少年兵のヒーローアカデミア   作:M.T.

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障害物競走

 雄英体育祭当日。

 

「行ってきます」

 

「おう、頑張れよベリ!」

 

「兄ちゃん頑張って!」

 

「あ、そうだベリちゃん!」

 

 俺が体操服を持って家を出ようとすると、家族に皆が見送ってくれた。

 俺の手には、父さんと母さんのお手製の唐揚げ弁当が握られている。

 重いな……どんだけ張り切って作ったんだか。

 そんな中、母さんは俺に駆け寄ると、俺に抱きついてチークキスをしてきた。

 チークキスは、俺の国では一部の間で行われる挨拶の一種だ。

 俺がいた所では、あんまりしないけど。

 

「行ってらっしゃい」

 

「うん」

 

 母さんが満面の笑みを浮かべて見送ってくれたので、軽く拳を前に突き出して頷いた。

 そうして、いつも通り通学路を歩いていく。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「皆準備は出来てるか!?もうじき入場だ!!」

 

 控室で飯田くんが声をかける中、俺は水筒の水を飲んで気分を落ち着かせていた。

 別に緊張してるわけじゃないけど、人多いとこ苦手だからな〜…

 すると俺の隣にいた芦戸さんが口を開く。

 

「コスチューム着たかったなー」

 

「他のクラスと公平を期す為に着用不可らしいね」

 

 芦戸さんの言葉に、そう答える。

 普通科には、俺達が普段の訓練でつけているようなコスチュームやサポートアイテムが無い。

 同じ条件で戦う為には、コスチューム着用不可のルールが必要って事なんだろう。

 そもそもヒーロー科の訓練を普通科は受けていない時点で、公平とは言えないような気もするけど。

 なんて考えていると、轟くんが緑谷くんに話しかける。

 

「緑谷」

 

「轟くん……何?」

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

 

「へ!?うっうん…」

 

 いきなり話しかけられた緑谷くんは、いまいち飲み込めない様子で頷く。

 すると次第に轟くんの語気が強まる。

 

「お前オールマイトに目ェかけられてるよな?」

 

「!」

 

「別にそこ詮索するつもりはねぇが…お前には勝つぞ」

 

 轟くんがそう言うと、緑谷くんが目を見開く。

 No.2ヒーローの息子の轟くんからすれば、No.1ヒーローに目をかけられてる緑谷くんには思うところがあるのかもしれない。

 まあ、俺からすればどうでもいいし、ぶっちゃけ勝手にやってろとしか思わないんだけど。

 

「おお!?クラス最強が宣戦布告!!?」

 

「急に喧嘩腰でどうした?直前にやめろって…」

 

「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だっていいだろ」

 

 轟くんの宣戦布告に、上鳴くんが反応し、切島くんは仲裁に入ると、轟くんが切島くんの手を払いのけて冷たい口調で言った。

 すると緑谷くんは、弱々しい口調で轟くんに話し始める。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか…は、分かんないけど…そりゃ君の方が上だよ…客観的に見ても…」

 

「緑谷も、そーゆーネガティブな事は言わねぇ方が…」

 

 緑谷くんが自分を卑下すると切島くんがフォローしようとしたけど、緑谷くんは前を向いてさらに続けた。

 

「でも…!!皆…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって…遅れをとるわけにはいかないんだ! 僕も本気で獲りにいく!」

 

「……おぉ」

 

 緑谷くんが言うと、轟くんは僅かに目を見開く。

 そんな中、爆豪くんが無言で轟くんを睨みつけていた。

 「宣戦布告する相手間違えてんぞ」ってか?

