“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!?   作:雪山崇一

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第一章(3)魔王のサキュバス化

 何度も()んで、()ねて、家についた。

 両親は海外に長期出張しているので家にはおらず、今は完全な一人暮らし状態だ。

 ――落ち着いてメイナと話をするのにも丁度いい。

 

『(ずっと君の中におったからわかるが……。

 君、ひとりで気楽だー! とか思っとったが時間が経つにつれて寂しくなっておったな♪)』

 

「ッ!? そ、そんなとこまで見てたのかよ!?」

 

『(当然じゃろ。こうして話しかけなかっただけで私は君の中にずっとおったのじゃからな……それこそ、転生している最中の“魂”の時から。

 じゃが安心せい。これからはこのスーパー美少女メイナちゃんが誰よりも傍から、君に絡み付いて声を(ささや)いてやるからの♡)』

 

「変な言い方するな! ゾワゾワするだろ……!」

 

『(く、ふは♪ ……本当に――人間らしくなったのう)』

 

 急に慈愛(じあい)に満ちた言葉を(こぼ)してきた魔王に戸惑いを覚えながら着替え始める。

 魔法少女としての黒衣は『念』を発せれば着脱可能とのことだった。その辺りは魔法と変わらないらしい。

 

 ネクタイを取って、ブレザーを脱いで、シャツのボタンを外して……と、その時にふと思った。

 

「……なぁ、メイナ」

 

『(なんじゃ?)』

 

「声を出さないだけでずっといた、って言ってたけどさ……それって、着替えとか風呂の時とかも……?」

 

『(当然じゃろ。君の『中』にいるのだから……)』

 

「……………………」

 

 ……女の子として過ごしてきた人生があるからか、メイナのその一言に対し、自然とこの言葉が出ていた。

 

「……変、態――っ」

 

『(……前世の記憶が蘇っても、女の子としての意識と混ざっただけじゃからな。

 ――今の、とても女の子じゃったぞ♪)』

 

「うるせ(小声)」

 

 シャツの次はスカートを外し、着替えの服をクローゼットから――

 

『(ほう♪ 清楚な白い下着に黒いニーソックスが映えるのう♪)』

 

「――はっ倒すぞ変態がァッ!!」

 

 頬を染めた少女の激怒も鼻歌で受け流される。

 どっと疲れながらやっとの思いで着替える。

 

 といっても、白のブラウスに黒いジャケット、黒いショートパンツというラフな格好だが。

 

「さて……じゃあ、話をするか」

 

 ベッドの上で胡座(あぐら)になりながらメイナに問いかける。

 

「お前、前世で俺が倒した魔王なんだよな?

 ――どうして俺を助ける?」

 

 先の戦闘だけでなく、自分への話しかけ方や周りへの気の配り方などから、彼女に敵意がないのは承知している。

 ……だが、それでもわからない。

 どうして彼女は自分を助けてくれるのか――。

 

『(そうじゃな……。

 ――では、直接顔を合わせて話すとするかのう(・・・・・・・・・・・・・・・・))』

 

「は――? それって、どう、いう…………」

 

 どさっ、と。

 体から力が抜けたようにベッドに倒れ込む。

 なんで? どうして――? ……そんな事を考える間もなく意識は沈んでいき――――、

 

          ◆

 

「――――ぁ」

 

 目が覚める。

 意識が覚醒すると……そこは見たことのない部屋の中だった。

 ……いや、正確には自分の家に似ている。

 似てはいるがそれは大まかな形だけであって、細部の装飾が違う。

 

 ここは自分の部屋に似ているが……明らかに部屋の広さも、物も違う。

 あんなふかふかのお高そうなベッドなんて置いていないし、テーブルの上にはお菓子の詰め合わせもなければ、こんなデカイ薄型のテレビもない……。

 

 そんな不思議な部屋のソファーの上に、彩李は横になっていた。

 

「何処だ、ここ……?」

 

 未知のものに目を奪われるように、起き上がりながら部屋の中を見渡し、

 

「――気がついたか?」

 

「おひゃあっっっ!?」

 

