少年兵のヒーローアカデミア   作:M.T.

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※原作キャラに対してかなりアンチ表現があります。
SEKKYOUはしませんが、オリ主がかなり毒を吐きます。
苦手な方はブラウザバック推奨。


戦闘訓練(2)

 そんなこんなで講評タイム。

 初戦のAコンビ対Dコンビの試合を皆で振り返りましょうのお時間だ。

 

「まぁつっても…今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」

 

「なな!!?」 

 

 オールマイトが言うと、指名された飯田くんが一番驚いてた。

 まあ俺も飯田くんだろうなとは思ってたけどさ。

 梅雨ちゃんは、首を傾げながらオールマイトに質問する。

 

「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

 

「何故だろうな〜〜〜?分かる人!!?」

 

 梅雨ちゃんが尋ねると、オールマイトが手を挙げる。

 挙手の勢いが強すぎて、「ボッ!」って音が出てんだけど。

 

「はい、オールマイト先生」

 

 オールマイトが尋ねると、八百万さんは手を挙げて発言した。

 

「それは飯田さんが一番状況設定に順応していたから。爆豪さんの行動は、戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生が仰っていた通り、屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは、中盤の気の緩み。そして、最後の攻撃が乱暴過ぎた事。ハリボテを『核』として扱っていたら、あんな危険な行為出来ませんわ。相手への対策をこなし且つ、“『核』の争奪”をきちんと想定していたからこそ飯田さんは最後反応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは、『訓練』だからという甘えから生じた反則のようなものですわ」

 

(思ってたより言われた!!!)

 

「ま…まぁ、飯田少年もまだ固すぎる節はあったりする訳だが…まぁ…正解だよ!くぅ…!」

 

 思っていたより八百万さんが指摘したからか、オールマイトは困惑しつつもサムズアップをした。

 

「常に下学上達!一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので!」

 

 八百万さんは、ふんっと鼻を鳴らして真剣な面持ちで締め括る。

 うわぁ…すげぇボロクソに言うじゃん。

 

 確かに俺も今回の試合、飯田くん以外見ててイライラしたのは事実だけど。

 八百万さんは、屋内での大規模攻撃がどうとか攻撃が乱暴とか言ってたけど、()()()()()どうでもいい。

 そもそも治安の悪い国じゃ、(ヴィラン)が屋内で自爆してヒーローを大勢巻き込んで無理心中とか、全然珍しい事じゃない。

 爆豪くんはそんな事はせずに建物が倒壊しない場所を選んで爆破を撃ってたし、緑谷くんも、飯田くんが核を最優先に守るのを分かった上でちゃんと核を避けて攻撃してた。

 麗日さんも、緑谷くんとの連携は取れてたし、結果論とはいえ『核の回収』という条件は達成できた。

 ()()()()を見れば、初回だって事を考えればそこまで酷い試合じゃなかった。

 俺達はモニターで見てただけで試合の全容を把握できてたわけじゃないのに、『愚策』の一言で切り捨てるのは、いくらなんでも酷な話じゃなかろうか。

 行動の粗なんて3年も訓練すれば嫌でも直るだろうし、今から重箱の隅を突いたって仕方ない。

 

 俺がイラついたのはそこじゃなくて、あの場でちゃんと真面目に訓練に取り組んでいたのが、飯田くんだけだって事。

 麗日さんは、真面目にロールプレイングをしている飯田くんを笑うという愚行。

 爆豪くんは、言うまでもなく訓練に関係ない私怨丸出しの言動。

 そして緑谷くんは、「爆豪くんを超えたい」という気持ちの悪い動機。

 麗日さんはまだ許容範囲として、不快さで言えば爆豪緑谷のツートップ。

 うまく言語化できないけど、こいつらからは、正体不明の薄ら寒さを感じる。

 

 純粋な疑問だけど、こいつら、()()()()ヒーロー科に来たんだろう。

 国民から税金を貰って()()()()()()()()()立場だって自覚が全く足りてない。

 この戦闘訓練の為だけに、どこかの家庭で今日の夕飯のおかずが一品減ったかもしれないというのに。

 

「………寒っ」

 

