少年兵のヒーローアカデミア   作:M.T.

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騎馬戦

「上に行く者には更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra!予選通過一位の緑谷出久くん!!持ち(ポイント)1000万!!」

 

 ミッドナイト先生が言うと、緑谷くんは絶望の表情を浮かべる。

 ……御愁傷様。

 

「制限時間は15分。振り当てられた(ポイント)の合計が騎馬の(ポイント)となり、騎手はその(ポイント)数が表示されたハチマキを装着!終了までにハチマキを奪い合い保持(ポイント)を競うのよ。取ったハチマキは首から上に巻く事。取りまくれば取りまくるほど管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!」

 

「て事は…」

 

「42名からなる騎馬11〜21組がずっと同じフィールドにいるわけか…?」

 

「シンド☆」

 

 ミッドナイト先生が説明すると、八百万さん、砂藤くん、青山くんが口を開く。

 ほとんどの騎馬は緑谷くんの一千万狙いだろうけど、確かにだいぶキツイな。

 (ポイント) を取られた時点で脱落するルールじゃないって事は、(ポイント) 稼ぎに夢中になりすぎると、(ポイント)を取り返されるリスクもあるわけだし。

 

「一旦(ポイント)取られて身軽になっちゃうのもアリだね」

 

「それは全体の(ポイント)の分かれ方見ないと判断しかねるわ三奈ちゃん」

 

 芦戸さんが言うと、梅雨ちゃんがツッコミを入れる。

 他のチームが強いチームばっかりだと、一度(ポイント)取られちゃうと取り返すのが難しかったりもするからなぁ。

 いずれにせよ、はじめから(ポイント)を取られる事前提で動くのは良くないって事ね。

 

「“個性”発動アリの残虐ファイト!でも……あくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!!」

 

「15分!!?」

 

 15分か……作戦タイムも込みと考えると、あんまり悠長に考えてる時間ないな。

 

「俺と組め!!」

 

「えー爆豪、私と組も!?」

 

「僕でしょねぇ?」

 

 案の定、爆豪くんは大人気だ。

 そりゃあまあ、性格はアレだけど持ち点は大きいし、“個性”の汎用性も考えれば人気株になるわな。

 

「轟の奴、ソッコーチーム決めやがったぜ!爆豪!!俺と組もう!!」

 

 あ、切島くんが声かけに行った。

 なんか爆豪くんは、切島くんを仲間に入れる事にしたらしい。

 一方で、当の轟くんはというと。

 

「俺がお前らを選んだのは、これが最も安定した布陣だと思うからだ」

 

 轟くんは、飯田くん、上鳴くん、八百万さんを仲間に選んだ。

 上鳴くんが放電して敵の動きを止め、八百万さんが絶縁体や伝導を創って上鳴くんと轟くんのサポート、飯田くんが移動とフィジカルを活かした防御ってとこかな。

 

「女と組みてぇけどダメだーーーー!!オイラと組んでくれぇ!オイラチビだから馬にはなれねーー!!!オイラ騎手じゃ誰も馬なんかやってくんねーーんだ!」

 

 峰田くんは、ギャーギャーと泣き喚きながら障子くんに話しかけた。

 峰田くんの秘策とやらを聞いて、障子くんは峰田くんと組み、そこに話を聞いた梅雨ちゃんが加わった。

 やっぱり同じクラス同士で組むわな、他のクラスの“個性”や戦い方を把握してるのなんて、俺みたいな物好きくらいだもの。

 

 そして緑谷くんはというと、超避けられていた。

 そりゃあ保持し続けるより、終盤で奪う方が理に適ってるからな。

 緑谷くんが俺に声をかけようとしてきたので、俺は目を合わせずにススス、と離れた。

 誰が一千万を持ってる奴となんか組むか。

 こっちは一千万とかどうでもいいから、とにかく目立ちたくないんだよ。

 というか、俺はもう組みたい人決めてるんだよね。

 

