無個性のヒーローアカデミア   作:明灯月陽

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合流

 古瀬、マンダレイ、緑谷の三人は雄英高校跡地へと到着する。ここに来たのは、他の生存メンバーが来るとしたらここなので、ここに来れば他の生存メンバーと合流できるのではないかと思ったためである。

 

 その場にいた麗日が三人を見つけて駆け寄ってくる。

 

「デクくん!!」

 

 麗日はボロッボロの状態の緑谷を見て表情を曇らせる。それだけではなく、右腕と左脚も失っている。すぐに入院が必要なのが見ただけで分かる。

 

「麗日さん。麗日さんの両親は必ず見つけるから」

 

 古瀬には緑谷が何を言っているのか理解できなかった。こんな状態で行けるわけがないし、今必要なのは治療である。

 

「私、そんなつもりで言ったわけじゃ」

 

 手足を失った緑谷を見て、麗日はかなり動揺している。彼女としては、緑谷が狙われている事、危険である事を伝えたいだけであった。

 

「はーい、それじゃあお姉さんが病院に連れて行っちゃうぞ!」

 

 場を和ませようと、マンダレイが緑谷を抱えて連れて行こうとする。

 

「普通の病院では駄目だ。政府に見つかってそのまま捕縛されかねない」

 

「どういうこと?」

 

 未だ状況を把握できていないマンダレイは怪訝そうな顔をする。

 

 そうこうしていると、近くにいた他の雄英生徒がやって来る。居たのは八百万、峰田、芦戸の三人であった。

 

 三人は緑谷の怪我を見て驚愕する。八百万はすぐに治療しようとするが、他二人は足を止める。

 

「お二人共、運ぶのを手伝ってください! 芦戸さん!」

 

 名前を呼ばれて、芦戸ははっとする。八百万が創った担架に乗せて、横になれる場所まで移動する。

 

 横になって、緑谷はすぐに気を失う。八百万はすぐに病院に運ぶことを提案するが、古瀬に反対される。

 

「ですがこのままでは」

 

「スケアクロウ社はどうかな。あそこなら、デクくんの手足だって」

 

「無理だな。あそこは超常解放戦線側に付いている。ついさっき戦ったばかりの緑谷は受け入れられないだろう」

 

 麗日の提案に古瀬が答える。麗日は自分の腕を強く握りしめる。

 

「とはいえ、このままというわけにもいかないし、どうしたものか」

 

「闇医者の知り合いとかいないのかよ」

 

「心当たりは無いな。マンダレイはどうだ?」

 

「正直、状況をまだ理解してないんだけど……」

 

「そういえば、マンダレイさんはなぜここに居るのですか?」

 

「助けられた、のかなあ?」

 

「一度情報を共有した方が良さそうですね。ですがその前にまずは、緑谷さんをどうにかしないと」

 

 全員が考えるが、特にいい案は思いつかない。どうしようもないので、超常解放戦線と縁の薄そうな病院に入院させることにした。

 

 それ以外のメンバーは、雄英跡地に戻ってバーベキューを始める。現在は五月。

 

「じゃあ全面決戦から一月以上経ってるって事!?」

 

 何人かA組の生徒が死んだことについては、緑谷が戻ってきたら話すだろうと思い、古瀬は話さなかった。

 

「葉隠と回原と骨抜と天喰先輩について何か知らない? 全員連絡が付かないんだけど」

 

 古瀬は四人に連絡してみる。しかし確かに繋がらなかった。

 

「この様子では、何かあったか?」

 

「怖いこと言うなよ。きっと壊れたとか、電源が切れてるだけだって」

 

「それと、このニュース知ってます?」

 

 芦戸はネットのニュースを見せる。そこにはファットガムの事務所が破壊され、ファットガムが殺害されたと書かれていた。

 

 四人は既にこの情報を共有しており、知らなかったのは古瀬とマンダレイのみであった。

 

「ファットガムが?」

 

「チンピラ数人に殺されたことになってるけど、ネットじゃダツゴクが複数その場にいたって。きっと超常解放戦線に殺されたんだよ!」

 

「芦戸さん、そういった情報をあまり鵜呑みにするのはよくありませんよ」

 

「だって、少し前まで一緒にいたんだよ! 自分が何とかするからって、一人だけ避難所に残って!」

 

 芦戸は悲しみから涙を流す。麗日がその背中をそっとさする。

 

 それから麗日が、緑谷が超常解放戦線の拠点へと向かった経緯を話す。自分の両親と緑谷の母親が公安に攫われた事、それを助けに一人で向かってしまった事を説明する。

 

 その話を聞いて、芦戸と峰田は体を強張らせる。焚火に視線を落として、峰田は静かに口を開く。

 

「実は、オイラもなんだ。家に帰ったら親が居なくて、代わりに公安の人がいて、返してほしかったら緑谷を連れて来いって。そんなつもりは無かったけどよお、でもどうするか、緑谷がいる所に行ってから考えようと思って、ここに」

