“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!? 作:雪山崇一
学校は魔物が暴れたことにより半壊し休校に。
突然休みとなった日を使い、近所にできた動物と触れ合える大きな公園へとやってきて、
「それじゃあみんな、気になった事や何かして欲しい事があったら、すぐにお姉ちゃんに言うんだぞ!」
『はーい!』
――いま現在、彩李は幼稚園の子どもたちを連れて引率のお姉ちゃんをやっていた!
え? どうして――? と思うかもしれないが、答えは近くの日陰のベンチにある。
「……ごめんね彩李ちゃん、引率を手伝ってもらっちゃって」
「全然大丈夫ですよ! 俺も子どもたちと笑いあえて楽しいし!」
ベンチに座っているのは幼稚園の先生。
先ほどまで子どもたちの引率をしていたのだが、軽い貧血を起こし倒れてしまい、そこに偶然通りかかったのが彩李だった。
「先生は体調が優れるまでは日陰にいてください。
子どもたちの様子は俺が見てますから」
「ありがとうね。彩李ちゃんみたいな子がいてくれて、本当に助かるわ」
にっ、と笑い返し、子どもたちの元まで向かう。
『(二つ返事で引き受けおって、お人好し)』
「べ、別にいいだろ……困っている人は見過ごせないし」
『(君は幼子の頃から男女問わず人助けには積極的じゃったな。
……ま、君らしいから構わんが、人を疑う心も忘れぬことじゃ)』
アドバイスを飛ばしつつも、そのメイナも穏やかな瞳で動物と触れ合う子どもたちを眺めている。
『(ん?)』
ふと、『狐との触れ合いコーナー』という看板が目に入り……少しの沈黙の後、
『(彩李、狐との触れ合いコーナーに――)』
「気持ちはわかるけど後でな」
『(んな!?)』
「子どもたちをおいて触れ合いコーナーには行けないよ」
『(むぅ~……)』
五〇〇年も傍にいるからか、目には見えずとも頬を膨らませているメイナの姿を感じとれた。
「そもそも俺が触ってもお前には触れないんじゃないのか?」
『(触れずとも『感覚器官』を共有すれば、その感覚を味わえる)』
「……そういや、この前話された内容にそんな魔法があったな」
その内容とは『なぜ俺に力を貸すのか』というもの。
前世の
「ねぇねぇ、お姉ちゃん!」
「ん? どうした?」
駆け寄ってきた幼稚園児の目線に合わせるように、膝を折りながら問いかける。
「あっちでね、狐さんを触れるんだって!
お姉ちゃんも一緒に――」
「――行く!」
『(――行く!)』
メイナのみならず彩李さえも食い入るように肯定を示した。
どうやら狐をモフモフしたかったのは彩李も同じだったらしい。
目をキラキラと輝かせる彩李の手を取った園児は、彩李を触れ合いコーナーへと連れていき……そして、
「はぁ~~~~~!!」
自分の番が来た彩李は、むぎゅう~と優しく狐を抱きしめていた。
人懐っこい狐だ。抱きしめても嫌がらず、離れようともしない。
狐の毛並みをこれでもかと堪能していると、
『(ほわぁ~~~~~! これじゃ、この毛並みぃ~……もう~
幸せそうな彼女の声が内側から響いてくる。
たっぷりと、最大三分間の触れ合い時間を堪能した彩李とメイナは、幸福感に包まれながらそのエリアを離れる。
「いや~最高だったな~」
『(ホントじゃ……どうして三分間しか触れ合えんのじゃ)』
唇を尖らせるメイナを胸に、彩李は今も触れ合いコーナーにいる子どもたちを見ていると、
「少しいいかな? そこの桃色ちゃん」
「?」
背後から声をかけられ振り返る。
そこには灰色の長髪を黒い紐のリボンで長いツインテールにした少女が立っていた。
「えっと……俺?」
「そう。この辺りで桃色髪の少女なんてお前しかいないだろ……?」
コツ、コツ……と、近くまで歩み寄ってくる。
彩李の体を舐め回すように灰色の少女は目を動かし、
「……なるほどね」
納得したかのように目を伏せた。
一体何に納得したのか……それを聞くために口を開こうとし、
「ワーニスの言っていた新しい魔法少女とは……お前で間違いなさそうだ」
「ッ!?」
その一言で、
彼女が敵側の存在だと理解した。
どうするべきかを考える……ここで戦うのは論外だ、人が多すぎるし、何より子どもたちがいる。
かと言ってもコイツが素直に場所を移動してくれるとは思わないし――
「まぁ落ち着け……ここではなんだし、誰にも聞かれない所に場所を移そう。ついてこい……」
背中を向けて、ついてくるように言ってくる。
……まさかの自分から場所を移動してくれた。
『(予想外だが好都合じゃな。少なくとも子どもたちからは離れられる)』
メイナの言葉に心の中で頷きながら跡をついていく。
辿り着いた場所は休憩所の小屋の後ろ。といってもドアはなく、屋根と座る場所がある人がよく来る小屋の後ろ……。
『(……いや他の者に聞こえるじゃろ、ここ)』
「っ――!」
メイナの発した言葉に鼻で笑ってしまう。
「? どうかした……?」
「あ……いや、何でもない……」
「……半笑いだぞ……?」
不機嫌そうに眉間に
彩李も迎え打つように居住まいを正した。
「まずは自己紹介だな。
私はミア。『ノクス』の一人だ」
「ノクス……?」
「私が所属する組織の名だよ……我らの目的は『
「――ッ――!」
息を飲んだのは彩李だけではなかった。『中』にいるメイナもそっと息を吐きながら、
『(……そんなことさせるわけにはいかんのう。
魔物へと変えられれば、私たちや魔法少女は耐えられても、一般人は変化に耐えられずに死ぬじゃろうからな)』
「……何でそんなことがしたい?」
「ボスがそれを求めているからさ。
まぁ……この目的は『ボスの願望』であり、幹部である私たちが望んでいるものではないがな。
――私たちの目的はその願望を邪魔する者を排除すること。……そのために私はお前に声をかけたんだ。
スッ――と、目が鋭くなる。
体内の魔力が高まったことに気づきこちらも体に魔力を走らせる。
「前に戦ったワニの魔物……アイツもお前の仲間か」
「ワニ? ――あぁ、ワーニスの事か。
お前の世話になったようだな――お陰でトラウマになって軽い幼児退行を引き起こしていた」
「――――え?」
◆
『強ぇんだよ、マジ強ぇんだよ……ッ!
