雄英高校入学二日目。
午前は必修科目、英語等の授業だった。
一時間目は、プレゼント・マイク先生が教える英語の授業…のはずだったんだけど。
『そんじゃ雪野!母国語で自己紹介頼むぜYEAH!』
「はい。
Очень приятно. Меня зовут Юкино Белый.
Надеюсь, мы сможем быть хорошими друзьями.
ちなみに今のは、『はじめまして。オレの名前は雪野ベリです。みんなと友達になれたら嬉しいです』という意味です」
『サンキューリスナー!ヘイエヴィバディ、クラップユアハンズ!』
何故か授業の最初に、俺がロシア語で自己紹介をさせられた。
なんか、留学生のクラスメイトと授業でコミュニケーションを取る事で、外国語に興味を持ってもらおうっていう計らいらしい。知らんけど。
俺の自己紹介中、クラスの皆はポカンとしていた。そりゃそうだろ。
八百万さんだけは頷いてたけど…
前座が済んだ後は、いよいよ本番の授業が始まる。
『んじゃ次の英文のうち間違っているのは?おらエヴィバディヘンズアップ! 盛り上がれーー!!!』
(((普通だ…)))
(クソつまんね)
ふーん、日本の高校の授業ってこんなもんなのか。
意外と軍学校とあんまり変わんないんだな。
うちのクラスでは、英語の授業の最後の10分間だけは、息抜きに俺が実践的な外国語を教える時間が設けられた。
この人数を相手に授業するの、普通に嫌なんだけど…
まあでも、キャラが濃い奴が多いヒーロー科だと、目立たなすぎても警戒されるし、逆にアピールチャンスができてラッキーって考えとくか。
普通の英語の授業がつまんなかったからか、俺の外国語の授業は意外とウケが良かった。
プレゼント・マイク先生、どんまい。
ちなみにこの日は、自己紹介で使えるフレーズを何個か教えた。
ロシア人美女の口説き方を教えろとしつこい奴が約二名いたが、全面的にスルーして授業をしているうちに、一時間目の授業が終わった。
そして昼休み。
雄英高校にある大食堂では、一流の料理を安価で頂ける。
クックヒーロー『ランチラッシュ』を始めとする一流の料理人達が調理しているのだ。
とはいえ工作員の身分の俺が無駄遣いしていい金など1円もないので、家から弁当を持参してきた。
だけど、そんな事を知らない葉隠さんが横から話しかけてきた。
「雪野くん!学食行かない?」
「うん、いいよ」
俺は、パタパタと腕を振って自己主張する葉隠さんの誘いを快諾した。
葡萄がすげぇ血涙で見てきたけど、そういうとこだぞお前。
だけど返事をした後で、ある懸念が思い浮かぶ。
「あ、でも、学食で弁当食っていいのかな」
「う〜ん、わかんない!怒られたら次から気をつければいいんじゃない?」
「それもそっか」
あまり深く考えてなさそうな葉隠さんの返答に、俺は無難な返しをした。
食堂に行くと、既に上級生が大勢いて空いている席を探すのも一苦労だけど、普通に弁当や購買のパンを食べてる上級生もいた。
学食を食べる専用のスペースで持ち込んだものを食べるのはルール違反なんじゃないか、という俺の心配は杞憂に終わった。
「じゃ、席取りしてくる」
「いいの?ありがとう!」
俺が席取りをしている間に、葉隠さんは学食を買いに行った。
しばらくすると、彼女がミートパスタを持って戻ってきたので、俺も持参してきた油淋鶏弁当を広げた。
居候先の中華料理店では、昼間は近所の学生やサラリーマン向けに弁当を販売している。
店頭には並べられないB級品を、もったいないからって事で昼食として持ってきているのだ。
B級品といえど、腐っても料理人の作った弁当だから味は申し分ないんだけど。
「雪野くんのお弁当、お店のやつ?」
「うん。オレ、家が中華料理屋だから」
「へぇ〜、いいなぁ〜!」
