“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!?   作:雪山崇一

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 アンケートを見ると百合展開が見たい人がたくさんいますね――ご安心ください、私も見たい/書きたいです!

 物語は現在真面目パートに入ってますが、それが終わったら百合展開を書きたいと思っています――思いついたシチュエーションはメモしていますので!


第二章(2)もう誰も死なせない

 体はまだ痛むが動けないほどではない。

 魔力を体に流し、眠りから覚まして、

 

「……」

 

 ……黒い紐のリボンを手に取った。

 大切な妹からの、大事なプレゼント。

 解かれていた髪を結い、灰色の長髪を長いツインテールに変える。

 

「――――ふぅ」

 

 左右に垂れる髪の慣れた感覚を感じると落ち着いてくる。

 

「……あの」

 

 そこに恵弥がやって来た。

 向こうで救出作戦を話している二人の話についていけず離れた……というのも考えられるが、そうすると余計にこちらに来る理由がわからない。

 だって自分は彼女が慕う夢華を罠に嵌めた者の仲間で、彼女と話す顔など持ち合わせていないのに……、

 

「えっと……緊張、してますか?」

 

「……は?」

 

 想像の斜め上を行く問いかけに呆けた声を出してしまう。

 それを不機嫌にさせてしまったと思ったのか、あわあわしながら恵弥は手を振って、

 

「あ、いえ、その……ち、違うんです! 不機嫌にさせるつもりはなかったんですぅ~!」

 

「お、落ち着いてくれ。私は不機嫌になってないから」

 

 言葉を聞いて恵弥は落ち着きを取り戻していく。

 ……ミアと会話する切っ掛けを作りたかった恵弥は、『失敗したかな~……』と心の中では泣いていた。

 

「……なぁ……キミは……恨んでないのか?」

 

 失敗はしたが、切っ掛けは作れたらしい……言いづらそうにしながらも、ミアは言葉を並べてくる。

 

「私はキミを酷い目に遭わせたヤツの仲間で、魔法少女を……晴風夢華を陥れた原因の一つなのに」

 

 ……どんな言葉が飛んで来るかわからない。

 恐る恐る、返答を待つ。

 

「……何も思っていない、と言えば嘘になります。

 この街を壊したのも、夢華さんを傷つけたのも、わたしが……殺されそうになったのも……簡単には許せません……」

 

 恵弥自身、相手に対して問題となった部分を指摘するのは初めてなのか、怯えたように言葉が震えている。

 それでも相手の目をきちんと見ながら言葉を口にし、

 

「……でも、だからこそ、」

 

 と、両手で相手の両手を握りながら、そのまま胸元へと持ってきて、

 

「必ず――わたしにあなたを許させてください。

 アリファちゃんを助けると言った事……本当に心の底から願っているんだって、わたし、わかりましたから。

 それを心から言える人は――絶対に、変われますから」

 

 恵弥の観察力は、この場にいる誰にも劣っていない。

 今日、初めて彼女と会ったというのに……『見た』だけで、彩李と似通った気持ちを持てている。

 

「……キミは――」

 

 にひっ、と微笑むように恵弥は笑いかけて、

 

「言葉の次は行動ですよ、ミアさん。

 アリファちゃんを必ず助けてください。わたしもあの()を助けたいですから」

 

「――――」

 

 ――――あぁ。……優しくて――強いな、キミは。

 

 ミアの中で勝つことのできない人物がまた一人増えてしまった。

 彼女が笑いかけているのだ。

 ならばそれに答えるのが礼儀というものだろう。

 

「あぁ――約束する。必ずアリファを助けてみせるさ」

 

 自然と出た微笑み。

 あの日、初めてアリファに向けた微笑みとは見違えるほどの笑顔だということを、彼女は気づいていただろうか――。

 

          ◆

 

「救出には正面戦闘ではなく、コルバの『獣界』へと侵入する……という手法を使うとしよう」

 

「獣界に侵入する?」

 

