少年兵のヒーローアカデミア   作:M.T.

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後半、オリ主無双入りまーす。
そして胸糞描写があります。
苦手な方はブラウザバック。





祭りの後

『1時間程の昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!!オイイレイザーヘッド、飯行こうぜ…!』

 

『寝る』

 

『ヒュー』

 

 マイクを切り忘れたのか、プレゼント・マイク先生と相澤先生の男子高校生みたいな会話が聞こえてくる。

 仲良いな……

 

「…何が起きたんだ?いつの間にか0(ポイント)になって終わったぞ…」

 

「あの小人の方の(ポイント)、穢らわしい取り方をしてしまった罰でしょうか…」

 

 なんか最後に俺達にハチマキを取られた鉄哲チームがすっげぇ落ち込んでるけど、知るか。

 でも俺達は棄権するから、枠が空くチャンスが……いや、無いか。

 5位は拳藤チームだし。

 落ち込んでいるB組を尻目に、俺は梅雨ちゃん、芦戸さん、葉隠さんと一緒に食堂に向かった。

 

「悔しいわ、三奈ちゃんおめでとう」

 

「爆豪、轟の氷対策で私入れてくれてただけで、実力に見合ってんのかわかんないよー」

 

「雪野くんおめでとう!2位すごいね!」

 

「それなんだけどさ…オレ、騎馬戦の記憶全然無いんだよね」

 

 頬を掻きながらそう答えた、その時。

 パーカーの内ポケットに入れておいたスマホがブブッと鳴った。

 

「ごめん、先食堂行ってて」

 

 俺はそう言って、皆と別れてトイレへと駆け込んだ。

 今鳴ったのは、普段クラスの皆とやり取りする為に使ってる方じゃなくて、軍から支給された方の端末だ。

 トイレでスマホを確認すると、一件のメッセージが届いていた。

 緊急の案件があるから隙を見て抜け出して東京に来い、という内容のメッセージだった。

 「わかった」とだけ返信し、トイレを出て食堂に向かおうとした、その時。

 

「“個性”婚。知ってるよな?」

 

 食堂に向かう道の分かれ道から、緑谷くんと轟くんの話し声が聴こえてきた。

 話の内容が少し気になったので、食堂には向かわずに話を聴いた。

 

「“超常”が起きてから、第二〜第三世代間で問題になったやつ…自身の“個性”をより強化して継がせる為だけに配偶者を選び……結婚を強いる。倫理観の欠落した前時代的発想。実績と金だけはある男だ…親父は母の親族を丸め込み、母の“個性”を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってこった。鬱陶しい…!そんな屑の道具にはならねぇ。記憶の中の母はいつも泣いている…『お前の左側が醜い』と母は俺に煮え湯を浴びせた。ざっと話したが、緑谷。俺がお前に突っ掛かんのは見返すためだ。クソ親父の“個性”なんざなくたって……いや…使わず一番になる事で、奴を完全否定する」

 

 そこまで聞いた俺は、すぐにその場から立ち去った。

 そして何事もなかったかのように、食堂に向かった。

 

 轟くんの話を聞いて、俺は彼という人間に完全に興味が失せた。

 虐待のトラウマで“個性”が出せないとか、何かの作戦があって“個性”を温存してるとかだと思ってたら、父親を完全否定する為に炎を使わないって、マジでくだらねぇ。

 そんなにエンデヴァーが嫌いなら、こんなとこでヒーロー目指してないで自立できるように働けよ。

 親の金で雄英に通ってるくせに、親の“個性”には頼らないとか、都合が良すぎるとは思わないんだろうか。

 まあ、炎を使いたくないなら使わないで別にいいと思うけど。

 (ヴィラン)相手にも舐めプして殺されても、俺の知ったこっちゃないし。

 

 さて…腹減ったな。

 昼飯食うか。

 

 

 

「遅いよ雪野ー!席取っといたよ!」

 

「ありがと」

 

