“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!? 作:雪山崇一
『……私たちの“妹”?』
その日、ワーニスは一人の小さな女の子を両手で抱いてやって来た。
聞けばコルバから生み出された三人目の魔物との事だった。
『あぁ。長男の俺、次女のお前、そして末っ子のコイツ――アリファだ』
ワーニスは抱いている女の子――アリファを見せてくる。
赤い髪の毛が特徴的なヒトの魔物。
赤子……というほどではないが、まだ言葉を少し覚えた程度の幼子。
人間ならば、ここから言葉を交わせるまでにはそれなりの時間を要するのだろうが、魔物は違う。
この子も恐らく、一ヶ月ほどで自分たちと同じように成長するだろう。
『……で? なんでコイツをここに連れてきたんだ?
赤子のあやし方など知らないぞ、私は』
『そんな言い方ねえだろ。顔合わせだよ、顔合わせ……ほらアリファ、お姉ちゃんだぞ~?』
ニコニコしながらワーニスはミアの前へとアリファを差し出す。
『……』
ため息を抑えながら顔を覗き込む。
無垢な丸々の瞳と目があった。
(っ……どうすれば……)
目の前にいるのは生み出されて日の浅い女の子。
……だが、かく言うミアもまだ生後二ヶ月だ。
どう接すればいいのかなどわからず……とりあえず、頭を撫でてみる事にした。
さらさら……と、優しく撫でる。
その様子をきょとん、とした目で見てくる。
不思議そうに見つめるのはミアではなく、撫でている手。
『どうだ、ミア?』
『……生暖かくて、さらさらしてて……撫で心地がいいな……』
『いやそっちじゃなくてだな……妹に触れてみてどう思ったって事だ……可愛いとか、色々あるだろ』
……妹の目線は、変わらずミアの『手』に向けられている。
まるで猫のように、左右に動く手を目で追い続けている。
それを認識した途端……不意にモヤッとして、
『……全然こっちを見てくれない』
『まだ生まれたばっかりだから、色々とぼんやりしてるんだろうさ。これから見られるようになるから気にするなって』
……ふっ、と。自分でも信じられないくらいに表情を柔らかくして、
『お……お姉ちゃんだぞ~……』
上擦った声でこっちを振り向くように手を振るも、チラリ、と少しだけ此方を見るようになっただけで、いまだに目線はミアと手を行き来している。
『ぬ、ぐ……恥を忍んだというのに……!』
『まだ小さいんだから仕方ねえって』
手は頭から頬へと滑る。
『っ……以外とすべすべしてるんだな』
生暖かく、何処かもっちりとしている肌触りを手のひらに感じていると――すっ……と、アリファが小さな両手でミアの手を掴んだ。
そして――
『――
そう呟いて……ミアの温もりを求めるように自分から頬をくっつけてきた。
『――――――――――――――――』
気づけばもう片方の手がアリファを抱こうと体に手を回しており――微笑んだワーニスはそっと自分から離れた。
自分の胸の中に収まる女の子。
そんな女の子に吸い込まれるように――優しく、愛しく、心地よさを与えるようにその子を抱きしめる。
ぱっちりと開いていたアリファの目は、いつの間にか微睡むように閉じられていた。
『ふっ――どうだ、ミア』
先ほどと同じ質問。
だが答えは全く違うものだった。
眠気に意識を預けようとしているアリファに微笑みながら、ミアはその言葉を口にした。
『あぁ――可愛いな……』
◆
それから約三週間後。
アリファは少しずつ言葉を覚え、自我を確立し始めていた時のこと、
『お姉ちゃん!』
『ん? どうした?』
とてとてと走ってきたアリファに、優しい声で問いかけた。
『これっ!』
にぱっ、という効果音でも付きそうな笑顔で渡されたのは小さな箱だった。
いや……箱というよりは、包装までされている――これはいわゆるプレゼントというものだ。
『私に?』
ブンブン! そんな元気のよい
『開けてみて!』
『……、わかった――』
破かないように包装を解いて箱を開けてみる。
中に入っていたのは、
『――
二つの黒い紐のリボンだった。
『うん。お姉ちゃんへのプレゼント!』
『ありがとう……でも、なんでまた急に?』
『お姉ちゃん、いつもわたしと遊んでくれて、色んなことを教えてくれるでしょ? だから、いつもありがとうって――!』
箱の中に収まっている二つのリボンをなぞる。
生まれて初めてのプレゼント……それも妹からだ。
お姉ちゃんとして、嬉しくないわけがない。
『そうか……じゃあ、遠慮なく』
すっ、とリボンを掬うように持ち上げる。
――プレゼントを渡すのは無事に成功した。
お互いに笑顔になる姉妹の様子を、
『――――ふっ』
物陰から姿を出さないままワーニスは見届けていた。
……プレゼントを一緒に選び、渡そうとするアリファの背中を押したが……見守ることは不要だったらしい。
自分が見守らずとも、きっと同じ光景が広がっていただろう。
それを確信しながら、気づかれぬようにワーニスはその場から離れていった。
『……何処に付けるのがいいか』
『それなら――お姉ちゃん、リボン貸して。それからしゃがんで』
言われた通りにすると、しゅる……という軽い音と共に灰色の長髪が左右で二つに結われ……長髪は、長いツインテールへと変わった。
『わぁあ……! やっぱり――!』
『ア、アリファ……? この髪型は、ちょっと……』
……恥ずかしい、と。
口にする直前で振り返り、アリファの嬉しそうな顔を見た……見てしまった。
『絶対に似合うと思ったんだ! やっぱりお姉ちゃんにはツインテールが合うよ!』
『う……うぅ……』
なんとも答えづらい……ここまで嬉しそうな顔をされると、答える方が罪悪感さえ覚えてしまう。
『に……似合うのか?』
『うん! とっても!』
邪気など一切ない笑顔。
数秒間その笑顔を見て……『はぁ……』、と。思ったよりも速く自分の方が折れた。