 

「うん。分かる」

 

 麗日は峰田の感情に同調する。彼女も似たような感じだった。

 

「私も、親が。私は緑谷を売るつもりなんて無かったよ! 友達を売るなんてできるわけないじゃん! でもどうしていいか分かんなくて、気が付いたらここに」

 

「正直よく分かんないんだけど、どうして公安が君たちの両親を攫うんだ?」

 

 彼らはマンダレイにこれまでの経緯を説明する。公安の悪事が暴露された事、公安委員会の人間が逮捕された事、超常解放戦線が国を掌握していることを。

 

「つまり私たちは国に目を付けられてるって事? 洸汰のやつ大丈夫かな?」

 

 マンダレイは甥の事を心配しつつ、これからどうするかを考える。

 

「八百万くんはそういったことはなかったのか?」

 

「私の所は特に何も。自分たちの事は気にしなくていいからと送り出されました。出る時は気にしませんでしたが、今にして思えばもしかすると」

 

「大吾さんは?」

 

「私も特にそういった事はない。最も、長く連絡を取っていないから知らないだけで、もしかすると捕まっているのかもしれないがな」

 

「そういえば、大吾さんはどういった経緯で緑谷さんを助けることになったのですか?」

 

「超常解放戦線に潜入していたところ、緑谷くんが襲撃してきて、その後、捕まったのを助けただけだ」

 

 それを聞いて、マンダレイは顔を顰める。どことなく、自分が知っている情報を噛み合わない気がした。

 

「攫ったのって、本物の公安なのかな? だって国の機関だよ!? それがこんな事するなんて……」

 

「公安の人間はほぼ全員が逮捕され、中の人間は殆どが入れ替わった。しかし仕事の内容は、変わっていないはずだ」

 

「前からこんな事をしとったってことですか?」

 

「以前はヒーロー社会を維持するために、今は現体制を維持するために動いている。体制を揺るがしかねない人間は、手段を選ばず排除するということだろうな」

 

「ヒーローが、人を殺していた……」

 

 レディ・ナガンとホークスの存在、そしてトガヒミコの言葉を麗日は思い出す。

 

「マンダレイはその辺り、何か知っていたのですか?」

 

「聞いたことはあるけど、正直都市伝説くらいにしか思ってなかったかな。怪しいと思う事は何回かあったけど」

 

「怪しいと思うこと、というのはどのような事だったのでしょうか?」

 

「不審死とか、公安の仕事に関わったヒーローが、あまり公安には関わらない方がいいとか言ってたりとか」

 

「ほぼ黒じゃねぇか!」

 

「まあ、公安が一概に悪と言えるものでもないがな。国である以上、どうしても後ろ暗い部分は存在する」

 

「確かに公安は多数の人の命を奪っていましたが、それによって長い間、平和を維持していました。今回、明らかになったのは罪の部分、功績の部分も忘れてはならないかと。この社会はそういった犠牲の上に成り立っていたということですね」

 

「で、今回犠牲になるのはオイラたちってわけか。笑えねぇよ!」

 

 焼いた肉を食べ終えて、その場の人間はこれからどうするかについて話し合う。

 

「これから、どうすればいいんだろう」

 

「戦うか、服従するかの二つに一つだろうな」

 

「服従って、それってつまり……」

 

 緑谷を公安に引き渡す、その事を想像して峰田は押し黙る。

 

「ヒーローとして今の社会に適応するか、ヴィランとして戦うかのどちらかだ」

 

「お待ちください。ヒーローとしての活動を通して、今の社会を変えるという道も……」

 

「変えられると思うかね? 社会に仇なす存在がどうなるかは、君も知ったはずだ」

 

 活動を通して意見を広めることはできるかもしれない。しかしその後、自らが暗殺される姿を想像して八百万は俯く。

 

 実際は仇なすどころか、社会を揺るがしかねないという理由だけで暗殺していた事をレディ・ナガンが告白している。

 

 また、この話を聞いて、マンダレイは立ち上がる。

 

「洸汰の事が心配だから、家に戻るよ。私は社会に仇なすとかヴィランになるとか、そういった事はできない。今の話は聞かなかったことにする」

 

 そう言って、マンダレイはこのメンバーから離脱する。

 

 古瀬は息を吐いて、その場にいる人間を見る。

 

「今日はもう休むといい。ホテルを取っておいたから、そこまで移動しよう。これからどうするかは、そこでゆっくり考えるといい」

 

 今の社会でも、ヒーローとして活動はできるのかもしれない。しかしそれは、これから生じ続ける犠牲を受け入れるという事でもある。

 

 どこかで誰かが死んでいる。そこから目を逸らして、見ない振りをして、半分の人を見捨てて、半分の人を笑顔にする。

 