 おっといけない、思わず本音が漏れてしまった。

 さてと、次に切り替えますか。

 俺的には、任務さえ遂行できれば、別にこいつらがどうなろうと知ったこっちゃないし。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 場所を移して第二試合。

 ヒーローチームが障子くん轟くんのBコンビ、(ヴィラン)チームが上鳴くん葉隠さんのIコンビだ。

 

 始まってみれば、試合の決着は一瞬だった。

 まず障子くんが外から索敵し、轟くんがビルを丸ごと一棟凍らせて(ヴィラン)チーム二人を弱体化。

 葉隠さんは裸足だからその場から動けず、範囲攻撃持ちの上鳴くんは結局電撃を使わず、そのまま轟くんが核に触れてフィニッシュ。

 ちなみに上鳴くんが攻撃を躊躇ったのは、上鳴くんの“個性”は電撃に指向性を持たせる事ができず、そのまま放電したら葉隠さんを巻き込むから。

 指向性を持たせるサポートアイテムくらい、コスチュームの仕様書に書いとけ。

 

 

 続く第三試合。

 ヒーローチームが梅雨ちゃん常闇くんのHコンビ、(ヴィラン)チームが切島くん瀬呂くんのJコンビ。

 瀬呂くんがテープでバリケードを張り、切島くんが常闇くんの黒影(ダークシャドウ)相手に制限時間ギリギリまで粘ったものの、梅雨ちゃんが舌でテープのバリケードをすり抜け、そのまま核にタッチしてヒーローチームの勝利。

 

 

 第四試合。

 ヒーローチームが青山くん芦戸さんのEコンビ、(ヴィラン)チームが峰田くん八百万さんのCコンビ。

 峰田くんと八百万さんが部屋に罠を張り巡らせて万全の状態で挑み、青山くん芦戸さんが罠にかかって身動きが取れないままテープを巻かれてフィニッシュ。

 芦戸さんは序盤に酸でスケートしてはしゃぐわ、青山くんは芦戸さんにマントを溶かされたくらいでやる気を失くして戦力にならなくなるわ、葡萄は八百万さんのコスを見て鼻の下を伸ばすわで、真面目にやってたのは八百万さんだけだった。

 個人的には、第一試合程じゃないけどイライラさせられた試合だった。

 

 

 そして第五試合。

 ヒーローチームが俺と耳郎さんのGコンビ、(ヴィラン)チームが口田くん砂藤くんのFコンビだ。

 俺が麻酔弾入りのマガジンをエアガンに装填していると、オールマイトが耳打ちしてくる。

 

「おっと、雪野少年。今回は麻酔銃(ソレ)はナシでお願いできるかな?ホラ、一応授業だから…ね?」

 

 なんじゃそりゃ、と思いつつも、一応オールマイトの言い分はわかる。

 銃は俺の“個性”とは直接関係がないサポートアイテムだし、それでゴリ押しするのはズルいというのは理解できなくもない。

 何もわからないままオネンネしてリタイア、というのは、授業的にもよろしくないだろうしね。

 ま、全然いいんだけどね。それでも勝つし。

 

「分かりました」

 

 俺は、持っていたエアガンをその場に置いた。

 身につけていた予備のマガジンも全部外す。

 武器を全部外して訓練場に向かうと、耳郎さんが話しかけてくる。

 

「ねぇ、大丈夫なの?武器外してたけど…」

 

「平気。それでも勝てるよ。むしろこれで身軽になった」

 

 どこか不安そうな耳郎さんに、俺は得意げに微笑んだ。

 別に煽りでもなんでもなく、ただの事実だ。

 エアガンでも、予備のマガジン込みだと普通に1kgとか超えるし。

 遠距離攻撃の手段がなくなった代わりに身軽になったと思えばイーブンだ。

 さて、そんなこんなで作戦タイム。

 

「それじゃ、まずは“個性”の確認からだね。ウチの“個性”は『イヤホンジャック』。耳朶がコードみたいになってて、最長6mまで伸ばせるよ。先端はプラグになってて、プラグで細かい音を拾ったり、あとは心音を増幅して衝撃波として放ったりとか…」

 

「……強いね」

 