 食堂に行くと、先にA組の皆が席を取って昼食を食べていた。

 俺も席に座って、母さんが持たせてくれた唐揚げ弁当を食べた。

 やっぱり母さんの弁当は美味い。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛りあげ……ん?アリャ?』

 

『なーにやってんだ……?』

 

『どーしたA組!!?』

 

 昼休み明け。

 スタジアムに戻ると、何故かチアリーダーの格好をしたA組女子達がいた。

 八百万さんの“個性”で創造したであろうチアリーダーの格好に着替えていた。

 

「峰田さん、上鳴さん!!騙しましたわね!?」

 

 八百万さんが、峰田くんと上鳴くんに怒鳴っている。

 なんか女子達は、二人に騙されてチアリーダーの衣装を着せられたらしい。

 懲りないなぁ……

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…」

 

「アホだろアイツら…」

 

 落ち込んで項垂れる八百万さんの肩に麗日さんが手を置き、耳郎さんが呆れながらポンポンを地面に叩きつけた。

 

「まぁ、本戦まで時間空くし張り詰めててもシンドいしさ…いいんじゃない!!?やったろ!!」

 

「透ちゃん好きね」

 

 唯一葉隠さんだけは、チアコスにノリノリだった。

 まあこういうの好きそうだからな。

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目、進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!』

 

「トーナメントか…!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ…!」

 

「去年トーナメントだったっけ?」

 

「形式は違ったりするけど、例年サシで競ってるよ」

 

 切島くんが興奮気味に言い、芦戸さんの疑問に瀬呂くんが答える。

 去年は確かチャンバラだったっけ?

 ビデオを巻きで見たから、あんまり覚えてないけど。

 なんて考えていると、ミッドナイト先生がくじ引き用の箱を持って姿を現した。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!レクに関しては進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人も居るしね。んじゃ1位チームから順に…」

 

「あの、すみません!僕、棄権します」

 

 ミッドナイト先生の説明中に、庄田くんが手を挙げて口を開いた。

 すると近くにいた拳藤さんが、庄田くんの方を振り向いて尋ねる。

 

「庄田!あんた何で…!?せっかくのチャンスなんだよ!?」

 

「騎馬戦の記憶…ボンヤリとしかないんだ。多分、彼の“個性”で…」

 

 そう言って庄田くんは、心操くんを指差す。

 そしてぐっと拳を握りしめて、ミッドナイト先生に直談判した。

 

「わけのわからないまま、皆が競い合ってきた座に立つなんて事、僕にはできない!実力如何以前に…()()()()()()()が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」

 

 あー、なるほどね。

 人にタダ乗りするのが許せない的なやつか。

 にしても、ちょっと想定外だな。

 俺以外にも、棄権したい人がいるなんて。

 なんて考えているとだ。

 

「だったら俺も辞退します」

 

 今度は心操くんが、手を挙げて棄権を申し出た。

 

「さっきは勝つ為にヒーロー科の人達を利用しちゃったけど、よく考えたら、やっぱりあんな事したのは良くなかったと思うので。彼が棄権するなら、その原因を作った俺も、スポーツマンシップに則って棄権するのが筋じゃないでしょうか」

 

 心操くんは、若干不服そうな顔で、俺の方をチラチラ見ながら言った。

 約束を反故にされるのが心配だったけど、杞憂だったようだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

イレイザーヘッド side

 

 庄田に続けて、今度は普通科の心操が辞退を申し出た。

 庄田を洗脳した張本人が辞退するという、一見意味不明な行動に、隣にいたマイクは怪訝そうな顔をしている。

 

『オイオイ、なんかワケわかんねぇ事になってんぞ?庄田はまだわかるが、心操は何がしてぇんだ…?』

 

「なるほどな……そういう事か」

 

『Huh?』

 

「あいつの“個性”は、タネが割れちまえばどう足掻いても不利になる。勝ち残ってライバルに情報を渡すくらいなら、ここで()()()()しようって魂胆だろう」

 