 知らなければ笑っていられた。でも誰かが犠牲になっていると知ってしまった以上、そこから目を逸らして、ヒーローをする事はできなかった。

 

「生きにくい」

 

 個室のベッドの上で、麗日はそう口にする。

 

 古瀬は麗日の部屋をノックする。麗日が部屋から出てくるが、かなり無理をしている様子だった。

 

「疲れているようだな。少し話が合ったのだが、また今度にした方が良さそうだ」

 

「いや、全然大丈夫です」

 

「あまり無理をするな。失礼をした。ゆっくり休んでくれ」

 

 自分が古瀬であることを伝えるつもりだったが、そうすると必然的にその背景についても語ることになる。それは今の麗日には負担になるかと思い、古瀬は止めておいた。

 

 古瀬は八百万の部屋へと向かい、ノックする。少しして、中から八百万がどうかしたのかと出てくる。

 

「ここに五十万ある。当座の活動資金として使ってくれ」

 

「大吾さんは、どちらかに行かれるのですか?」

 

「少し用事があってね。しばらく来られないかもしれないので、生活費として使ってくれ」

 

 なお、八百万に全額渡すのは、分けて渡すと変な使い方をしそうだと思ったためである。

 

 その後、古瀬はスケアクロウ社へと戻る。明日から、他の生徒の親を救助しようと思って眠りについた。

 

 

 

 翌日、古瀬は個性を元に戻す研究に関する報告を死柄木にする。

 

「個性を失った人の個性因子の一部復元、抽出、培養、再移植を行うことで、個性を元に戻すことが可能です」

 

「ふうむ、なるほどねえ」

 

 死柄木は渡された資料をぱらぱらと捲る。

 

「全面決戦以降、多くのヒーローが退職しています。彼らの個性を戻して手駒に加えてみるのはどうでしょう?」

 

 個性を失ったヒーローだけではなく、まだ個性を有しているヒーローもその多くが退職した。ヒーローとは職業名であり、金と名声のためであって、多くにとっては命を懸けてまで行うものではなかった。

 

 全面決戦でのヒーロー側の被害は、死者三割、全体の七から八割がヒーローとして活動できなくなった。

 

 活動可能なヒーローもその多くが辞職、或いは死柄木に反抗してレジスタンス活動を行っている。

 

「ヒーローを使ってヒーローを狩るというわけかい」

 

「はい。一応は戦闘訓練を受けた元ヒーロー、こんな状況下で逃げ出すような連中ですが、枯れ木も山の賑わい程度の役には立つかと」

 

 未だ超常解放戦線の支持者は少なく、全体的に日和見の多い状況が続いている。ヒーローが中立の多い地域で決起した場合は面倒な事になる。

 

「まずは彼らの承認欲求を満たすために、街の防衛に当たらせる予定です。街の人を守るためにダツゴクと戦って、みんなを守れて、ヒーローらしい活動ができて満足でしょう」

 

 実際は、現実から目を逸らしているだけでしかない。できるのは撃退だけ、ダツゴクを捕まえてもすぐに解放される。

 

 ダツゴクもヒーローも、どちらも死柄木の手駒でしかない。

 

「彼らの殆どには家族や友人や恋人がいます。それを理解していれば、快く承諾してくれるでしょう」

 

「なるほど。僕のために働いてくれと、お願いするわけだね。しかし、もし断ったらどうする?」

 

「使えない駒は必要ありません」

 

「おいおい、酷いこと言うなあ。だが念のために、保険は用意しておこうか」

 

 死柄木は個性を戻すヒーローと人質に、裏切った場合の保険として爆弾を仕掛ける。

 

「それでも、個性を奪った張本人の指示に、素直に従いたくはないでしょう。なので段階的に、心理的なハードルを下げながら指示に従うようにしていく予定です」

 

「なぜ、彼らは素直に差し出さないのだろうねえ」

 

「信用されてないからじゃないですか?」

 

 古瀬は死柄木から、好きにしていいという許可を得る。早速元ヒーローたちに、個性を戻す代わりに死柄木の指示に従うように命じる。

 

 多くの元ヒーローは難色を示したが、個性を戻すという対価に釣られて、死柄木の元へとやって来て膝を屈する。

 

 断れば、親しい人間に危害が及ぶ。国からも追われることになる。自分には抵抗する力も無い。現実的な判断から、多くの人間は指示に従った。

 

 一方で、個性をまだ持っている状態で辞職した人間の中には、死柄木に従うことを拒む人間もいた。デステゴロもその一人であった。

 

「帰ってくれ。俺はもう、ヒーローを辞めたんだ」

 

 デステゴロの前に座っている古瀬はつまらなさそうにそれを見ている。

 

「辞めたいで辞められたら、今の時代、苦労はありませんよ」

 