「有料でもいいなら持ってくるよー。ちなみに1食400円ね」
葉隠さんが弁当に興味を示したので、俺は親指と人差し指を擦り合わせてお金のハンドサインをしながら言った。
父さんと母さんの商売もあるし、居候の身分で友達の分もタダで弁当作って、なんて図々しい事は言えないからね。
なんて考えているとだ。
「あ、雪野くん!」
「小森さん。隣空いてるよ」
ちょうど後ろから小森さんに声をかけられたので、たった今団体さんが立って空いた隣の席をポンポンと叩く。
小森さんは、オレンジ色の髪をサイドテールにした女子、黒髪ボブの綺麗めの顔立ちの女子、頭から角を生やしたブロンドヘアーの女子と一緒だった。
小森さんの後ろから、サイドテールの女子が話しかけてくる。
「希乃子、知り合い?」
「入試の時助けてもらっタケ」
「そうだったんだ。私、B組の拳藤一佳。で、こっちは小大唯。よろしくな」
「ん」
「ワタシ、角取ポニーデス!よろしくデース!」
「はじめまして、拳藤さん、小大さん、角取さん。オレはA組の雪野。で、彼女は…」
「葉隠透でーす!よろしく〜!」
俺と葉隠さんは、自己紹介がてら、拳藤さん、小大さん、小森さん、角取さんのB組女子4人と昼食を食べた。
特に角取さんとは、留学生同士、「日本語覚えるの苦労した〜」なんて苦悩を共有して仲良くなった。
ちなみに後日、ここでの話がどこからか広まって、A組B組両クラスから弁当の注文が来たのは別の話。
◇◇◇
そんなこんなで昼休みが終わり、午後の授業。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
HAHAHAHAと特徴的な笑い声を響かせながらオールマイトが教室に入ってきた。
「オールマイトだ…!!すげぇや本当に先生やってるんだな…!!!」
「
他の皆が生のオールマイトに興奮している中、俺は別の意味で興奮していた。
ようやく、ターゲットとのご対面だ。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ!単位数も最も多いぞ!早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」
「戦闘……」
「訓練…!」
オールマイトは、『BATTLE』と書かれたカードを見せながら高らかに宣言する。
緑谷くんは不安そうな表情を浮かべ、爆豪くんはやる気を出していた。
にしても、戦闘訓練か…軍学校時代を思い出すな。
「そしてそいつに伴って…こちら!!!入学前に送って貰った『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた…『
「おおお!!!!」
オールマイトが端末を操作すると、壁からコスチュームのケースが入った棚が出てくる。
わーハイテクダナー(棒)
「着替えたら順次、グラウンド・βに集まるんだ!!」
「「「はーい!!!」」」
オールマイトが言うと、他の皆が元気よく頷く。
さて…と、行きますか。
◇◇◇
「恰好から入るってのも大切な事だぜ少年少女!!自覚するのだ!!!!今日から自分は…ヒーローなんだと!!」
ずらりとクラス全員がコスチュームを身に纏って並んだ姿は、圧巻の一言だ。
雄英をはじめとしたヒーロー科の高校には、『被服控除』というシステムがある。
『“個性”届』と『身体情報』、あとは『要望』なんかを提出すると、学校専属のサポート会社がその生徒だけのコスチュームを作ってくれる。
たかだか学生のコスチュームに随分と金かけてんな、と他人事のように思っていると、葉隠さんが話しかけてくる。
「おぉ、雪野くんのコスチューム、なんか相澤先生のと似てるね」
「まあ、多少は参考にしたからね」
俺のコスチュームは、多少の違いはあれど、イレイザーヘッドこと相澤先生のコスチュームに似た感じだ。