 

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろ!?こいつらだろ!!?(ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!?』

 

 プレゼント・マイク先生を聴きながらスタジアムに入場した俺達に、観衆からの歓声と拍手が送られる。

 この持ち上げ方、嫌だなぁ……

 皆が皆目立つのが好きだと思わないで……ウソごめん、ヒーロー科に来てる時点で元々目立ちたがり屋の集まりだったわ。

 まあ、USJ事件なんてものがあった時点で、俺達が注目されるのは分かりきってた事だけどさ。

 

「わあああ…人がすんごい…」

 

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…!これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

 

「めっちゃ持ち上げられてんな…なんか緊張すんな爆豪…!」

 

「しねえよただただアガるわ」

 

 緑谷くん、飯田くん、切島くんは観客の熱気に飲まれそうになっていたけど、爆豪くんは平常運転だった。

 俺は観客の視線が不快なので、紫外線対策のフードを目深に被った。

 

『B組に続いて普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・H組も来たぞー!そして経営科…』

 

 プレゼント・マイク先生の紹介と共に、他のクラスも次々と入場してくる。

 プレゼント・マイク先生も煽るなぁ……

 他のクラス…特に普通科からは、「たるい」だの「どうせ引き立て役」だのという声が聴こえてくる。

 俺からすれば、大勢に注目されずに済む普通科(キミら)が羨ましいよ。

 俺達が全員出場して一列に並んで、ミッドナイト先生が壇上に上がったのを合図に、開会式が始まった。

 

「選手宣誓!!」

 

 過激なコスチュームを着た18禁ヒーローことミッドナイト先生は、ピシャッ!と鞭を打ちながら宣言した。

 するとクラスの皆が口を開く。

 

「18禁なのに高校に居てもいいものか」

 

「いい」

 

「静かにしなさい!!」

 

 常闇くんが素朴な疑問を口にすると、峰田くんが即答する。

 皆が喋っていると、ミッドナイト先生は、鞭を打って俺達を黙らせた。

 ところで18禁ってどういう意味なんだろう。これ終わったら父さんに聞いてみよう。

 

「選手代表!!1ーA爆豪勝己!!」

 

 ミッドナイト先生は、1年生代表の爆豪くんを呼ぶ。

 すると呼ばれた爆豪くんが、ポケットに手を突っ込んだまま前に出た。

 

「え〜〜かっちゃんなの!?」

 

「あいつ入試一位通過だったからな」

 

 緑谷くんが不安そうに言うと、瀬呂くんが説明する。

 まああいつ、一応首席だからな。

 性格はともかく、実力は()()()()()あるってのが厄介だけど。

 

「“ヒーロー科の入試”な」

 

「………」

 

 不満そうに呟く普通科の生徒達は、どう見てもやる気が無さそうだった。

 まあ、あんななおざりな紹介をされたらそりゃあやる気無くすわな。

 アレはプレゼント・マイク先生が悪い。

 だけど唯一、先日教室に宣戦布告をしに来たモジャ髪くんだけは、まるで獲物に狙いを定めるような目を俺達に向けていた。

 彼は要注意人物かもしれないな、一応マークしておこう。

 

 なんて考えていると、爆豪くんが壇上に上がる。

 そして下にいる俺達を見下ろしてただ一言、言い放った。

 

『せんせー。俺が一位になる』

 

「「「絶対やると思った!!」」」

 

 爆豪くんが言うと、他の皆が一斉にツッコむ。

 うわ……やるとは思ってたけどマジでやりやがったこいつ。

 嫌な予感がしたのでフードを深く被って耳を塞いだ、その直後。

 

 

 

 ――BOOOOOO!!!

 

 

 

 案の定B組や他科からは、盛大なブーイングが浴びせられた。

 飯田くんには「何故品位を貶めるような事をするんだ!!」と怒られるけど、爆豪くんは周りの声をものともせずに「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」とさらに煽った。

 爆豪くんの品位のかけらもない態度に、思わず眉を顰めて舌打ちする。

 皆を敵に回して自分を追い込むのはいい。

 だけど俺達を巻き込むな。

 現に、他のクラスからの不満そうな目は、俺にも向けられている。

 A組ヘイトに辟易しつつ前を見ると、ミッドナイト先生が説明を始める。

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう!」

 

「雄英って何でも早速だね」

 

 なんて麗日さんが言う。

 言うてそんなに早速だっけ?

 ミッドナイト先生の声と共に、空中にプロジェクターで画面が表示される。

 

「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!さて運命の第一種目!!今年は……コレ!!!」

 

 ミッドナイト先生が指し示すプロジェクターの画面には、『障害物競走』と書かれていた。

 障害物競走?なんだそれは?