「俺にはもう無理だ。疲れちまった。どれだけ人を助けても、返ってくるのは罵声だけ。どうやら俺はヒーローじゃなく、人間だったみてぇだ」

 

「甘ったれるな。一度コスチュームに袖を通した以上、超常解放戦線はお前をヒーローとして扱うぞ。嫌だ無理だと言った所で、お前はヒーローで居続けるしかないんだよ」

 

 必ず来い、と言って、古瀬はデステゴロに新しいコスチュームを投げ渡した。

 

 

 

 古瀬は超常解放戦線の施設の、自分の研究室で砂藤と話す。

 

「砂藤くんじゃないか。君もこっちに付いたんだってね」

 

「あ、ああ」

 

 他の生徒が覚悟を決める中、自分だけが裏切って、今ここに居る。砂藤は少しばつが悪そうに視線を逸らす。

 

「お前はどうして、裏切ったんだ?」

 

「裏切ったとは人聞きの悪い。ただこちら側に付いただけだよ。理由は、お金のためかな?」

 

「そんな理由でか!?」

 

「お金は大事だよ。なにせ……」

 

 個性を奪う道具を作るために、大体五百億くらい必要であった。これからそのお金を使って作らなければならない。

 

「砂藤くんはどうして裏切ったの?」

 

「俺は、怖かったんだ。本当に死ぬってなった時、どんな手を使ってでも生きたくなっちまった。最低だよ、俺は」

 

 ふーん、と古瀬は相槌を打つ。命惜しさに何人ものヒーローが辞めたため、一人くらいそういった人間が居てもそれほど珍しいとは思わなかった。

 

「それより、お前はいいのか? 麗日のこと」

 

「あ、それ聞いちゃう? それより、この施設に雄英高校の生徒の家族が捕まってるって知ってる?」

 

 話したくなかったため、古瀬は強引に話題を変える。

 

「いや、初耳だ」

 

「まだ捕まっていない生徒の家族が、人質としてここに捕まっているんだよ」

 

「麗日の家族もか?」

 

「いい加減、その話題から離れてほしいな」

 

 既に逃がしているためここにはいない。答えにくい事ばかり聞いているな、と思いながら古瀬は手を止めて砂藤の方を見る。

 

「そっちは今、何をしているの?」

 

「他の連中の、訓練の相手をしてる。元雄英生ってことで当たりの強い奴もいるけど、割と良くしてもらってるよ」

 

「お菓子は作らないの? オーブンなんかが必要なら用意しようか?」

 

「いいのか?」

 

「別にいいよ。個室を用意しようか? それともどっかの部屋の使用許可の方がいい?」

 

 対外的にドラえもんの方が格上扱いだが、古瀬も別に偉くないわけではない。

 

 それから、話題は地下に捕まっている、尾白、蛙吹、轟、爆豪の四人の事へと移る。

 

「あいつらは、これからどうなるんだ?」

 

「さあ。脳無の材料か、他の何かに使われるのか、誰かに対する人質か」

 

「どうにもならないのか?」

 

「うーん、あの四人は無理だけど、ここに居る人なら助けられるかもね」

 

 まだ捕まってない生徒の家族、こちらなら助けられるかもしれないと古瀬は砂藤に囁く。

 

「ここに居る人って、どうやって?」

 

「少し手間はかかるけど、頑張れば助けられるかもしれないよ?」

 

 それを聞いて、砂藤は押し黙る。何かを躊躇っている様子だった。

 

「何か、問題があるのかい?」

 

「入ったばかりの俺が、逃がしたりなんてしたら、今度こそ殺される。それに誰かを助けるなんて、俺はもうヒーローじゃない」

 

「ヴィランだと人を助けちゃいけないのかい? 好き勝手やるのがヴィラン流らしいよ。人を助けたいというのが君のやりたい事なら、好きにすればいいんじゃないかな?」

 

 古瀬は、万が一すり替えが発覚した際には、砂藤をデコイにするつもりだった。

 

 砂藤はどうすればいいのか古瀬に尋ねる。ここに捕まっている人を逃がすと決めた様子だった。

 

 数日かけて、二人は何人かを海外へと逃がす。場所は麗日の両親と同じところ、同じアパートに全員を連れて行った。

 

 次に上鳴の両親を入れ替えようとするが、入れられているはずの容器が空だった。

 

「ここの容器どうしたんだ?」

 

「ああ? そこはあれだ。何日か前に侵入者が来ただろう。あの時の衝撃で、倒れて物が落ちてきて壊れたんだ」

 

 緑谷が襲撃してきた日のことだと二人は分かる。衝撃は、緑谷と死柄木が戦った際に発生したものだろうと想像する。

 

「それで、この中身はどうしたんだ?」

 

 二人は上鳴の両親が亡くなった事を知る。念のため遺体の確認にも行ったが、既に火葬されていて見ることはできなかった。しかし容器に残っていた血液から、本人であると確認できた。

