無個性のヒーローアカデミア   作:明灯月陽

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冬のインターン

 大晦日、冬のインターンのために古瀬はホークスの事務所に向かう。

 

 この時期ホークスは、超常解放戦線への潜入を行っている。現在地や通信記録、会話内容などはすべて監視されている。

 

 古瀬が事務所に到着すると、コスチュームに着替えて待つようにと連絡が来る。事務所にサイドキックはおらず、指示に従ってしばらく待っているとホークスがやって来る。

 

「待たせて悪いね。それじゃあ早速行くよ」

 

 事件発生の報告が入る。ホークスが現場へと向かい、古瀬はその後を追う。

 

 古瀬はホークスより先んじる事こそないものの、援護に入れる程度には早く到着する。

 

「おー、速い速い」

 

 その後、二人は二三の事件を解決する。次の事件が発生するまでの間、ホークスはファンサービスを行っていた。

 

「ホークス、こっち向いて」

 

「イエーイ」

 

「ホークス、新しいサイドキックか?」

 

「違うよー」

 

 古瀬は腕を引っ張られて、ファンの前に引き出される。

 

「自己紹介してみな」

 

「インターン生のスケアクロウです。個性はありません、無個性です。ホークスの助力になるよう頑張らせていただきます」

 

 その紹介に対する賛否は半々だった。無個性であると聞いて不安視する者、それがホークスを助力すると大言を吐いていることに反感を抱く者、不安はあるがとりあえず受け入れてみる者など様々だった。

 

 その場から離れた後、ホークスが古瀬に話しかける。

 

「あんな不安を煽るような紹介しなくてもよかったんじゃない?」

 

「そうですね。少し失敗しました」

 

 ふーん、とホークスは読めない表情で相槌を打つ。

 

「そういえば気になったんだけどさ、君って確か飛べるよね。何でさっきの事件解決の時に飛ばなかったの?」

 

 表情の読めない笑みを浮かべて、古瀬は答える。

 

「その方が無個性っぽく見えるかと思って。空を飛んでいたら、そんな個性なんだって思うかもしれないじゃないですか。できるだけ、無個性っぽく振舞いたいんです」

 

 なるほどなあ、とホークスは相槌を打つ。そして意見を聞かずに、古瀬を持ち上げて空を飛ぶ。

 

「何ですか? 飛ぶなら自分で飛べますから」

 

 古瀬は手を振りほどいて、舞空術でホークスの横に並ぶ。

 

「ほら飛べる。空は良いよ。物事を俯瞰して見られる。そうすれば君は、もっと速く動けるよ」

 

「大して変わりませんよ。地面を走るのだって、遅いわけじゃありません」

 

 実際の所どうなのか、古瀬には分からない。ヴィランの捕縛速度で言えば、飛んだ方が早い場合もあるとは思っていた。

 

「じゃあ勝負してみようか」

 

「勝負ですか?」

 

「これから起きる事件を、一度でも俺より早く解決できれば君の勝ち。負けたら、明日からは空を飛んで事件解決を行ってもらおうか」

 

 ホークスを甘く見ていたわけではない。本気かどうかよく分からないし、それほど重い罰内容でもなかったため、古瀬は承諾する。

 

「いいですよ」

 

「俺が負けたら、明日からは君が事務所を仕切っていいよ」

 

「それは遠慮しておきます」

 

 古瀬は地面に降りる。それから間もなく、事件が発生する。

 

 事件現場へと急ぐが、そこには既にホークスが到着していた。その後も何度か事件が発生するが、ホークスより先に解決することは一度もできなかった。

 

「地の利がありすぎる」

 

「それでも惜しいのはいくつかあったよ」

 

 ホークスは余裕の笑みを浮かべている。

 

 ホークスはこの地を中心に活動しているため地形を知り尽くしているのに加えて、羽を使ったマルチタスクによって様々な場所に対応できる。

 

 到着速度はともかく、事件への対応能力には大きな差があった。

 

「それじゃあ罰として、明日からは空を飛んで事件解決を行うように」

 