 俺の国には体育祭なんてものは無かったから、いまいちピンとこない。

 

「障害物競走…!」

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」

 

 俺が疑問に思っていると、ミッドナイト先生はモニターに映像を表示しながら説明した。

 ああ、なるほどね。

 文字通り、障害物が仕掛けられたコースを走る競技なわけか。

 

 何をしても構わない……か。

 いや、ルールがガバガバすぎるだろ。

 そんなん言ったらライバル全員再起不能にするのもアリになるぞ。

 

「さぁさぁ、位置に着きまくりなさい…」

 

 ミッドナイト先生の説明が終わると、意図的にクソ狭く設計されたゲートが開き、ランプが点滅を始める。

 普通科とサポート科の生徒がゲートに殺到した。

 この後に起こる事を予測した俺は、敢えてゲートから離れた位置に移動する。

 その直後、ミッドナイト先生が合図を出す。

 

「スターーーーーーート!!」

 

 ミッドナイト先生の合図と同時に、普通科やサポート科の生徒達が走り出す。

 だけどゲートが狭すぎるせいで、ギチギチに詰まって身動きが取れなくなっていた。

 これじゃ、通れそうにないね。

 俺はこうなるのを予測して後ろに下がったから、巻き込まれずに済んだけど。

 何やら前の方では、轟くんがギチギチに詰まった他クラスの生徒を凍らせて足止めしつつ、氷を使った加速で前に進んだ。

 轟くんの氷から発せられる冷気が、俺の方にも来る。

 

『さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?イレイザー!!』

 

『無理矢理呼んだんだろうが』

 

 最初の競技が始まると、プレゼント・マイク先生の実況と相澤先生の解説が始まる。

 実況と解説っていうかもう漫才だけど。

 他クラスの生徒は足を凍らされて身動きが取れなくなっていた中、クラスの皆は、それぞれ自分の“個性”を使って轟くんの氷を避けていた。

 何で皆全国中継されてんのにそんなにジャンジャン“個性”を使いまくるんだか、俺にはよくわかんないな。

 

「使い慣れてんなぁ“個性”…」

 

 例の普通科のモジャ髪くんが、他クラスの生徒に神輿みたいに担がれた状態で口を開く。

 モジャ髪くんを担いでいる生徒達の目は虚ろで、黙ってモジャ髪くんの言いなりになっていた。

 見たところ、人を操る精神系の“個性”といったところか。

 なるほど、道理でヒーロー科の入試を突破できなかったわけだ。

 ……あ、そうだ。いい事思いついた。

 

 俺は『技術』で気配を消して、モジャ髪くんを追いかける形で進んだ。

 ライバル達の妨害の防波堤になってもらいつつ、後ろから“個性”を観察させてもらおう。

 幸い彼は派手な方に気を取られて、俺に監視されている事に気づいてない。

 なんて考えていると、前の方で峰田くんがロボに殴られてぶっ飛ばされた。

 普段の行いがアレだから気にしないとして、さらに前の方を見ると、入試の時の0ポイントロボが大量に犇めいていた。

 

 うわっ…邪魔だなぁ。

 俺の戦闘スタイルは対人特化だから、あの数のロボを武器無しでどうにかするのは正直キツい。

 まあ倒せないとは言ってないんだけど。

 

『さあいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

 無数のロボを相手に、轟くんは手始めに手前の0ポイントロボを凍らせて動きを封じ、その隙に先へ進んだ。

 それに乗じて他の生徒も先へ進もうとしたけど、ちょうど轟くんが第一関門を突破した直後、凍ったロボが崩れて通ろうとした生徒が巻き添えを喰らう。

 

『1ーA!轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!すげぇな!!一抜けだ!!アレだな、もうなんか…ズリィな!!』

 

 うわ……マジかよ。

 アレ、位置が悪かったら最悪死ぬでしょ。

 最近のヒーロー志望って、ああいう事するんだ。

 轟くんの所業に普通に引いていると…

 

