無個性のヒーローアカデミア   作:明灯月陽

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寄り道

 古瀬は破壊されたスケアクロウ社の最上階で、呆然と立ち尽くしていた。作りかけの道具は破壊されて、もはや使い物にならない。

 

 下の階では、捕まったヒーローたちが護送されている。

 

「捕まえたヒーローたちはどうする?」

 

「警察に引き渡すさ」

 

 古瀬は内心、かなりの怒りを抱えていた。送られた後どうなるのか分かっていながらそれを選ぶくらい、はらわたが煮えくり返っていた。

 

 瓦礫の中にある椅子に座って、これからどうするか考える。上手く進めば八月中には完成する予定であった。

 

「諦めるか、別の手を考えるか」

 

「他に手なんてあるの?」

 

「一度奪われて取り戻す展開なら、そういった手段が何かあるんじゃないか? 無限分裂するAFOの倒し方もそうだけど、本来はどういう展開だったんだろう?」

 

 考えても分からない。一先ずこれからどうするかを考える事にした。

 

「もう一度、作るしかないんじゃないの?」

 

「完成しかける度に壊れる賽の河原みたいになりそうで嫌だな」

 

 ビルの修復をドラえもんに任せて、これからどうするか考えていると連絡が入る。死柄木が、捕まえた相澤をアメリカに連れて来るように言っているとのことだった。

 

「抹消か」

 

 死柄木は相澤の抹消を欲している。これを素直に渡せば、他のヒーローは戦う際にかなりの苦戦を強いられることになる。

 

「しかし渡さないわけにもいかないか。せっかく死柄木が居なくなって動きやすくなったのに、戻って来られても困る」

 

 古瀬は相澤を連れてアメリカへと向かう。どこでもドアを使って、死柄木の前に相澤を放り投げる。

 

「連れてきましたよ」

 

「やはりお前は最初からヴィラン側の人間だったのか! 雄英に入学したのも、そいつの命令か!」

 

「……何を言っているんだ?」

 

「さあ?」

 

 古瀬は相澤を引き渡した後、用も無いためすぐに帰る。

 

「それじゃあ、確かに引き渡しましたよ」

 

 そう言って閉めた後、どこでもドアはすぐに消える。死柄木たち、超常解放戦線の人間は相澤の方を見る。

 

「それじゃあ、個性を貰おうか。ハイエンド!」

 

 ハイエンドは相澤の頭を押さえつけて、視線を下に向けて個性が発動しないようにする。死柄木は上から触れて、相澤の個性を奪う。

 

「さて、彼をどうしようか。そうだ、君には逃げるチャンスを上げよう。もし君が無事あの町まで辿り着けたら、見逃してあげよう」

 

「遊びのつもりか」

 

「遊び? 個性のない君では玩具としての価値すらないさ。これは純粋な好意だよ。君に生き残る機会を与えよう」

 

 二体のハイエンドが、死柄木の前に出てくる。

 

「五分あげよう。その後、この二体から無事逃げ切って町に入れたら君の勝ちだ」

 

 相澤は腕と足を負傷している。応急処置はされているが、無理をして動かすことはできない。

 

 逃げるか、戦うか、その二択であった。戦っても勝ち目は無い。それならばと僅かな可能性に賭けて、相澤は逃げる事を選んだ。

 

 最初は足を引きずるが、そこから無理をして走る。足を動かすたびに包帯に血が滲み、顔色が悪くなっていく。

 

「本当に行く気かい? 無茶だ!」

 

「あはは、死んだら葬式はお願いします」

 

 地下から影が飛び出し、相澤の元へと近づいていく。それは相澤を抱えて、空を飛ぶ。

 

「お前は!」

 

「お久しぶりです、イレイザーヘッド!」

 

 灰廻航一が、相澤を抱えて飛ぶ。死柄木は驚いた様子でその名前を呼ぶ。

 

「五分だ。行け!」

 

 二体のハイエンドが灰廻を追う。灰廻は速度を上げて、町に向かおうとする。

 

「おい、どこに向かおうとしている!」

 

「あの町に逃げ込めば勝ちなんでしょう?」

 

「ヴィランが約束なんて守るものか。着く前に町ごと吹き飛ばして、『町』を無くすかもしれないだろ!」

 