「ねぇキミ、ちょっといいかな」

 

 俺は、さっきの障害物競走で後ろにくっつかせてもらった普通科のモジャ髪くんに話しかけた。

 するとモジャ髪くんは、少し警戒した様子で振り向く。

 

「……何だよ」

 

「キミの“個性”さ、人を操る“個性”だよね?」

 

 俺がそう尋ねると、モジャ髪くんが大きく目を見開く。

 ああ、図星だったか。

 そんなとこだろうと思ってたけど。

 

「それも、会話をする事で発動するタイプの“個性”かな?いや〜、凄いね。プロヒーローであんまりそういう搦手系の“個性”っていないから、是非ともお近づきになりたいもんだ」

 

「な、なんで知ってんだよ…?」

 

「そりゃあ、さっきの障害物競走で、ずっとキミの後ろを走ってたからね。気づかなかった?」

 

 俺がニヤリと笑うと、モジャ髪くんはなんとも言えない表情で黙り込む。

 派手な方に夢中で、俺がずっと“個性”を観察していた事には気づいていなかったんだね。

 “個性”を知っている俺には強気に出られないと判断したのか、モジャ髪くんは俺を警戒して弱々しい声で尋ねる。

 

「……何が目的だ?」

 

 モジャ髪くんがそう尋ねるので、俺は指を2本立てて口を開く。

 

「要求は二つ。飲めなきゃ、今この場でここにいる全員にキミの“個性”をバラす」

 

「っ…!!」

 

 俺がそう言うと、モジャ髪くんは悔しそうに俺を睨みつける。

 見たところ、彼には『洗脳』以外の攻撃手段が無い。

 それはつまり、“個性”がバレてしまえば勝てる可能性がほぼゼロになってしまうという事を意味する。

 彼にとっては、事実上の死刑宣告だ。

 俺に逆らえば、確実に殺す。

 モジャ髪くんは、不服そうな表情を浮かべつつも口を開く。

 

「要求って何だ」

 

「オレと組んでよ」

 

 俺が単刀直入に言うと、モジャ髪くんは僅かに目を見開く。

 そして怪訝そうな表情を浮かべながら口を開いた。

 

「なんで?俺はクラスが違うし、『洗脳』なんて(ヴィラン)っぽい“個性”持ってんのに、組みたがるとかバカじゃねぇのか?」

 

「逆に組まない理由がない。キミを敵に回すのは、シンプルに()()だもの。それに、未来(プロ)を見据えるなら、他のクラスともチームを組めなくてどうするのさ」

 

「……そうかよ。で、二つ目の要求ってのは?」

 

 モジャ髪くんは、俺の事を警戒しつつも、一旦は俺の提案を飲んでくれた。

 俺はスッと目を細めてから本題に入った。

 

「次の種目、辞退してよ」

 

「何だと!?」

 

 俺が言うと、モジャ髪くんが感情を剥き出しにして俺に掴み掛かろうとする。

 まあ、訳も言わずにいきなり「辞退しろ」とか言われたら、そりゃあ怒るわな。

 俺は肩を竦めるジェスチャーをして、こちらの言い分を話す。

 

「おっと、誤解はしないでくれよ。別にオレは、キミの事が気に入らないから辞退しろって言ってるわけじゃないんだ。むしろ、()()()()()言ってるんだよ」

 

「俺の為だって…?」

 

「この体育祭は、生中継されて全国のお茶の間で見られてる。当然、(ヴィラン)も見てるわけだよね?勝ち上がれば勝ち上がるほど、目立つリスクが高くなる。もしキミの“個性”が(ヴィラン)にバレたら、『洗脳』なんて便利な“個性”を持ってるキミが狙われるのは明白。最悪、キミだけじゃなく、キミの家族や知り合いにまで危害が及ぶかもね」

 

「それは……っ」

 