 耳元からの声にウサギのように飛び上がり、振り返る。

 そこには――彩李と同じ長さの淡い紫の髪と、紺色(こんいろ)の瞳が特徴的な、小柄な彩李よりもさらに背が低い少女の姿があった。

 その瞳には歓喜がある。……久しぶりに彼/彼女に顔を合わせられたことを喜んでいる少女。

 彩李はその少女に見覚えがあった。

 

「――――魔王(まおう)……」

 

「こうして会うのは久しぶりじゃな。

 と言っても、前世(まえ)の君は性別も違かったし、殺し合いの時に一度顔を合わせた程度じゃったがな……」

 

 五〇〇年前。

 一五歳の魔法使いの少年であった時の彩李と殺し合い、相打ちとなった魔王その人だ。

 彩李とは違い、前と何も変わらない姿のまま少女は彩李を出迎えていた。

 

「ここは、私が君の『中』に作った現実とは異なる世界。

 ――ま、大雑把に言ってしまえばここは私がいる君の『中』じゃ。現実世界の君の意識をこの『中』に引き寄せた」

 

「俺の、『中』……」

 

 部屋が広い(羨ましい)薄型テレビ(羨ましい)お高そうなベッド(羨ましい)

 

「…………ずいぶん楽しそうだな、俺の『中』」

 

「……む? 嫉妬か?」

 

 ふ~んだ、と顔を背ける彩李。

 その様子にクスクスと笑いながらメイナは歩いてくる。

 

「魔法で作り出した、本来なら存在しない別の世界。

 魔法を(解除)すればすぐに幻のように消え去るこの世界……あえて名を付けるとしたら――『幻界(げんかい)』。といったところか」

 

 すっと、エスコートするように手を取り歩く、

 

「どうじゃ? 顔を出しての会合の場としては持ってこいの場じゃろ?」

 

 彼女の服は前世(むかし)のような裸マントではなく、

 現代に沿った、白いブラウスに上から羽織った紺色のカーディガン。

 紫のミニスカートに両足を包む黒いタイツ――ぴらっ(・・・)

 

「ほわあ……っ!?」

 

「ふふふ……本当に君は()い反応をするのう♡」

 

 何の真似か自分の履いていたスカートをぴらっ、と(めく)ってきやがった……!

 無論そんな事をすれば黒タイツ越し下着が(あらわ)になるわけで――

 

「にゅわ、にゅわにをしてるっっっ!?」

 

「サービスじゃ♡」

 

 と、ウインクしながら返してくる魔性の女。

 あれよあれよという間に、ベッド前へと(・・・・・・)手を引かれていく。

 

「あ、朗報を一つ。……タイツを履きかけてる時の足、とんでもなくエロいぞ? 特に太もも辺りが――」

 

「――もういいから要件に入ってくれぇ――っ!」

 

 羞恥心から声が上擦り顔を全力で背ける彩李。

 魔王はそれを面白がるように眺めると、

 

「それ――♪」

 

「へ? おわ……!?」

 

 油断していた彩李をベッドへと押し倒し、その上から乗るようにして押さえつけた。

 ……彩李よりも小柄な体だというのに、押さえつける両腕は彩李が力を込めてもビクともしなかった。

 

「要件は二つあってな。一つは君の質問に答える事――そしてもう一つは……」

 

「え……? いや、お、おい――!?」

 

 ゆっくりと顔が近づいてきて、吐息がかかるくらいの距離で止まり、

 

「君の戦闘服や、広範囲の治癒魔法の行使も合わさり、

 かなりの魔力を消費したからな……さて――どう吸ってやろうかのう♡」

 

「え――? いや、ちょ!? ま、待ってぇええええ!!」

 

 喰われる――!?