 おそらく、奴の言っていたスポーツマンシップ云々は、角を立てずに棄権する為の建前だ。

 あいつのような“個性”は、外部に“個性”の情報が漏れると、将来のヒーロー活動に支障を来す。

 だがヒーロー科に編入する為には、自力で最終種目まで勝ち進んだという実績は欲しい。

 『最終種目に進めなかった』という結果は同じでも、()()()()()()()()()のと、()()()()()()()()()のとじゃ、受ける印象が全然違うからな。

 自分からはタネを明かさずにプロの期待値を最大限上げておいて勝ち逃げするとは、相当頭の切れる奴だな。

 はじめからこうするつもりだったのか、それとも誰かの入れ知恵かはわからないがな。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

雪野ベリ side

 

 庄田くんと心操くんは、最終種目のくじ引きの前に自ら辞退を宣言した。

 

「何だこいつら…!!男らしいな!」

 

 二人の訴えに、切島くんは胸打たれたのか、ぐっと拳を握りしめていた。

 いや、今の感動する要素あった?

 

『何か妙な事になってるが…』

 

『ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか…』

 

 実況のプレゼント・マイク先生と、解説の相澤先生は、若干怪訝そうに成り行きを見守っていた。

 

「そーゆー青臭い話はさぁ…」

 

 そう言いながらミッドナイト先生は、鞭を持った手を徐に上げる。

 ミッドナイト先生の意向はというと…

 

「好・み!!!」

 

 ミッドナイト先生は、鞭をピシャンと打ちながら言った。

 

「庄田、心操の棄権を認めます!」

 

 好みで決めた……

 もうなんでもアリじゃん。

 なんて思っていると、隣にいた青山くんが俺の肩に手を置く。

 

「僕はやるからね?」

 

 だから気安く触んなお前。

 そういや青山くんも、俺のチームだったっけ。

 まあ、やりたいなら好きにすりゃあいいんじゃない?

 俺が辞退しろって言ったのは、心操くんだけだし。

 さて、俺もそろそろ辞退しときますか。

 

「すみません……オレも辞退したいです。体調が悪いので…」

 

 そう言って俺は、フラフラとした足取りで前に出た。

 すると切島くんが、俺の額を触って驚いたような表情を浮かべる。

 

「うわ、雪野お前熱ヤベェぞ!?」

 

「ええ!?雪野大丈夫!?」

 

 切島くんが言うと、芦戸さんも驚いたような表情を浮かべて俺を心配した。

 俺の症状を見て、八百万さんが少し考え込んでから口を開く。

 

「熱中症ですわね…」

 

「うん…日本の暑さにまだ慣れてないみたい」

 

「確かに今日暑かったからな」

 

 俺が額の汗を拭いながら言うと、瀬呂くんが俺の発言に同調する。

 確かに、今日はまだ5月頭だというのに、最高気温は30度を超えていた。

 それに加えて気温差が大きかったし、本当に熱中症になっても無理はない。

 

「それはいけない!雪野くん、一緒に保健室に行こう!」

 

「ありがとう飯田くん、でも一人で行けるから気にしないで」

 

 俺は、本気で心配して保健室まで付き添おうとした飯田くんに手を振って、ミッドナイト先生の方へと歩いていく。

 

「すみません先生…オレ、戻ります」

 

「あら、大丈夫?すぐに救護ロボを呼ぶわ」

 

「いえ、一人で戻れます」

 

 そう言って俺は、ひと足先にスタジアムを後にした。

 結局、俺達の代わりに鉄哲くん、塩崎さん、骨抜くんが最終種目に進出するらしい。

 そして俺はというと、保健室ではなく、ある場所へと向かっていた。

 俺が向かったのは、相澤先生とプレゼント・マイク先生のいる実況席だ。

 

「相澤先生……」

 

「雪野、大丈夫か?」

 

「体調が優れないので、今日は帰ります」

 