「そうなる前に、オレにバレて良かったね。オレなら、キミの“個性”を隠し通せる」

 

 俺がニヤリと笑うと、モジャ髪くんは言葉を詰まらせる。

 迷ってるね。

 俺の言い分は、客観的に見て全面的に正しい。

 だけど、彼は本気でトップを狙ってる。

 (ヴィラン)に情報を渡さない為に自ら辞退するなんて、「はいわかりました」と素直に納得できるわけがない。

 彼は、自分には辞退しろと言っておいて俺だけが最終種目に進出するつもりだと思ってるだろうし。

 

「ああ、何もキミだけ辞退しろって言ってるわけじゃないよ。オレも次の種目、辞退するつもりだから」

 

「え?」

 

「誰が(ヴィラン)なんかにタダで情報をくれてやるかよ。個人情報漏洩のリスクを負ってまで次の種目に参加したくない」

 

「……ヒーロー科にも、お前みたいな変わり者がいるんだな」

 

「身の程を弁えてるって言ってくれよ。そりゃあ、勝ちたいっていうキミの気持ちもわかるよ。でもさ。オレ達みたいな日陰者がヒーローになるには、こうするしかないんだよ。ヒーローになる未来を捨ててまで目先の勝利を選ぶか、目先の勝利を捨てて未来を選ぶか、どっちが賢いか、わからない?」

 

 俺は、真顔でモジャ髪くんに提案した。

 するとモジャ髪くんは、ため息をついて不満そうな顔で俺を見る。

 

「……クソ、ヒーロー志望が脅しかよ。あんたの言うとおりにすればいいんだな?」

 

「仲間になってくれて嬉しいよ。オレは雪野ベリ。キミは?」

 

「心操人使だ」

 

「心操くん、ね。オレと、友達になろうか」

 

「お前と友達になるつもりはない」

 

 俺が目を細めて言うと、心操くんは素っ気なく返した。

 あーあ、嫌われちゃったかな。

 

「で、作戦はどうすんだよ?」

 

「うーん…あのさ、心操くん。洗脳した人の歩き方をオレに合わせてもらう事ってできる?」

 

「あんまり頭使わせる命令はできないけど、それくらいだったらできると思う」

 

「じゃあまずはあと二人、洗脳して連れてきてよ。できるだけ背丈が同じくらいの人がいいな」

 

「洗脳で仲間にするのか?」

 

「うん。その方がオレ的には都合がいいから。よろしく」

 

 別のクラスの奴と組んで、何か企んでると思われたくない。

 でも仲間が洗脳されていれば、俺も心操くんに洗脳されて騎馬を組んだってテイにできる。

 洗脳された人の歩き方を俺に合わせられるなら、実質俺が『技術』を使っているのと同じ事ができるし。

 洗脳された側は納得しないだろうけど、そんなの俺の知ったこっちゃない。

 数分程して、心操くんは青山くんと、B組の恰幅のいい男子……えーっと…たしか庄田くんを連れてきた。

 

「連れてきたぞ」

 

「OK、それじゃあ作戦会議しよっか。まず、オレの“個性”は『ステルス』。簡単に言うと影が薄くなります。今回はこの“個性”をフルに使って勝ちに行こうと思います」

 

「勝ちに行くって…どうやって?」

 

「騎馬戦が始まったら、ほぼ確実に一千万の争奪戦になる。だからオレ達は、一千万狙いの騎馬からハチマキを狩ろう。名付けて漁夫の利作戦」

 

「けど、通過ギリギリを狙うと勝ち上がれない可能性もあるよな。だとすると、2位狙いか?」

 

「うん。例年の通過人数から予測するに、多分通過できるのは上位4チームだから、2位か3位狙いでいいと思う。(ポイント)は、他の騎馬の散らばり方を見て調整しよう。オレの“個性”でできるだけ気付かれないように接近するから、隙を見てハチマキを奪ってくれ。騎馬戦はほとんどの客が一千万の争奪戦に注目するだろうから多分目立たないとは思うけど、念の為に極力“個性”は使うな」