「ま、まぁ、プラグが刺さる事前提だけどね」

 

 俺が素直に褒めると、耳郎さんは少し恥ずかしそうに目を逸らしながらプラグをカチカチする。

 事前にデータを見たから分かってはいたけど、改めて聞くとやっぱり強いな。

 

「それで、アンタの“個性”は?」

 

「ああ、オレのはね……」

 

 俺は耳郎さんに、“個性”の説明をした。

 すると彼女は、驚いた表情を浮かべて俺を見てくる。

 

「……マジ?強くない?」

 

「はは、どうも」

 

 素直に驚いている耳郎さんに、若干の罪悪感を感じなくもない。

 俺、本当は“無個性”なんだけどね。

 

「それじゃ、次は作戦考えよっか。まずはウチが音で索敵して、(ヴィラン)チームの居場所がわかったら知らせる」

 

「了解。ちなみに向こうのチームの“個性”は、口田くんが動物を操る“個性”、砂藤くんが増強系だよ」

 

「えっ、二人から聞いたの?」

 

「いや、“個性”把握テストの時ちょっと見ただけ」

 

 嘘はついてない。

 実際口田くんはボール投げで鳩にボールを運んでもらってたし、砂藤くんは急にパワーアップしてえげつない数値を叩き出してたし。

 ま、こちとら昨日夜なべしてA組B組全員のデータを調べたから、相手の“個性”は全部知ってんだけど。

 

「…よく見てるね」

 

「ま、昔から目立たない子だったからね。競争社会で生き残る為の処世術ってやつ?」

 

 耳郎さんが素直に褒めてくれたので、俺は頭の後ろで手を組みながら言った。

 敵の能力を見抜く観察眼は、戦地で生き残るのには必須だからね。

 俺の場合は、データ盗んで全部知ってるからズルみたいなもんだけど。

 

「それを踏まえた上での作戦なんだけど…こんなのはどうかな?」

 

 俺は、即興で立てた作戦を耳郎さんに話した。

 俺が作戦を話すと、耳郎さんが頷く。

 

「…うん、それで行こう」

 

 おっと、そろそろ時間だ。

 さて…勝ちに行きますか。

 

 俺達ヒーローチームの作戦はこうだ。

 まず耳郎さんが外から“個性”でビルの内部を索敵し、敵の位置、あとはできれば罠の有無も特定。

 そして俺がビルに侵入し、ちゃちゃっと敵チーム二人を確保。

 これが一番リスク無くて強い手だからね。

 

 俺は、ポーチに入れた塗料をマントに吹きつけた。

 すると塗料がじわっとマントに染み込み…あら不思議、透明人間に早変わり。

 俺がコスチュームの申請の時に仕様書に書いたこのマントは、防刃・難燃性に加え、光学迷彩機能を搭載している。

 揮発性の特殊物質にマントの塗料が反応すると、光に対して負の屈折率を持つ素材に変わり、光が透過しているような状態…いわゆる透明化を再現できる。

 まさに、日本の国民的マンガに出てくる透明マントそのものだ。

 塗料が染み込んでいる間しか透明化できないし、精度も葉隠さんの『透明化』には劣るけど、俺の技術…もとい“個性”が組み合わされば大抵の敵からは視認されなくなるし、電力を動力にしているわけじゃないから電気系“個性”の索敵にも引っかからない。

 

 マントを透明化した俺が待機していると、ビルの外で索敵している耳郎さんが小型無線で話しかけてくる。

 

『雪野、二人は3階西側の広間にいる。二人とも、防衛戦に持ち込むつもりみたい』

 

「OK♪それじゃ耳郎さん、撹乱よろしく」

 

『了解!ちゃんと耳塞いどいてね!』

 

 耳郎さんの合図と同時に、無線のスイッチを切り、軍用の耳栓を両耳に突っ込む。

 その直後、ビル全体に爆音が炸裂した。

 爆音がしようと関係ない俺は、雨樋を使ってスルスルとビルの外壁を登り、目的の部屋へ向かう。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

砂藤力道side

 

 試合開始後、俺と口田は核のある3階西側の広間で待機していた。

 

