“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!?   作:雪山崇一

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※【1月30日】
・サブタイトルを一部変更。


第一章(7)調子に乗ったメスガキ(新たな敵)の末路

「――だ、誰にも言うなッ!」

 

 鬼の形相(ぎょうそう)で(しかし顔は可愛いほど真っ赤)詰め寄ってくるミア。

 ……しかし猫は大事そうに両手で抱えている。

 

「い、言わない言わない! 誰にも言わないから安心しろ……!」

 

「本当だろうな……?

 ……もし口を滑らせたら――」

 

 シュ――、と。

 何処から取り出したのか死神のような大鎌を彩李の首筋に当ててくる。

 

「――――」

 

 命の危機という怖さはある。

 …………だけど……そのぉ……、

 

「~~~っっっ!!」

 

 その恥ずかしさを我慢する顔、もう少しどうにかできない……?

 怖さより可愛さの方が(まさ)ってるんだけど――。

 

「……喋らないから大丈夫だ、本当に」

 

 ……でもそれを指摘したら首が空を舞って“さようなら~”と別れを告げて来そうなので必死に飲み込む。

 最終的には『ふぅ……』と落ち着くように深呼吸したミアが大鎌を仕舞い、再び猫を両手で抱いた。

 

「……猫、好きなのか?」

 

 軽い気持ちでそう聞くと、

 

「――――当然だ!

 こんな可愛い生き物、嫌いなやつがいるか!?」

 

 瞳に星を浮かばせながら興奮したように声を上げてきた。

 

「ちょっとした仕草でも可愛いのに、ごろにゃ~んした時のあざとさに加え、頬ずりしてきた時にはかまってやらずにはいられなくなる……!

 こんなにも心を奪われる子がいるなんて!」

 

 抱いている猫に『にゃ~』と鳴かれると再び頬を溶けさせて『うへへ~』と彩李がいるのにも関わらずデレデレし始めるミア。

 

『(猫より可愛いやつが目の前におるのう)』

 

(――あぁ、同感だ)

 

 その様子を見ながらミアにバレないように微笑んでいると、

 

『(――っ)』

 

 一番初めに気づいたのは魔王(メイナ)

 ……少し遅れて、彩李とミアが顔を上げた。

 

 ――――ドガンッッッ(・・・・・・)!! と。

 

 ここからそう遠くない場所が――街の一角が消し飛んだ(・・・・・・・・・・)

 目には見えずとも爆音と振動が破壊を告げてくる。

 彩李は反射的に振り返り、

 

「なんだ――!?」

 

 路地裏を抜けたさらにその先――八〇〇メートル先にて街の至るところが次々に破壊されているのを見た。

 

『(なんだも何も、こんなことをするのはミアと同じノクスの連中しかおらんじゃろ)』

 

 ……気づけばミアの姿はもうなかった。

 にゃ~……と鳴き声をあげる猫をそっと下ろしたミアは、彩李に気づかれる前にこの場から去ったのだ。

 

『(あの反応から察するに、ヤツもこうなるのは想定外だったようじゃな。

 ……彩李に不意打ちするには絶好の機会だったというのにそれをせず、猫の事を案じながら去るとは……敵の中では一番話が通じそうなヤツじゃ)』

 

 その言葉に理解を示しながら路地裏から駆け出す。

 とにもかくにも、あそこには今“敵”がいるというのは事実。

 なら急がなければ。

 見境なく破壊を行うようなヤツだ、これ以上好きにさせたらどれほどの被害をもたらすか――

 

『(先客がおるようじゃな……)』

 

「――え?」

 

 メイナの言葉に脚力が弱まる。

 直後、再び激震が(はし)り――そこで気づいた。

 

 今の激震は目の前の戦場からだ……しかし単なる破壊活動からのものではなく、戦闘(・・)から発せられたものだった。

 

 戦場にはノクスの一員と思われる、ニヤニヤしながら攻撃を放つ女の子と、

 