 

「わかった」

 

 俺が作戦を伝えると、心操くんが頷く。

 思ったより物分かりがいいな、楽でいいや。

 

「で、騎手はキミ、前馬はオレ、後ろは青山くんと庄田くんでいいよね?」

 

「俺でいいのか?」

 

「キミはここで手柄を挙げてヒーロー科に行きたいんだろ?手柄が欲しい人が騎手になった方がいいんじゃない?オレ、チビだからハチマキ取りづらいし」

 

 本当は俺が騎手をやった方が強いんだけど、別にガチで勝ちに行くのを狙ってるわけじゃないから、別に誰が騎手をやろうと正味問題ない。

 俺が馬なら、それはそれでやれる事はあるし。

 なんて考えていると、心操くんは複雑そうな表情を浮かべながら口を開く。

 

「雪野…だったよな。なんでそこまで俺に協力してくれるんだ?」

 

「キミの方が、オレなんかよりヒーローに向いてると思うから」

 

「入試に落ちた相手に対して嫌味かよ」

 

「いいや、本心。つくづくもったいないと思うよ。キミみたいな人材がヒーロー科じゃないなんて」

 

 俺がそう言うと、心操くんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。

 ああ、“個性”が洗脳だから、ヒーローに向いてるなんて言われた事なかったんだろうな。

 いつも思ってない事ばかり言ってるけど、これだけは嘘偽りのない本心だ。

 少なくとも、ヒーロー科への移籍を本気で狙ってる時点で、俺よりずっとヒーローに向いてる。

 何故なら俺は、この世で最もヒーローに遠い人種だから。

 

 戦う力は、人の命を救う為じゃなく、奪う為のモノ。

 勝利とは、強い敵を打ち負かす事じゃなく、敵を弱らせて征服する事。

 ここで学ぶのは、平和の為じゃなく、戦争に勝つ為。

 ヒーローになんて、なりたくないし、なるつもりもない。

 

「ところで、洗脳ってどうやったら解けるの?」

 

「俺の意思で解除するか、強い衝撃を与えると解ける」

 

「なるほど、じゃあ尚更目立たずに行動した方がいいね」

 

「じゃあ一千万と、轟と爆豪はスルーだな」

 

「わかってんじゃん」

 

 俺は、最低限確認しておかなきゃいけない事を心操くんに尋ねて、実行できる作戦を考えた。

 その後は5分ほど作戦会議をして、騎手は心操くん、前馬は俺、右馬が庄田くん、左馬が青山くんに決まった。

 俺の“個性”で一千万狙いの騎馬に近づいて、心操くんが相手の騎手を洗脳してハチマキを奪うという作戦だ。

 ちょうど作戦会議が煮詰まってきたところで、タイムアップのブザーが鳴る。

 

「それじゃいよいよ始めるわよ!」

 

 ミッドナイト先生が、腕を伸ばすストレッチをしながら気合を入れた。

 そして実況席では、プレゼント・マイク先生が、隣で寝ていた相澤先生を起こしていた。

 

『さあ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!!』

 

『………なかなか、おもしれえ組が揃ったな』

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!』

 

 プレゼント・マイク先生の実況をBGMに、他の騎馬を眺める。

 ほとんどの騎馬の視線は、緑谷チームに向いている。

 どいつもこいつもギラギラしてんな。

 

 っていうか葉隠さん、上半身素っ裸なんだけど。

 見えないからって全国放送されてる場で裸体を晒すとか、頭おかしいのか?