 そう思い反射的にもがきだすが、押さえつける力は逃がす事を許さなかった。

 

「ふん、ふん――♪」

 

「あ……ちょ、メイナ――っ」

 

 すりすり、と。

 自分の頬を彩李の頬に当て、猫のようにすりすりとしてくる。

 柔らかな肌が頬を滑る感触。こんなのは初めてで、何処か心地よい……悔しいが、何処かこの頬ずりを受け入れている自分がいた。

 

「抵抗が少なくなってきたのう」

 

「――――ふあ……!?」

 

 すっ……と。

 黒タイツに包まれた彼女の膝が、彩李のショートパンツとニーソックスの間の絶対領域(ぜったいりょういき)に差し込まれた。

 唯一(さら)している素肌に走った感触が、前世で男だったとは思えないほどのキュートな声を発させた。

 

「ちょっと、待って……! や、やめろって……」

 

 顔は熱く、湯気が出るほどに真っ赤に染まっている。

 自分を見下ろす捕食者の瞳は彩李からどんどん覇気を失わせていき、

 

「や……やめろよぉ……」

 

 遂には絞り出すほどの声しか出せなくなった。

 

「ふふ――♪」

 

 それすら捕食者にとっては追い風にしかならなかった。

 自分の唇を舌で湿らせたメイナは、逃げ場のない彩李を追い詰める。

 

「メ……メイ、ナ……」

 

「やめてほしいのかえ? ――満更でもないくせに♡」

 

 近づいてくる魔王――いや、可愛い女の子。

 

「ぁ――――、ん――――」

 

 やがて自分から力を抜いた彩李は受け入れるように目を閉じて。

 

「――――――――――――、へ?」

 

 頬に触れる唇の感触を感じ取った(・・・・・・・・・・・・・・・)

 予想とは違う展開に『あ、あのー……』と口をパクパクさせる。

 するとメイナはその反応を楽しむように口元を緩ませ、

 

「なんじゃ? 口に接吻(せっぷん)して欲しかったのか――?」

 

「っ!? ぁ、いやその、ち、が――!」

 

 ――う。とまで出したいのに、動揺から息が詰まり上手く声が出てこない。

 声が出てくるより先に、メイナは再び眼前まで寄り、

 

「ならば“お願い”するがよい――キスしてください、とな」

 

「――――な……!?」

 

「君のお願いならば……喜んで重ねよう――」

 

「あ……あ、ぁ――か、あ――――」

 

 限界。もう限界だった。

 目の前がぼやけ、体がわなわなと震え……意識が、

 

「――きゅ~~~……」

 

 ぐるぐる目になった彩李は自らの恥ずかしさに意識を沈まされた。

 

          ◆

 

「やり過ぎてしまったかのう……」

 

 そんな気持ちなどさらさらないメイナは気絶した彩李から起き上がる。

 戦闘服を着させた時や、からかった時の彩李の反応を見て、サキュバス染みた事をしてしまったが、彩李の可愛い姿を見られたため何の後悔もしていない。

 

「じゃが魔力は貰った。一つ目の要件は済んだな」

 

 くくっ、と小悪魔のように笑う。

 

 ――本当は『中』にいるため、メイナは彩李の魔力をいつでも引っ張ってくる(・・・・・・・・・・・)ことができる。

 だから肌が触れ合うほどに接触する必要はないのだが――あえてこんなやり方を取ったのは、彩李と顔を合わせたかったという思いと、からかいたかったという下心からだ。

 …………うん。やはりコイツは魔王である。

 

「――――」

 

 彩李の体勢を整えて、布団をかける。

 そのまま頭を撫で続ければ、彩李から動揺の色は少しずつ消え……すー、すー、と寝息を立て始める。

 その寝顔を眺めながら彩李の言葉を思い返す。

 

 

 

 

『お前、前世で俺が倒した魔王なんだよな?

 ――どうして俺を助ける?』

 

 

 

 

「どうして、か……」

 

 それには何の裏もない。

 ただ自分がこの子を支えたいから。

 

 あの過去を見た時に(・・・・・・・・・)そう誓ったのだ(・・・・・・・)……。




【メイナ】

 魔王の姿、遂に初お披露目!
 淡い紫色のショートヘアーに、紺色の瞳が特徴的。彩李よりも背が小さい。
 前世では裸マントだったらしいが、今は現代風の衣装に身を包んでいる。
 彩李の事はからかうが、彼女を支えようとする気持ちもまた本当。

          ◆

 メイナはなぜ彩李に力を貸すのか、次回はメイナの回想。

          ◆




“……たとえ殺す瞬間であっても、
          君からは殺意を感じなかった(・・・・・・・・・)
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