「だったらどうすれば……」

 

「別の場所に向かうんだ!」

 

 灰廻が返事をする前に、個性が消えて二人は落下する。死柄木の抹消によって、個性が使えなくなる。

 

 相澤が近くの木に布を巻きつけて、何とか墜落は避ける。しかしハイエンドが二人へと迫ってきている。

 

「イレイザーヘッド、個性が使えないんですけど!?」

 

「ああ、奪われたからな」

 

 足を引きずって歩こうとする相澤を、灰廻は背負おうとする。

 

「後ろに乗ってください!」

 

「俺はいい。お前だけでも逃げろ!」

 

「何しにここまで来たと思ってるんですか!」

 

 灰廻は強引に背負って走る。ハイエンドに追いつかれる前に、何とか地下道へと逃げ込むことに成功する。

 

 地下へとハイエンドが追ってくるが、別の人物がその二体を押さえつける。キャプテン・セレブリティが、二人が逃げるまでの時間を稼ぐ。

 

「逃げられましたね」

 

「うーん、意外な結果だ。まあいい。彼らの個性も、いずれ奪いに行くとしよう。その前に」

 

 死柄木たちの目の前に、ロックロックなどスケアクロウ社の襲撃に参加したヒーローの裏切り者七名がいる。

 

「困るじゃないか。しっかりどこを襲撃するのか教えてくれないと」

 

「イレイザーヘッドが襲撃場所を直前まで伏せていたんだ。でも土壇場で裏切って、他のヒーローたちを捕縛しただろう!」

 

 焦った様子でロックロックは反論する。確かにそうかもしれない、と死柄木は納得したような様子を見せる。

 

「しかし大きな被害を出したようじゃないか。これはどういう事かな?」

 

「仕方ないだろう! 相手はビルボードチャート5位のミルコだったんだ。俺たちの力じゃ止められなかったんだ!」

 

「なるほど。君たちには力が足りないのか。それなら力を与えてあげよう」

 

「待て、待ってくれ! やめてくれ! 俺には嫁と、子供がいるんだ!」

 

「なんだって! それは大変だ。もし死んだら、彼らも同じところに送ってあげよう。それが嫌なら、頑張って僕の役に立ちなさい」

 

 死柄木はヒーローたちにいくつかの個性を与える。絶叫が響き、彼らは日本へと送り返される。

 

「それでは、行こうか」

 

 死柄木率いる超常解放戦線は、町への侵攻を開始する。

 

 

 

 オールマイト一行は、相澤たちが捕縛された事をニュースで知る。スケアクロウ社が元ヒーローの襲撃にあって多大な被害を出した事、そして多くのヒーローが捕まった事を。

 

「相澤先生が……それにミルコも……」

 

「相澤くん……」

 

 オールマイトは襲撃場所がスケアクロウ社とは知らなかった。しかし自分たちが襲撃したのは確かであり、古瀬が自分たちにどのような感情を向けているのかが彼には分からなかった。

 

 この事件によって、元ヒーローは世間から大きく非難される。スケアクロウ社は元ヒーローに対して、直接的に何かしていたわけではない。それなのに破壊活動を行うというのは、それはテロリストと変わらない、と。

 

 現政府に協力している企業は多い。元ヒーローたちの攻撃の矛先が自分たちに向きかねないような、そんな世論になるのは彼らとしては避けたかった。

 

 逮捕されたヒーローは十六名、この数字が事実だとすると、七名のヒーローは逃走に成功したことになる。

 

「あ、この動画見て!」

 

『本日デビューしたシュガーマンが、早速町を荒らしていたヴィランを捕縛しました!』

 

『本日デビュー、チャージズマ! 被災地の復興作業に参加!』

 

 上鳴は周りの女性から、黄色い声援を送られている。それを見て峰田は唾を吐き捨てる。

 

「活躍、しとるんやね」

 

 自分たちは逃亡者、一方で寝返った彼らはヒーローとして活躍している。人を助けていて喜ばしいはずなのに、後悔しないと選んだはずの選択肢を振り返ってしまう。

 

『ヒーローの育成を目的とした臨時学校が各地で開校しています。実技を担当するのは全員がプロヒーローです』

 