 付いて来るように言われて、古瀬は飛んで電波塔まで移動する。

 

「これは俺の持論だけどさ、飛べる奴は飛ぶべきだよ。縛り付けられる必要なんてない」

 

 それを聞いても、古瀬の心に特に響くことは無かった。そうなんですね、くらいに聞いている。

 

「それと、公安は君が使う異能を制限する方向で動くみたいだよ」

 

「制限、ですか」

 

「といっても君が制限されるわけじゃないけどね。それはあくまで資格を持たない人の話。公安はその異能を個性と同じ枠組みに入れて管理するつもりらしい。ヒーロー資格があれば使用は可能、その例として君を宣伝に使いたいみたいだよ」

 

「使われるだけ、ありがたいですよ」

 

「実際に施行されるのは数年先だと思うけどね」

 

 そのような会話をした後、二人は下に降りる。

 

 ホークスは用があるため、すぐに別の場所へと向かう事を古瀬に伝える。

 

「それじゃあ代役、頼んだよ」

 

「はい?」

 

「年末年始は色々と羽目を外す人が多いからね。対応は任せたよ!」

 

 そう言って、ホークスは去っていく。

 

 古瀬はその光景を呆然と見つめていた。すぐに事件発生の連絡が入る。

 

『バーで強盗事件が発生』『酔った一般人が巨大化して暴れています』『火事が発生』『乱闘が発生』『窃盗事件が発生』

 

「マジですか」

 

 古瀬は事件を起こした犯人たちを一人ずつ捕まえていく。

 

 ちなみにヒーロー活動には報告義務があり、届け出を出す必要がある。事件解決数が増えればそれだけ報告書を作る必要がある。ホークスの事務所ではサイドキックがその役割を兼ねているが、今日はいない。

 

 あまりの多さに、段々とキレそうになる。しかしヒーロー業はショービジネスに寄っている部分があるため、古瀬は愛想よく対応していく。

 

 その日はホークスの事務所に泊まり、翌日にホークスのサイドキックと常闇がやって来る。

 

「おはようございます。本日からよろしくお願いします」

 

「君がスケアクロウやね。ホークスから話は聞いとるよ」

 

 古瀬はサイドキックと握手を交わす。

 

「常闇くんも久しぶり」

 

「ふっ、まさかここで巡り合うことになるとはな」

 

 四人はこれからの活動について確認する。

 

「二人にはせっかく来てもらって悪いけど、ホークスはしばらくは不在なんや」

 

「何、そうなのか?」

 

「昨日は少しいたけど、すぐにどこかに行ったよ」

 

 常闇は少しがっかりしている。

 

「俺たちもホークスに劣るとはいえプロヒーロー。君たちに教えることはできるよ」

 

「頼もしいですね。それで、今日はどうしますか?」

 

 彼らはサイドキックとインターン生のペア、二組に分かれて活動を行う。

 

 古瀬は舞空術を使って移動するが、飛ぶのに特化した服装ではないため速度は出せない。使い方を考えなければならないなと思った。

 

 事件発生の際に、古瀬は遅れて付いて来るサイドキックの方を振り返る。

 

「俺はいいから先に行って」

 

「分かりました」

 

 古瀬は先行して強盗事件の犯人を捕まえる。しばらくして、サイドキックが追い付いて来る。

 

「速いなあ。ホークスが気に入るだけあるわ」

 

「ホークスには劣りますけどね」

 

「そりゃ№2と比べたらね。君は向上心があるタイプやね」

 

「そうでもありませんよ。ヒーローになれれば、それで十分だと思っていますから」

 

 古瀬には周りのように、有名になりたい、金を稼ぎたい、ランキング上位になりたいといったような夢は無い。

 

 プロヒーローになること自体が目的で、そこから先は別に木っ端ヒーローでも何でもよかった。そんな奴もいる、くらいの認識程度で十分だった。

 

 それを聞いて、サイドキックは笑う。

 

「ホークスが気に入るわけだ」

 

 ホークスにも上昇志向はなく、二十位から三十位くらいで自由にやりたいというのが本音である。

 

