“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!? 作:雪山崇一
一分――このドラゴンを相手にできる時間はそれだけだ。
裂け目は数分で閉じてしまう。その裂け目はこのドラゴンの先にある……倒さねば脱出できない。
それを含めた上でのリミットは一分だ――それまでにケリをつけ、裂け目へと走る。
「――っ、」
禍々しい
服が風に踊る中、飛び上がることで黒炎を回避し、建物の側面を蹴り――
「むっ――」
影の腕が再び形を変え、飛び込んできたメイナを捕らえるように『蜘蛛の巣』のように展開される。
止まることも、減速も不可能……このまま蜘蛛の巣に飛び込んで――/――
もはや
――しかし、
(なるほどのう……)
攻撃を対処したことにより翼を折り損ねてしまったが、代わりに影の腕を潰したと思ったのも束の間……水のように弾けた影がまるで
地上に着地しながらメイナは治った黒龍の腕を見上げる。
(治るのは他とは形状が違う腕だけと見た。ならば
メイナと同じ考えに至ったのだろう。
黒龍の
アイコンタクトを取り、迅速に動く。
……弱点は理解した……そのためにも、まずは
二人の
(意外にも頭が回るな……ッ――)
矢継ぎ早に放たれる一撃一撃を
「
「っ――!?」
聞き逃してしまうほどの
その場から跳びはね距離をとると、メイナはゆらりと黒龍に手を向け、
「
――バチィッッッ!! と。
手のひらから雷が弾けたかと思うと――東洋の竜を模した、
正体は雷で編まれただけの
十頭のうちの一頭が胸を貫くまで黒龍は反応することもできなかった。
一頭だけでも感電どころか灰となってしまう威力だが、それでも黒龍は耐え……しかし悲鳴さえ上げれず、全身を貫く雷に体を
(っ――!? ここまで衝撃が……)
体を貫いてもなお、雷は
退避していた彩李のところにまで稲妻は走り、小柄な体を僅かに痺れさせていた。
黒龍は自身を奮い立たせる為に
残る九頭の雷竜は逃げる黒龍を追い方向を変え、追撃の手を緩めない。
しつこく迫る雷竜を焼き払おうと火炎を放出するが、九頭の竜は当然のように回避し――、
「――誰と戦っておるのか忘れておらぬか?」
背後からの
巨体を殴り飛ばされた黒龍は飛来していた
黒龍の巨体が一瞬で地上に叩きつけられ、
――――示し合わせていたように彩李とメイナが即座に『影の腕』を破壊し、両腕が水のように弾け飛ぶ。
……だが問題はない。
この程度、先ほどのように再生し/
「私が得意とするのは『
……腕が再生しな――
「それ以外も使えぬわけではないぞ――?」
――『氷の魔法』。
得意としない魔法でこれだけの行使ができるという事実は、それだけ
影の腕は再生はするが、それはあくまでも
……その残骸ごと凍らせてしまえば再生できず、腕は治らない……それがメイナと彩李が見抜いた『弱点』だった。
「時間がないのでな――そろそろ終わりにするぞ」
再び飛び立とうとした黒龍の
大幅に機動力を失った黒龍の頭へメイナは雷を
◆
背中の全てを失った激痛からか、表情を歪めている黒龍へと真上から剣を振り下ろす。
――だが、
「っ!」
……四翼と影の腕を失おうと、まだ体が残っている。
影の腕ではなく、自らの両腕を使い彩李を始末しようとしてくる。
大きな右手から魔力を
「ちっ……!」
咄嗟に身を捻り鞭をギリギリで回避するが……次に待っていたのは開かれた口より放たれる炎――ではなく、収束され一条の光と化した魔力砲。
……避けたばかりの体勢では対処が遅れ、
「しまっ――」
――ギンッ!! と。
彩李の得物である黒紫の剣が弾かれ手元から飛んでいく。
その隙を見逃す黒龍ではない。
得物の次は本体――収束砲は
たとえこの瞬間に殺されようとも、お前だけは殺すと言わんばかりに、極限にまで圧縮された魔力が解き放たれる。
◆
その時だった――
咄嗟に防御しようとした彩李の後方より飛んできた
「これ、は――」
――
一切の
この剣の持ち主を知っている。この剣と共に人々を守っていた存在を知っている。
自分のような形だけの存在とは違う……正真正銘の――
「――
みんなを助ける、
「――
ありったけの声が背中を押してくる。
彩李を救ってくれた純白の剣は
……
「――
彩李を救うのは
ひゅんひゅんひゅん――と……
大きく
「ありがとう……使わせてもらうぞ――っ」
ノールックで
一本は純白の剣。――今しがた投げられた夢華の剣。
もう一本は
右手に純白の剣。左手に雷剣。
――