 AFOによってヒーロー校が全て破壊されたため、スケアクロウ社が新たな人材育成を目的として、個性の特訓を行うための場所を作った。

 

 周りの時計の針は進んでいる。自分たちは止まったまま。学校に通う生徒たちの明るい顔を見ると、彼らの芯はぶれそうになった。

 

『嘗てはナンバーワンヒーローだったのかもしれませんが、今のオールマイトはただのテロリストです。何かしたいのなら言葉で伝えるべきでした!』

 

『どんな大義があった所でねえ、気に入らないから攻撃するというのであればねえ、それは暴力でしかない!』

 

『我々は毅然とした態度で言わなきゃいかんですよ! 畜生であると!』

 

「違う! オールマイトはそんな事! こいつらは何も分かってない!」

 

「落ち着けよ。金貰って言ってんだよ」

 

 激高する緑谷を峰田が宥める。

 

「これから先、上鳴や砂藤たちとも戦う事になるのかな」

 

「私たちがこうして活動を続ける限り、避けるのは難しいかもしれません」

 

 上鳴の話題が出ると、耳郎は罪悪感から黙り込む。芦戸が声を掛けると、大丈夫だと無理をして明るく振舞う。

 

「空気が暗い! 何か明るい曲を掛けよう!」

 

「オールマイト、この車はどこに向かっているのでしょう?」

 

「逃げ延びた仲間との合流に向かっている。迎えに来てほしいとの連絡があったんだ」

 

 オールマイト一行はロックロックたちに指定された場所へと向かう。早く着いてしばらく待っていると、ロックロックたちが現れる。

 

 幽鬼のように腕をだらりと前に垂らして、屍のように歩いている。

 

「オールマイト……」

 

「ロックロック?」

 

「オールマイトオオオォォォォ!!」

 

 ロックロックの体から、蜘蛛の足のようなものが生える。内側から体を食らわれるように、体から蜘蛛のパーツが現れる。

 

「何だこりゃ!?」

 

 七人の体は異形へと変わる。それらは素早い動きでオールマイト一行へと近づいて、襲い掛かる。

 

「邪魔だ!」

 

 爆豪が殴り掛かるが、足一本で体を弾かれて、木の幹へと叩きつけられる。たった一撃で、動くことができなくなった。

 

「何なんだこれ!」

 

「ロックロック、何があったんだ!」

 

「オールマイトオオオォォォォ!」

 

 根津が全員に、車に乗るように呼び掛ける。彼らは足止めを行いつつ車へと戻るが、爆豪が取り残される。

 

「かっちゃん!」

 

 緑谷が飛び出すが、残り火の使用時間が切れて転倒する。動けない無個性二人に、蜘蛛の足が振り下ろされる。

 

 走って来たバイクが、蜘蛛の体に衝突する。ロックロックはバランスを崩して、振り下ろした足が僅かに逸れる。

 

「君たちは来るたびにピンチだな」

 

 古瀬は緑谷を後ろに乗せて、気絶している爆豪を片手で抱えて車まで走る。既に走っている車に、開けられている後ろの扉から飛び込む。

 

 裏切ったヒーローたちはまだ追ってきていたが、峰田と耳郎と芦戸の足止めによってすぐに見えなくなった。

 

「何というか、やけにタイミングがいいね」

 

「偶然だろ」

 

 尾白は古瀬の事を怪しむが、四月からの付き合いであるメンバーはそうは思わなかった。実際、このタイミングで来たのは偶然である。

 

「彼らに何があったんだ……」

 

「知らないのか? スケアクロウ社を襲撃した元ヒーローは十六名全員が捕まった。残りの七人は全員、超常解放戦線側の内通者だ」

 

「馬鹿な。内通していたなら、なぜあのような姿になったんだ!」

 

「さあ、そこまでは」

 

 車両の後ろでは、緑谷と爆豪の手当てが行われている。その様子を見て、根津は考える。

 

「やはり、別の場所に移すべきかもしれないね」

 

 根津とオールマイトは、生徒たちに安全な場所へと移ることを提案する。

 

「安全な場所、ですか?」

 

「残念だけど、今の僕たちに現政府をどうにかする力は無いのさ」

 

「そのため私たちは元ヒーローたちと接触して、仲間を探そうと思っている」

 

