関係ないけど、セイアって苦いものがあまり好きではなさそう。
ブルーアーカイブの世界に百合園セイアとして目覚めてから、五日が経った。
アビドスの一件があってから私は倒れるように眠り丸一日使い、ミカに壊された扉の修理でまたもや丸一日を使っていたら休日が終わっていた。
「……学校、か」
月曜日。私はその現実に顔を背けたかった。正直言って、学校は憂鬱で仕方ない。学校に行かなくても持ち前の頭脳で平均以上はゆうに超えるし、何より、原作キャラとこれ以上関わってしまうのが怖い。
ホシノとユメ先輩はエデン条約まで登場しない。そこは救いだ。 だが、問題はそこではない。
『セイアちゃん!今日、友達を紹介したいんだけど、いいかな?』
「……」
スマホ画面を見つめ、ため息が漏れた。
ミカの友達…ナギちゃん、もとい桐藤ナギサで間違い無いだろう。
ナギサにも会ってしまったら、エデン条約の主役級の二人と出会うことになる。
そんなことになってしまったら、原作通りに進んでしまうだろう。
「……よし」
今日は仮病で休もう。それが一番平和だ。
私はお湯を沸かし、ブラックコーヒーをひと口飲んだ。
「にがっ……!」
予想以上に可愛い声が出てしまった。
(セイアはブラックコーヒー飲めないのか……)
新たな発見だった。角砂糖を二個投入し、もう一口。
うむ……なかなか……
私は一つの違和感に気づかないまま完全に休む気でゆっくりしていた。すると…
ピンポーン
インターホンが鳴った。
(今日は何も頼んで無いはずだが…)
私は椅子に座りながらインターホンを確認した。そこには…
「セイアちゃーん!いるー?」
「ミカさん、友人の家の前とはいえ、はしたないですよ。」
ガタッゴッ
私は椅子から転げ落ちた。
私は一度冷静になり、インターホンの画面を確認した。
そこには笑顔でインターホンをのぞいているミカと呆れながらその様子を見ているナギサが映っていた。
(なぜ二人が……)
考えてみればわかることだった。そう、私はミカに欠席するとモモトークに送信していなかったのだ。その間違いに気づいても、時すでに遅し。
つまり学校を欠席するためにはこの二人に仮病を突き通さなければいけない。
(前回はミカにドアを破壊されたが……今回は!)
私は昨日修理したドアに目を向けた。
何を隠そう、ドアの修理に丸一日使った理由は前回よりドアを強固にするためであった。
壊されてしまったドアの鍵穴は形を保てていないレベルで曲がっていたため、鍵穴を中心に鉄以上の素材を組み込んだのだ。
(さあどうだ……?)
ミカが痺れを切らしたのか、ドアノブに力を入れる。
結果は…
「あれ?開かない?」
(よし!)
私は安堵で力が抜けてしまった。学校へ登校したく無いだけでこんなことをしている自分が少しバカらしくなったが、今はもうどうでもいい。
(これでミカとナギサも諦め──)
コーヒーを飲み直した瞬間、窓から叫び声が聞こえた。
(……トリニティなのに喧嘩だろうか?)
私は閉めていたカーテンを開けた。それが間違いだとも知らずに。
「やっほー⭐︎ セイアちゃん! 一緒に学校行こ!」
シャッ!!
全力でカーテンを閉めた。
(気のせいだな)
トリニティのお嬢様とまで言われる彼女がドアが開かないからといって窓に張り付いてるなんてそんなことあるはずがない。
「おーい!セイアちゃーん!無視?」
(幻聴だ)
「セイアちゃーん!!」
(……疲れてるんだな)
私は時々聞こえる愉快な幻聴から耳を背け、二度寝しようとした。
すると、窓からミシミシという音が聞こえ始めた。
ちらっと窓の方を見てみる。
「これ以上無視するなら、この窓壊すよ?」
ミカが銃を構えていた。
私は即座に扉を開け、
「わかったミカ。一緒に登校しよう」
と諦めミカにそう言った。
――――――――――――――――
「すみません……止めたのですが、ミカさんが勝手に……」
外に出ると、深々と頭を下げるナギサとそのナギサにロールケーキを口に詰め込まれているミカというなんともシュールな絵面だった。
「…あっ、すみません。自己紹介がまだ…私の名前は桐藤ナギサです。よろしくお願いします」
「こちらこそ。百合園セイアだ。どうぞよろしく」
私が笑顔で答えると、ナギサは少し驚いたように目を丸くした。
ロールケーキを飲み込んだミカがナギサに耳打ちする。
「ね?言ったでしょ?セイアちゃん、いい子だって!」
「……そうですね。ミカさんにこんなまともな友人ができるとは思いませんでした」
「あっはは、ナギちゃん喧嘩売ってる?」
「そういうところですよ……」
二人はコソコソ話をしていたが──
「すまない、そろそろ登校の話では?」
「「あっ」」
二人は同時に固まった。やはり二人はホシノとユメ先輩同様仲がいいようだ。
―――――――――――――――――
「ナギちゃん!私、お友達ができたの!」
その話は唐突でした。
五日前、一緒に登校していたはずのミカさんは忽然と姿を消してしまい、先に言っているのでしょうか…と思い学校に向かいましたがそこにもミカさんはいませんでした。
まさか誘拐?と思い私は入学式が終わるとすぐさまにミカを探しに回っていました。
数時間の捜索の末、帰ってきたのは、少し傷を負っているミカさんでした。
『ミカさん!大丈夫ですか!?』
私がそういうとミカさんは少し気まずそうにして
『ごめんナギちゃん。入学式、間に合わなかった』
と目を逸らし答えました。
私は入学式に参加できなかったミカさんを怒るべきだったのですが、それよりもミカさんが無事だったことへの安心の方が勝りました。
『そんなことどうでもいいんです!ミカさんが…ミカが無事でよかった…』
私はミカさんに抱きつきながらそう言いました。
