“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!?   作:雪山崇一

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【第一章】『魔王を宿した魔法少女』
第一章(1)魔王は“のじゃロリ”


 魔法(まほう)使(つか)いとなり、魔王を打倒したのも昔の話。

 今は魔法少女(まほうしょうじょ)が魔物と戦っている現代で――

 

 

『(前々から思っておったが……本当にめんこい姿になったのう♪ ――()いやつめ♡)』

 

「お前、本当に前世(あの時)の魔王なんだよな!?」

 

 

 女の子として生まれ変わった(おれ)の中には、その『のじゃロリ魔王』が住み着いている……。

 

          ◆

 

 今年で一三歳を迎えた少女、夜釖(やとう)彩李(さいり)には前世がある。

 ――今から五〇〇年前、魔法使いの少年として魔王と戦った記憶だ。

 

 最終的には相討ちとなって魔王を撃破した……と、思っていたが――あろうことか魔王は死ぬ寸前の少年の魂に寄生(きせい)し、少年を生まれ変わらせた。

 それが五〇〇年後の今、夜釖彩李という少女として生まれ変わった経緯だ。

 

 ――前世の記憶が戻ったのは、ついさっきの事。

 放課後、通っていた学校に現れた魔物(まもの)が放った魔力に巻き込まれた際――前世が魔法使いであった事もあってか、魔力に触れた彩李に魔王との一戦の記憶が(よみがえ)った。

 

『(ほう……伊達(だて)に前世で魔法使いだったわけではないな。

 強大な魔力に呼応するように、記憶が蘇ったか……)』

 

 ――彩李の『中』に潜んでいた“魔王”が声をかけてきたのはその時だった。

 

          ◆

 

『(ふむ……やはり治癒(ちゆ)魔法(まほう)の精度は落ちておるか。じゃが、この程度の傷ならばすぐに治るじゃろ)』

 

「……あぁ、ありがとう」

 

 自分の頭にしか聞こえない魔王の声を聞き、その魔王が『中』から行使した治癒魔法によって、魔力で薙ぎ払われた体の痛みが引いていくのを感じる。

 

「……なぁ、本当にどういうつもりなんだ?」

 

 なぜ魔王が自分の中にいるのかは、記憶が戻った時に聞いた。

 でもどうして前世(かつて)の自分に倒された魔王が、自分を倒した存在にここまでするのか……それがわからない。

 

「俺の魂に寄生してまで復活したのは、俺への復讐のためじゃないのか――?」

 

『(――――――。それはのう――)』

 

 その時――近くの瓦礫が爆破と共に吹き飛び魔王の言葉を(さえぎ)った。

 先ほどは魔物の魔力を受けてしまったが、前世の記憶を取り戻した今は違う。

 吹き飛んできた瓦礫を避け、その場から飛び跳ねる。

 

『(……どうやら私の話は後回しになりそうじゃの)』

 

 ……不本意ではあるが魔王の言葉に無言で同意する。

 瓦礫が飛んで来た方を見る……砂煙の奥から、(くだん)の魔物が現れた。

 

「――っと。悲鳴じゃない声がすると思って来てみりゃ……」

 

 ――それは『ワニ』だった。

 正真正銘のワニではない……二足で歩き、人語を喋り、体から『冷気』を発している“魔法”を行使するヒト型のワニ。

 

「随分と可愛い嬢ちゃんがいるじゃねぇか……」

 

 長い舌で並ぶ歯の表面を舐める(けもの)

 ――これが魔物(まもの)だ。

 

『(可愛い、か……このワニ野郎、中々見る目があるではないか)』

 

(言ってる場合か……!)

 

 内側からの声に、言葉ではなく思考で返す。

 しかしワニの言っていることは間違いではない。

 

 彩李の容姿は、中学生に成り立てとはいえ小柄な体に、全く成長しない真っ平らな胸。

 特徴的なのは、『淡い桃色髪のショートヘアー』に『ナイフのような鋭い目付きと黒眼(こくがん)』。

 

 そんなマスコットのような愛らしさから、何度も男子生徒から好意を向けられたことがあった。

 ……まさか魔物からも向けられるとは思わなかったが。

 

「……他のみんなはどうした?」

 

「あまりにも騒ぐもんだから気絶させてやったよ。流石に全部は無理だったが、魔法少女に対する人質には十分だろ」

 

 言って、ワニが振り返った先には気を失っている生徒や教職員がたくさんいた。

 

「――!」

 

 ギリ――ッ! と、奥歯を噛む。

 ただでさえ鋭い目に確かな『敵意』を灯して、

 

「……おい、すぐにこの学校から出てけ」

 

「へへ……可愛い声して気が強ぇじゃねぇか。嫌いじゃないぜ、そういうヤツ」

 

「もう一度だけ言う……さっさとこの学校から失せろ」

 

「悪ぃがそれは無理な相談だ」

 

 こちらは既に身構え、準備を終えている。

 体はいつ来るかわからない疾走(ばくはつ)に備えている。

 

『(……やる気か。――ならアドバイスじゃ)』

 

 状況を見守っていた魔王が助言する。

 

『(私の(おこな)った転生は“魂”に情報を込め、そのまま次の肉体(じんせい)に送るもの。

 ――記憶を思い出した時点で(きみ)の魂から戦闘能力(・・・・)は引き出され、今の君の体に染み渡っておる。

 ……何が言いたいか、わかるな?)』

 

 ……つまり、

 ――今の自分は“前世”の時の『力』を扱える、ということ。

 