 見える“個性”の人がいるかもしれないとか、考えた事ないのかな。

 

『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねぇぞ!!いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!3!!!2!!1…!』

 

 開始と同時に、ほとんどの騎馬が緑谷チームに向かった。

 血気盛んだねぇ。

 どいつもこいつも、馬鹿みたいに一千万を狙っちゃってさ。

 中には、俺達と同じように漁夫の利を狙ってるチームもあるみたいだけど。

 俺達のチームは、少し離れた場所でその様子を観察していた。

 

「どうする?取りに行くか?それともハチマキを取られて身軽になるか?」

 

「いや、中位での通過を狙うなら、できるだけ(ポイント)は保持しておきたい。下手に突っ込んで洗脳が解けてもヤだしね。しばらくは気配を消して様子を見よう」

 

「了解」

 

 俺達は、他のチームのハチマキは取りに行かずに、少し離れた場所で他のチームの戦い方や(ポイント)の移動を観察した。

 まず最初にB組の鉄哲チームが緑谷チームを地面に沈めようとしたけど、緑谷チームはサポートアイテムで空中に飛んで切り抜け、他の騎馬の猛攻を常闇くんの黒影(ダークシャドウ)で弾いた。

 緑谷くん、サポート科の変人女子と組んだのか。

 サポート科の女子は…多分サポートアイテムの宣伝狙いで、一千万を持ってる緑谷くんと組んだんだろうな。

 サポート科にとっては、勝ち上がる事よりも目立つ事の方が大事だからね。

 

『さ〜〜〜〜まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!!各所でハチマキ奪い合い!!1000万を狙わず2位〜4位狙いってのも悪くねぇ!!』

 

 プレゼント・マイク先生も煽るねぇ。

 そんなの、一千万を狙いに行けって言ってるようなもんじゃんか。

 今さらっと4位狙いって言ったけど、やっぱり通過は4位までなんだね。

 

 てか峰田くんと梅雨ちゃんが障子くんの腕の中に隠れたり、爆豪くんが騎馬から離れて爆破で飛んだりしてるけど、いいのかアレ?ああ、OKらしい。

 なんか峰田くんが投げた球が、こっちにも飛んできた。

 あぶね、踏まないように気をつけないと。

 大体のチームは緑谷くんの持っているハチマキを狙っているけど、峰田くんがB組の塩崎さんにハチマキを取られたり、葉隠さんがB組の物間くんにハチマキを取られたりしていた。

 

『やはり狙われまくる1位と、猛追を仕掛けるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持(ポイント)はどうなってるのか…7分経過した現在のランクを見てみよう!』

 

 モニターに目を向けると、現時点での全チームの得点が表示されていた。

 なんかちょこちょこ(ポイント)が移動してんな。

 B組は、物間チームと鉄哲チーム、拳藤チーム、鱗チームに(ポイント)が集まってる。

 一方でA組の騎馬で(ポイント)を持ってるのは、緑谷くんと轟くんの騎馬だけだ(俺のチームは、他科とB組との混成チームだから数に入れてない)。

 

『………あら!!?ちょっと待てよコレ…!A組、緑谷以外パッとしてねぇ…ってか爆豪あれ!?』

 

 爆豪くんが、いつの間にか物間くんにハチマキを取られていた。

 物間くんは、爆豪くんを散々煽ってそのまま去って行く。

 俺の予想通り、B組はわざと予選で後ろを走ってA組の“個性”を観察していたらしい。

 クラスぐるみの長期スパンの策ってわけね。

 爪を隠して爆豪くんの寝首をかいたのは大したものだ。

 でも物間くん、正直言って喧嘩を売る相手を間違えたとしか思えない。

 だって爆豪の奴、誰彼構わず噛み付く狂犬だもの。

 ほら、散々煽られて、凄い殺気漏れてる。

 

 そして残り時間が半分を切ったあたりで、轟くんが動き出した。

 まず上鳴くんの“個性”で他のチームを全員痺れさせ、動けなくなったところを氷でガチガチに固めて拘束した。

 

『何だ何した!?群がる騎馬を轟一蹴!』

 