 ホークスは古瀬の過去を調べて、自分に似ていると思ったが、古瀬はホークスの過去など知らないため、自分とは違う人種と見ていた。

 

 そのためホークスに気に入られていると聞いても、あまり真には受けなかった。寧ろ警戒すらした。

 

 事務所に戻ると、常闇たちが先に戻っていた。それぞれのペアが解決した事件数には、三倍くらいの差があった。

 

「流石ホークスさんが直接スカウトしただけありますね」

 

 その言葉を聞いて、常闇は言葉を詰まらせながら対抗心を燃え上がらせる。

 

「ぐっ、俺は貴様には負けん!」

 

「おっ、ライバル発言ですか?」

 

「そういうのはもう間に合ってます」

 

 その後も、インターン中にホークスが戻ってくることは無かった。

 

 その間、彼らは発生する事件を解決していった。

 

 

 

 始業、学校の授業が始まる。実践報告会が行われ、各々は用意されたロボットを倒していく。古瀬は最小限の動きで倒した。

 

 夕方、古瀬と麗日は部屋で古い映画を観る。

 

「ちょっと抱きしめていい?」

 

「いいけど、どしたの?」

 

「ちょっと最近、強力なヴィランと戦ったり、インターンでひたすら事件の対応に追われてたから、メンタルが落ち込んでる」

 

 メンタル回復中。抱きしまたままじゃれ合って、横に倒れる。

 

「そういえば、那歩島でヴィランに遭遇したって聞いたけど、大丈夫だった?」

 

「うん。私、何もできなかった。井梨くんの作ったアイテムが無かったら誰も治せなかったし、ヴィランを何とかしたのも、デクくんと爆豪くんだった。というわけで今はちょっと反省中です」

 

 仙豆を使ったと聞いて、古瀬は何とも言えない気分になる。誰に使おうと麗日の自由ではあるが、彼としては万が一の保険として渡したつもりであった。

 

「インターンでは力を付けられなかった?」

 

「ううん。梅雨ちゃんと一緒に決定力を磨いたからね。でもあの時もう少しだけ手を伸ばせていれば、違う結果があったんじゃって」

 

 麗日は触れられなかった敵を思い出して、手を伸ばす。

 

「島民に被害者はいなかったって聞いてるけど」

 

「島の人はね。でも島が、かなりの部分が駄目になっとった」

 

 すいません、それこっちの戦闘の余波です。などとは言えず、そうなんだ、と古瀬は相槌を打つ。

 

「農地とかが多くて、復興できるかも分からんから、多くの人が島を離れるって。手伝ってもらったのに、結局、助けられんかった」

 

「……島の崩壊は、僕らの戦闘が原因だよ」

 

「B組の人が来たって聞いたけど、井梨くんもいたんやね」

 

「そこは聞いてたんだね。こっちの戦闘が原因だから、そっちの戦いは関係ないよ」

 

「島の崩壊は、死柄木がやったって聞いたけど」

 

「うん。正直、奇跡的なくらいに善戦したと思うよ。僕らも全力を尽くしたけど、あれ以上はどうにもならなかった。島の住人は守ったつもりだったけど、そっか、全部は守れてなかったんだね」

 

 それぞれ知らなかった視点の情報を得る。少し考え込む中、麗日が起き上がる。

 

「よし、映画観よう!」

 

「……そうだね?」

 

「いや違くて。アレだ。前向きに行こ! 力を付けて次に活かそう!」

 

 麗日は肘を曲げて力を込める。

 

「そうだね。捕まっていない以上また遭遇するかもしれないし、何か対応策を考えておいた方がいいか」

 

 終盤インフレはよくある事。古瀬に付いて行くつもりは無いが、最低限、死なない程度の実力は欲しかった。

 

 古瀬と麗日はメンタル回復と、情報交換を行った。ちなみに観た映画は『スパイダーマン ホームカミング』である。

 

 

 

 一月中旬、古瀬はスケアクロウ社の開発室で、メディカルマシーンを作成する。

 