「そうか…気をつけて帰れよ。一人で帰れるか?」

 

「……大丈夫です」

 

「明日明後日は休校だ。プロからの指名等をこっちでまとめて休み明けに発表する。ドキドキしながら休んどけ」

 

「はい…」

 

 プロからの指名か……

 ま、俺には来ないだろうな。

 最終種目進出してないし。

 

 さて、行くか。

 雄英の校舎を後にした俺は、体調不良の演技をやめ、途中の公衆トイレで制服から仕事用の服に着替えて待ち合わせ場所に向かう。

 そこで外で待っている仲間の車に乗って、目的地へ向かった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ミハイル side

 

 コブロフの運転する車に乗った俺は、俺に体育祭から抜け出すように指示を出してきた理由を尋ねる。

 

「コブロフ。オレを急に呼び出して、何の用だ?」

 

「単刀直入に言おう。お前に今すぐ殺してもらいたい奴等がいる」

 

 コブロフがそう言うと、彼の部下が俺に資料を渡してくる。

 死穢八斎會……か。

 資料を見る限り、ヤクザとかいうジャパニーズマフィアらしい。

 欧州ではマフィアが裏社会を牛耳っているが、ヒーローが盛んに活動している日本では、マフィアの存在自体が絶滅危惧種だそうだ。

 何故絶滅危惧種のマフィアの暗殺依頼が俺のところに舞い込んできたのか、その答えは次の資料にあった。

 

「“個性”破壊弾……撃ち込まれた人間の“個性”を壊す弾か」

 

「製造が確認されているのは、半日程度しか効果のない試作品だがな」

 

 何やら、その死穢八斎會の若頭、治崎とやらが、“個性”を消す弾丸を製造しているらしい。

 しかも材料として使われているのは、幼い少女の血や肉片だとか。

 まぁ、そこは特になんとも思わない。

 ウチの国の最高指導者も似たような事してるし、利用できるものを利用するのは裏社会の常識だからだ。

 問題は……

 

「だが、人の“個性”を永久的に消す完成品が出てくるのも時間の問題だ。そうなる前に、邪魔な芽は摘んでおこうってわけだ。お前の任務は三つ。死穢八斎會構成員の殲滅、“個性”破壊弾及び研究データの回収、そして核となる少女の()()

 

 保護、ねぇ……

 耳当たりのいい言葉を選んでるけど、要は拉致しろって事だな。

 

「やり方は?」

 

「今から死穢八斎會本拠地にてCRCとの取引が行われる。CRCの構成員になりすまして、屋敷内に侵入する。多少手荒になっても問題ない。後始末は掃除屋に任せてあるからな」

 

「了解」

 

 俺は仕事の内容を頭に叩き込みつつ、コブロフの運転する車で死穢八斎會の本拠地に向かう。

 すると一台の車が、同じ方向に向かっているのを発見した。

 前の黒い車を追跡すると、案の定、死穢八斎會の本拠地の付近に停まった。

 黒い車から、仮面を被った構成員二人が降りるのを確認した俺とコブロフは、後ろから飛びついて構成員の首をへし折る。

 素早く車の中に死体を詰め込み、構成員が着ていた服を剥いで身につけ、仮面を被る。

 そして今から若い者二人が向かうと死穢八斎會の若頭に連絡を入れ、車のトランクに積んだ武器と大きめの鞄を持って本拠地に向かう。

 

 約束の場所で待っていると、ペストマスクをつけた三人組が出てきた。

 一人は死穢八斎會の若頭、治崎廻。

 そしてあとの二人は、玄野針と入中常衣だ。

 

 俺とコブロフを出迎えた三人は、何の疑いもなく俺達を地下へと案内した。

 それもそのはず、“個性”破壊弾の試作品を買い取るという約束の時間に、取引相手しか知らないはずの集合場所に、客人が現れたのだから。

 本拠地の地下へ案内された俺達は、グルグルと30分ほど地下迷路を歩かされた。

 