「君たちにはその間、安全な場所にいて欲しいのさ。もちろんただ休むだけではなく、更なる力を付けるために訓練するのさ」

 

 その提案を聞いて、彼らは二つ返事で了承する。手伝えない事にもどかしさを感じるものの、自分たちは力不足であるとも感じていた。

 

「それと爆豪くん、君は別の場所に移動してもらう。個性を失った君が戦う事は難しい。そこでゆっくり休むといいのさ」

 

「ふざけんな! 俺はまだやれる!」

 

「無理すんなよ。さっきだって助けが来なかったら死んでただろ」

 

「クソが!」

 

 拳で膝を叩いて、爆豪は俯いて黙り込む。緑谷は声を掛けようとするが、差し出した手を振り払われる。

 

 それから、彼らは車を停めて少し休憩をとる。

 

 麗日は丘の上から荒廃した街を見つめる。全面決戦以降、治安が急速に悪化した結果、多くの人が安全を求めて瓦礫の街からいなくなった。今ではこの街に人は殆どいない。こういった場所が今は各地に存在する。

 

 同じ場所に緑谷がやって来る。二人は並んで街を見つめる。

 

「麗日さん、これ、飲み物」

 

「ありがと」

 

 麗日は緑谷からペットボトルに入ったお茶を受け取る。

 

「ここで何してたの?」

 

「うーん、何だろう。少し考え事。相澤先生に覚悟を持てって言われたんだ。井梨くんを殺す覚悟を。本当にそれしかないのかなって」

 

 麗日は遠くを見つめる。

 

「ヒーローになるって決めた時は、みんなの笑顔が好きだったんだ。でもヒーローになることが、誰かを殺すことだなんて思いもしなかった」

 

「でもそれは公安が勝手にやってたことで、僕たちは知らなかった」

 

「そうだね。そして知らないまま、いつかそれに加担してたかもしれない」

 

「そんなことない。麗日さんはそんな事しなかった。必ず!」

 

 真っ直ぐな緑谷の目を見て、麗日は笑う。その真剣さは、相手の長所だと思った。

 

「誰かを助けたいだけだったんだ。都合のいいとこばっかり見て、何も見えてなかった。真剣に相手に向き合おうとしてなかった」

 

「都合のいい所ばかりなんて見ていなかったよ。いつも自分の事より他人の事を優先して、人を救けるヒーローだ!」

 

「あはは、そっかな。うん。やっぱり私には誰かを殺すなんてできない。戦うしかなくても、その前に話がしたい」

 

「僕も、戦いは避けられなくても、その奥にあるもは無視したくない」

 

「そだね。それじゃあ私、戻るね」

 

 麗日は丘から降りていく。緑谷を置いて、彼女は先へと歩いて行く。

 

「麗日さん! 僕は、皆を救けるから! 僕が、必ず、救ける! だから大丈夫!」

 

 真っ直ぐ真剣な顔で、緑谷はそう言う。それを聞いて麗日は笑って返事をして、そのまま引き返すことなく立ち去った。

 

 

 

 オールマイト一行は移動中に、襲われている老婆を発見する。襲っているのは二人の異形型、その手には刃物を持っている。

 

 生徒たちは老婆を助けに行こうとする。古瀬が止めようとするが、他のメンバーは飛び出して行った。

 

「何だお前ら! 邪魔するな!」

 

「その人を放してください!」

 

「お婆さんに乱暴を働こうなんて見過ごせないよ!」

 

「おお、助けてください」

 

「ふざけんな! 今更しおらしい演技してんじゃねえ!」

 

 車の中にいる古瀬は、オールマイトと根津に声を掛ける。

 

「いいのか?」

 

「何か問題があるのかい?」

 

「いや、あれは……まあいいか」

 

 面倒な事になりそうだと思ったが、古瀬は他の生徒たちに任せる事にした。

 

 緑谷たちは二人の異形型を蹴散らす。武器を弾かれて、異形型は後ずさりする。

 

「何だこいつら。俺たちは超常解放戦線だぞ!」

 

「だったら、僕たちの敵です!」

 

「こいつらまさか、ダークヒーローか!?」

 

 その可能性に思い至って、二人の異形型は逃げ出す。生徒たちはその後を追うことは無かった。

 

