劇場版クレヨンしんちゃんのお助けヒーロー   作:eeeeeeeei

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∞──∞──∞

 

 

 

「ハブ!この私に死ねだと?貴様が死ねィ!!!」

 

 アナコンダはブリブリ魔人の、『ブリブリ王国の秘宝』の力の全てを手に入れて完全な『逸脱者』となった。

 

「と、言いたいところなのだが、貴様にも仕事があるからな────私の奴隷となれ!!」

 

 そう叫ぶと、黒い光の玉はハブへと吸い込まれ、ハブは先程まで罵倒していた相手に、まるで人形のようにかしずいた。

 洗脳すらできる力。

 願いを叶える、能力限界の調査はできてはいないが制限がないと考えても良いかもしれない。

 

【私に力を】

【世界中の人間が平伏すような力を】

 

 これらのアナコンダの願いは、具体性がないため『どれほどの?』と魔神に聞き返され、しんのすけは先に願いを叶えることができた。

【ニュースステーションのこみやのえっちゃんのサインが欲しい】

 という、ものすごく具体的な願いを。

 つまり、具体性のある願いであれば【不老不死】【自在に時を超え、遡る力】なんてのも叶う可能性がある。

 

 この『逸物』は、調査自体が危険でしかない。

 

「私が、アナコンダを…!」

「ルル!やめとけ。あれは『逸物』に魅入られた。しかも特級だ」

 

「いちもつ…?」

「こんな時に何言ってんだアンタ…」

 

 野原夫妻と、オカマ達は呆れた顔を浮かべている。

 

「オラのだって!特級のイチモツよぉ〜〜ほぉ〜ら」

 

──ポカーーーン

 

「このおバカ!」

 

 沈黙の後、みさえはしんのすけの頭をポカリと殴り、しんのすけは特級イチモツであるぞーさんを収めさせられた。

 ルルは少し赤い顔をして言い辛そうにしながらも、自らが師事する男の裾を引っ張った。

 

「師匠、あの、その『イチモツ』って…あの私聞き覚えが」

「……それって、ドッチの意味?」

 

 シリアスなシーンは一瞬なくなるも、すぐに現状に引き戻される。

 

「ハブ、コイツらを皆殺しにしろっ!」

「かしこまりました。アナコンダ様」

 

 殺すなら自分を。と、子を守る親としてみさえが、次いでひろしがしんのすけを守るように前へと立ち塞がる。

 

「ここで、倒させてもらう」

「師匠!!」

 

 男は一瞬で魔人となったアナコンダの眼前へ迫るとその腹へと拳をめり込ませていた。

 

「グッゥゥ!!この私の力を、ハブの10倍のモノへ!!」

「やっぱ厳しいか」

 

 アナコンダは自身で自身の願いを叶え、ただでさえ逸脱しかけているハブよりも、強大な敵となる。

 

 その現実に、ルルは拳を握りしめる。

 

「ルルは、リベンジ決めるだろ?」

「えぇ。師匠は、アレを相手などできるんですか?」

 

 男はニヤリと笑った。

 

「もちろん。オレはルルのセンセーだからな」

 

 

──

 

 

 ルルはハブとの再戦の前に、戦装束へと着替えていた。

 際どいスリットの入った、チャイナドレスのような功夫着。

 この準備を待ってくれるハブはまだある程度元の人格に引っ張られているかもしれない。

 

「それが死装束か。今回は、殺すぞ」

「こっちも、今回はハンデはなしよ」

 

 ハブの拳、膝、足から繰り出される攻撃を全て円の形で受け流す。

 正面をきっての力のぶつかり合いは功夫にあらず。

 力の流れを制御する事こそが極意。

 そして、人間離れしたスピードを誇る男相手に修行を積んだルルはハブの攻撃を全て受け流し、反撃を加えていた。

 今もまた、豪快な回し蹴りがハブの膝に炸裂し折れる。

 

「くっ!」

 

 そして、小柄なルルが蹴れる高さまで降りてきた頭。

 その顔の鼻目掛けて、ルルは思いっきり蹴りぬいた。

 

「ぐぁぁぁぁっ!!!」

 

「頭も鼻も高すぎるんじゃなくて?ミスター」 

 