 

「どうしよう、これ。見方によっては、緑谷がやったとも言えるよな」

 

「それは、いやしかし、あいつは助けに来たわけだし」

 

「隠蔽するか。上鳴の両親は実験で死んだことにした方が……」

 

 椅子に座って話していると、砂藤の顔色が変わる。咄嗟に振り返りながら気の探知を使い、古瀬は突き出されたナイフを受け止める。

 

「何の用ですか?」

 

 トガの手を掴んでナイフを受け止める。中指と薬指の間にナイフが当たるが、古瀬の手が切れることは無い。

 

「井梨くんはお茶子ちゃんと付き合ってたんですね。どうして別れたんですか?」

 

「なぜその事を、って砂藤!」

 

「言っちゃまずかったのか!?」

 

 こいつ、と目を細めつつ、古瀬はナイフを横に払いのける。トガは一応最高幹部なので、できれば揉めるのは避けたかった。

 

「砂藤、あれを持って来てくれ」

 

「あれか!?」

 

 二人は机にベリーパイと紅茶を並べて、トガを椅子に座らせる。

 

「どうしてお茶子ちゃんと別れたんですか?」

 

「どうして質問するのにナイフで刺す必要がるんですか?」

 

 トガがおやつを食べている間、砂藤はいつもこんな感じなのかと聞いてくる。古瀬はトガヒミコの経歴について調べる。

 

「渡我被身子、同級生を切りつけて逃走。その後、連続失血殺人事件を起こしている」

 

「それが今や、表の世界の最高幹部か」

 

「実際に取り仕切っているのは、リ・デストロと心求党だけどね。そういえば、トガさんはどうしてお茶子さんを気にするんですか?」

 

「私お茶子ちゃんみたいになりたいの。梅雨ちゃんはカアイイお友達、出久くんもいつもボロボロでカッコよくて大好き」

 

 よく分からないが、そうなんだなあ、という反応を二人はする。

 

「緑谷くんの事が好きなんだ。それは恋愛的な意味で?」

 

「私の恋人になってほしい」

 

「ラブだ!」

 

 砂藤は古瀬の後ろで、困惑した様子で見ている。

 

「血だらけで、初恋の人にそっくりで、私彼みたいになりたいの。チウチウしたい!」

 

「ラブだ!」

 

「本当にそうか? そういう話だったか?」

 

 それで、と古瀬は話の続きを促す。

 

「私は同じになりたいの。それでしか満たされないの」

 

「それでしか満たされない? 血を吸うことでしかってことですか? ヘマトフィリアってやつか」

 

 ヘマトフィリアとは何かと砂藤が尋ねる。

 

「ヘマトフィリア、血液性愛、血液への性的嗜好。自身や他者の血液、または流血する光景に対して性的欲望を抱く心理状態。他人になりたい心理は、個性由来のものだからちょっと分からないかな。あとは、ソムニウムファイルみたいな感じかな?」

 

 ソムニウムファイル、ゲームのタイトル名。少しネタバレになるが、そのゲームに登場するあるキャラは、生まれた時からオキシトシンと呼ばれる幸福を感じるホルモンが分泌されず、代わりに生き物を殺すことでドーパミンやエンドルフィンを放出させ幸福感を得る体を持っている。

 

「トガは病気じゃありません。普通です」

 

「まあ実際の所は、調べてみない事には何とも言えないけど」

 

「一度、調べるだけ調べてもらったらどうだ?」

 

「ヤです」

 

 トガは頬を膨らませてそっぽを向く。

 

「あら可愛い」

 

「カアイイですか?」

 

「カアイイよ。血をあげる気も傷つく気も一ミリも無いけど」

 

 トガが突き出したナイフを、古瀬は片手で受け止める。

 

「不思議ですね。刃物で傷付かないなんて。井梨くんの血は何色なんですか?」

 

「赤だよ。こんな役に立たない血なんて興味持たなくていいよ」

 

 トガは不思議そうに首を傾げる。ちなみに砂藤は、寮の部屋決めの説明によると、積極的に事を収めようとすることは無いらしい。

 

「そういえば、初恋の人って斎藤くん? 彼生きてない? 彼の事はもういいの?」

 

「今は新しい恋に生きてます」

 

「じゃあ蛙吹さんは? 彼女にももう興味は無いんですか?」

 

「梅雨ちゃん、カアイイお友達、血を全部チウチウしたい」

 

 光悦とした表情でトガは語る。駄目そうだな、と古瀬は砂藤と視線を合わせる。

 

 その後、古瀬と砂藤は移動して、事務室から鍵を貰って地下の蛙吹が入れられている牢へと向かう。

 

「さて、どうしたものかな。放置しておくとトガに殺されそうだ」

 

 逃がすのは難しい。これが初めてならともかく二度目、次は露見しかねない。かといって相手は最高幹部、殺されないように守るのも難しい。

 

