クラマの服は白カネキが着ているものを想像してください。
それが一番しっくりくると思うんで。
クラマは高校生と呼ばれる者たちと同じ年齢になった。それはクラマだけではなく、黒歌と白音も同様だ。
学年で言うなら、クラマが高校二年、黒歌が高校三年、白音が高校一年だ。あくまでも年齢のことであり、三人は学校には通っていない。というよりも、通う気がないのだ。
クラマはのんびりオーフィスと過ごしたい。黒歌はクラマを眺めたり、触ったり、抱きしめたり、添い寝したり、愛でたい。白音はそんな皆と一緒にいたいのだ。そういうわけで三人は学校に通っていない。
そんな大人の一歩手前になったクラマたちが何をしているかというと、模擬戦をしていた。現在模擬戦をしているのはクラマと黒歌だ。
この模擬戦は一種の日課であり、目的は黒歌と白音の戦闘能力を上げるだめである。
クラマとオーフィスに関しては問題ない。クラマは数年前に魔王の『
だが黒歌と白音はどうだろうか?
黒歌は白音をかばっていたとはいえ、クラマにブサイクと言われた最底辺の上級悪魔に防戦一方だった。白音に関しては言うまでもない。その最底辺の上級悪魔の下僕にすら勝てない。話にならないのだ。
クラマとオーフィスが一緒に出掛けた時、黒歌と白音は自分で自分の身を守らなければならない。だが今のままでは最底辺の上級悪魔にすらギリギリの勝負になる。ならどうするか? 修行だ。鍛錬だ。己を鍛えるのだ。
運が良いことに、黒歌も白音も仙術と相性が良い。黒歌は既に少しだけだが仙術を使うことができる。ということで二人は仙術を身に着け磨くことにした。だが仙術を使えるだけでは仕方がない。実戦経験を積んで、戦闘に慣れなければならない。
そういった経緯があり、クラマと黒歌は模擬戦をしているのだ。
この模擬戦でクラマは一切
まず筋力が違う。いくら黒歌が猫又ならクラマは
つまりどういうことかというと―――
「………ふん」
「にゃあぁぁぁっ!!」
―――クラマに黒歌は敵わないということだ。
背後から奇襲をかける黒歌だったが、見抜かれており、裏拳をくらっていた。クラマは裏拳をプレゼントするだけにとどまらず、続けて回し蹴りもプレゼントした。それを辛うじて右腕で防御する黒歌。だが踏ん張ることができず吹っ飛ばされた。
「はぁ………」
黒歌が吹き飛んでいった方を見ながらため息を吐くクラマ。表情心なしか笑っているように見えた。
ゆっくり黒歌が吹っ飛んでいった方へ歩く。先ほどの一撃で黒歌がダウンしたとは限らないので、警戒をしているのだ。だがその警戒も虚しく、黒歌は地面に座り込んで脇腹をさすっていた。
「にゃはは………防御しきれなかったにゃん」
「まだまだ甘い。防御しただけで安心するな。タイミングを合わせて腕を引け。そうすれば更に衝撃が和らぐ」
「むー………少しは成長したって褒めてほしいにゃん」
「褒めたら調子に乗るだろ?」
にゃはは―――と笑いながら目を逸らす黒歌。それを見て苦笑いをするクラマ。
クラマは右手を差し出し、黒歌がそれを握る。腕を引いて黒歌を立たせると、二人はオーフィスと白音が待っている家へ向かって歩き出した。
小屋ではなく家。さすがにクラマたちも大きくなったので、小屋から家に引っ越したのだ。家を買うときに戸籍やら何やら面倒なことはすべて黒歌が催眠をかけたので問題はない。
水は井戸水、電気は太陽光発電、ガスは魔力で補っているので、ライフラインは完全に独立している。そのおかげで後から金を払う必要もない。
「それにしても、あんなにかわいかったクラマがこんなクールなイケメンさんになっちゃうとわね」
「………文句があるのか?」
「ありませーん♪ これはこれで好きにゃん。むしろ今のクラマの見た目ならクールな方がいいにゃん」