……ぐす……ずずっ……何だよ、何なんだよあの桃色野郎は……!』
『よしよーし。大丈夫だよワニちゃん♪ こわーい魔法少女はここにはいないからねっ!』
『う……うぅ……! アリファ……!』
『抱きしめ~、からの撫でなで~』
◆
「という感じで仲間に慰められててな」
(……なんだろう、ちょっと申し訳なく思えてきた……)
『(というか生きとったんじゃな、あのワニ)』
ギュオオオオッ!! という渦の魔力がミアから展開される。
それが戦闘を行う合図だと気づき、こちらも黒衣を身に纏おうとする。
……その時だった。
「……お姉ちゃん?」
背後の物陰から先ほど彩李の手を引いた女の子が顔を出した。
彩李の姿が見えなくなったから、声が聞こえたところまで探しに来たのだろう。
しかし間が悪い……今ここには、すぐにでも襲いかかって来そうな魔物がいる。
「ダメだ! 今は来るな!」
「……え?」
突然の事に呆けてしまっている。
そうしている間にもミアは切りかかってきて――
「――――、え?」
……
「……どうした?」
「いや……だって、その……」
「切りかかる絶好の機会――か?」
脳内を見たかのように言葉の先を告げてくる。
はぁ、とため息を溢し、
「私の目的は
そこの子どものような無関係な人に危害を加えるようなことはしないさ。
ワーニスの人質戦法のような卑怯なやり方も嫌いだしな」
早く子どもたちに戻るように言え、とでも言うように腕を組みながら休憩所の壁に背を預ける。
……そんな彼女に不思議な気持ちを芽生えながらも、女の子に戻るように伝え――
「みんなー! お姉ちゃんここにいたよー!!」
「え?」
「ん?」
女の子が大声を上げると、それに釣られるようにして引率していた幼稚園児たちがゾロゾロとやってきて腕を引っ張ってくる。
「彩李さん、向こうのパネルで写真撮ろうよ!」
「桃色の姉ちゃん! あっちでウサギを抱っこ出来るんだって! 一緒にいこっ!」
「み、みんな……ちょ、ちょっと待って! いく! ちゃんとお姉ちゃんいくからぁ!?」
「お、おい!?」
幼稚園児とミアを交互に見ながら彩李は子どもたちに連れられていく。
ミアが彩李を掴むよりも先に幼稚園児たちによって彩李は運ばれ、
「ねぇ、あなたは彩李さんのお知り合いなんですか?」
集まっていた園児の一人に声をかけられる。
「え……? ……まぁ……そう、だな」
出会って二分の関係を知り合いという枠に入れていいかは微妙だが……園児の問いに肯定を示すと、
「じゃあ、あなたも一緒に遊ぼうよ!」
反応する間もなく園児に手を引かれていく。
「へ? い、いや待て! 私は桃色髪の少女に用があるんであってお前たちと遊んでやれる時間は――」
「とっても楽しいよ! 動物さんとも触れ合えるし!」
「は、話を聞いて! 私は動物と触れ合いにきた訳じゃない!」
「……動物、嫌い?」
「いや嫌いというわけじゃ……。
――うっ……落ち込んだ顔をするな女の子。
「おーいみんなー! このツインテールの姉ちゃんも遊んでくれるってー!」
「ちょ……! は、背後の子ども! 髪を引っ張るな話を勝手に進めるな何で今日は何もかも上手くいかないんだぁぁぁー!?」
半ば強制的に連れられていくミア。
その場にあった光景は、魔物が大勢の幼稚園児に引っ張られるという冗談のような光景だった。
【ノクス】
この作品における敵対組織。
――“この世界を『魔界』へと変え、全ての生き物を魔物へと変えること”を目標としている。
【ミア】
ノクスのメンバーの一人。
ノクスの一員ではあるのだが、誠実な性格であるがゆえに『無関係な人には手を出さない』というワーニスとは違う一面を持つ。
……それ故に最後には幼稚園児に連行される事となった。