「本当に行くのか?」

 

「うーん、まあ。逃がすのは無理でも、別の部屋に移すくらいはできるから」

 

 砂藤は超常解放戦線に降った経緯から、蛙吹に合わせる顔が無かった。

 

 鍵を開けて中に入ると、奥の方に蛙吹がいた。個性を奪われた上での二カ月近い軟禁生活によって、彼女はかなり疲弊している。

 

「久しぶり。元気そうではなさそうだね」

 

「古瀬ちゃんに、砂藤ちゃん」

 

 古瀬は無機物でも見るような目で見ているが、砂藤は顔を逸らしている。

 

「あなたもヴィランになったのね、悲しいわ」

 

「それはどうだろう。今はこちらが体制側だから、それは君たちの方かもしれないよ。仮免資格も、もうすぐ失効するしね」

 

 ヒーロー資格の更新を二カ月以内に行わなければ失効する。それを聞いても真偽が不明だし、蛙吹は敵に寝返った人間の言葉を信用することはできなかった。

 

「砂藤くんは、何か言っておきたいことはある?」

 

「お、俺は、すまない。本当に済まない……」

 

「あの状況じゃ仕方なかったわ。ああしないと砂藤ちゃんは死んでいたもの」

 

 砂藤からすれば、優しい言葉を掛けられるよりも、責められた方がずっと楽だった。涙を流しながら謝り続ける。

 

「それじゃあ、部屋の移動だよ。付いて来て」

 

 周りの牢を見ると、上鳴と耳郎が新たに捕まっている。それから蛙吹が言うには、轟が荼毘に、どこかに連れて行かれたそうであった。

 

 古瀬は蛙吹を二階の一室へと連れて行く。先程の部屋は完全に牢であったが、こちらはホテルの一室に近い。

 

「ドクターが作った仙豆もどきがあるからこれを渡しておこう。死にそうになったら食べるといい。僕たちは助けないから、自分の身は自分で守ってね。あと連絡ボタンも」

 

 連絡ボタンを押すと、古瀬と砂藤に知らせが送られる。全体に知らせる防犯ブザーのようなものではない。

 

「もし逃げようとすれば捕まえる。邪魔になるなら斬り捨てる。何か聞きたいことは?」

 

「他のみんなはどうなったの?」

 

「……砂藤くんは何か知ってる?」

 

「いや、俺は全く、全然」

 

「じゃあ僕の答えも同じだよ。他に質問が無いならこれで失礼させてもらうよ」

 

 二人は部屋から出て、扉をロックする。研究室に戻って二人は話す。

 

「蛙吹のやつ、あれで大丈夫だといいが」

 

「僕らじゃトガヒミコから彼女を守るのは難しいからね。発言力的にも、物理的にも。四六時中近くにいるというわけにもいかないし」

 

 古瀬はこの施設から離れる事が多いし、砂藤も訓練やその他の理由で別の場所に行くことがある。ずっと見張っているというわけにはいかなかった。

 

「あの部屋はすぐ隣にメディカルマシーンがあるから、何かあってもすぐに治療できる。あとは死にさえしなければ」

 

 何をしてでも蛙吹を守ろうという意思は古瀬には無かった。むしろ邪魔になるのであれば斬り捨てるという意思すらある。彼にとって優先順位は、他の事の方が上であった。

 

「俺も下っ端だから、ずっと見張ってるってわけにはいかねぇし」

 

「暇そうなのは青山くんくらいだけど、こっちに来てからずっと引き籠ってるからなあ」

 

「親のこと言った方がいいんじゃねえか?」

 

「うっかり口を滑らさないとも限らないし、知っている人は少ない方がいい」

 

 なんとか立ち直ってほしいものだと話しながら、二人は他の生徒の家族を脱走させた。

 

 

 

 麗日、八百万、峰田、芦戸の四人は集まって、これからの事について話し合っていた。

 

「考えたんだけどよ、オイラ今のままでも別にいい気がしてきた」

 

 女子三、男子一。峰田は部屋の匂いを嗅ぎ始めたため簀巻きにされる。

 

「私は、このままは嫌や。でも、どうすればいいんだろう」

 

「私もこのままでいいとは思っておりません。全面決戦以降、治安は悪化し、ヒーローも殆どが居なくなりました。警察だけではヴィランに対応できていない状況下で、政府はこれを野放しにしています。これが意図的なものであるなら、看過はできません」

 

 麗日と八百万は戦う意思を見せるが、芦戸はどこか慎重だった。

 

「私も戦う。でも先生もみんなもいないのに、どうやってやればいいんだろう」

 

「私たちは現状、二つの問題を抱えています。皆さんの捕らわれたご家族、そして緑谷さんをどうするかです」

 

「でもどこに捕らわれとるか分からんよね」

 