 ヒューヒューという声援が主に野原家の男性陣から向けられる。

 

「く…ぐぅ……ぐぅあぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 突然の叫び声に、全員の視線がアナコンダへと向く。

 そして、その身体はムクムクと大きくなっていく。

 なんだなんだと騒ぐそれぞれだが、当のアナコンダは呻きながらも男に蹴り飛ばされて、塔から落ちていってしまった。

 そして、そのアナコンダを追って飛び込んだ男が一人。

 

「あの人…なんで!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 王子の疑問と、みさえの悲鳴が木霊するなか、ハブは既にその身を起こしていた。

 

「貴様は、殺す…そして、全員をなぶり殺してやる」

 

 ハブは白スーツを破り捨てた。

 そんなハブを睨みながらもルルは再度構えたところで、ジャコンとおよそ人から聞こえる音ではない音が聞こえると、白スーツのジャケットを破り捨てたハブのその方腕には鋼鉄製の爪のような物が装着されていた。

 

 2人のぶつかり合いは苛烈を極めるも、ルルの方が優勢であった。

 

「今度こそ…!殺す!!」

 

 そして、ハブの大振りをその体格を活かし躱したルルは、その拳を何度もハブへと打ち付けながらも叫ぶ。

 

「殺す殺すって!気安く言わないでよ!──子供が、見てるでしょおがっ!!」

 

 殴り飛ばされ沈黙するハブを尻目に、巨大なブタ魔人と化したアナコンダと、その身を駆け上がる男の姿に全員が息を呑む。

 スンノケシ王子はそんな状況に、この騒動を終わらせるには、この遺跡と『ブリブリ王国の秘宝』全てを終わらせる伝承になぞるしかないとしんのすけ達へと話していた。

 

「あ、あの野郎まだ…!」

「しっつこいわねぇーホント」

 

 再び立ちあがろうとしているハブに向けて、ひろしとニーナは声を荒げるも、ルルは再度構えた。

 

「王子たちは行ってください。ここは私が」

 

 そんなハブはブツブツと何かを呟きながらも、もう片方の手にも鋼鉄の爪が装着している。

 

「チクショーーー!!サラリーマンの底力、舐めんなよ!!」

「主婦もね!!」

「幼稚園児もだゾ!!」

「お…王子も…です」

 

 流れにノったスンノケシは少し照れくさそうにしながらもルルへと目配せをすれば、ルルは笑顔を浮かべて軽くうなづくとハブを見据え、野原一家と王子の4人は遺跡を崩壊させるべく、その頂上へと伸びる階段を駆け上がっていく。

 

「さて、と。あの人は大丈夫でしょう。けど、あなたを片付けて、私も師匠の元に行きたいの。どいてくださる?」

 

 ルルは階段を背にすると両の袖から鉄扇を取り出し、王子たちの後は追わせないとすぐにハブとの戦いを再開させた。

 

 

──

 

 

 

 なるべく弱らせておく必要がある。

 

 何度かやってみて、この『逸物』の排除方法は言い伝えによる正攻法しかない。

 だが、少しでもタイミングがづれるとすぐにでも取り返しのつかないことになる。

 そう、この事案は何度か既にやり直しが発生していた。

 

 

 

 1度目は、壺の破壊に失敗したのでアナコンダを早々に捕縛したが、ブリブリ王国内の人間が人知れずアナコンダと同様の事を行ってしまった。

 

 2度目は、歴史の修正力に任せてみようと、ルルとお近づきになった後はバレないように離れての傍観に徹したが、ブリブリ魔人となったアナコンダが世界を滅ぼそうと動き出してしまった。

 

 3度目は、ルルと行動を共にしていたら、アナコンダがこの場にいるオレ以外の人間を全員奴隷にしてしまった。

 

 4度目は、この状況まで放置し、言い伝えの通りに遺跡の崩壊にこぎつけたのだがアナコンダは予想以上にしぶとく、魔人の力を持った人間にしろと追加の願いを叶え封印から逃れた上に自分を地上へ返せの願いで解き放たれてしまった。

 

 

 そして、今回。

 

「貴様ぁ…本当に人間かぁ…!?コイツよりもガッ!?──」

「追加の願いは叶えさせないって」

 