「っし、何としてでもここは死守するぞ!口田、索敵は頼んだぜ!」

 

 俺が拳を打って臨戦態勢を取りながら言うと、口田がコクコクと頷く。

 “個性”把握テストの結果を見るに、スピードは二人に分があるが、パワーは俺と口田の方が上だ。

 下手に分断してリスクの高い奇襲を仕掛けるよりかは、索敵を口田に任せて、ここで二人がかりで核を守り切った方が確実。

 もうヒーローチームが攻めてくる5分経過時点から、1分が経つ。

 そろそろヒーローチームが攻めてくるはずなんだけど…

 なんて考えていると、突然ビル全体に爆音が響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

 俺が突然の音に驚いていると、口田が慌てた様子でパントマイムをしてくる。

 どうやら、口田の“個性”で索敵してもらっていたネズミが、今の音にビビってみんな逃げちまったらしい。

 

「えっ、今の音でネズミ達が逃げちまったのかよ!?クソッ、耳郎の仕業か…!!」

 

 この爆音の中じゃ、動物を呼んでも逃げちまう。

 もう口田の索敵には頼れねぇ。

 ヒーローチームがいつどこから来るかわかんねぇんなら、せめて二人で核だけでも守り切──

 

「な、なぁ口田…」

 

「な、なに、砂藤くん……?」

 

「あそこの窓、いつから空いてたっけ……?」

 

 俺は、部屋の窓を指差しながら口田に尋ねる。

 さっきまで閉まっていたはずの窓がいつの間にか空いていて、外から冷たい風が吹き込んでくる。

 嫌な予感がして、俺は核の方を警戒しつつ、咄嗟にポケットの中の角砂糖を口の中に放り込もうとした。

 けどその瞬間、俺の身体は勢いよく引っ張られ、そして…

 

 

 

 ――ゴヂンッ!!!

 

 

 

「がっ…!!」

 

 思いっきり口田の岩頭に側頭部をぶつけた。

 

「オールマイト先生ー、終わりましたー」

 

『あ、ああ!ヒーローチーム、WIIIIIN!!!』

 

 オールマイトの掛け声を最後に、意識が遠のいていく。

 チクショウ、“個性”使う隙もなかった…

 そんなのアリかよ…!?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

雪野ベリside

 

 さて、試合も終わったし、解説タイムといきますか。

 

 俺達ヒーローチームの作戦はこうだ。

 まず耳郎さんが索敵をして、俺はその結果を聞いてビルの外壁を登って口田くんと砂藤くんのいる部屋を目指す。

 そして耳郎さんの放つ爆音で、お邪魔なネズミやゴキブリを追い払う。

 訓練場に動物が一匹もいなかったら口田くんが可哀想なので、ネズミやゴキブリが意図的に放たれている可能性が高いと踏んでいたけど、案の定だった。

 ネズミはヒトより数倍音に敏感だし、ゴキブリには聴覚は無いけど尾葉という振動を感知する器官があるので、爆音でビルを揺らせば当然逃げる。

 口田くんの支配下に置かれた動物が、彼の命令か自分の身の安全、どっちを優先するかは賭けの要素が強かったけど。

 

 爆音で口田くんの索敵を無力化した上で窓から侵入し、透明化したまま二人に音もなく接近。

 俺が砂藤くんとの正面戦闘を嫌がって核の回収を優先すると考えると踏んで、核の方に意識が向いた瞬間に攻撃開始。

 前にネットで見た相澤先生の捕縛術のパクr…もとい、オマージュした技術で確保テープを口田くんと砂藤くんに巻き付け、そのままテープで二人の身体を引き寄せて頭をゴッチンコ。

 改めてテープをしっかり巻いて試合終了。

 割と上手く決まった自信あったんだけど、透明化してた上に気配も消してたから、皆に見てもらえなかったのが残念。

 

 俺と耳郎さんがモニタールームに戻ると、葉隠さんがプンプン怒りながら詰め寄ってきた。

 

「雪野くん、透明マントなんてズルいや!私の事も考えて!」

 

「ズルくないー。“個性”を活かす為の最善の判断って言ってくださいー」

 

「てかそのスーツ私も欲しい!どのサポート会社か教えて!」

 