それを振るうは生まれ変わりし
「ッ――!!」
空中から地上へと魔力で自分を打ち出す。
純白の剣が丸太のような黒龍の右腕を切り飛ばし、雷剣が煌めきを残しながら左腕を両断。
黒龍が反応するよりも速く残る両足も切断する。
……雷剣が雷となり、純白の剣へと収束する。
「はあああああああああああああーッ!!」
視界を染める輝きが弾けて満ちる。
純白の一閃が世界を激震させる。
――魔法使い、魔王、魔法少女の連携により、この世界最大の敵は打ち払われた。
◆
「っ……! よし、間に合った!」
黒龍を倒し、その先にある裂け目まで辿り着く。
裂け目は入ってきた時より小さくなっており、後少しで閉じてしまうところだった。
ギリギリだが間に合った……その事に安堵しながら夢華たちに入るよう
「二人とも、この裂け目だ! 恵弥ちゃんから聞いてるかも知れないが、この裂け目に入れば俺の家に辿り着く」
「……恵弥から聞いてはいたけど、本当にトンでもない方法で入って来たのね」
裂け目を見ながら
「まずは君たちから入るとよい。一気に入っては向こう側で
「うん……ありがとう」
「それじゃあ彩李さん、先に行ってますね」
慌てずゆっくりと、アリファ、夢華、恵弥の順で裂け目へと入っていき、この世界から一足先に脱出した。
三人が脱出した後、
「アリファたちは出れたか?」
「あぁ。次は君が
「っ――、……ん。わかった、先に行かせてもらう。
……お前たちも急いでな」
大鎌を手から消滅させ、ミアは裂け目をくぐった。
「メイナ、俺たちも行くぞ。……、メイナ?」
裂け目の前で振り返ると、メイナは彩李の方ではなく獣界を見渡していた。
……そして納得したように『ふむ』、と頷くと、
「なるほど、やっかいじゃな……ならば――」
「メイナ、どうしたんだ?」
「彩李、君は先に帰っておれ……私も
「っ……わかった……速く来いよ?」
何をするのか気になりながらも、言われた通りに裂け目へと足を踏み入れた。
これで獣界に残っているのはメイナのみ。
「これで
裂け目から一歩離れ、右手の人差し指と中指を合わせ、ゆっくりと左斜め上へと上げていく。
「パッと見た感じじゃが……この獣界、今倒した獣も時間が経てば復活するらしいのう。
……
ニヤッ、と怪しげな笑みを浮かべながら立てた二本の指に圧縮した雷を纏わせる。
「じゃから――こんな嫌がらせはどうじゃ?」
圧縮された爆発寸前の雷を、まるで剣を振り下ろすように、
指を腕ごと振り抜き――
――――
世界を両断する魔王の
この世界に刻まれた大きな裂傷。
切断面に
「世界の崩壊じゃ……存分に楽しむがよい♪」
歌うように言葉を踊らせ、閉じかけの裂け目に身を滑り込ませる。
…………そして、
◆
「――――っ、な、に……?」
異変はすぐに起きた。コルバが眉をひそめる。
体の内側より強い衝撃がきたかと思うと、次の瞬間には溜まっていたものが破裂したように、胸が、くるし、く――――
「――ガッッッ!? ア゛……ガ、ァアアアアアアアアアッ!?」
胸が突き破られそうな激痛。止めようとしても体の内側では止めようがなく、原因を突き止めようとしても思考が回らず、
「グッ……! ッ!? ……ま、まさか――!」
……むしろその激痛が答えを弾き出してきた。
まさか……まさか――ッ!?
「獣界が、崩壊した……?」
己の内側に展開している獣界が崩壊したとでも……?
……いや、それしか考えられない。何故ならこの痛みは、
「うっ!? グ、ガァアアアアアアアアア!?」
止むを得ない――発動していた獣界を解除し、獣界や獣たちを強制的に消滅させる。
……そんな事をすれば、取り込んでいた夢華とアリファが出てきてしまうわけで――
「――――な、」
出て、こない……?
「どういう、事だ……?」
すでに自分の力に代わったのかと思ったが、そんな感覚はなく、『幻』を行使することはできない。
「何が起きている……? 俺の獣界に、何が――?」
それとも――――。
痛みを握り潰すように胸元を握り締めて、
「何者かが……俺の獣界に、干渉を……?」
答えはわからない。
わかるのは『あり得るかもしれない』という可能性だけだった。
……ただ、一つ確かなのは、
「ちっ……」
……獣界は、今までのようには使えないレベルにまで壊れてしまったという事だ。
多くの過去が明らかになった『孤独な純白の魔法少女 編』……別名『獣界 編』はもうすぐ終わります。
そうしたらしばらくは平和な日常/百合パートになるかも……書きたい話がたくさんあるんです!