現代医薬品モドキしか作らない異世界薬師   作:アラ

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第1話

 

「こんな小さな豆みたいなモンで本当に効くのか?」

 

『まぁ、物は試しで飲んでみてください。今回のお代は要りませんから』

 

痛みで顔を歪めながらも、それでも尚疑わしそうな目で僕が作った痛み止めを眺める大柄で強面な男こと、ファッダムおじさんにそう念押しして勧める。

 

少しするとそれが決め手となったのか。それとも痛みが我慢の限界を越したのかは分からないけど、恐る恐る薬を口に押し込んだ。

 

その後、僕は水が入ったコップを渡してそれを流し込ませる。

 

『少し、いや大体三十分ぐらいで効果が出て痛みが引いてくる筈です』

 

「本当か?」

 

『一応僕自身でも、試してみたので副作用は無い筈です。効果もちゃんと出ていたし、恐らく問題は無いと思いますが個人差は出ると思うのでそこがちょっとって感じですね』

 

それから少しして、ファッダムおじさんと別れた。

 

後日、あれから少しして痛みが嘘の様に消えたらしい。が、また痛みが来ても良い様に薬が欲しいとの事で、オーバードーズだけは辞めて欲しいと入念に伝えてお試しで三日分の薬を渡した。

 

何かあったらすぐに来る事、そして良かったら他の友達や知り合いが同じ様に困っていたらウチの薬を勧めて欲しい事を伝えた。

 

『新薬だったから心配な点もあったけど、副作用も特に無いみたいだし成功って言っても良いのかな』

 

独り言でそう呟いた後、先程のファッダムおじさんの言葉を思い出す。

 

「アンタのお陰で助かった。アンタは命の恩人だ」

 

そう言われて握られた手の体温までも、蘇って来た。ちょっと大袈裟な気もするけど、この世界ではそうでは無いのを僕は知っていた。

 

この世界には、怪我をした時の回復の手段が大きく数えて三個ある。

 

一つ、教会の聖女様に頼んで祈って貰う。

 

いわば聖なる力で傷を癒す。前世っぽく言えば"痛いの痛いの飛んでけー"が有言実行されると言えば伝わるかな?効果は絶大で傷は癒えて失った腕も生えるぐらい強い力らしいけど。それだけに、費用は高額で予約も中々取れない。それを聞いて聖女様の疲れは一体誰が癒してくれるんだろうねって思ったのを覚えてる。

 

二つ目、回復薬(ポーション)を使う。

 

これが基本的な回復方法だと思う。さっき言った聖女パワーは、主に貴族達が協会に多く献金して貰える見返りで、庶民には手が出せない。

 

だから、回復薬で傷を癒すんだけど。一般的に流通してるのは、新人の回復薬師が作った粗悪品や失敗作。良くて普通の回復薬だから効果はそれ程期待が出来ない。後遺症が残ったりするのはまだ良い方で、酷い時は以前より悪化するケースもあるみたいだ。その割に値段が高く付くんだけど、それしか方法は無いから仕方無く皆買うらしい。

 

で、最後の三個目。違法な店で高い等級の回復薬を買う。

 

たまに掘り出し物でとんでもなく安いのに、高い等級の回復薬がブラックマーケットとかで流れる事がある。そもそも、ブラックマーケットの利用がこの世界では禁止されているんだけど命が助かれば良いって事で利用は絶えないらしい。結構色々安いから僕もつい買いそうになるんだけど、その度に駄目だと思い直している。

 

番外編として、回復魔法を使える人に頼むって方法もあるけど……これもあまりよろしく無い。何が?って、全部が。一回の治療費が前世で言えばウン百万円ぐらい掛かる。風邪とかでだよ?どんな名医だよって思うけど、それでも完璧に完治するとは限らないのだから恐ろしい。

 

とまぁ、聞いての通り。この世界にはロクな回復手段が無い。だから、僕は回復薬師として皆が安価で安心して使えてしかも高性能な薬を作りたいと思った。この世界に転生した時から、そんな事をずっと考えながら思った事がある。

 

前世の現代医薬品達がこの世界で作れたら便利だろうなって。

 

僕の理想の"早く聞いてすぐ治る"はきっと限りなく現代医薬品に近い。だから、そう出来たら良いなって思ってその為だけに十年程研究をした。

 

その結果、この世界でも現代医薬品モドキを作る事に成功した……んだけど僕は致命的なミスをしていた。

 

さっきも言った通り、この世界の回復手段の殆どはポーションだ。僕は現代医薬品を作るのに専念しすぎてポーションの作り方すら知らない。と言うか、ポーションって回復薬だよね?

 

そもそもどう言う成分で、どうやって回復するのか?何も知らない未開の地で、そんなリスクを背負いたく無かった。だから、自分が安心出来る現代医薬品を作る事にしたんだ。

 

と言っても作れるのは、自己流で化学式も何も無い。オリジナル現代医薬品モドキだけだ。だから、いっそそれを突き詰めようと思ってる。問題はそんな人間が作る薬が売れるかどうかだけどそれは置いとこう。

 

きっと効果が広まれば多くの人に飲んで貰えるだろうけど、今の所は数少ない常連さん達で成り立ってる。それはそれで、知る人ぞ知る名店みたいでカッコ良くて良いかもねとも思うけど、生きていく為にお金は出来れば沢山欲しい。

 

「あの、いつものをお願いします」

 

カウンターでぼんやりとそんな事を考えていると誰かが呼ぶ声が聞こえた。それは最近来る様になった小さなお客様の声だった。

 

マイ●リー(睡眠薬)ですね、如何ですか?最近少しは眠れますか?』

 

自然な笑みを意識的に作り、彼女の目線に合わせて僕はそう言った。

 

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