 ――先日あったばかりの、純白の魔法少女の姿があった。

 

          ◆

 

 純白の魔法少女、晴風(はるかぜ)夢華(ゆめか)は強者だ。

 

 夢華の魔法少女としての服装は、学校のブレザー制服のようなもの。

 白いシャツに、(たけ)が膝下まで伸びた、もはや外套と化している黒のブレザーと、赤と黒のチェックのスカート。

 

 特徴となるのは、変身すると長髪に変わる白髪(はくはつ)だ。

 ショートヘアーだった夢華の髪は、背中まで伸びたロングヘアーとなり、戦場を駆ける度に風に髪を揺らしている。

 

「っ――!」

 

“敵”より放たれた自動追尾の流星。

 放たれた無数の『半透明』の流星を、駆け、何度も飛びはね、長年の戦闘経験(・・・・・・・)からの動きと剣術だけで叩き落とす。

 

「わは! すごいすごーい!」

 

 ぱちぱちぱち、と舐め腐った態度で拍手を贈るのは、

 にんまりした笑みに見下すような嗜虐(しぎゃく)の目付きを備えたロリっ娘。

 

 ――私はメスガキです。と宣言しているような性格を備え、ローブを纏い、フードで顔を隠している少女の正体は、ノクスのメンバーの一人――アリファ。

 

(ワニちゃんをボッコボコにした子にお灸を据えてやろうとやって来たら……こっちに当たっちゃうとはな~)

 

 表面上は取り繕っていても、内面は焦りを隠せない。

 ――それほどまでに晴風夢華は強い。

 

「ほらっ!」

 

 アリファは周囲に『半透明』の長さ三〇メートル級の大剣(・・・・・・・・・・・・)を三本出現させ、夢華の首を刈ろうと意思で振るい始める。

 

 だが夢華には掠りもしない。

 ……それどころか、

 

 一刀目をさも当然のように剣先を蹴り上げ上空へと蹴り飛ばし(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 二刀目を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 三刀目は上空へと跳んでいる途中にある――“邪魔(・・)()得物の剣で一閃し(・・・・・・・・)真っ二つにした隙間から体が飛び出て(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「そー、れ……っ!」

 

 上空へと蹴り上げていた一刀目……その柄頭(つかがしら)をオーバーヘッドキックで蹴り落とし、そのままアリファの元へと大気を切り裂きながら飛来する。

 

「どわあっ!?」

 

 目を剥きながら魔法を解除し、アリファに届いたのは飛来からの強風のみだった。

 いや(・・)、正確には――

 

「ぬ、ぐッ!?」

 

「――――」

 

 ――間髪入れずに飛び込んできた夢華の一閃もある。

 一閃は防いだが続けて蹴りが繰り出され、ソレが腹部に突き刺さり吹き飛ぶ。

 

「ぐえ! っ、か――!」

 

 即座に半透明の翼(・・・・・)を生やし、上空へと避難する。

 

(……流星や剣と同じく、また『半透明(・・・)』のモノが突然現れた(・・・・・)

 

 先ほどからアリファの周囲に出現するすぐにも消えてしまいそうな(・・・・・・・・・・・・・)『半透明』の物質――それはアリファの『魔法』だ。

 

 出現した『半透明』の物質はアリファの意志によって、すぐに外側に『光』を纏う――まるで、形が定められた(・・・・・・・)かのように。

 

 ――――あぁ、なるほど。この魔法は――

 

「……アンタの魔法、簡単に言えば『幻を作る(・・・・)』魔法って言ったところ?」

 

「!?」

 

「でも……アンタの意志一つで、

 その幻を『具現化(本物)』にできる……そうでしょ?」

 

 ……そうだ。

 ――『幻』を作り、それを『具現化』することもできる。

 それがアリファの使用する魔法の正体だ。

 