『1ーA切島潰されてたー!!』

 

 何やら切島くんが、さっきの倒壊に巻き込まれて潰されていたらしい。

 そしてどうやら、B組の鉄哲くんも、切島くん同様潰されていたようだ。

 どうでもいいけど、“個性”被ってるな……

 

『B組鉄哲も潰されてたー!!ウケる!!』

 

 いや、プレゼント・マイク先生。

 人が潰されてんのに笑うなよ。

 サイコパスかよ。

 

『1ーA爆豪、下がダメなら頭上かよー!!クレバー!』

 

 爆豪くん、瀬呂くん、常闇くんは、ロボの上を飛んで通過していた。

 器用な事するなぁ。

 そして他の皆も、それぞれ自分の“個性”を使って、第一関門を楽々突破していく。

 

『一足先行く連中、A組が多いなやっぱ!!』

 

『立ち止まる時間が短い。上の世界を肌で感じた者、恐怖を植え付けられた者、対処し凌いだ者、各々が経験を糧とし迷いを打ち消している』

 

 ※ただし俺を除く。

 

 プレゼント・マイク先生の実況と相澤先生の解説に対して心の中でそう返しつつ、俺はモジャ髪くんを後ろから観察する。

 目立ちたくないからって“個性”を使わずに切り抜けようとしてる奴が、まさかUSJ事件のMVPだなんて、観客は誰も思ってないんだろうな。

 A組やB組が馬鹿正直に0ポイントロボを倒している間に、モジャ髪くんがその隙をついて操った生徒を壁にしつつ先へ進んだので、俺も彼を追いかける形で第一関門を突破した。

 俺が突破した時点で、既にA組の大半…葉隠さんと青山くん以外は、第一関門を突破していた。

 未だに第一関門を突破していないB組が気になるけど、狙いは大体察しがつく。

 予選では大幅に人数を削らないから、俺みたいにわざと後ろを走って、自分の“個性”は隠しつつA組の“個性”や戦い方を観察しようっていう魂胆か。

 まあ作戦としては悪くないとは思う。

 実際俺だって、同じ事してるし。

 

 

 

『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーール!!!』

 

 第一関門を突破した先にあったのは、深さ50mはある谷から伸びた石柱にロープが張り巡らされた、大掛かりなアスレチックだった。

 まあ下にネットやクッションくらいはあるだろうけど、落ちたら復帰は無理そうだ。

 ここら辺からは、突破出来る奴と出来ない奴が分かれてくるな…

 なんて考えていると、梅雨ちゃんやサポート科の女子が渡り始める。

 

 サポート科の女子がサポートアイテムを使っているのを見て芦戸さん麗日さんが文句を言っているけど、サポート科は自作のアイテムのみ持ち込み・使用を許可されているらしい。

 なんでも、ヒーロー科は日々戦闘訓練をしているから、サポート科も日々の勉強の成果であるサポートアイテムの使用を許されていて、自作のアイテムのアピールチャンスも兼ねているんだとか。

 

 サポート科の女子は、ワイヤーと靴型のサポートアイテムを使って、石柱を移動していった。

 それを見て、モジャ髪くんは「いいなぁ…」とか言いながらニヤリと笑っていた。

 

『実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますねイレイザーヘッドさん』

 

『何足止めてんだあのバカ共…』

 

 相澤先生、酷い言いようだな。

 そう思っている間にも、轟くんが氷で強化したロープの上を滑って第二関門を突破した。

 

『さあ先頭は難なく一抜けしてんぞ!!』

 

 難なく第二関門を突破した轟くんを、爆豪くんが爆破で飛んで追いかける。

 他の皆も、“個性”を上手いように使って次々と第二関門を突破していく。

 

「おそらく兄も見ているのだ…かっこ悪い様は見せられん!!!」

 

『カッコ悪ィイーーーーー!!!』

 

 T字バランスのポーズでロープの上を滑走する飯田くんを見て、プレゼント・マイク先生が大笑いしていた。

 やっている本人は至って真面目なんだろうね。

 