黒のミリタリージャケットとズボン、装備品は腰の多機能ベルト、手にはオープンフィンガーグローブをはめ、足にはコンバットブーツを履いている。
スーツの中には、衝撃を受けると固まるダイラタント保護材が入っていて、増強系や異形型の“個性”持ちのパンチを喰らっても「痛い」で済む程度には頑丈にできている。
…流石にオールマイトのパンチをモロに喰らったら、
それと腰のポーチには、水分補給用の水筒を入れてある。狙撃手にとって、水分不足は命取りだからね。
ここまでなら確かに、相澤先生のコスチュームとそっくりだと思う。
決定的な違いは、俺のは首の捕縛武器の代わりに、ジャケットの上に白いフード付きのマントを羽織っているってところだ。
元々紫外線に弱い体質なので、顔を隠せるフードは必須アイテムです。
ちなみにこのマント、防刃・難燃、あとフードに内蔵された目の保護用のバイザーに加えて割と便利な機能があるんだけど、まあそれは見てのお楽しみという事で。
そして今回は1種類しか持ってこなかったけど、訓練用に多種多様なエアガンを用意してある。
流石に学生の身分で実銃は持てないので、仮免を取得するまではエアガンを使い続ける事になりそう。
入試はともかく授業中にエアガンを使ってもいいのか?とも思ったので一応入学前に確認は取ったけど、3年の担任のスナイプ先生も学生時代は“個性”伸ばしにエアガンを使ってたらしいから大丈夫だそうだ。
銃の事でなんか聞かれたら、そういうゲームにハマってたって言い訳しようと思ってる。
……にしても相澤先生の捕縛武器、俺の戦闘スタイルと相性良さそうだし、この訓練が終わったら申請してみようかな。
首だとフードが邪魔して使いにくいから、瀬呂くんのテープみたいに腕から直接伸ばせるようなやつが欲しい。
「ところで、葉隠さんのコスチュームは光学迷彩的なやつ?最近のサポート会社ってすごいんだね」
「ううん?違うよ?」
「は?」
「私のはグローブと靴だけ!」
「…………」
いや、バカなの?
敵に攻撃されたら一発アウトじゃん。
そうじゃなくても、危険な場所に救助に行く事とか普通にあるらしいし。
ステルス性能に全振りするのはいいけど、それと引き換えに大事なものを色々失ってるんだが?
「この訓練終わったらすぐコスチューム作ってもらいなさい。倫理的な問題もあるけど、普通に危ないから」
「う、うん、わかった!」
俺が葉隠さんに詰め寄って念押しするように言うと、葉隠さんが頷く。
見えないからわからないけど、多分コクコクと何度も首を縦に振っている。分かればよろしい。
「始めようか有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」
俺が他の皆のコスチュームを観察していると、オールマイトが声をかける。
「あ、デクくん!?カッコいいね!!地に足ついた感じ!」
「麗日さ…うおお…!!」
「要望ちゃんと書けば良かったよ…パツパツスーツんなった。恥ずかしい…」
黒と白のボディースーツを着た麗日さんと、多分オールマイトを意識したであろう二本の触角が生えた緑色のジャンプスーツを着た緑谷くんが、二人で仲良さそうに話をしている。
緑谷くんのスーツは、特別な機能があるようには見えないけど、ハンドメイドだろうか。
「ヒーロー科最高」
「ええ!?」
紫色のボディースーツとオムツ?みたいなものを身につけた葡萄がなんか言ってるが、無視だ無視。
相澤先生、緑谷くんより先にこいつ何とかしろよ。
「良いじゃないか皆!!カッコいいぜ!!」
コスチューム姿の俺達を見渡したオールマイトは、満足そうにそう言った。
あ、オールマイトが緑谷くん見て笑ってる。
自分のコスプレしてるのに気づいて可笑しくなっちゃったか?