 元ネタはドラゴンボール。負傷者をポッドの中に入れて、特殊な液体で満たして治療する。超では類似の再生装置が登場し、結合治療や欠損した肉体を再生させることも可能。

 

 古瀬はメディカルマシーンの中にオールマイトを放り込んで治療を行う。

 

 その場に居るのはドラえもんと校長の二人? である。

 

「仙豆やその他いくつかの技術を参考にして作ったメディカルマシーンです。仙豆のような一瞬での回復はできませんが、短期間での回復が可能です」

 

 リカバリーガールがいるため、大勢を回復させるのであればそちらの方が早い。

 

「また仙豆と異なり、細かい設定が可能です。特定の部分を集中的に治す、この傷は残すなど、使用者の要望に合った治療を行うことができます」

 

「効果の程はどうなんだい?」

 

「負傷や疲労の回復、失った肉体部位の再生も可能です。ただしリカバリーガールの個性も参考にしているため、治療には当人の体力が必要です」

 

「オールマイトは治療できそうかい?」

 

「ここまでの負傷となると、一日では無理ですね。丸二三日は掛かりそうです」

 

「待ってくれ、明日は授業が……」

 

 液体の中で呼吸器を取り付けられている八木が声を上げる。

 

「どうなんだい? 定期的に通うことで治療は可能かい?」

 

「どうでしょう。治療内容が呼吸器官と胃の再生なので、一気にやった方が負担は少ないかと。やってできなくはありませんが、余計に時間が掛かるかもしれません」

 

「それなら数日、よろしく頼むよ」

 

「校長!?」

 

「しばらく大人しくしているのさ」

 

 ポッドの中にいる八木を無視して話を続ける。

 

「それでこのメディカルマシーンの設置についてだけど」

 

「ここからは僕がご説明いたします」

 

 ドラえもんが話に加わる。

 

「現在メディカルマシーンは、三カ所の医療機関への設置が決まっています」

 

「雄英にも設置できないかい?」

 

「できなくはありませんが、残る二台はまだ完成していませんし、設置するにしてもかなり先になるかと。それに現在、メディカルマシーンによる治療はかなり高額です。学生が頻繁に使用するものではないので、効率的に悪いかと」

 

「そこを何とかお願いしたいのさ」

 

 雄英は避難所として使用する事も想定されている。万が一の事態に備えて、根津としてはメディカルマシーンを設置したかった。

 

 雄英はタルタロスと同等の防御力を持ち、国の最新防衛技術が卸されている。更に敷地を碁盤状に分割し、それぞれに駆動機構が備え付けられている。有事の際には区画ごと潜りシェルターとなる。そしてそのシェルターは、幾通りものルートを適宜移動する。

 

 シェルターは計三千層の強化プレートによって守られた地下を通り、雄英と同等の警備システムを持つ士傑など、いくつものヒーロー科高校へと逃げられる。

 

「そうですねえ。分かりました。何とかやってみましょう」

 

 話し合いが終わり、根津が帰った後に、古瀬とドラえもんは話をする。

 

「事業の方はどんな感じ?」

 

「そうだねえ。使用する人によって必要な物が違う日用品はやっぱり難しいねえ。順調なのは建築系かな。タチコマのおかげで、作業も早く効率的で危険も少ない。個性持ちの突貫工事には劣るけど、コミュニケーションの取りやすさもあって結構人気だよ」

 

 そういえば麗日の実家も建築系だったな、と古瀬は思い出す。

 

「それと君が作ったサポート系アイテムも結構売れてるね」

 

「日用品として? サポートアイテムとして?」

 

「サポートアイテムとしてだね。デトネラット社を知っているかい?」

 

「国内トップシェアを誇る、ライフスタイルサポートメーカーだろ?」

 

 リ・デストロの会社である。リ・デストロは現在、超常解放戦線の行動隊長の一人に主任している。

 

「最近プロヒーロー用のサポートアイテム業界に参入したみたいでね、その関係かよく買ってくれるんだよ。ノウハウも吸収できるし、かなりいい取引だよ」

 