(……たったこれだけの情報でわたしの魔法を見抜いた。

 ……ったく、頭が良すぎでしょこの魔法少女)

 

 僅かに顔をしかめ……そして笑みを作る。

 正当な方法ではこの魔法少女には勝てない……ならば、

 

わたし本来のやり方(・・・・・・・・・)でやらせてもらおっと――♪」

 

 指を鳴らし、背後に『幻』の巨大な手裏剣を出現させ、解き放つ。

 ――しかし魔法少女にではなく(・・・・・・・・・)街に(・・)

 

「な……ッ!?」

 

 驚愕で息が詰まったが、すぐに動き、街を切り裂く前に手裏剣とつばぜり合いを起こし、

 

「は――あッ!!」

 

 裂帛の気合いと共に振り抜き霧散させる。

 

「はぁ……ふぅ……、――アンタ、どういうつもり?」

 

 ギロリ、とアリファを睨み付ける。

 しかしそれさえも歓喜に感じ、笑みを深くする。

 

「ん~? どういうつもりって?」

 

 おちゃらけながら返すと、夢華は眉間に(しわ)を寄せながら、

 

「なんで私じゃなくて、街に向けて攻撃した――!」

 

 ――待ってました。と言わんばかりにアリファは笑いを溢して、

 

「く、は――そんなの、あなたの苦悶の顔が見たいからに決まってるでしょ?

 大変ねぇ、正義の味方は――あ、は♡ ほら、ほら♡」

 

 次は全方位に展開される円錐形(えんすいがた)の射出物。

 夢華が止めに入ろうとするよりも早く、アリファは軽々しく放ってみせた。

 

 舌打ちを鳴らしながら魔法を行使し、

 放たれた円錐形の射出物……その数、五〇。

 即座に炎の魔法が四八本を霧散させたが、残り二本は意思を持っているかのように炎を掻い潜り、夢華の目の前に突き刺さった。

 

「ぐ――、」

 

 突き刺さると同時に壊れたコンクリートの隙間から砂埃が舞い上がり夢華の視界を遮る。

 腕を振るい砂埃を振り払うが、視界を取り戻した夢華の目に飛び込んで来たのは、

 

「……あ、あぁ――」

 

 残る一本の標的となった、逃げ遅れた女の子だった。

 

「っ――!」

 

 駆け出す。

 後先考えず一直線にその子の元へと駆け出し――

 

「ガッ――!? ア、ア゛ァ゛……ッ!!」

 

 守るように抱き締めた瞬間、背中を抉る激痛が奔った。

 ……あの円錐形の射出物はどうやら高速回転していたらしい。

 血肉を撒き散らし、背骨を折る寸前まで骨を削った後……ソレは静かに消滅していった。

 

「あ、が――ッ……! ……はぁ……ぁ――」

 

 吐き出す吐息に苦痛が混じる。

 内臓までは到達しなかったことを確認した後に、守った女の子に微笑みかける。

 

「き、み……大、丈――」

 

 ドグシャッッッ(・・・・・・・)!!

 

「――――、ぶ……?」

 

 …………何が、起きた……?

 体から、力が抜けて…………

 

くひ(・・)ひひ(・・)――ありがとうね♡ 引っ掛かってくれて」

 

 やけに嬉しそうな声の主は……なんと腕の中にいる女の子からだった。

 その女の子の顔が……次第に、変わって――

 

「――あは♡」

 

 そこにいたのは――アリファ()だった。

 

 ……先ほど、砂埃を発生させた時。

 夢華の視界を遮り、魔法で姿を変え(・・・・・・・)、攻撃に巻き込まれた女の子を演じたのだ。

 ――優しい夢華なら、必ず助けると思ったから。

 

 その結果がこれ。

 背中に一撃を受け、さらには今――『幻』の槍が腹部を貫き(・・・・・)喀血(かっけつ)させている。

 

「……アン、……タ――――」

 

「形勢逆転――♡」

 

