劇場版クレヨンしんちゃんのお助けヒーロー   作:eeeeeeeei

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「呼び出した者の願いを叶える魔人。この世の理から完全に逸脱したモノ。アレこそが、『ブリブリ王国の秘宝』だよ」

 

 そう。

 アレこそが止めるべき『逸脱』の力の塊。

 タイムパトロールによって各時空の『逸脱者』は日々捉えているのだが、稀にこう言った不発弾のようなモノが存在している。

 世界観にそぐわない歪な力や能力を持った、逸脱者が生み出した道具『逸物(いちもつ)』もまた、我々が抑えるべき事案である。

 逸物の本来の意味とは違うが、現代でこの言葉を使うものはいないとのことで、わかりやすいと名付けられたそうだ。

 読みからして別の意味で捉えられんこともないが、まぁそう言うものだと思ってくれとしか言えない。

 ちなみにオレは気にしていない。

 リングなんかがよく照れて言う姿もたまらないし、改めて良い職場だと実感するくらいだ。

 

 

「ブリブリ王国の秘宝…願いを叶える魔人…?」

 

 ルルがそう呟くと、ひろしさんとみさえさんはブフッと吹き出した。

 

「あーはっはっはっは!そんなモノが本当にあるわけないだろ!」

「そーよ。いくらあなた達の言うことでも、それは流石に嘘よー!」

 

 ルルは少し恥ずかしそうにオレをみているが、本当なのだから仕方がない。

 しかも過去最大にヤバい代物でもある。

 

「オレもそう思いますよ。冗談だったら良かったんですけどね。でも、人智を超えた超常現象のような体験、お二人とも経験ないですか?」

 

 ピタリと2人は笑う事をやめ、ルルはえっ?と声を漏らす。

 そしてオレは、

 

 確信した。

 

「それって、ハイレグ騒動の時の…」

 

 なんて、みさえさんが呟くもんだけど、今は話題を変えなくては。

 

「なんて!誰にでも起こりうると思うんですよね。ニュースなんかで報道されてる事、他人事だって思うでしょ?オレもですけど、いざ我が身に起きた時にまさかと思う自体がまさに今のこれ!さぁ、スンノケシ王子もお子さんももう少し!出発シンコー!!」

 

 なかば強引にルルを追い抜かすと先頭を歩き、光が漏れている場所へと歩みを進めた。

 これは、あの時空と同じ時をなのだと、確信的な気持ちを持ちながら。

 

 

──

 

 

「ほれ。いきたいんだろ?」

 

 王子の姿を見つけた私に師匠はそう言った。

 次の瞬間、尋常ではないスピードで飛び出した師匠。

 王子としんのすけくんのそばにいた2人のオカマを一瞬で無力化し、今はホワイトスネーク団の首領であるアナコンダへと拳銃を突きつけた。

 

「ちょっと!!痛いじゃないっ!」

「そーよそーよ!あたし達はこの子供達の味方だっつーのっ!」

 

 スキンヘッドに帽子を被っていた、大柄のニーナと言うオカマは足払いで転がすとすぐさまその腹に足を乗せ、長髪に細身なオカマのサリーはその首を後ろから掴み、力のみで無理やりその膝をつかせている。

 

 相変わらず、途轍もないスピードに彼との差はまだまだだと思った。

 

「そりゃあごめん。もっと早く言えよ」

「「あっさり信じんのかいっ!」」

 

 サリーの言葉にすぐさま拘束を解いたのは、私もツッコんでいる2人のオカマ同様にどうかと思うが、彼は私へと目配せをしている。

 そして、同時に再会の時を周りを気にせずできることに感謝する。

 私はその優しさに甘えて、素直に駆け出した。

 

「王子!!!」

「「しんのすけ〜!!」」

 

 私が駆け出した事をきっかけに、ひろしさんとみさえさんも、自身の息子の元へと走り出していた。

 

「ルル!」

「王子!」

 

 不安だったであろう。

 怖かったろう。

 私が来たからにはもう安心だと、感無量で王子を抱きしめる。

 

「おねいさ〜ん」

 

 それも私のお尻に抱きつかれている感触で少し我へと帰ってしまった。

 

──ポカン

 

 と殴る音が聞こえたら、みさえさんは泣きながらしんのすけくんの頭を両の手でグリグリと痛めつけており、ひろしさんも涙を流して再会を喜んでいるようだった。

 

「ルル、よくここに辿り着けたね。いったいどうやってここへ?」

「えぇ、それは──」

 

 ここまで案内してくれた、師匠を紹介しようと思ったところで、

 

「あんただれ?」

 

 しんのすけくんは師匠に向かって指を刺していた。

 ぽりぽりと出会った時のように右手で頬をかく師匠の顔は、微笑んでいた。

 

「オレはー、まぁー、アレ。ほら。──お助けヒーローだゾ」

「ほおーほおーほおー。オラたちを助けに来たの?」

「そーだぞー。正確には、あそこのおねーさんと、ついでに世界を助けに来たんだけどね」

「おぉ〜!師匠はわかるやつだな〜」

 