「ふーん。でもこの量、かなり多いな。何でこんなに必要なんだ? 何か別の事にでも使うのか? まあ、深く詮索するものでもないか」

 

 デトネラット社との取引は、パワードスーツやエネルギー吸収剤が多かった。どちらもそこまで攻撃性が高いとは言えないため、古瀬は国家転覆を企んでいるとまでは思わなかった。

 

 

 

 一月下旬、古瀬と爆豪は運動場で対決する。周りには何人かの観客がいる。

 

「さあやってまいりました、古瀬と爆豪のタイマン勝負。実況はA組の上鳴と」

 

「B組の拳藤でお届けします」

 

 審判はミッドナイト。当初は八木の予定だったが、彼女が押し切って交代した。

 

「勝負内容は一対一の個人戦。どちらかが戦闘不能になるまで続くぜ。コスチュームあり、道具の持ち込みあり、ルール無用のデスマッチ。さあこの対決、どう見ますか拳藤さん」

 

「普通に古瀬が勝つと思う。いくら爆豪が強くても、あのヴィランより強いとは思えない」

 

「いやいや、爆豪だってナンバーワンの所ですげー頑張ったんだぜ。報告会だってすげー感じだったし、俺はこの戦い、どっちが勝つか分かんないと思うぜ」

 

 服装はどちらもコスチューム、ただし古瀬は刀を身に付けていない。

 

「全力で来いって言ったよなあ! 武器はどうした!!」

 

「刀は危ないから」

 

「今更武器一つでビビってんじゃねえ!!」

 

 その様子を見て、拳藤が実況する。

 

「さあ、さっそく両者メンチが切られています」

 

「いや、睨んでるのどう見ても爆豪……」

 

 古瀬は視線を逸らしてのけ反る。数歩後ろに下がって距離を取った。

 

「それじゃあ試合を始めるけど、どちらかが戦闘不能になるまでって話だけど、明らかに勝負がついたと判断した場合は止めるからね」

 

「分かりました」

 

「勝手に止めんじゃねえぞ!!」

 

 古瀬と爆豪は距離を取って構える。開始の合図と同時に、爆豪は爆発で勢いを付けて接近する。

 

「飛び出した!」

 

「古瀬相手に接近戦は無謀……」

 

 爆豪は爆発で強い光を発生させる。古瀬の目が眩んでいる間に後ろに回り込もうとするが、気で相手の位置が分かる古瀬には通じず、次の行動を起こす前に蹴り飛ばされる。

 

「スタングレネード、次は?」

 

 舌打ちしつつ、爆豪はA・P・ショットを撃つ。分厚いコンクリートすら貫く貫通力を持つが、古瀬の気を纏った掌に受け止められる。

 

「A・P・ショット」

 

 その光景を見て、爆豪は距離を取ってA・P・ショットを乱れ撃つ。

 

「おっ、爆豪冷静ですね」

 

「そうなんすか?」

 

「古瀬は気の消耗があるせいで、長期戦と中距離戦が苦手なんです。たぶん並の火力では気の防壁を突破できないので、中距離戦で消耗を狙うのは正解だと思いますよ。相手が付き合ってくれるならの話だけどね」

 

 爆豪はA・P・ショットを乱れ撃つが、古瀬が纏った気によって全て防がれる。

 

「火火火、ファイガ×3」

 

 古瀬は炎を放って辺りを燃やす。

 

「テメェ、どういうつもりだ!」

 

「冬は汗を出すのに時間が掛かるんだろ? 手伝ってあげるから、早く全力で来なよ」

 

「上から、見下ろしてんじゃねぇ!!」

 

 爆豪は体を回転させて、ハウザーインパクトを放つ。巨大な爆発を相手へと叩き込むが、古瀬は全くの無傷だった。

 

「もういいかい?」

 

 実況席の二人はその光景に声を唸らせる。

 

「これはちょっと厳しそうかな」

 

「こりゃ決まったか?」

 

 爆豪はその光景に驚愕しつつも、炎の側に近づいて汗を溜める。

 