『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた…流石というか…障害物競走で全員に避けられたのを省みてるな』

 

『ナイス解説!!』

 

 プレゼント・マイク先生の実況に対して、相澤先生が解説をする。

 他の騎馬の動きを封じた轟くんは、完全に身動きが取れなくなった鱗チームと拳藤チームから、ハチマキを1本ずつ奪い取る。

 ……うわ、えげつない事するね。

 

 そして右側の氷で緑谷くんの周りを囲み、退路を絶った。

 それで終わりかと思いきや、緑谷くんは轟くんが左側の炎を使わないのをいい事に、轟くんの左側に回って逃げた。

 そこから、緑谷チームと轟チームの攻防戦が始まる。

 てか轟くん、障害物競走の時も思ったけど、なんで炎を使わないんだろう。

 顔の左側の火傷と何か関係あるのかな。

 

 

 

『残り時間約1分!!轟、フィールドをサシ仕様にし…そしてあっちゅー間に1000万奪取!!とか思ってたよ5分前までは!!緑谷なんと、この狭い空間を5分間逃げ切っている!!』

 

 緑谷くんは、5分間もの間轟くんから逃げ切っていた。

 だけど飯田くんが奥の手を使って、超スピードで緑谷くんの横を駆け抜けた。

 

『なーーーーー!!?何が起きた!!?速っ速ーーー!!飯田、そんな超加速があるんなら予選で見せろよーーー!!!』

 

 そして轟くんが、緑谷くんから一千万のハチマキを奪い取った。

 

『逆転!!轟が1000万!!そして緑谷、急転直下の0ポイントーーーーーー!!』

 

 ハチマキを取られた緑谷チームは、ハチマキを取り返す為に轟チームに突っ込んでいった。

 だけど、なんか緑谷くんがハチマキを奪い取ろうとしたけど、轟くんがハチマキの位置を入れ替えていたらしく、ハチマキの奪還に失敗していた。

 

『残り1分を切って現在、轟1000万ポイントを所持!!ガン逃げヤロー緑谷から1位の座をもぎ取ったあ!!!上位3チームこのまま出揃っちまうか!?』

 

 それとほぼ同時刻、物間くんにハチマキを取られた爆豪くんが、物間チームからハチマキを2本奪い取った。

 

『爆豪チーム、鉢巻を取り返し3位に!!この終盤で順位が変わりゆく!!若気の至りだあ!!』

 

 プレゼント・マイク先生が若気の至りとか言ってるけど、普通に皆勝つのに必死になってるだけじゃないの?

 なんて思っていると、爆豪くんが物間チームからハチマキを奪い返した。

 

『爆豪!!容赦なしーーー!!!やるなら徹底!彼はアレだな、完璧主義だな!!さぁさぁ時間ももうわずか!!』

 

「さて…そろそろ行きますか」

 

 残り時間が30秒を切った段階で、俺達は他のチームのハチマキを奪いに動き出した。

 まずは、轟くんに氷漬けにされて動けない鱗チームに接近して、125 (ポイント)のハチマキを奪い取った。

 

「クソッ、動けねぇ…!轟の野郎…!!」

 

「鱗氏!ハチマキがありませんぞ!!」

 

「ああっ!?」

 

 音もなく鱗チームに忍び寄ってハチマキを奪い取った俺達は、次の標的に狙いを定める。

 まだ拳藤チームが一本持ってるけど、奪いに行ってる時間がないからスルーでいいや。

 氷漬けにされてるから、どのみち何もできないでしょ。

 

 次のターゲットは、現状3位の鉄哲チームだ。

 鉄哲チームは、峰田チームのハチマキを持ってるから、根こそぎ奪い取れば俺達の持ち点は1490(ポイント)

 俺達は確実に2位か3位で通過できる。

 

「次はあいつらだな」

 

「ん。行こか」

 

