったとともに、両方が動き始めた。
―――――――――――――――――――――――
「一分で終わらしてやるよ!」
最初に3人が私に向けて銃を撃った。
しかし、私はその弾丸を避け切った。
「なっ!」
その後困惑している三人に、素早く銃を撃ち全て直撃させた。
「うっ…」
そして、私の弾丸を受けた三人は、まるで糸が切れたかのようにその場に倒れた。
「「…は?」」
(今、そこで倒れているミカからも聞こえたような…)
これでおおよそ五秒。
さて、なぜ私が弾丸を避けることができたか説明しよう。
みんなは、コ○ンの映画で蘭が敵の弾丸を避けるシーンがあるのだがキヴォトス人でもない彼女がなぜ避けることができたかを知ってるだろうか。
あれは、敵の動きや気配から読み取り、頭を振って回避したからである。
そう。それだけなのだ。
つまり何が言いたいかというと…私がやったのは蘭がやったことそのまんまだ。
…と言っても、元々セイアが持っている勘の良さがなければ避ける前に当たっていたかもしれないので、あまり自慢はできない。
そう思っていると、どんどん敵の数が減ってきた。このまま行けば、無事に全員倒せるだろう。
しかし、そう事はうまくいかないようで
バンッ!
「ッ!」
この方法にも欠点がある。文字通り、避け切れないほど速い弾丸は普通に当ってしまう。
そしてついに、気を付けていたはずの弾丸が私の体を撃ち抜いた。
(ヘイローはあるはずなのに…傷の治りが遅い。)
「ふっ!やっぱりね。」
やはりリーダーだけには私の作戦はバレていたらしい。(まぁ作戦とは言わないか…)
そしてリーダーは勝ち誇ったようにこういった。
「あんた、なんでかは知んないけど、傷の治りが異常に遅い。正直に言わせてもらうと小学生とかそのレベルだわ。」
(なるほど、セイアの紙耐久、私にも適用されるのか…)
と心の中で感心していると、
「部下が一瞬でやられた時はヒヤヒヤしたけど、当たればどうってことないじゃない!」
リーダーは完全に勝った気でいるらしい。まぁそれもそうか。側から見れば足を撃たれ血が出ている子鹿に対し、群れでまだ生き残りがいる狼の方のようなもの。狼の方が優勢に決まっている。
…が、
「本当にそうかな?」
私は最初に思いついた案をついに実行した。
「今、この路地裏には換気扇、給湯器など様々な電気製品がある。」
「「は?」」
いきなり、私が訳のわからないのことを言い出したため、リーダーやミカ、その場にいる全員が唖然とした。…別に、急に頭がおかしくなったとかそうゆうのではない。これもちゃんとした作戦だ。
「そしていきなりだが…問題。電気をよく通す液体とは一体なんだろう?」
「はぁ!?なんでいきなり問題なんか…」
「スケバンのリーダーはこんな問題も答えられないのか?」
「わ、分かるわよそんなの!そうね…わかった!水よ!」
「不正解だ。純粋な水では電気はあまり通せない。塩分が多い水…つまり食塩水ならとてもよく電気が通る。」
「だからなんなのよ…」
まだ、わからなくていい。
「つまり、この路地裏にある電気製品に食塩水を流すと電気がショートし…ここら一帯が大爆発する。」
「ッ!」
計画通り、と私は心の中で呟いた。
「で…でもそんな都合よく食塩水があるわけないじゃない!」
そのとおり、普通はそう思う。
…が、私はニヤリとしながら鞄に入っている"物"を取り出し見せつけた。
「これは…なんだろうね?」
皆が片手に何かを持っているのを確認した。
そう、私が持っているのは…
「スポーツドリンク!?」
そしてそのペットボトルの蓋を開け、換気扇などにかけようとした瞬間…
「す、すみませんでした〜!!」
スケバンたちが全員その場を去っていった。
この場にいる、ミカだけはいまだに「は?」という顔だ。
それもそのはず、電気製品に食塩水なんかかけても引火するだけで爆発なんて起こらない。(そもそも、ミネラルウォーターに塩分はあまり入っていない。)
つまり、私はこの場にいるスケバン全員の頭脳が中学程度と推測し、騙したのだ。
人を騙す方法は簡単で、人間は長時間考えさせられ『これだっ!』と思っていたものを否定されると、否定された後の言葉を信じる傾向にある。
これ、結構使えるのでみんなも試してみるといい。
(私は、一体誰に喋りかけたんだろう…)
スケバンたちが全員その場を去っていった後、拘束されているミカに目を向けた。
「…さて、大丈夫だったかい?」
「うん…ありがとう。セイアちゃん。」
「おや…私の名前を知っているのかい?」
「まぁ…名前だけだけど。」
なるほど、さすが百合園家。結構いろんなところに名が知れ渡っているらしい。
私はミカの鎖などを解き、ミカを解放した。するとミカが何か聞きたいことがあると言った。
「あのさ…こんなこと聞くのはいけないってわかってるんだけど…なんで私を助けたの?」
「なんだそんなことか…」
そうだな…原作のセイアならきっとこう言うだろう。
私は、今できる最大級の笑みを浮かべ、
「君を…ミカを助けたかったから、だよ。」
と言った。これ結構恥ずかしいな…
「…わーお。」
あれ?反応が薄いんだが…何か間違ったのだろうか。
百合園セイア(転生)
セイアを愛してやまないある男性がセイアに転生した姿。
これまで生きてきた"私"と"僕"が混ざった性格をしている。
頭がとてもいいが、やる時はなんでもやる。
武器は原作と同じ、鋭き光彩。
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話をアビドス編まで
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飛ばそう
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