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
全身白アーマーが、ガシャン!と音を立てながら前に出て手を上げた。
あ、アレ飯田くんだったんだ。
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での
「基礎訓練も無しに?」
オールマイトが説明すると、蛙モチーフの緑色のボディースーツを着た梅雨ちゃんが首を傾げながら質問する。
「その基礎を知る為の実戦さ!ただし今度は、ブッ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ!」
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」
「分かれるとはどの様な分かれ方をすればよろしいですか!」
「このマントヤバくない?」
「んんん〜〜聖徳太子ィィ!!!」
オールマイトが言うと、八百万さん、爆豪くん、麗日さん、飯田くん、青山くんがほぼ同時に質問をしたので、オールマイトが困ってしまった。
いやお前ら、話を最後まで聞けって。
爆豪、お前いい加減にしとけよ。
あと青山、お前に至ってはどういう神経してたら授業中にそんな発言が出てくるんだ。
「いいかい!?状況設定は
オールマイトはどこからかカンペを取り出してそれを読み始めた。
まぁそれは別にいいとして…
「コンビ及び対戦相手はクジだ!」
「適当なのですか!?」
オールマイトがクジを取り出すと、飯田くんがツッコミを入れた。
だから君、話を最後まで聞こうって。
なんて考えていると緑谷くんが、オールマイトの代わりに飯田くんの疑問に答える。
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事が多いしそういう事じゃないかな…」
「そうか…!先を見据えた計らい…失礼致しました!!」
「いいよ!!早くやろ!!!」
オールマイトは、ヤケクソ気味に説明を打ち切った。
尺が無くなりそうだから巻いたのかな。
とまあオールマイトのグダグd…微笑ましい説明の後、厳正な抽選を経て10組のチームができた。
Aチーム:麗日お茶子&緑谷出久
Bチーム:障子目蔵&轟焦凍
Cチーム:峰田実&八百万百
Dチーム:飯田天哉&爆豪勝己
Eチーム:青山優雅&芦戸三奈
Fチーム:口田甲司&砂藤力道
Gチーム:耳郎響香&雪野ベリ
Hチーム:蛙吹梅雨&常闇踏陰
Iチーム:上鳴電気&葉隠透
Jチーム:切島鋭児郎&瀬呂範太
俺はGチーム、ペアは耳郎さんだ。
なんというか…わかってはいたけど、相性とか考えずにくじで決めたから、バラつきが大きいな。
組み合わせによっては悲惨な事になるぞこれ。
なんて考えつつ、俺が他のペアを観察していると、耳郎さんが話しかけてくる。
「雪野だっけ?ウチ、耳郎響香。よろしく」
「うん、よろしくね耳郎さん。お互い頑張ろう」
耳郎さんが握手を求めてくるので、俺は快く彼女と握手を交わした。
昨日のうちにクラスメイトの“個性”は全部調べたけど、正直言って耳郎さんとペアを組めたのはとてもラッキーだ。
彼女の“個性”は、俺の戦闘スタイルと相性が良い。
ペアを組むなら障子くんか耳郎さんがいいと思ってたけど、まさかドンピシャで来るとは。
目立つのは嫌だと常々言っているけど、かといってダサいところを見せるのはプロとしてもっと嫌なので、どのチームが相手になろうが勝たせてもらおう。
「続いて最初の対戦相手は、こいつらだ!!!」
オールマイトは、色違いの箱からボールを一個ずつ取り出した。
白いボールには『A』、黒いボールには『D』と書かれている。
「Aコンビが『ヒーロー』!!Dコンビが『
うわぁ…よりによってこの組み合わせ…
言っちゃ悪いけど、嫌な未来しか見えない。
そういえば、昨日爆豪くんが緑谷くんを「デク」って呼んでたのが気になったからちょっと調べてみたら、案の定幼馴染みだった。
どういう関係だったのかはお察しの通りだけど。
「
オールマイトはそう忠告するも、爆豪くんは悪い顔をしていた。
ハッキリ言って、俺は彼の事が嫌いだ。
暴言、暴力、(憶測だけど)いじめと、わざとやってるのかってくらい俺の地雷原の上でタップダンスをしてやがる。
うっかり態度が表に出て
◇◇◇
その後、ヒーローチームの麗日さん緑谷くんコンビと
俺達は、地下のモニタールームでオールマイトと一緒に4人の様子を観察していた。
「さぁ、君達も考えて見るんだぞ!!」
モニターには、窓から潜入するヒーローチームの姿が映っていた。
そのまま核のある部屋へ向かおうとすると、爆豪くんが物陰からヌッと出てくる。
――BOOM!!