 残り十数秒。

 一千万(ポイント)は、未だ轟チームが保持したまま。

 そして爆豪チームも、轟チームのハチマキを奪いに行く。

 

『そろそろ時間だ!カウント行くぜ!エヴィバディセイヘイ!10!9!8!7!6!5!』

 

 プレゼント・マイク先生のカウントダウンが響く中、フィールドの中心では、今動けるほとんどの騎馬が轟チームの一千万(ポイント)を狙う。

 俺達は、再び一千万を狙いに行っている鉄哲チームに近づいた。

 

『4!3!2!1!』

 

 そして、音もなくハチマキを根こそぎ奪い取る。

 心操くんが奪ったハチマキを首にかけた、その次の瞬間。

 

『TIME UP!!』

 

 ちょうど時間切れになり、プレゼント・マイク先生の声が響き渡る。

 さて、と。

 順位はどうなってるかな。

 

『早速上位4チーム見てみよか!!1位轟チーム!!』

 

 うん…まあ、これは予想通りだな。

 

『2位爆ご…アレェ!?オイ!!!心操チーム!!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』

 

 あら、2位か。

 爆豪くん、結局轟くんからハチマキを一本も取れなかったのか。

 爆豪くんがハチマキを奪うのを見越して多めに取っておいたんだけど、意味なかったや。

 

「ご苦労様」

 

 心操くんは、庄田くんと青山くんにかけた“個性”を解除した。

 すると庄田くんは、驚いたような表情でキョロキョロする。

 

「あれ…?僕は一体…!?」

 

「雪野くん…これ、どういうコト?」

 

「いや…オレもよくわかんない」

 

 青山くんがものすごい落ち込んだ顔で俺の肩を掴んでくるので、俺は青山くんの手を払いのけつつ、一緒に洗脳されてしまったフリをした。

 気安く触んなよお前。

 こいつ、やっぱり要警戒かもな。

 

『3位爆豪チーム!!』

 

 あと少しのところでハチマキを取れなかった爆豪くんは、悔しがっていた。

 2位の俺達が眼中にないのは、流石というか……彼らしいと言えば彼らしいな。

 

『4位緑谷チーム!!』

 

 緑谷くんが4位…?

 轟チームからハチマキを取ったのかな。

 ま、何にせよ運が良かったね。

 轟チームや爆豪チーム、そして俺達が他のチームのハチマキを取っていなければ無かった勝利だ。

 てか緑谷くん、泣きすぎて間欠泉みたいになってるけど、アレどうなってんだ?

 

『以上4組が最終種目へ…進出だああーーーーーーーーーーーー!!』

 

 最終種目進出か……

 俺は次の種目に出るつもりはない。

 さっさと辞退して早めに上がろう。

 

 俺が心操くんに目配せをして釘を刺すと、心操くんは若干不満そうな表情を浮かべつつも頷く。

 俺と心操くんは、次の種目を棄権するという条件で手を組んだ。

 心操くんが次の種目に出てしまうと、彼の“個性”が(ヴィラン)にバレる。

 次の種目に進出しても“個性”を使わなきゃいい話なんだけど、心操くんの“個性”が(ヴィラン)にバレる可能性は1%でも下げておきたい。

 心操くんは、棄権する事でヒーロー科に編入できなくなる可能性を気にしてるようだけど、ここで棄権したとしても、第二種目を2位通過した事実があるから、ヒーロー科に編入するチャンスは得られるはずだ。

 “個性”を敵に晒したくないから棄権するって事くらい、先生達もわかるだろうし。

 

 俺は、心操くんが予選を通過してなかったら、わざと弱そうなチームに入って負けるつもりだった。

 だけど彼がヒーロー科に編入するには、最低限『第二種目通過』という実績は欲しい。

 だから彼を勝たせた。

 