 もう毎度だが、コイツはガチャだ。

 思いつきだろうがなんだろうが、言葉ひとつで願いを叶えてしまう。

 思いつかせないよう、戦いに集中させつつ喋らせないように徹底する必要がある。

 

 そんな事は正直簡単なんだが、それもあくまで人型であればの話。

 

 溢れる力に人の身では耐えられず、この50mはあるブタの魔人、しかも首に巻いていた白蛇はその片腕へと変貌した姿へと変わり果ててしまった。

 こうなると、本当に、厄介だ。

 

『こんな醜い姿…望んではいないいぃぃぃぃぃい!!!』

 

 鳴り響く轟音の叫びとともに、大型トラックかと思うような白蛇がなぎ払いを仕掛けてくる。

 

「うーーーん。ここ迄は、順調」

 

 その白蛇を跳躍で飛び越え、乗っかると、そのまま走り抜ける。

 ついでに、あるのかはわからないが蛇のピット器官部分に巨大な黒光りする小刀を叩きつける。

 

央鎮沈丸(おちんちんまる)/試作型」

 

 時代背景に合わせたその時々の勇者に渡す未来武器の、試作品。

 これは日本の戦国時代に合わせた小刀の形。

 桃から逞しく太い一本の枝が伸びており、その先端からは一枚の葉っぱが垂れている家紋が入っており、技術局は一度頭の中を洗った方がいいのではというセンスだが、助かりはするので使っている。

 この開発も今は第六まで進んでいたような。

 巨大化と、そして無意味に肩叩き機能しかついていないし、巨大化のサイズ調整がピーキーすぎる試作型だが、予算をかけた試作品のため硬度が高いので気に入っていた。

 

『そんなもの…いったいどこに…!?』

「あぶな!」

『へブゥーーッ!!!』

 

 普通に喋らせてしまったと焦ったじゃないか。

 おバカで助かった。

 後はこのままと時間を稼いでいたら、野原一家と王子はこの遺跡ごと海に沈める、ピタゴラスイッチを発動してくれたらしい。

 後はあのピタゴラの邪魔さえされなければ。

 

「ちょ、ちょっと!気張りなさいよ!」

「あんた、強いんでしょ!?」

 

 アナコンダの左右の肩を飛び回りながら肩と口を中心に殴りつけながらも下を見ると、え?

 

「殺す、殺す、殺すぅぅう!!!」

「くっ…こんな…」

 

 ルルがハブに負ける事は今まで一度もなかったんだが、ハブの様子がいつもと違う。

 まずい『逸脱者』になりかけてる。

 

 

 通常の人間であれば、時空間犯罪によって例えば過去を変えられた場合、未来にどれだけ異変が起きようともそれが当然の事だったと適合してしまう。

 だが、オレ達タイムパトロール隊は同じ時を繰り返し過ごしても、記憶が失う事はないし、異変が起きればそれを異常として認識できる。

 それは、ある意味でみんなが『逸脱者』であるからだ。

 

 パトロール隊のメンバーはみんな、時空間異常の被害者か、そういった事件や事故に縁のある者。

 その理由は時空間犯罪者達の起こしたタイムパラドックスによって、時空間の異常に耐性が身についてしまった者たちだからだ。

 

 つまり、『逸脱者』はタイムパラドックスに適用してしまう。

 

「そう動くと思ったよ。貴様も、こうなってしまえばただの女だ」

 

 ルルの鉄扇は折れ、その身は避けれたようだが衣服が鉄爪によって地面に縫い付けられており、額からは血が流れていた。

 ハブは、過去の記憶からルルを倒したのだ。

 『逸脱者』となって。

 

「なぜ…夢と、違う…」

 

 そして、それはルルも。

 尻を触ろうとさりげなく手を当てていた時も、今回は身体の傾け方が違ったり、そのような些細な変化は毎度違う事はあれど、全ての行動、言動も含めると異変未満とはいえ行動パターンの変化の数が多すぎた。

 

 そのせいか、ルルは毎度のように必勝のパターンに入り、ハブはそこにカウンターを入れる事ができた。

 

「くぅ…王子……せん、せい…」

 

 そして、ハブはもう片方の鉄爪をルルに向かって振り上げた。

 

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