「まだ着かないのか?」

 

「誰がどこで見てるかわからないし、客が何を考えているかもわからない。地下からのルートをいくつか繋げてある」

 

 そう言って治崎は、俺達を案内する。

 俺達が変な気を起こさないようにか、俺とコブロフの背後を玄野と入中が歩く。

 今日まで生き残ってこられたのは、こういう慎重さの賜物というわけか。

 まあ、肝心の取引相手が入れ替わっている事には気づいていないようだが。

 

「それより、本当にちゃんと用意できているんだろうな?“個性”を消せるっていうクスリとやらは」

 

「ああ。今回のやつは半日しか効果がない試作品だが、今年中には完成品が出来上がる」

 

「そいつは楽しみだ」

 

 コブロフの質問に対して、治崎が答える。

 今回の取引について会話をするも、特に怪しまれる事なく、応接室に案内された。

 

「着いたぞ。座れ」

 

 俺達が通されたのは、最低限の家具だけが置かれた一室だった。

 目立つのは死穢八斎會の家紋くらいで、生活感のない部屋という印象を受ける。

 

「随分と殺風景だな」

 

「ゴチャゴチャしたレイアウトは落ち着かないんだ」

 

「なぁ、若頭さん。んな事より早くクスリをくれよ」

 

「待て。その前に、金が先だ。お前らの方こそ、約束の代金は持ってきたんだろうな?」

 

「おっと、そうだったな。代金はコレだよ」

 

 コブロフは、そう言って発煙弾を投げつけた。

 次の瞬間には激しい音を立てて発煙弾が炸裂し、煙が一瞬で応接室に広がる。

 

「ふざけた真似を…」

 

 治崎は、“個性”を発動して煙を分解しようとした。

 最優先に殺らなきゃいけないのは、こいつだ。

 俺は治崎が“個性”を発動するよりも速く背後に回り込んでトカレフを抜き、脳幹を吹き飛ばした。

 玄野がハンドガンを抜いて発砲しようとしたが、俺は玄野が発砲するよりも速く、引き金を引く隙も、“個性”を使う隙すらも与えずに玄野の脳幹を破壊した。

 入中が何かの薬物を自分に打とうとしたようだが、その前にコブロフがPP-2000で入中を射殺する。

 1秒にも満たない刹那の間に、死穢八斎會の主戦力三人が死体に変わった。

 コブロフは、脳幹をぶち抜かれて倒れている玄野の懐を漁って弾丸を回収しながら俺に声をかけた。

 

「ミハイル。ブツの回収はオレがやる。オマエはジャパニーズマフィア共にブツの謝礼をくれてやれ」

 

「了解」

 

 今本拠地にいる構成員を全員殺してくるよう命令を受けた俺は、敷地内の構成員を探した。

 辟易する程に広い敷地内をいちいちこっちから探すのも面倒なので、向こうから来てもらおうと、治崎のスマホを奪って構成員を呼び出した。

 すると1分も待たずに、構成員がゾロゾロと出てきた。

 

「何じゃあてめぇ!!」

 

「どこから湧いてきよった!?」

 

 死穢八斎會の構成員が、武器を構えたり、“個性”を出したりして向かってくる。

 俺は“個性”を使わせる前に、左手のトカレフで頭を吹き飛ばし、或いはブーツに仕込んだナイフを頸動脈に突き立てて殺した。

 殺した構成員の飛び散った血が地面に落ちる頃には、また別の構成員が死体へと変わる。

 タンクトップとプロテクターを身につけた変態が触ろうとしてきたので、何かされる前に撃ち殺した、その直後だった。

 

 ほぼ反射的に構成員の一人が“個性”を使おうとしていたのを察知した俺は、後ろの方にいた金髪に飛びついてブーツに仕込んだナイフで頸動脈を刺し、“個性”を発動される前に殺す。