 なんて思っていると、モジャ髪くんは、今度は飛べる“個性”の人を洗脳した。

 どうやらそのまま第二関門を突破するつもりらしい。

 俺は彼を追いかける形で、大袈裟なアスレチックを攻略した。

 俺が第二関門を通過している間に、先頭は第三関門に突入したようだ。

 

『先頭集団が抜けて下は団子状態!!上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずに突き進め!!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は────…一面地雷源!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!ちなみに地雷の威力は大した事ねぇが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』

 

『人によるだろ』

 

 俺がアスレチックを攻略している間にも、プレゼントマイク先生と相澤先生の漫才が聴こえる。

 飛行系“個性”の生徒の背中に乗って第二関門を突破したモジャ髪くんは、運んでもらった生徒を第二関門に置き去りにして先に進んだ。

 自分以外の普通科に予選の枠を取らせない為か、背中に乗せてもらっておいて、モジャ髪くんはタクシー役の生徒に「しばらく追ってくるなよ」と命令して走っていった。

 ……えげつない事するね、キミ。

 なんて思いつつ、俺も第二関門を突破する。

 

 

 

「あれが最終関門か……」

 

 走りながら目を凝らして先を見ると、そこには両脇に有刺鉄線の柵が立てられた土のゾーンがあった。

 よく目を凝らしてみると、地雷が埋まっている場所は、少しだけ土の色が違うし、少しだけ地面が盛り上がっている。

 これがトラップだったりしたら、注意して観察しても意味ないけど……前の集団がうまく地雷を避けて進んでいるのを見る限り、その線はなさそうだね。

 先頭集団の何人かは、地雷を踏んで吹っ飛ばされてるけど。

 そんな中…

 

「はっはぁ俺は──関係ねーーー!!!」

 

 爆豪くんが、両手から爆破を放って空中を突き進み、轟くんに追いついた。

 

「てめぇ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!!」

 

 そして追い越し、轟くんを挑発した。

 この展開に、観客席からはどっと歓声が湧き起こる。

 

『ここで先頭が変わったーー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!後続もスパートかけてきた!!!だが引っ張り合いながらも…先頭二人がリードかぁ!!!?』

 

 轟くん爆豪くんは、前の方で足の引っ張り合いをしていた。

 二人を追いかける形で、B組の塩崎さんが蔓を地面に敷き、骨抜くんが地面を柔らかくして泳ぐように進み、飯田くんは地雷を踏みつつも爆発の勢いを利用して前へと進んだ。

 そしてちょうど俺の目の前では、何やら緑谷くんがブツブツ言いながら、仮想(ヴィラン)のパーツで地雷を掘り起こして何かをしている。

 ……なーにやってんだ?

 

「借りるぞ、かっちゃん!」

 

 しばらく少し離れた所で観察していると、緑谷くんは地雷を一箇所に集め始めた。

 緑谷くんは、仮想(ヴィラン)のパーツを下敷きにして、集めた地雷の上にうつ伏せにダイブした。

 うわ……マジで?そう来る?

 何をしようとしているのかを察した、その瞬間──

 

 

 

 ――BOOOOOM!!!

 

 

 

『後方で大爆発!!?何だあの威力!?偶然か故意か───────A組緑谷、爆風で猛追ーーーー!!!?』

 

 俺の近くで大爆発が起こり、緑谷くんは前へと吹っ飛んだ。

 そのまま、爆風の勢いで轟くんと爆豪くんに追いつき……

 

『つーか!!!抜いたあああああー!!!』

 

 追い越した。

 だけど……

 

「デクぁ!!!!!俺の前を行くんじゃねぇ!!!」

 

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ…!」

 

 緑谷くんに追い越された爆豪くんと轟くんが、足の引っ張り合いをやめて走り始めた。

 1位を取り返そうと必死だな。

 

『元・先頭の2人、足の引っ張り合いをやめ緑谷を追う!!共通の敵が現れれば人は争いをやめる!!争いは無くならないがな!』 

 

『何言ってんだお前』

 

 プレゼント・マイク先生が変な事を言うと、相澤先生がツッコミを入れた。

 ……うん、マジで何言ってんのかわかんね。

 

 二人が緑谷くんを追い抜こうとした、その瞬間。

 緑谷くんは、持っていた仮想(ヴィラン)のパーツを、地面へと振り下ろした。

 すると、ちょうど真下にあった地雷に衝突し……

 

 

 

 ――ボオオン!!!