その後、トリニティに入学式を無断欠席した理由を述べいろいろ手続きを終え、帰る頃には夕暮れだった、という覚えがあります。
三日後、ミカさんからお茶のお誘いを受けたので(珍しいですね)と思いながらミカさんの家へ向かうと何やら上機嫌のミカさんが椅子に座っていました。
「ナギちゃん!ナギちゃん!ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
ミカさんのテンションが高いのはいつも通りなのですが、流石に今のような機嫌の良さは今まででもあまり見かけなかったので何が来るのかと少し身構えました。
そんな私に対し、ミカさんが言ったのは、
「ナギちゃん!私、お友達ができたの!」
「お友達…?」
一瞬耳を疑いました。ミカさんがご友人ができたからと言ってそこまで上機嫌になることはこれまでなかったからです。
「ちなみに…ミカさんからのそのご友人の印象は…?」
私はおずおずとそう聞きました。
「えっとね…まずとっても賢いの!前、私がボロボロになって帰ってきた時があったでしょ?あの時に助けてくれたのもその子なんだよ!」
…なるほど、ミカさんのことだから少しやんちゃなご友人かと思いましたが、それとは反対の優しく正義感があるお方のようですね…
「ミカさん。私も話を聞きその方に興味がわいたのですが…名前は?」
名前を聞いた理由は二つ。
まず一つ目は、ミカさんの幼馴染として知っておきたかったと言うことと、失礼ですがトリニティにもそんなお優しい方がと意外に思ったということもあった。
「いいよ!その子の名前はね…」
「百合園セイアちゃんだよ!」
「…は?」
私は再び耳を疑いました。セイアさんといえばかの有名な"百合園家"の娘であり、とても深慮深く聡明で生真面目そして病弱、と聞いたことがあるのですが…
それよりも気になったのはセイアさんがミカさんを助けたと言うことです。
彼女にとってなにもメリットがないはずなのに知りもしない同級生を助けた。これが本当なら彼女の病弱という噂を否定することになります。そんなことを考えているうちに一つの疑惑が浮かび上がりました。
(もしや…ミカさんを利用しようとしている…?)
彼女は思慮深い。つまりミカさんを助けたというのも何か理由があるということです。
「ミカさん。セイアさんが助けてくれた時に何かおっしゃっていましたか?」
私がそう聞くとミカさんは少しうっとりとした顔でこう言いました。
「セイアちゃんはね…私を助けたかったからって言ってたよ!」
(なんですか、そのアニメみたいなセリフは!?)
私は心の中でツッコミを入れました。
そんな私の表情を見ていたのかミカさんは怒ったような顔で
「…あ!もしかして、セイアちゃんのこと怪しんでるでしょ!」
と言いました。
「いえ、そんなことは…」
ミカさんとは長い付き合いですし、私の思っていることもなんとなく分かっているのかもしれません。
「じゃあ! 明日一緒にセイアちゃんの家行こ!百聞は一見に如かずだよ!」
ミカさんの提案に乗ろうか数秒考えましたが、結局
「わかりました」
と了承してしまいました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして翌日、予定通りミカさんの家で待ち合わせ、セイアさんの家の前まできたのですが…
(…なぜ扉に釘が打たれて)
私の目の前に映ったのは釘が大量に打たれている扉でした。
「ミカさん、これは…」
「ああ、これ?私が一回壊したの、この扉。」
「は?」
昨日から耳を疑う物事ばかりが起こるのですが…扉をこわす?ミカさんはゴリラか何かなんですか?そもそも、セイアさんは大丈夫なんですか…
私が戸惑っているとミカさんはセイアさんのインターホンを押し、
「セイアちゃーん!いる?」
と言いました。
すると家の中で、何やら椅子から転げ落ちるような音が聞こえたのですが、気のせいでしょうか…
その後ミカさんはセイアさんの許可も無しに扉を開けようとドアノブに手を添えましたが、
「あれ?開かない?」
と戸惑っていました。いやいや、扉はいつでも開く物ではないんですよ。普通鍵がかかって…聞いてないですよね。
「…ミカさん。セイアさんは体調不良なのでは?」
そもそも、インターホンを鳴らしても誰も出ないのですから寝ているとかそうは考えないのですか?
「うん…でも、多分違うよ。セイアちゃんは結構居留守を使うタイプだと思うから」
「居留守にタイプとかあるんですか!?」
私がツッコむ間に、ミカさんは準備運動を始めました。
「ミカさん……何を……?」
「こういうこと、あんまりしたくないんだけど……」
そう言って、ジャンプをして窓に張り付きました。
「!?」
想像の斜め上を行く行動に呆然と見ていると、
ほんの一瞬、カーテンが揺れました。
(本当に……居留守……?)
ミカさんは次は何をするんだろうと緊張しながら見守っていると、
「これ以上無視するなら、この窓壊すよ?」
「!?」
ミカさんが急にセイアさんを脅し始めました。
すると、玄関が勢いよく開き、
「分かったミカ。一緒に登校しよう」
セイアさんが出てきました。
(……どういう状況なんです、これ……?)
私はあまりの情報量の多さにただ困惑していた。
TS転生セイア
扉をミカに破壊された不遇枠。"僕"はブラックが好きだった。
聖園ミカ
もうダメかと思っていたところに助けに来てくれたセイアには感謝と共に好意を抱いている。
絆レベルで表すなら30〜40。
桐藤ナギサ
ミカが急に奇行に走り出すのでただの幼馴染と思えなくなってきた。
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