「全力出せって言ってんだろ!」

 

「君の攻撃がこれで終わりなら、そろそろ本気で行かせてもらうよ」

 

 爆豪は掌を古瀬へと向ける。

 

「ああ、これが俺の『Plus Ultra』だ!!」

 

 汗を玉にして、爆破を凝縮して同時多発させる。威力を段違いに高めつつ周辺への被害も抑える、起爆力を重視した技、クラスター。

 

 無数の光が放たれる。それらは全弾命中するが、古瀬は無傷だった。

 

「もういい?」

 

 古瀬は歩いて爆豪へと近づく。爆豪は最後まで抵抗しようとするが、古瀬にGMAで取り押さえられる。

 

「そこまで! 勝者、古瀬!!」

 

 取り押さえられた状態で爆豪は暴れる。

 

「勝手に終わらせんな! 俺ァまだ戦れる!」

 

 掌を爆発させて、強引に拘束を解く。

 

「青いわね。嫌いじゃないけど、これ以上は……」

 

「待ってください。僕が止めます!」

 

 眠らせようとするミッドナイトの前に緑谷が割り込む。

 

「もう止めよう、かっちゃん。君は負けたんだよ」

 

「負けただと! こんな終わり方で、納得できるか! あいつはまだ、全く本気を出しちゃいねぇ!」

 

「かっちゃん……。これ以上暴れるって言うなら、僕が相手になる!」

 

「やってみろよ、クソナード!!」

 

 観客たちは続いて、爆豪VS緑谷を観戦する。

 

「実況は引き続き拳藤と」

 

「古瀬でお送りします」

 

 隣で物間が、実況席をクビになった上鳴の事を笑っている。

 

「この勝負、勝つのはどちらだと思いますか?」

 

「緑谷くんじゃないかな。爆豪くんはさっきの戦いの消耗もあるだろうし。既に動いている分最初から全力で戦えるけど、それだけで状況を覆せるかどうか」

 

「ですが実質取り押さえられただけで、体にダメージはないのでは?」

 

「爆豪くんは先程のクラスターという技を使うために、発熱で体力を削っているのに加えて、掌に多大な負荷が掛かっています。必ずしも無傷とは言えないでしょう」

 

 緑谷は黒鞭で爆豪を取り押さえようとするが、爆破で振り解かれる。空を飛び、煙を出し、速度を変えながら彼は戦う。

 

 明らかに複数の個性を使っている。技術によって力に幅を持たせている古瀬とはまた違う。明らかに複数の、異なる個性であった。

 

 しかしそれでもなお、戦いは爆豪が優勢であった。その執念が為せる業か、ぎりぎりで躱し、相手の意図を見抜き、緑谷が避けてもなお食らいつく。

 

「使いこなせていない……」

 

 緑谷は個性全てを同時に使用できておらず、切り替えるように使っている。その結果動きがちぐはぐになり、本来の持ち味を活かせていなかった。

 

 逆に爆豪は速度が上がる。本来、掌からしか出ないはずのニトロが全身から溢れる。全身から爆発を起こし、その速度とパワーを上げる。

 

 二人の戦いの余波によって、周りに被害が出始める。

 

「ちょ、止めろ止めろ」

 

「二人共、止めなさい!」

 

 戦いの決着はすぐに付く。爆豪が緑谷の攻撃をすり抜けて接近する。

 

「ハウザーインパクトクラスター!」

 

 運動場の中心地が吹き飛ぶ。辺り一帯に土が降り、中心地に煙が立ち込める。

 

 煙が晴れた時、そこに立っていたのは爆豪だった。緑谷はボロボロになって倒れている。

 

 その光景を見て、古瀬は驚く。この主人公、本来の流れよりも弱いのでは? やはり寝取りが駄目だったか。合コンでも開いてみようかなと思った。

 

「俺の、勝ちだ……」

 

 爆豪はそう言って地面に倒れる。そのままロボットたちに、リカバリーガールの所へと運ばれて行った。

 

 残った人間で、運動場の後片付けを行った。

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