 すると後ろにいたスキンヘッドの大男が俺に殺意を向けながら身体を結晶で覆い始めたので、全身が完全に結晶で覆われる前に射殺する。

 そしてそのまま近くにいたずた袋の男の前に盾として差し出すと、ずた袋が怯んだので、結晶で覆われたスキンヘッドと一緒に踏み潰す。

 ずた袋の男は、スキンヘッドの巨体に潰されたせいか、それともスキンヘッドの結晶が急所に突き刺さったせいか、そのままスキンヘッドの下敷きになって死んだ。

 

 ワラワラと出てくる構成員を次々と死体へと変えながら突き進んでいると、今度は筋骨隆々な大男が殴りかかってきた。

 俺が攻撃を避けて反撃に移ろうとすると、もう一人の細身の男がバリアを張ってガードした。

 だけど、大男が再び俺に攻撃を仕掛ける瞬間にバリア男が一度バリアを解除したので、まずはバリアの方を射殺した。

 間髪入れずに飛んできた大男の右の大振りを回避した俺は、狭い通路を活かして壁や天井を足場にして背後を取り、トカレフで頭を吹き飛ばす。

 

 これは俺の経験上、発動型や変形型の“個性”持ち全般に言える事だが、どんなに無意識下で調整できるように訓練していても、俺ら“無個性”にはない余計な神経を使うから、知覚から攻撃までの間にコンマ数秒から数ミリ秒のタイムラグが生じる。

 身体構造の違いから生まれる隙の差は、あらゆる対策、あらゆる訓練をもってしても埋められない。

 その一瞬の間に敵を殺す事なんて、俺にとってはピロシキを一個平らげるくらい簡単な事。

 

「やっと見つけた」

 

 構成員を次々と殺しながら地下迷宮を探し回る事約5分、やっと核の少女を見つけた。

 核の少女は、黒い帽子を被ったペストマスクの男に連れられていた。

 どうやら少女を俺達に奪われないよう、どこかへと隠すつもりらしい。

 コブロフからは、構成員を皆殺しにして少女を回収しろと言われている。

 この状況は、むしろ俺にとっては好都合。

 

 ペストマスクが俺に気づいて銃を抜くが、俺はそれよりも速く引き金を引いてペストマスクを撃ち殺した。

 ついでに天井にもう一人張りついていたので、即座に撃ち殺す。

 邪魔な二人を殺した俺は、少女に歩み寄る。

 日常的に身体をクスリの材料にされているのか、両手両脚には包帯が巻かれていて、髪はボサボサに伸び切っている。

 

「ひっ……!」

 

 少女は、怯えた様子で俺を見るが、逃げようとはしなかった。

 それを見て、頭の良い子だと素直に思った。

 この歳で、俺の機嫌ひとつで簡単に命を奪われるという事を理解している。

 そして、逃げたところで俺からは逃げられないという事も。

 コブロフには、少女を生きたまま回収するのが難しければ殺しても構わないと言われているが、できれば殺すような事はしたくない。

 生きて祖国に連れ帰った方が、色々と使えそうだから。

 

 俺は敵意をない事を示す為に銃を懐にしまい、両手を広げて少女に歩み寄った。

 そして怯えている少女を抱き上げ、首の後ろに麻酔針を刺した。

 すると少女は、電池が切れたように俺の腕の中で眠った。

 これで半日は起きない。

 目を覚ました頃には、既に祖国へ向かう船の中だ。

 俺は眠った少女を大きめのバッグに詰め、コブロフと合流した。

 

「よぉ。仕事は終わったみたいだな」

 

「コブロフ。クスリとデータは回収したのか?」

 

「ああ」

 

 コブロフは、敷地内の生体反応を探って、俺の仕事が完了している事を確認した。

 俺もコブロフが回収したクスリと研究データをチェックして、任務が完了した事を確認する。

 コブロフは、“個性”を持たない代わりに、幼少期のストレスの影響か、周囲にいる人間の気配を感知できる。

 この本拠地の迷路の中から生き残っている構成員を見つけるくらいは、造作もない事だ。

 俺が楽に少女を見つけられたのも、コブロフのおかげだ。

 戦場では、この能力を活かして観測手として俺とバディーを組んでいる。

 