「助けようにも場所が分からないんじゃ助けらんないよ」

 

「緑谷はなんか知んないのか?」

 

 峰田が簀巻きにされたまま、会話に入ってくる。

 

「緑谷さんは、現在意識不明です。会話できる状態ではありません。もう一つの問題、緑谷さんをどうするかですが、公安に狙われている緑谷さんを放置して、私たちだけでご家族の救出に動いてもいいものかどうか」

 

「でも公安がどうにかするつもりなら、もうとっくにどうにかしてるんじゃない?」

 

 OFAが奪われた事で、死柄木は緑谷に興味を失った。ただそれはそれとして嫌がらせはするが、今は放置するつもりだった。

 

「そこは色々と向こうにも事情があるのかもしれません。あまり楽観するのは宜しくないかと。どこか預けられる安全な場所があればいいのですが」

 

「生活するだけならオイラの家が空いてるけど、意識不明となるとなあ」

 

「みんなの家って壊されとらんかったんや」

 

「私は壊されてた」

 

 芦戸が憤った様子でそう言う。

 

「捕まってる場所だけど、情報となると、大吾さんは知らないのかな?」

 

「あの人かあ。でもあの人、ファットガムにもマンダレイにも、なんか怪しいって言われてたんだよな」

 

 経歴に嘘がある、嘘が多いと二人に言われていた。

 

「ぶっちゃけあの人のことどう思う?」

 

「信用できる方だとは思いますよ。少なくとも敵ではないかと」

 

「うん。こうしてホテルに泊まるお金も出してくれてるし」

 

「ぶっちゃけあの人、スケアクロウ社の人間じゃね?」

 

「そうなの!?」

 

 芦戸以外は薄々そうじゃないかと思っていたため、反応が薄い。

 

「金持ってる、情報持ってる、助けてるのが雄英の生徒ばっかだしよ」

 

「一番最初に助けているのが麗日さんですしね。それに古瀬さんは知っている人がどこにいるか分かるので、本気で寝返っているならオールマイトが捕まっていないのは不自然です。大吾さんは、彼に雇われた人ではないでしょうか?」

 

「まだそうと決まったわけやないし……」

 

 ぬか喜びしないように顔を強張らせる。それなら、と芦戸は明るい表情をする。

 

「それなら私たちの親がどこにいるか知ってるんじゃないかな?」

 

「どうでしょう。スケアクロウ社は現在、超常解放戦線に参加しています。表立っての協力はしたくないのかもしれません」

 

「でも麗日の両親も捕まってるんでしょ? だったら教えてくれてもいいのに」

 

「まだそうと決まったわけではありません。もしかしたら本当に、善意の協力者かもしれませんし」

 

 断定はできない。あまり期待しすぎるのも、もし違ったら相手の負担になるのではないか、と八百万は否定的だった。

 

「そういや、ヒーロー免許の更新はどうすんだ?」

 

 四人は仮免を持っているが、持ち続けるのであれば一度更新が必要だった。

 

「正直、ヒーロー免許を更新する意図が分かりません。何のために行うのでしょう?」

 

「管理しやすくするためとか?」

 

「分かった。ヒーロー免許にGPSを仕込む気なんだ!」

 

 芦戸の推理は当たっている。新しい免許によって、今後ヒーローの位置は常に把握される。ただしその推理が当たっているとは全員思わなかった。

 

「まさかそこまではしないでしょうが、何らかの管理下に置かれることは考えられますね。正直、個性の使用が許可されているこの状況下で、ヒーロー資格を持つ必要性を感じないんですよね」

 

 今は国から、誰でも個性を使ってもいいと言われている状況である。その結果、途轍もなく治安が悪化している。

 

「でも非常事態の間だけって話だよね。その内、個性の無制限使用は終わり、とか言ったりせんのかな」

 

「超常解放戦線の前身組織は異能解放軍です。個性の自由使用を目的としているため、そう簡単に解除はしないと思います」

 

「それ以外の犯罪行為さえしないなら、私たちも個性を自由に使っていいってことだよね」

 

「その結果がこの惨状ですが」

 

 少し先の話だが、全員が個性を使っていいとなった結果、街でチンピラが暴れまわり、市民がそれに抗うために個性を使い始めたことで、終わりのない争いが始まる。

 

 市民と市民の争いにも個性が使われ、その二次被害が新たな報復を生む。街は荒廃し、無法状態と大して変わらなくなる。

 

 警察は個性の使用を巡って分裂し、個性を使用する一派は、多数の冤罪と被害と混乱を生む。

 

 AFOの都市破壊、大災害から一時的に復興は進むものの、それ以降は荒廃した状態が続くこととなる。

 

 今は街が復興しつつ、チンピラが暴れている段階である。

 

「捕まっているご家族を救出した場合、おそらく私たちは国から追われる身となります。仮免の更新は、あまり意味の無い事かと」

 