「いきなり奇襲!!!」
うわ…今の、完全に顔面狙ってたよね?
爆破で失明したりでもしたら、どう責任取るつもりなんだろうか。
まあ、その心配はしなくて済んだんだけどさ。
何故って…
緑谷くんが、咄嗟に麗日さんを庇って避けたから。
爆豪くんがどう来るか分かってなきゃできない反応だ。
ずっと彼にいじめられてたら、どう来るかなんていやでもわかるか。
緑谷くんは、顔のマスクが右半分破れているけど、ほぼ無傷だった。
「爆豪ズッケェ!!奇襲なんて男らしくねぇ!!」
「いや、そんなに悪くない手だと思うけど」
「雪野少年の言う通り!奇襲も戦略!彼らは今実戦の最中なんだぜ!」
「緑くん、よく避けれたな!」
奇襲は悪くないと思うんだけど…
これ多分独断だよね?
飯田くんキョロキョロしてるし。
あ、緑谷くんが爆豪くんを投げた。
まあ、この状況だったらそうするよね。
自分でもコントロールできていない超パワーを、この狭い空間でぶっ放つわけにはいかないし。
緑谷くんが爆豪くんに啖呵を切ると、爆豪くんはブチギレて怒鳴り散らした。
そして今度は、部屋で核を守っている飯田くんにキレた。
俺は、爆豪くんの発言を読唇術で読み取った。
今のは、「黙って守備してろ、ムカついてんだよ俺は今」、かな。
ふぅん、意外。ちゃんとルール通りに動ける冷静さはあるんだ。
「あいつ何話してんだ?定点カメラで音声無いと分かんねぇな」
「小型無線でコンビと話してるのさ!持ち物はプラス建物の見取り図。そして、この確保テープ!これを相手に巻き付けた時点で、捕らえた証明となる!!」
「制限時間は15分間で、『核』の場所は『ヒーロー』に知らされないんですよね?」
「Yes!」
「ヒーロー側が圧倒的に不利ですね!これ!」
「その通り!相澤くんにも言われたろ?アレだよ、せーの!Plus U「あ、ムッシュ爆豪が!」
オールマイトが『Plus Ultra』と言おうとすると、青山くんがオールマイトの発言を遮った。
オールマイトどんまい。
爆豪くんが、緑谷くんに攻撃を仕掛けた。
緑谷くんは爆豪くんを引きつけ、その隙に麗日さんを先に行かせた。
まあ、この状況だったらそっちの方が得策か。
爆豪くん、麗日さんは眼中にないみたいだし。
下手に二人で残って爆豪くんを相手にしたら、逆に麗日さんが緑谷くんの足を引っ張りかねない。
緑谷くんは、確保テープで爆豪くんの蹴りを受け流し、そのまま右の大振りを避けた。
テープの使い方が上手いな。
こういう咄嗟の判断は、緑谷くんの方に分があるみたいだ。
「すげえなあいつ!!“個性”使わずに渡り合ってるぞ!」
「入試一位と!!」
砂藤くんと瀬呂くんが、緑谷くんの動きを見て驚いてる。
緑谷くんは、このまま爆豪くんと戦っても勝ち目はないと踏んだのか、逃げて物陰に隠れた。
その行動が逆鱗に触れたのか、爆豪くんは怒鳴り散らしながら両掌から爆破を放つ。
「なんかすっげーイラついてる。コワッ」
上鳴くんが、爆豪くんを見てそう呟く。
今までの言動を見る限り、奴は自尊心の塊なんだろうな。
自尊心が高いのはいい事だけど、それを刃物みたいに振り回すからヤバい奴に見えるんだよ。
今の彼に言っても響かないだろうけど。
そして麗日さんはというと、核のある部屋に辿り着いた。
物陰に隠れて飯田くんの隙を窺っていた彼女だが、飯田くんが突然悪役ムーブをかまし出したせいか、思いっきり吹き出した。
そのせいで飯田くんに見つかり、膠着状態になってしまう。
浮かすものがないこの状況では、麗日さんが圧倒的に不利だ。
こういう事になるのも想定して、浮かす武器くらい常備しとけ。
早速やらかしてチームの足を引っ張った麗日さんに、俺はちょっとイラッとしてしまった。
訓練とはいえ、ちょっと気が緩みすぎじゃない?