 仕事が終わってしばらく待っていると、眼鏡をかけたショートヘアの女性が来た。

 どうやら彼女が掃除屋らしい。

 

「掃除屋。後始末を頼めるか?」

 

「うん。任せて」

 

 掃除屋と呼ばれた女性は、“個性”で血や死体を吸い取る。

 これで死穢八斎會の構成員は、()()()()()になった。

 無生物を吸い取って亜空間に収納する“個性”を持つ彼女は、こういう汚れ仕事をしている俺達にとっては便利なので、何かと重宝させてもらっている。

 

 目的を果たした俺達は、祖国へ向かう船に少女を乗せに、港へと向かう。

 その途中で、軍医のニコライから、死穢八斎會の会長を暗殺したとの報告を受けた。

 目的地へ向かうと、既に港に船が到着していた。

 俺は、祖国からの遣いに少女を引き渡して帰路についた。

 

 俺のような孤児だったり、この少女のように攫われたりして軍事施設に送られる子供は、大きく三種類に選別される。

 俺も何も知らなかった頃は、“祝福”を与えられた子供は里親のもとに送られると信じていたが、そんなのはまやかしだ。

 替えの利かない珍しい“個性”を持つ子供は、身体の自由を奪われた上で、種馬か孕み袋にされる。

 いくらでも替えが利く“個性”を持つ子供は、薬漬けにされて実験体にされるか、新兵器の材料にされる。

 そして俺達のような“無個性”の子供は、毎日人殺しの訓練を受け、最後まで生き残った者は兵士として戦場に送られる。

 人間としての人生を送れるのは、祖国の国籍を持つ者だけだ。

 

 どのパターンであれ、祖国に連れ帰れば、国の為に死ねる駒として育て上げる為に、軍の地下施設に連行され執拗なまでの洗脳教育を受ける。

 半年もすれば、自分の境遇や生い立ちはおろか、日本語すら忘れているだろう。

 仕事を終えて家へと帰る途中、コブロフが話しかけてくる。

 

「しっかし、仕事とはいえ…あの子も可哀想だよな」

 

「……?何が?」

 

「何がって、あんな小さい子をお国の為に生贄にする事に対して、お前は何も思わねぇのか?」

 

「特に何も」

 

 俺は、この仕事に対して、何かを思った事はない。

 自然界には、シマウマを狩るのを躊躇うライオンなんかいない。

 生きる為に獲物を狩る、それが奴等の性だからだ。

 俺が人を騙して、奪って、殺すのは、それが俺の役目だから。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

雪野ベリ side

 

「ただいま」

 

 任務を終えた俺が家に帰ると、父さんと母さんと颯兎がいた。

 

「あら、ベリちゃんおかえり。体育祭、お疲れ様。体調は大丈夫?」

 

「うん、もう大丈夫」

 

「ちゃんと病院行ってきた?」

 

「うん」

 

 母さんは、俺の顔を見るなり、俺を心配してくる。

 俺が体調不良を理由に体育祭を抜け出して死穢八斎會を潰した事については、何とか父さんがうまく話を合わせて母さんに説明してくれたらしい。

 俺が荷物を下ろして夕食の準備の手伝いをしようとすると、ちょうど皿を運んでいた颯兎が話しかけてくる。

 

「兄ちゃんおかえりー!体育祭、録画してあるから一緒に見ようよ!」

 

「颯兎、食器持ったまま走ったら危ないよ」

 

 颯兎が皿を持ったままピョンピョン跳ねるので、颯兎の頭に手を置いて戒めた。

 その後俺は、家族の皆と一緒にテレビで体育祭の録画を見た。

 