そう言いながらクラマに抱き付く黒歌。クラマは特に反応せず、そのまま歩く。
黒歌も言ったように、クラマはここ数年で大分印象が変わった。
前は無邪気で子供っぽい口調だった。さらに幼い容姿も相まって、ショタコンのお姉さんたちをキャーキャー言わせていた。
だが今は口調が固くなり、纏っている雰囲気も大人っぽくなっている。容姿は幼いころから見え隠れしていたイケメンの素質が見事、花開いた。結論を言えば、今のクラマは黒歌が言ったようにクールなイケメンだ。………本人に全くその自覚はないが。というよりもどうでも良いのかもしれない。
黒歌も、ただでさえ同世代と比べれば大きかった胸が大きくなり、腰は鍛錬のおかげかキッチリしまっている。ナイスバディに磨きがかかっていた。
家に戻ったクラマはシャワーを浴びて着替えていた。ただその服は先ほどまで着ていたものと同じ、ピッチリとした黒いアンダーシャツに同じくピッチリとした黒いロングタイツ。その上に黒いフード付きの半袖のパーカーと黒いハーフパンツを身に着けている。
冷蔵庫から水を取り出して手に持ち、ソファに座った。そしてペットボトルのキャップを外して一口。ちょうどそのタイミングでオーフィスがリビングにやってきた。
「クラマ、お疲れ」
「あぁ」
「どうだった?」
「まぁまぁ」
「そう」
クラマの返答を聞いたオーフィスはそのままクラマの膝の上に座った。クラマはそれを受け入れ、無表情だった顔に少し綻びが生じた。
クラマはオーフィスに甘い。これでもかというくらいに甘い。オーフィスというよりも身内に甘いのかもしれない。黒歌からのスキンシップという名のセクハラ―――もとい抱き付きも受け入れるし、白音に誘われれば喫茶店などにも付き添う。それだけ大切にしているのだろう。
クラマとオーフィスがテレビを見ながらまどろんでいると、それを妨害する者が現れた。黒歌だ。
「オーフィスばっかりじゃなくて私もかまってほしいにゃん」
そう言いながらクラマの背後から抱き付き、胸の前で腕をクロスさせる。抱き付かれたクラマは無表情に戻り、オーフィスの頭をなで始めた。オーフィスはそれを甘んじでそれを受け入れる。心なしか嬉しそうだ。
「ふふふ」
「むぅぅぅ………ずるいにゃん!! オーフィスばっかずるいにゃん!!」
黒歌に向かってうらやましいだろ、と言わんばかりの表情をするオーフィス。黒歌はそれを見て悔しそうに歯噛みする。そんな二人をみて表情を綻ばせるクラマ。なんだかんだ言って楽しそうだ。
黒歌は抱き付くのをやめてクラマの隣に座る。そしてクラマにもたれかかり、頭をクラマの肩に乗せる。
「クラマはもう少し私にかまうべきにゃん」
「今でも充分かまってる」
「もっとアダルティなこともするべきにゃん」
「例えば?」
「もちろんナニかにゃん!!」
黒歌がいうナニが一体何なのかは想像に任せよう。まぁナニということだ。
目をキラキラさせている黒歌をスルーするクラマ。そのクラマに撫でられて表情を綻ばせているオーフィス。だがそれは終わりを告げた。
「クラマ、また来た」
「あぁ………はぐれだ」
オーフィスの腋に手を差し込んで抱っこして、そのまま黒歌の反対に座らせる。そして立ち上がってテーブルに置いてある狐面をかぶる。この狐面はクラマが東京にいた時から世話になってきた相棒だ。
素性を隠し、日常を守る大切な
狐面を被ったクラマの雰囲気は、鋭くて冷たい。触れたら最後、喰らいつくされる―――そんなことを思わせるほど冷たい。
狐面は一種のスイッチだ。これから戦闘を―――捕食をするという。だから纏っている雰囲気を変わるのだ。
†††
クラマがやってきたのは廃工場。住んでいる家からそれなりに近い。だから被害が来る前に始末しようとしているのだ。