実戦だったら、笑ったりなんかしたら次の瞬間には首が飛んでる。
命懸けのお仕事にこれから身を置くっていう自覚が足りない。
なんて思っていると、緑谷くんも、爆豪くんに見つかって膠着状態に陥る。
爆豪くんは、右手を緑谷くんに向け、籠手のトリガーに手をかける。
なんかニトロだの溜めるだの言ってるが、あの籠手の機能は、掌の汗を内部に溜めて爆破の威力を高める…といったところか。
「爆豪少年!ストップだ!殺す気か!」
流石に危険だと判断したのか、オールマイトが止めに入る。
爆豪くんは「当たんなきゃ死なねぇよ」とか妙に冷静な事を言いつつ、籠手のピンを抜いた。
――ドゴォッ
モニターが真っ白に光り、地響きが起こった。
数秒ほどしてようやく復旧したモニターを見ると、ビルが半分ほど吹き飛んでいた。
「授業だぞ!コレ!」
「…!!緑谷少年!!」
オールマイトの発言につられて、モニターに映っている緑谷くんに目を向ける。
至近距離で今の威力を目の当たりにした彼は、青ざめて腰を抜かしていた。
そんな彼に、爆豪くんは凶悪ヅラで近づく。
一方、麗日さんの方は、今の爆発の隙に自分を浮かせて核に近づいた。
だけどそれを察知した飯田くんが、核を抱えたまま高速移動してそれを阻み、再び膠着状態に陥ってしまう。
そして爆豪くんはというと、緑谷くんを凶悪ヅラで睨みながら挑発していた。
緑谷くんが麗日さんとコンタクトを取ろうとすると、爆豪くんはさらにイラついた態度を見せる。
「先生!止めた方がいいって!爆豪あいつ、相当クレイジーだぜ!殺しちまうぜ!?」
「いや……爆豪少年!次ソレ撃ったら…強制終了で君らの負けとする!屋内戦において、大規模な攻撃は守るべき牙城の損害を招く!ヒーローとしては勿論、
切島くんがオールマイトに進言すると、オールマイトは爆豪くんに最後の忠告をする。
爆豪くんは爆破の勢いで緑谷くん目掛けて飛び上がり、目眩しを兼ねた爆破で方向転換して緑谷くんを飛び越え、背後に回り込む。
そして右手の爆破で勢いをつけ、左手で緑谷くんの背中を爆破した。
「目眩しを兼ねた爆破で軌道変更、そして即座に、もう一回…考えるタイプには見えねぇが、意外と繊細だな」
「慣性を殺しつつ有効打を加えるには、左右の爆破力を微調整しなきゃなりませんしね」
「才能マンだ、才能マン。ヤダヤダ…」
轟くんと八百万さんが冷静に分析をする中、上鳴くんは爆豪くんに嫉妬していた。
背中を爆破された緑谷くんが前に飛び退くと、爆豪くんは背後から右の籠手で緑谷くんの脇腹を殴り、右腕を掴む。
そして腕を掴んだまま左手の爆破で回転に勢いをつけ、両足で踏み込み、そのまま緑谷くんを背負い投げた。
「リンチだよコレ!テープを巻き付ければ捕らえた事になるのに!」
「ヒーローの所業に非ず…」
「緑谷もすげえって思ったけどよ…戦闘能力に於いて、爆豪は間違いなくセンスの塊だぜ」
お気楽な高校生にしては、だけどね。
なまじ才能はあるから、周りはチヤホヤして誰も性格を矯正しようとはしなかったんだろうな。
戦闘センス