 一回戦第一試合は、骨抜くんが緑谷くんを沈めて場外に押し出そうとしたけど、緑谷くんが指一本を犠牲に骨抜くんを衝撃波で場外に押し出し、ギリギリで緑谷くんの勝ち。

 第二試合は、轟くんが瀬呂くんを凍らせて轟くんの勝ち。

 第三試合は、発目さんが飯田くんをサポートアイテムの宣伝に利用した上で自ら負け、飯田くんの勝ち。

 第四試合は、上鳴くんの電撃を塩崎さんが無効化した上で拘束して塩崎さんの勝ち。

 第五試合は、青山くんがお腹を壊すまで芦戸さんがレーザーから逃げ切って、鮮やかなアッパーカットを決めて芦戸さんの勝ち。

 第六試合は、常闇くんが八百万さんをあっさり場外に押し出して常闇くんの勝ち。

 第七試合は、切島くんと鉄哲くんの試合だったけど、ドローだったので腕相撲で決着をつけ、切島くんの勝ち。

 第八試合は、麗日さんの全力を爆豪くんがねじ伏せて爆豪くんの勝ち。

 

 二回戦第一試合は、轟くんと緑谷くんが全力でぶつかり合って、ギリギリで轟くんの勝ち。

 第二試合は、塩崎さんを飯田くんが押し出して飯田くんの勝ち。

 第三試合は、常闇くんが芦戸さんを押し出して常闇くんの勝ち。

 第四試合は、爆豪くんが絨毯攻撃で切島くんをダウンさせて爆豪くんの勝ち。

 

 準決勝第一試合は、轟くんが飯田くんを凍らせて轟くんの勝ち。

 第二試合は、爆豪くんが常闇くんの弱点を見抜いて戦闘不能に追い込み爆豪くんの勝ち。

 

 そして決勝戦。

 正直、ダントツで一番見る価値の無い試合だった。

 轟くんは緑谷くんとの試合以降、何かの迷いが生じたのか、氷のコントロールすらろくにできずにボロボロ。

 結局一度も全力を出せずに爆豪くんの大技で場外に押し出され、爆豪くんの優勝。

 

 録画を見終わって、ニュース番組でも見ようとザッピングしていると、最新のニュースが流れてくる。

 目に飛び込んできたのは、“ヒーロー殺し”ステインがインゲニウムを襲撃したニュースだった。

 インゲニウムは、一命を取り留めたものの、下半身不随の重傷を負ったらしい。

 

「ねえ、ベリちゃん。インゲニウムって……」

 

「…うん。オレのクラスメイトのお兄さんだよ」

 

「え!?」

 

 俺が言うと、颯兎が驚く。

 そういや表彰の時、飯田くんいなかったな。

 

 保須か……

 てかこれ、思いっきり俺の任務中じゃん。

 こんな偶然ある?

 

「飯田くん、心配だな……」

 

 俺は、ニュースを見てそんな事をポツリと呟いた。

 ステイン……確かオールマイトのファンだとかいう殺人鬼だ。

 俺達やオールマイトに危害を加えないなら放置でいいのかもしれないけど、少なくとも俺は、放置すれば俺達の邪魔になると直感で感じた。

 こうして、俺の雄英体育祭は幕を閉じた。

 

 

 

 

 




死穢八斎會、壊☆滅
ハンター世界でも、(ウボォーさんとか蟻みたいな規格外を除けば)念能力者相手でも意外と通用する事が判明した銃火器さんは強い(小並感)。
そもそもヒロアカ世界の日本は、プロヒーローがいる時点で自衛隊のような軍隊を持っていない可能性すらありますし、“個性”に関係ないサポートアイテムに頼るのはダサいみたいな風潮があるので、(ヴィラン)ですら本職による銃撃戦とか爆撃テロとか想定してない可能性が高いという。

そしてエリちゃんバッドエンドルート。
オリ主がヴィランの二次創作は数多くありますが、なんだかんだで女子供には優しいオリ主が多い印象なので、ここまで人の心が無いオリ主も珍しい気がします。

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