―――ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタ
異様な笑い声が工場内に響いた。人間では発せない異様な笑い声が。そんな笑い声を聞いてもクラマは一切動揺を見せない。慣れているのだ。
暗がりから姿をゆっくり現したのは上半身裸の女。だが下半身は人間の形をしていない。獣の足が四本生えている。さらに尾も生えており、尾は独立いて動いている。そして両手には槍らしき武器を一本ずつ所持している。
「ブサイクだ………黒歌を拾った時の悪魔といい勝負だな」
クラマがはぐれ悪魔を見ながら言う。
確かに、人間の上半身と獣の下半身―――こんなにアンバランスなものはないだろう。それに加えて雰囲気が禍々しいときた。
「いくぞブサイク。お前は黙って俺に喰らわれろ」
クラマはそう言うと、
「こざかしいぃぃぃ!! ガキがぁぁぁ!!」
はぐれ悪魔をそう吠えながらクラマに向かって走り出す。それに対してクラマは一歩も動かない。
クラマとはぐれ悪魔が接触する―――その瞬間、クラマは跳んだ。一瞬クラマの姿を見失うはぐれ悪魔。それが命取りとなった。
クルクルと全宙を連続でしながら落下するクラマ。その先にははぐれ悪魔の背中がある。
今のクラマの状態を表すならチェーンソー。クラマがエンジンで、
「グアアァァァァァァァァァァッ!?」
はぐれ悪魔が叫ぶ。だがクラマは全く気にも留めず追撃を入れる。上半身と下半身が分かれているので、まずは上半身から。理由は脳があるからだ。
どんな生物でも脳を潰せば大抵死ぬ。例外もあるかもしれないが、大抵は死ぬ。
残っている身体に
はぐれ悪魔を食らいつくしたのを確認したクラマは、廃工場から出ようとした。―――が、それを妨げるものが現れた。
「はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅しに来たわ」
廃工場内に響く少女の声。その声の主は紅髪ロングで、黒歌にも負けず劣らないポテンシャルの持ち主だった。
紅髪の少女がクラマを見ながら言う。
「あなたがバイサーかしら?」
クラマはその問いかけに反応しない。会話する必要がないと考えたのだ。だがその考えはすぐに変わった。
―――バシュン!!
そんな音が聞こえたと思ったら、クラマの横数センチのところに魔力弾が撃ち込まれた。もちろん撃ち込んだ張本人は目の前にいる紅髪の少女。そしてその紅髪の少女の背後には更に数人いた。いつの間に増えていた。
「もう一度だけ聞くわ。あなたがバイサーかしら?」
「………違う」
紅髪の少女の少女の問いにクラマはやれやれ、といった調子で答える。
「ここで何をしていたのかしら?」
「言う必要があるのか?」
「えぇ。ここ駒王を魔王様から任されているの。勝手をされると困るのよ」
紅髪の少女がそう言っているが、クラマは全く聞いていない。クラマの頭にあるのはこの状況をどう切り抜けるかのみ。
いっそのこと全員喰らってやろうか―――そんな考えが頭に浮かぶが、それはまずいと切り捨てる。
紅髪の少女の「魔王」という単語に引っかかったのだ。
数年前に会った魔王の『
―――と、ここでクラマは黒歌にもらった転移魔方陣が描かれた御札の存在を思い出す。この御札は、自らの血を擦り付けることによって、家まで転移することのできる便利アイテムだ。
懐に手を突っ込み、御札を探すクラマ。それを見て警戒をする紅髪の少女とその取り巻き。だがその警戒は無意味だ。
クラマは親指を噛んで血を流し、御札に擦り付けた。すると足元に漆黒の魔法陣が展開された。
魔法陣の光が強くなるのと同時に、クラマの姿は廃工場から消えていった。
「あいつ何者………?」
廃工場には紅髪の少女の言葉が響いた。
微妙に原作入りしている次第です。