ああいうタイプは好きになれそうにないな…
なんて考えていると、緑谷くんは爆豪くんに背を向けて走り出す。
「逃げてる!」
「男のする事じゃねぇけど仕方ないぜ」
いや、違う。
逃げたんじゃない。
場所を変えたんだ。
「しかし変だよな…爆豪の方が余裕なくね?」
緑谷くんにキレ散らかす爆豪くんを見て、切島くんが口を開く。
あそこまで幼稚なところを見せられると、流石の俺も苛立ちを隠せない。
才能も実力もあるのに、何をそんなに焦っているんだろう。
爆豪くんと緑谷くんは、何かを叫びながら互いに突っ込んだ。
流石に危険だと判断したのか、再び切島くんがオールマイトに声をかける。
「先生!!ヤバそうだってコレ!先生!」
「双方…中止……」
オールマイトが止めようとしたその時、緑谷くんが「麗日さん行くぞ」と叫んだ。
すると麗日さんが、衝撃に耐える為に柱にしがみつく。
その直後、爆豪くんが緑谷くんに爆破を放ち、緑谷くんは爆豪くん──
──にではなく、真上にアッパーを放った。
超パワーによる衝撃波で、天井を5階分全てぶち抜く。
しがみついていた柱を“個性”で軽くした麗日さんは、両手で抱え込んだ柱で、吹き飛んだ瓦礫をバッティングの要領で飯田くん目掛けて打ち飛ばす。
驚いた飯田くんが咄嗟に防御態勢を取ると、麗日さんはその隙に飛び上がり、核に飛びついて確保。
緑谷くんは、左腕で爆豪くんの攻撃をガードして、ダメージを最小限に抑えていた。
「ヒーロー…ヒーローチーム…WIIIIIN!!」
オールマイトが、打ち震えながらヒーローチームの勝利を告げる。
こうして、波乱の第一戦目が終わった。
爆豪くんは目を見開いて呆然とし、飯田くんは悔しそうに歯噛みする。
負けた
「負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてら…」
「勝負に負けて、試合に勝ったと言う所か」
「訓練だけど」
他の皆が、訓練の結果に対し口々に感想を言う。
その後、緑谷くんは搬送ロボで救護室へ運ばれ、呆然と立ち尽くしている爆豪くんはオールマイトに呼ばれて俺達のいるモニタールームに連れてこられた。
飯田くん麗日さんも、自分の足でモニタールームへと向かう。
試合の後は、講評のお時間だ。
…ま、両チームボロクソに言われるのは目に見えてるけど。
尾白くんが消えた代わりに謎の修正力が働いて葉隠ちゃんとの距離が近くなる主人公ェ…
そのうち尾白を許すなタグならぬ雪野を許すなタグが生えそう。
ちなみにオリ主の居候先のモデルは、職場の近所の中華料理店です。
最初は尾白くんの代わりに葉隠ちゃんとタッグを組ませるつもりだったのですが、オリ主は目立つのを嫌がってるので轟くんとの試合は避けたかったのと、個人的にはオリ主をヒーロー側にしたかったので、原作でヒーロー側と判明している耳郎ちゃんと組ませました。
そして本作でのA組の席の並びはこうです。
教壇
爆豪 耳郎 上鳴 青山
緑谷 瀬呂 切島 芦戸
峰田 常闇 口田 蛙吹
八百万 轟 砂藤 飯田
雪野 葉隠 障子 麗日