 

 

 

 爆風の勢いで轟くんと爆豪くんを後方に吹き飛ばしつつ、緑谷くんは前へと吹き飛び、そのまま地雷原を抜けた。

 そしてゴールまでの数十メートルを、全速力で駆け抜ける。

 

『緑谷、間髪入れず後続妨害!!何と地雷原即クリア!!イレイザーヘッド、お前のクラスすげえな!!どういう教育してんだ!』

 

『俺は何もしてねえよ、奴等が勝手に火ィ付け合ってんだろう』

 

『さァさァ序盤の展開から誰が予想できた!?』

 

『無視か』

 

『今一番にスタジアムへ還ってきたのは、この男!!緑谷出久だァアアアアア!!!』

 

 緑谷くんが一着でゴールすると、観客席からは歓声が湧き起こる。

 そして俺がライバルの“個性”を観察している間にも、クラス連中は次々とゴールしていく。

 

『さあ続々とゴールインだ!順位等は後程まとめるからとりあえずお疲れ!!』

 

 俺はモジャ髪くんの背後にくっつきつつ、B組連中に混じってゴールした。

 分かってはいたけど、A組はもうほぼ全員ゴールしてんな。

 A組でまだゴールしてないのは…葉隠さんと青山くんか。

 なんて思っていると、脂質を使いすぎてヘトヘトになった八百万さんの背中…というか尻にくっついている峰田くんが目に留まる。

 別に順位や勝ち負けには拘ってなかったけど、こいつに負けたっていうのは流石にちょっと嫌だな……

 まあ俺も俺でモジャ髪くんをストーキングしてゴールしたから、目クソ鼻クソなんだけども。

 しばらく待っているとA組とB組が全員ゴールし、他科の生徒も次々とゴールしていく。

 

「ようやく終了ね。それじゃあ結果をご覧なさい!」

 

 競技が終わると、ミッドナイト先生がプロジェクターで順位を表示する。

 どうやら今表示されている42人が通過者…って事らしい。

 通過者の顔ぶれは、ちょうどA組とB組が全員、そして普通科からはモジャ髪くん、サポート科からは変人女子がそれぞれ1人ずつ。

 毎年予選では、ヒーロー科以外をほぼ全員篩い落とすからね。

 普通科やサポート科に下剋上されて予選落ちしてたヒーロー科も、過去にはいたけど。

 自分の順位を探すと、俺がずっと後ろを走って“個性”を観察してたモジャ髪くんと、B組の拳藤さんの間、27位のところに俺の顔があった。

 

「27位か……」

 

 まあまあだな。

 A組がほとんど上位に固まってる事を考えるとちょっと低い気もするけど、中位で通過できたんなら文句はなしだ。

 

「うわぁ〜…皆速いなぁ。オレなんて、ほぼ“無個性”だから全然だよ」

 

 俺は頭を掻きながら、他人事のようにそう呟いた。

 ほぼっていうか、“無個性”なんだけど。

 

「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!!そしていよいよ本選よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!気張りなさい!!!さーて、第二種目よ!!私はもう知ってるけど〜〜〜…」

 

 ミッドナイト先生がそう言っている間にも、ドラムロールの音と共にプロジェクターの立体映像が回転する。

 

「何かしら!!?言ってる側からコレよ!!!!」

 

 そう言ってミッドナイト先生が指した先には、『騎馬戦』と表示されていた。

 キバセン?騎馬戦?