「八百万はそれでいいのかよ。八百万の親は捕まってないんだろ?」

 

「私は人の助けとなるべくこの道を選びました。困っているご友人を放ってはおけません」

 

「八百万!」

 

 三人は八百万へと抱き付く。どさくさに紛れて抱き付いた峰田を、芦戸が放り投げる。

 

「それなら、捕まってる場所を見つけて、デクくんを何とかしてから救出だね」

 

「情報は大吾さんあてにした方が良さそう。私たちじゃ無理だよ」

 

「インターンでそういった事もやりましたが、別れて動くのは危険ですわよね」

 

「なあ、緑谷って戦力として数えるのか?」

 

 峰田の発言に注目が集まる。

 

「あの容態の緑谷さんを戦わせるわけには。義手義足を使うにしても、使いこなすまでに時間が掛かるでしょうし」

 

「なら緑谷に、この事は伝えるのか? あいつ知ったら参加しようとするんじゃねえか? 駄目だって言っても勝手に行くぞ」

 

 爆豪を助けに行った前科がある。そんな事はしないどころか、むしろやりかねないと彼らは思った。

 

「でも、デクくんのお母さんも捕まっとるわけやし」

 

「そりゃ逸る気持ちも分かるけどさ。今助けなきゃ、もう助けられないかもしれないわけだし。でもあれ以上無茶したら、緑谷死んじゃうよ」

 

「緑谷さんは、個性を失っているのでしょうか? もし奪われていないのであれば、戦力として数える事も」

 

「八百万?」

 

「分かっています。本当はそうすべきではない事は。ですが一人で行かれるくらいでしたら、目の届く範囲にいた方が宜しいかと。ただそれまでに緑谷さんの怪我が治るかも分かりませんし、治っていないようであれば、当然、置いて行きます」

 

 古瀬からの連絡を待つ、という事で話が纏まる。しばらくして、八百万に連絡が来る。

 

「今忙しいそうで、しばらくこちらに来られそうにない、そうです」

 

 他生徒の家族を逃がしたり、ヒーローの個性を戻したり、個性を奪う道具を研究したり、超常解放戦線の仕事もあって忙しい。

 

「じゃあやっぱり自分たちで探すしかないんじゃない?」

 

「公安から皆さんに、新しい命令や連絡は来ていないのですか?」

 

「来てない」

 

「私も」

 

 八百万は少し考え込む。人質を取っておいて、それ以降連絡が無いというのは、不測の事態があったのだろうかと。公安なら、実際には死んでいても人質として使い続けそうだなとも思った。

 

「公安の意図が分かりませんね。今は放置して様子を見ているのでしょうか。だとすれば何かしらの方法でこちらを監視しているのかも」

 

「実際に実行しそうだったら暗殺するってことか? 公開された資料にあったよな。計画しただけで暗殺されたヴィラングループとか」

 

「自分たちが誘拐したのが原因じゃん。ヒーロー公安委員会ってずっとこんなことやって来たの? 許せん!」

 

「動くのであれば、慎重に行う必要がありそうですね」

 

 それから四人は、二組に分かれて情報収集を行った。

 

 

 

 入院から二週間、緑谷はようやく少し体を動かせるようになった。ギプスで手足を固定され、前身に包帯を巻かれている。

 

 体を動かせないまま、天井を眺める日々が続く。何度か麗日や八百万たちがお見舞いに来たが、簡単な受け答えしか行えなかった。

 

 緑谷はどうしていいか分からず、苦悶の声を漏らす。そこにある人物が現れる。

 

「遅れてしまってすまない。もっと早くに来るべきだった。だが、私が来た!」

 

「オールマイト!!」

 

 その姿を見て、緑谷はその顔から涙を流す。ギプスを動かして目元を覆う。

 

「すみません、オールマイト! 僕は、OFAを、奪われました!」

 

「何だって!?」

 

 それを聞いてオールマイトは驚愕する。受け継がれてきた力、AFOと戦う事を宿命付けられた個性、それが奪われたと聞いた時の衝撃はかなりのものだった。

 

 しかし幸か不幸か、古瀬がその場合に備えて個性を奪い返すための研究を行っている。そして緑谷が敵に捕まったと聞いた時から、その覚悟もしていた。

 

 それに手足を失った緑谷を責め立てるつもりも無かった。この姿だけで、どれ程の激戦を繰り広げたのかが想像できた。

 

「大丈夫だ。あとの事は、私が何とかしよう!」

 

「ま、待ってください、オールマイト!」

 

 立ち去ろうとするオールマイトを緑谷は呼び止めようとする。無理に体を動かして、痛みによって呻く。

 

「僕も、僕はまだやれます!」

 

「今は体を治すことに集中したまえ!」

 

 リカバリーガールが入れ替わりで入ってくる。緑谷はベッドに腕を叩きつけて呻いた。

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