『(自由にするがよい、君なら負けぬ。

 ――あぁ、ただし)』

 

「――――、え……?」

 

 突然、自分の意志とは反して体に纏わりつくように魔力が出現した。

 自分ではないのなら、こんなことをするのは一人しかいない。

 

「お、お前、何を――!?」

 

『(前世の殺し合いから思っておったが、君は防御面には気を配っておらんからの。

 ――コレ(・・)はプレゼントじゃ……ふふっ♪)』

 

 鼓膜(こまく)を震わせるイタズラをする子どものような微笑み(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 言葉の終わりと同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ――。……こ、これは……?」

 

「オ……オマエ、その姿は――!?」

 

 ――気づけば、黒を基調とした服装に身を包んでいた。

 

 上半身は、『赤黒いシャツ』に、『紫の線が奔った黒いフード付きのコート』。

 下半身は、『紺色のミニスカー

 

「――――ちょっと待てぇえええええ!!」

 

 ビクッッッ!? と。

 彩李の変化に驚愕していたワニはその絶叫に驚いていたが、彩李はそれどころではない。

 

「な……なんで……? 何でミニスカートぉ!?

 ――ってか、まずこの服装は何だ!?」

 

『(? なにって、戦闘服じゃが? 魔法少女には『お決まり』じゃろう?)』

 

 あっけらかんとした様子で答えてくる魔王。

 ……しかしその言葉の裏に僅かに笑いを堪えている雰囲気があるのを彩李は聞き逃さなかった。

 

「意味わかんねぇよ! 戦闘服はまだわかる。魔法少女のお決ま、り……も、まだ! わかる!

 でも何で下がミニスカートなんだッ!?」

 

 下半身は『紺色のミニスカート』に『黒いニーソックス』と『赤黒いブーツ』。

 上半身と合わせると、何となく敵として出てきそうな魔法少女の服装だった。

 

『(ふふっ――()いではないか♪ 魔法少女がいるのだから、それに合わせただけじゃ。

 郷に入っては郷に従え、というやつじゃ♪)』

 

「別にいいよ合わせなくて!?」

 

『(――――――はぁ、可愛いのう♡)』

 

「――それが本音だな、のじゃロリぃぃぃぃぃ!!」

 

 見えない筈なのに小柄な少女が『はわ~』と溶けた笑顔になっているのは何故か見えた。

 

『(そもそも何を今更気にしておる。さっきまで学校の制服でスカートを履いていたではないか)』

 

「さ、さっきまでのは……色々と起きすぎてそのままの勢いでいけてたっていうか……」

 

『(ならばコレも別に良いではないか。

 ――既存(きそん)の魔法少女とは違う、新たな魔法少女の誕生じゃ!)』

 

「なんかお前すげぇ楽しそうだな!?」

 

 そんなこんなで魔法少女になってしまった(?)彩李を見て、ワニは警戒の色に染まりながら口を開く。

 

「オマエ、魔法少女だったのか……!」

 

「いや違――」

 

『(いや魔法少女じゃ)』

 

「黙れのじゃロリぃ!! 魔法少女になってたま――」

 

『(私の意志でその戦闘服変えられるんじゃが、いま着てるそれを全部取っ払って、ノーブラ、ノーパンのノースリーブワンピに――)』

 

「――俺は魔法少女だッッッ!!(やけくそ)」

 

 やけくその勢いで魔力が四方八方に飛び散り、ただでさえ破壊されていた校舎がさらに損傷(そんしょう)していく。

 

 完全にドSのじゃロリ魔王に遊ばれている彩李には、新たな魔法少女になるしか道が残っていなかった。

 

「やはりそうか……まさか別の魔法少女がいたとはな!」

 

 戦闘体勢に入ったワニが辺りに吹雪を走らせる。

 右手にはジャラジャラと『鎖』が握られ、今にも振るおうとしていた。

 

『(愉快な時間じゃったが、おふざけはここまでじゃな。

 実際、その黒衣の戦闘服は堅牢(けんろう)の如き防御力を誇る……決してお遊びだけで作ったものではないぞ)』

 

「……お遊びの気もあったんだな、この野郎」

 

 身体能力、知識、魔法。――全て“魂”から抽出(ちゅうしゅつ)済み。

 魔法行使の感覚も取り戻している。

 ――今度こそ本当に、準備は整った。

 

『(――――メイナ(・・・))』

 

「……ん?」

 

『(私の名前じゃ。のじゃロリ魔王とばかり言いおって。

 とにもかくにも――今世(こんせ)での君の戦いぶり、見せてもらおうかのう)』

 

 僅かに弾むような声。

 彩李が勝つことを信じて疑っていない声を聞きながら、少女の初陣(ういじん)が幕を開けた。




夜釖(やとう)彩李(さいり)

 淡い桃色髪のショートヘアーに、ナイフのような鋭い目付きと黒眼が特徴的な、小柄な少女。
 前世は一五歳の魔法使いの少年だったが、今世では一三歳の女の子となっている。

 ……五歳の頃、魔法少女アニメなどをテレビに食いついて見ていた過去があるため、魔法少女系の『お決まり』とかもわかるらしい。
 それをつつくと本人は羞恥心を爆発させて倒れ込むが。


【メイナ】

 ――五〇〇年前に君臨していた魔王。
 現在は、彩李の魂に寄生して現代に蘇っている。
 姿はまだ出てきていないが、前世の記憶を思い出した彩李曰く、語尾に『のじゃ』を使うロリ――のじゃロリだったらしい。
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