 でもぶっちゃけ俺は、先生達に彼の“個性”の有用性に気づいてほしくないって思ってたりもするんだよね。

 誰も彼に気づいていない方が、楽に祖国に持ち帰れるから。

 人を操る“個性”なんて、ウチの国軍のお偉いさんからしたら垂涎ものの“個性”だ。

 日本人が頭の悪い勘違いをしてる間に、何百人もの有用な“個性”持ちが俺の祖国に流れている事か。

 彼の真価に気づいているのは、俺達だけでいい。

 

 緑谷くんもそうだけど、問題はどうやって持ち帰るかだな。

 無理矢理連れ帰って抵抗されても面倒だから、できれば自分の足でウチの国に来てほしい。

 いざとなれば人質にできるように、家族や知り合いに接触しておくか。

 使える手駒は、多い方がいいものね。

 

 

 

 

 




正直二次創作で心操くんが尾白くん洗脳をオリ主に咎められたり、オリ主にいじめられて脱落する展開は見飽きたので、心操くんに自分のチームの馬を操るように唆した上に最終種目の辞退を強要という逆張り展開にしたりましたわ(笑)。
なお騎馬戦のチーム分けはこのようになっています。


緑谷チーム

騎手:緑谷出久  10000000P
前馬:常闇踏陰       180P
右馬:発目明         10P
左馬:麗日お茶子      140P

TOTAL    10000330P


鉄哲チーム

騎手:鉄哲徹鐡       165P
前馬:骨抜柔造       190P
右馬:塩崎茨        195P
左馬:泡瀬洋雪       160P

TOTAL         710P


爆豪チーム

騎手:爆豪勝己       200P
前馬:切島鋭児郎      170P
右馬:芦戸三奈       125P
左馬:瀬呂範太       175P

TOTAL         670P


轟チーム

騎手:轟焦凍        205P
前馬:飯田天哉       185P
右馬:八百万百       135P
左馬:上鳴電気       100P

TOTAL         625P


峰田チーム

騎手:峰田実        130P
前馬:障子目蔵       150P
後馬:蛙吹梅雨       155P

TOTAL         435P


葉隠チーム

騎手:葉隠透         25P
前馬:耳郎響香       115P
右馬:口田甲司       120P
左馬:砂藤力道       145P

TOTAL         405P


物間チーム

騎手:物間寧人        35P
前馬:円場硬成       105P
右馬:黒色支配        65P
左馬:回原旋        110P

TOTAL         315P


拳藤チーム

騎手:拳藤一佳        75P
前馬:柳レイ子        90P
右馬:小森木乃子       45P
左馬:取蔭切奈        20P

TOTAL         230P


心操チーム

騎手:心操人使        85P
前馬:雪野ベリ        80P
右馬:庄田二連撃       50P
左馬:青山優雅         5P

TOTAL         220P


小大チーム

騎手:小大唯         60P
前馬:凡戸固次郎       95P
後馬:吹出漫我        15P

TOTAL         170P


鱗チーム

騎手:鱗飛竜         55P
騎馬:宍田獣郎太       70P

TOTAL         125P


鎌切チーム

騎手:鎌切尖         40P
騎馬:角取ポニー       30P

TOTAL          70P



そして第二種目成績

1位 轟チーム  10000500P
 所持ハチマキ:緑谷チーム、小大チーム

2位 心操チーム     1490P
 所持ハチマキ:心操チーム、鉄哲チーム、峰田チーム、鱗チーム

3位 爆豪チーム     1390P
 所持ハチマキ:爆豪チーム、葉隠チーム、物間チーム

4位 緑谷チーム      695P
 所持ハチマキ:轟チーム、鎌切チーム

5位 拳藤チーム      230P
 所持ハチマキ:拳藤チーム

6位 鉄哲チーム        0P

6位 峰田チーム        0P

6位 葉隠チーム        0P

6位 物間チーム        0P

6位 小大チーム        0P

6位 鱗チーム         0P

6位 鎌切チーム        0P
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