 はっはっはと笑いながらしんのすけくんの頭を撫でる師匠。

 そこで、私の服の裾を引っ張られていることに気づいた。

 

「ルル、それであの人は、本当は誰なの?」

 

 よほどしんのすけくんと打ち解けたのか、しんのすけくんが一瞬で懐いた師匠に、王子は警戒を抱く様子もない。

 王子という立場上、そして誘拐されていたというのに。

 

 私は王子に師匠との出会いと、ここまでの道中の話をすると師匠と挨拶をしていた。

 

「ハブ!!」

 

 野太い男の声が聞こえる。

 ホワイトスネーク団の首領 アナコンダのようだ。

 彼が手にし、呼び出した魔人への願い事はしんのすけくんの『こみやのえっちゃんのサインが欲しい』に先を越され、彼の願いは叶わなかったらしい。

 

「ハブ…!コイツらを皆殺しにしろ!!」

 

 ハブ…私を倒した、あの男。

 彼はてっきりアナコンダの隣にいるのだと思ったが、予想外にも私たちよりも下のフロアから現れた。

 

「自分でやるんだな」

 

 その手に黒い壺を持った彼はアナコンダへと言い放つ。

 

「お前のバカさ加減には愛想がつきたよ。ミスターアナコンダ」

「ぐぅぅ、どう言うことだ…?」

 

 アナコンダは可愛がっている自身の首に巻かれた白蛇と共に、自身の部下であるハブを睨みつけ、誰に向かって言っているのかと、壺を寄越せとその声を荒げた。

 

「貴様のヘビと、葉巻の臭いが嫌いだ。

 そして、何よりも耐え難いのはおまえと言う醜悪な存在!

 そのものなのだ。

 少しでも誇りがあるのならば、恥じて死ね」

 

 ハブはそう言い放ち、こちらなど意に介さぬ様子で壺を地面へと置いている。

 

 ここに入る為の鍵が、ソックリな王子としんのすけくんの、2人だったらしく、ぐぬぬと呻き声をあげるアナコンダを尻目に、ハブはそれぞれ二対のこの遺跡で、壺も二対あるのは当然だろうと言い放つと、床に置いた壺に向かって両の手を合わせた。

 

 

 

 そして、踊り出した。

 手を振り、腰を振り、クネクネとし、四つん這いになり、踊る。

 独特のリズムで一通り踊るとまた、静かにその両の手を合わせた。

 

 そして、この世の現象とは思えない光景が目の前に広がる。

 

 私たちは突然のことに圧倒され、それをただただ呆然と眺めていた。

 

 

──

 

 

 ハブの踊りの後、置かれていた壺が揺れ動く。

 その踊りこそが、ブリブリ魔人を呼び出す為のブリブリの舞であり、儀式。

 

 壺から螺旋状に煙が吹き出す。

 なぜだか密度と重量を感じるその煙はだんだんと形を作っていく。

 そして、それは巨大な二足歩行の、ブタの魔人となった。

 

『やってきた、願いをひとつだけ叶えよう』

 

 しんのすけたちにとってみるのは2度目だが、現れた魔人は先程の白いブタとは違い、黒いブタだった。

 先程の白いブタの魔人は、しんのすけの願いのために、遥か日本まで文字通り飛び出して行っている。

 

 一度見ていた分、願いを叶えるのは早い者勝ち。

 我先にと、ハブ、アナコンダ、ついでにオカマであるニーナとサリー、しんのすけ、スンノケシ、更についでとばかりにひろしとみさえとルルも自身の願いを我先にと口にする。

 

 そんな様子を、真剣な表情で見つめる男。

 彼はこの先に起こる事をわかっている。

 理解している。

 イレギュラーが起きなければ良し。

 ハッピーエンドが待っているのだ。

 だが、あの時、ディスプレイに反応があったのは、そこから溢れる『逸物』の力。

 

 

「あっ!アレはなんだっ!!」

 

 バッと指を刺して叫んだアナコンダは、みんなが思わずそちらを向いた瞬間に願いを叶えてしまった。

 

「魔人よ!お前の力を全て私にくれ!全てだ!!」

『承知した』

 

 見守る先で、『逸物』の力をその身に宿した人間、もはや『逸脱者』となった者が誕生した。

 

 『逸脱者』と違い、『逸物』を取り除くのは難しい。

 なぜなら、生物であればそれを排除すれば良いが、『物』に限っては、破壊不能であったり、その『逸物』自体が使用者を求める場合がある。

 それは限定的な条件があったり、再使用が何度でも可能であったりと様々で、完全な排除が困難な場合が多い。

 そのため、『逸物』の対応は基本的には破壊、破壊できない場合は『使用者』ごと対応する場合が多い。

 基本的に、後天的に逸脱するものは『悪』であり『善なる逸脱者』は先天的、もしくは『悪』が生まれた後に生まれる事が、これまででわかっていた。

 物語は、佳境まで進めないとその軋轢は、いつかどこかで確実に起こる。

 これが、男がこの時まで待っていた理由のひとつ目。

 

今回は(・・・)、手に負えるかが、問題だな」

 

 男はパキパキと指を鳴らして、戦闘の準備を整えた。

 

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