「もう大丈夫!」

 

「おお、ありがとうございますじゃ」

 

 老婆は視線を動かし、車から出てきた根津と古瀬を見て目の色を変える。

 

「よければ村に寄って行ってくだされ。是非お礼をさせてほしいのですじゃ。御馳走を用意しましょう。今夜はぜひ泊っていってくだされ」

 

「いえ、我々は先を急ぎますので……」

 

「いいじゃん、オールマイト。寄っていこうよ!」

 

「せっかくの好意を無駄にするのもなんやし」

 

 賛成多数で村に寄っていくことが決まる。村はすぐ近くで、物陰に隠されている死体を見て、古瀬は顔を引きつらせる。

 

 夕方、彼らは民家の広間にて、夕食が来るのを待つことになる。

 

「そういえばさ、昼間の奴らが言ってた、ダークヒーローって何?」

 

「非合法なヒーロー活動を行ってる人間の事だよ、芦戸少女。全面決戦以降、ヒーローは死柄木率いる超常解放戦線に服属したヒーローと、彼らの支配を良しとしないダークヒーローとに分かれた」

 

「超常解放戦線の支配に従わず、戦い続けている人達ってことですね!」

 

「僕らが仲間にするとしたら彼らだけど、世間からの評価はあまり良くないのさ」

 

「どうしてですか?」

 

「やっていることがヴィランと変わらないからさ。物資の強奪、施設への襲撃、法を無視した私刑、相澤くんの襲撃だってその一つなのさ」

 

「ダークヒーローの活動は市民の生活を脅かしている。安全な場所で暮らす市民にとって、彼らはヴィランと何ら変わりない存在なのさ」

 

「元ヒーローなんですよね。どうしてそんな事を?」

 

「理由は色々とある。現在は富が偏っているためその分配、自分達が食べていくための資金調達、自分たちの脅威になる個性があったら殺しに行ったり、とかね」

 

「そんな事をしているんですか!?」

 

「全員がそうではないのさ。でもそういったダークヒーローがいるのも確かなのさ」

 

「……あれ、ひょっとして僕たちってダークヒーローですか?」

 

「その通りさ」

 

 そのような話をしていると、広間の扉が開け放たれる。老婆を筆頭に、村人が総出で集まっている。

 

「せっかちだな。夕食に毒でも盛るかと思っていたが」

 

「こっちの方が、夕食代の節約になるだろう?」

 

 その光景を見て、生徒たちは困惑している。

 

「え、何? どういうこと?」

 

「鈍いお嬢ちゃんだねえ」

 

「被害者はこの老婆ではなく、襲っていた二人の方だ」

 

「気付いていたのですか?」

 

「いいや。初めは自分たちを差別した村への報復かと思っていた。だがまさか村ぐるみで旅人を襲って金品を奪っていたとはな」

 

「勘違いするんじゃないよ。あたしらが奪っているのはイギョーからだけさ。それを持ち込んだあんたらも同罪ってわけさ!」

 

 この中に異形型はいないが、古瀬と根津のことをそうだと思っている。

 

「せっかく助けてあげたのに!」

 

「ああ、感謝してるさ。ついでに身ぐるみ置いてきな! やりな!」

 

 合図と共に、村人たちが襲ってくる。生徒たちは彼らを吹き飛ばして退路を作る。

 

 車へと走る彼らに、地を埋め尽くす規模の炎が放たれる。村人の中から、一人の男が前に出てくる。

 

「おいおい、こんなもんかよヒーローってのは」

 

「バカモン! やり過ぎじゃ!」

 

 炎の向こう側から、バイクのエンジン音が聞こえてくる。

 

「殿は私が勤める。君たちは先に行け!」

 

 古瀬は男の炎を跳躍して躱し、飛び蹴りで相手を気絶させる。周りが怯んだ隙に、バイクに乗って走り去る。

 

 村から出ると、道の真ん中に尾白がいた。近くに車は無く、一人だけ残っていた。

 

「助けは必要無かったみたいですね」

 

「君一人だけ残ったのか?」

 

「ヒーローとして、置いてはいけませんから」

 

 それを聞いて、古瀬は軽く笑う。後ろに乗るように言って、二人は車を追った。

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