 何ぞやそれは。

 

「騎馬戦…!俺ダメなやつだ…」

 

「騎馬戦…!」

 

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら」

 

 上鳴くんは不安そうに言い、峰田くんは何故か興奮し、梅雨ちゃんが首を傾げながら疑問を口にする。

 ああ、団体戦の競技なのね。

 そこすら理解してなかったわ。

 なんて考えていると、ご丁寧にもミッドナイト先生の背後にルール説明の映像が表示される。

 13号先生、スナイプ先生、プレゼント・マイク先生の上にオールマイトが乗っていて、なんか知らないけどオールマイトが「フジヤマー!」とか言ってる。

 そういう競技か、なんとなく理解した。

 

「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが… 先程の結果に従い各自に(ポイント)が振り当てられる事!」

 

「入試みたいな(ポイント)稼ぎ方式か。わかりやすいぜ」

 

「つまり組み合わせによって騎馬の(ポイント)が違ってくると!」

 

「あ〜!」

 

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!」

 

 説明中に砂藤くんと葉隠さんと芦戸さんが喋ると、ミッドナイト先生がピシャッと鞭を振るいながら怒鳴った。

 いや、マジでそう。

 お前ら説明中に喋りすぎ。

 

「ええそうよ!!そして与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5 (ポイント)、41位が10 (ポイント)…といった具合よ」

 

 ミッドナイト先生の説明を聞いて、自分の点数を暗算し始める。

 て事は……俺は80(ポイント)か。

 で、1位の緑谷くんの(ポイント)は……

 

「そして…1位に与えられるポイントは、1000万!!!!」

 

 その数字を聞いた途端、俺の周りにいた皆は、一斉に緑谷くんの方を見る。

 俺以外の全員に視線を向けられた緑谷くんは、目を丸くして滝のような冷や汗をかいていた。

 

 …………いや、アホだろ。

 いくらなんでもやりすぎじゃねえの、雄英。

 緑谷くんなんて、あまりにも桁違いの数字に、小声で「イッセンマン?」とか言っちゃってるし。

 

 1位が一千万なら、どうチームを組もうと必ずそのチームは1位になる。

 つまりそのチームは、狙われやすくなるって事だ。

 だったらこれ、予選で1位通過しない方が良かったのでは?

 俺は1位通過なんてしたくないから、最初から一千万なんて眼中にないわけだけど…

 

「上位の奴ほど狙われちゃう──────────…下克上サバイバルよ!!!」

 

 緑谷くんは、皆にメチャクチャガン見されている。

 うわぁ……ドンマイ。

 

 

 

 

 




ちなみに障害物競走の順位。
尾白不在で、やる気のないオリ主が下の方にいるので、原作の12位〜27位が一個ずつ繰り上がってます(原作キャラの順位が繰り上がるのって珍しい気がする)。
ちなみにオリ主の順位は、心操くんと拳藤さんの間です。

 1位 緑谷出久(A組)
 2位 轟焦凍(A組)
 3位 爆豪勝己(A組)
 4位 塩崎茨(B組)
 5位 骨抜柔造(B組)
 6位 飯田天哉(A組)
 7位 常闇踏陰(A組)
 8位 瀬呂範太(A組)
 9位 切島鋭児郎(A組)
10位 鉄哲徹鐵(B組)
11位 泡瀬洋雪(B組)
12位 蛙吹梅雨(A組)
13位 障子目蔵(A組)
14位 砂藤力道(A組)
15位 麗日お茶子(A組)
16位 八百万百(A組)
17位 峰田実(A組)
18位 芦戸三奈(A組)
19位 口田甲司(A組)
20位 耳郎響香(A組)
21位 回原旋(B組)
22位 円場硬成(B組)
23位 上鳴電気(A組)
24位 凡戸固次郎(B組)
25位 柳レイ子(B組) 
26位 心操人使(普通科)
27位 雪野ベリ(A組)
28位 拳藤一佳(B組)
29位 宍田獣郎太(B組)
30位 黒色支配(B組)
31位 小大唯(B組)
32位 鱗飛竜(B組)
33位 庄田二連撃(B組)
34位 小森希乃子(B組)
35位 鎌切尖(B組)
36位 物間寧人(B組)
37位 角取ポニー(B組)
38位 葉隠透(A組)
39位 取蔭切奈(B組)
40位 吹出漫我(B組)
41位 発目明(サポート科)
42位 青山優雅(A組)
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