「その方がコルバからの邪魔が入りにくいじゃろうからな。

 それに、獣界も魔法である以上は行使され続けているはず――私の幻界(魔法)のように、解除すれば魔法(獣界)は消えてしまうはずじゃからのう。

 妨害されずに助けられるのならその方がよい……じゃが、」

 

 彩李との会話の途中でメイナは(あご)に手を置いた。

 

「そのためには道しるべが必要じゃ……コルバに関係する何か。と言いかえてもよい。

 獣界への道を繋ぐには、コルバとの“繋がり”があるモノがあると好ましい。その方が早くコルバの魔法を見つけられるからのう」

 

 そんな都合のいいものあるわけ――

 

 

 

「――――だったら私でどうだ?」

 

 

 

 二人の会話が聞こえていたミアが名乗りを上げた。

 

「……どういうことじゃ?」

 

「私たち魔物は、コルバから生み出された存在なんだ。

 さらには一方的ではあるがコルバからは『念話』をかけることもできる……今は私が死んだと思っているのか、念話の気配はないがな」

 

「っ……ワーニスやアリファを“家族”って言ってたのはそういうことか」

 

 彩李が納得している隣で、メイナもふむふむと納得していた。

 

「それだけ“繋がり”があれば十分じゃ。今すぐにでも行けるぞ」

 

 ニヤリ、とメイナが口の端をあげながら宣言する。

 そして次に恵弥に目を向け、

 

「では向かうとするが……恵弥、君は幻界の中におれ」

 

「幻界って……彩李さんの中の世界、ですよね?」

 

「そうじゃ。この家に匿う事も考えたが……万が一、コルバのヤツが君が生きていることに気づいた時、探される可能性がある……その際に一番安全なのは彩李の『中』じゃ」

 

 理にかなっている。

 彩李の『中』ならば隠れ場所として一番安全であるし、万が一にも探知されることもない。

 それに――

 

「君だって、一人だけ家にいるというのは嫌じゃろ?」

 

 恵弥の心情を見透かした一言。

 恵弥は驚いたように小さく体を震わせた後、強く身を乗り出して、

 

「はい――わたしも、夢華さんやアリファちゃんを助けに行きたいです!」

 

「ならば決まりじゃ。彩李もよいか?」

 

「もちろんだ。異論はないよ」

 

 ……落ち着くために、恵弥は深呼吸をする。

 一時間もしないうちに様々な事を学び、色々な事が動いている。

 それなのに混乱していないのは恵弥の適応力の高さゆえであるが、戦いの場に行くとなると緊張は避けられない。

 ……何より、

 

(夢華さんとアリファちゃん……大丈夫、だよね?)

 

 あれから時間は経っている。

 無事である可能性を告げられたとしても、時間の経過は心を焦らせる。

 

「――恵弥ちゃん」

 

 恵弥の前に歩いてきた彩李が名前を呼んでくる。

 

「――っ、は、はい……何ですか?」

 

「心配なんだよね? 二人の事が……」

 

 ミアの時と同じく表情から読み取った彩李が問いかける。

 ……うん。と、頷き言葉を返す。

 

「無事でいてほしいです……二人とも、わたしにとっては大切な人たちですから」

 

「――大丈夫だ」

 

 願う少女の頭に手を乗せ、恵弥よりちょっとだけ大きい桃色髪の少女は、

 

「彩李、さん?」

 

「大丈夫……大丈夫だよ――」

 

 小さな頭を撫でながらそう答えてみせた。

 

「俺も行くし、みんなも助けにいくからな……だから、」

 

 少女として生まれ変わった『彼』は、にっ、と自然な笑みを浮かべて、

 

「安心して――とりあえず任せとけ!」

 

 頼りがいのある言葉を受けて、恵弥の体は幻界へと引き込まれていく。

 ――その刹那、

 

「――――」

 

 恵弥は彩李の笑顔が、

 まるで活発(かっぱつ)な“少年”のようだと思ってしまった。




 サブタイトルの『もう誰も死なせない』は、彩李たち全員の思いを表している言葉です。
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