 槍を振り抜き瀕死の夢華を瓦礫に叩きつける。

 ドシャ! と血が周囲に広がり、魔法少女としての服装が溶け消えていく中、その体は地に落ちた。

 

「か…………は…………」

 

「ひっ、はは♡」

 

 嗜虐心に満ちた顔で見下ろしながら歩く。

 トドメを刺そうと手を掲げる。

 

「あなたみたいなヤツに真っ正面から挑むなんてバカのすることよ」

 

 掲げる先には倒れ付した彼女。

 手のひらには魔力が煌めき、すぐにでも光の柱となって彼女を呑み込み、その体を灰塵(かいじん)と化すだろう。

 ……そして、

 

「じゃあね~♪」

 

 別れを告げながら光の柱は放たれた。

 虫の息となっている彼女は魔力の光に容易く呑み込まれ――

 

「――――、()……?」

 

 ――呑み込まれるより先に、何か(・・)(あいだ)に飛び込んできた。

 そして軽く手を払い……嘘のように……払った光の柱をいとも容易く(ちり)へと変えた。

 

 

 

 

 

「――――ふむ。悪くはないのう……試運転だが、上出来じゃな」

 

 

 

 

 

 間に飛び込んできたソレ(・・)が、自分の手を見ながらボソリと言葉を発する。

 アリファはソレに言葉を刺そうとしたが、

 

(――ッ!?)

 

 ――ゾクリ、と。

 背中に氷を当てられたような……冷たい、恐怖を感じた。

 

(なに……こ、れ……? わたし、が……怯え、てる?)

 

 気づけばガタガタと体が震えだしていた。

 気づけば冷や汗が流れていた。

 

 ……魔物(まもの)たるアリファに本能的な恐怖を覚えさせるほどのプレッシャー。

 それを一言のうちに発した“彼女”は続けて、

 

「今のままでは持って数分、といったところか……じゃが、それだけあれば十分」

 

 見れば、割り込んできた彼女の後ろには『黒衣を纏った少女』が虫の息の夢華に寄り添っていた。

 ……恐らくはワーニスの報告にあった新しい魔法少女だろうが……アリファはそんな考えに浸れない……何故なら、

 

「のう……メスガキ」

 

 魔法少女なんてどうでもいいと思える(・・・・・・・・・・)ほどの……、

 圧倒的な存在が……絶対なる死の具現(・・・・)が、目の前に君臨している――。

 

「調子に乗り過ぎたな……」

 

「……ひっ!?」

 

 ……スッ、と。

 睨み付けられただけなのに全身が総毛立つ。

 逃げろと本能が警笛(けいてき)を鳴らしている……でも、体は動いてくれなくて、

 

「ふっ……どうした?」

 

 彼女は小さく笑って、

 ――――二〇メートルはあった距離を、ゼロ(・・)にした。

 

「さっきまでの威勢がないのう」

 

 一瞬で文字通り“目の前”にやってきた彼女は、猫と遊ぶかのようにアリファの(あご)を撫で……くいっ、と指先で持ち上げる。

 (なまめ)かしい動作にも思える指の動き……だが当の本人の目は笑っておらず、

 

「お仕置きの時間じゃ。

 ――――慈悲はないぞ? ガキ(・・)

 

 自分は知らぬ間に取り返しのつかない怒りを買ってしまったのだと……メスガキ(アリファ)は、生まれて初めて『後悔』という念を浮かべた。




【晴風夢華】

 強者と称される実力はある魔法少女なのだが、卑怯な手には弱く、不意打ちも重なったためアリファに敗北してしまった。

          ◆

 何故メイナが『外』に出て来れているのか、
 そして――調子に乗ったメスガキを“わからせる”戦闘。

 その二つは次回、【魔王はメスガキをわからせる】にて!
 …………まぁ一つ言えるのは、メスガキちゃんは魔王にトラウマを刻まれるということ。
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