『ありがとう、アリファ。大事にするよ』
ぱぁ! と表情をさらに明るくしたアリファが抱きついてくる。
それに驚きながらも、ミアもアリファを抱きしめ返した。
(まぁ、いいか……)
髪型に異を唱えるのをやめたのは他でもない。
別に珍しい理由でも、難しい内容でもない。
“――妹が喜んでくれるのならそれでいい”
……そんな、なんともお姉ちゃんらしい可愛い理由だった。
◆
…………雨に打たれながら歩き続けて、
ほとんど無意識の状態で、
約一〇分。足を引きずり続けた瀕死のミアは、ある一軒家に辿り着いていた。
「ここが……」
……ここから、あの桃色髪の魔法少女の魔力を感じる。
家の中には光が付いている。
まるで光に引き寄せられる虫のように最後の力を振り絞る。
「は…………ぁ……」
ドアノブに、手を……
「――――ぁ…………」
……そこが限界だった。
ドアノブを握れずに力尽きる。倒れ込んだ体は玄関の屋根の下。
とりあえず濡れることはなくなったが、なけなしの体力さえ外にいては奪われてしまう。
「…………………………………………」
ぼんやりとした意識は霧散し、鼓膜に届く音は全て遠くから聞こえているように感じる。
…………やがて音は聞こえなくなった。
…………やがて意識が闇の中へと落ちた。
やがて――――
◆
――玄関から音が聞こえた。
雨か? とも思ったが、それにしては重い物が落ちたような音だった。
「誰か来たのか……?」
晩ごはんを作っていた
ドアノブに手をかけ、それを捻った時、
(っ――この魔力……)
ドアの外に消えかけの――見知った魔力を感じ取り一気に開け放った。
「なっ――!?」
玄関前は血に染まりかけていた。
体中から血を流し、折れた右足はオカシナ方向へと曲がり、血が足りなくなり青ざめて倒れている少女は、先ほど戦ったミアだった。
「ミア……ッ!」
急いで抱き上げる。……呼び掛けても目覚めないが僅かに唇が震えており、魔力も感じられた。
すぐさま両手で抱え、家の中へと入れる。
「何があったんだ……」
答えは彼女が目覚めた後にわかるはずだ。
ベッドへと運び、出来る限りの応急処置に取りかかる。メイナに協力を求めれば、治癒魔法をかけてくれる筈だ。
◆
――――重りが、
純白の魔法少女の手も、自分の手も届かなくて……どうにもならない願いだけが口から
“わたし……死にたく、な――――”
何もかも手遅れ……筒に手を添えていた男が、最後のトドメにと筒を叩いて……、
「――――――――あ、え――?」
気づけば、
何処の家かはわからない……周りには
贅沢な物に
「――無事でなにより
「ひゃあっっっ!?」
耳元からの声にウサギのように飛び上がり、振り返る。
淡い紫のショートヘアーと、
だが……その顔には見覚えがあった。
「え……?
「うむ。この間ぶり、じゃな……それとすまぬ、驚かせてしまったのう。
じゃが安心せい、私は君に危害を加えたりなどせん」
「え、えーと……は……はい。わかり、ました……」
恵弥なりに落ち着こうと、息を整えている。
見知った顔に少しは安心したが……脳裏を
どれほど落ち着こうとしても、小学五年生の少女にすぐに抑え込めるものではなかった。
……その時――、
「ん――、ぁ……」
メイナが恵弥の頭に手を置いた途端、荒れ初めていた精神が静かになった。
「大丈夫じゃ」
メイナは恵弥を緩やかに
「君は生きておる。私が保証する。だから大丈夫じゃ」
ぽんっ、ぽんっ――と背中を軽く叩きながら安心させてくる。
小さな衝撃が流れる毎に、恵弥の息は動揺を忘れていき、自然と
「……あの、メイナさん……ここは、何処なんですか?」
「聞きたいことは色々あるじゃろうが……すまぬな、まずは一仕事こなさなくてはならぬようじゃ」
恵弥が問いを発するよりも速く、その『声』はこの『世界』に響いてきた。
“――メイナ! ミアが酷い傷を負って玄関前で倒れてたんだ! お前の治癒魔法で何とかならないか!?”
「ほわっ!? ……え? こ、この声って、彩李さん……? でも、何処から……」
辺りをキョロキョロ見回す恵弥とは逆に、メイナは天井を見上げながら返事を返す。
「……安心せい。時間はかかるが治せる」
“――本当か!? じゃあ、早速頼めるか――?”
え? え――? と困惑しっぱなしの恵弥を撫でて、
「ちゃんと一から説明するから……少しだけ待っていてくりゃれ」
「は……はい」
魔法の世界に足を踏み入れる事となる少女は、流れに身を任せるように首肯した。
残った全勢力、夜釖家へと集結――!
メイナの手によって、恵弥は生存。
ミアは彩李たちの元へと辿り着いた。
――え? じゃあ恵弥を潰した時に出たあの血は何だったの――?
……ご安心ください。第二章にてそれらは明かされます。
一つ言えることは、『幻界』にいる恵弥は“意識”だけでなく、“生身の肉体”ごと幻界に来ているということです。
第一章終了! 好きなキャラは?
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夜釖彩李
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メイナ
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晴風夢華
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新芽恵弥
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ワーニス
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アリファ
-
ミア
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コルバ