「いいよ、学食奢ってくれたらね」

 

 俺は、学食と引き換えに、葉隠さんにサポート会社の連絡先を教えた。

 我ながら現金ダナー。

 なんて思っていると、講評のお時間になった。

 

「さあ皆、今回も遺憾ない意見を聞かせてくれ!」

 

 そう言ってオールマイトが手を挙げると、八百万さんが手を挙げる。

 このやりとりも、5回目となるとすっかり見慣れたものだ。

 

「今回のMVPは耳郎さんですわね。作戦を立て、(ヴィラン)チームのお二人を一人で倒した雪野さんもお見事でしたが、ヒーローチームの勝利は耳郎さんの索敵と撹乱あってこそですわ」

 

「え、ウチ…?いや、ウチは雪野に言われた事をやっただけで…」

 

「いやいや、今回は耳郎さんの手柄。キミの索敵がなきゃオレ、ビルに侵入できなかったもの」

 

「あ、ありがと…」

 

 八百万さんと俺が褒めると、耳郎さんは恥ずかしそうにお礼を言った。

 クール系だと思ってたけど、案外照れ屋さんなのね。

 

「口田さんと砂藤さんのお二人に関しては、特に反省点はありません。口田さんの“個性”で索敵を行い、お二人で核の守りを固めたのは最善手だったと思います。強いて言うなら、ヒーローチームのお二人と相性が悪かったですわね」

 

 八百万さんの言う通り、今回は(ヴィラン)チームに落ち度はなかった。

 結果として負けはしたけど、下手に戦力を分散させずに索敵をネズミに任せて籠城作戦を取ったのは、賢い判断だったと思う。

 奇襲したらしたで耳郎さんにバレて速攻で捕まってたからね。

 俺が来る前に砂藤くんが“個性”を使っていれば、まだ俺を確保できた可能性が数%はあったけど、俺がいつ来るかもわからないのに時間制限がある“個性”でそんなリスクの高い賭けはできないから、どうしても後手に回っちゃうのは仕方がない。

 

 強いて言うなら、このフィールドと試合のルールが、俺達のコンビと相性が良すぎた。

 俺と耳郎さんのコンビだったら、ぶっちゃけどのチームが相手でも善戦には持ち込めるんだよね。

 …BチームかDチームが相手だったら負けてたかもだけど。

 

 

 

「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

 

 俺達が地下のモニタールームから出て出口の前に整列すると、オールマイトが仁王立ちして俺達を褒める。

 口田くん砂藤くんに関しては、思いっきり頭をぶつけたから一応検査してもらった方がいいかもだけど。

 爆豪くんは、自分の試合が終わってからずっと何も言わずに俯いている。

 ま、あれだけプライドをズタズタにへし折られたから、しばらくは立ち直れないかな。

 

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か拍子抜けと言うか…」

 

「真っ当な授業もまた私達の自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!!」

 

 そう言ってオールマイトは、猛ダッシュで保健室へと向かった。

 

「?急いでるなオールマイト…かっけえ」

 

 猛スピードで走り去っていくオールマイトを見て、峰田くんがポツリと呟く。

 さて、俺も行きますか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

オールマイトside

 

「入学間もないっていうのにもう()()()だよ!?何で止めてやらなかったオールマイト!!!」

 

「申し訳ございませんリカバリーガール…」

 

 緑谷少年の様子を見に保健室に駆け込んだ私は、早速リカバリーガールにコッテリと絞られた。

 授業で活動限界ギリギリまでマッスルフォームを維持していたから、今はトゥルーフォームに戻っている。

 

「私に謝ってどうするの!?疲労困憊の上昨日の今日だ!一気に治療してやれない!応急手当はしたから点滴全部入ったら日を跨いで少しずつ活性化してくしかないさね!全く…“力”を渡した愛弟子だからって、()()()()()()()()()()!」

 

 彼女の言う通りだ。

 緑谷少年がこんな姿になってしまったのは、私の責任だ。

 もっと早く止めてやれば、こんな事には…

 しかし……

 

「返す言葉もありません。彼の気持ちを組んでやりたいと…躊躇しました。して…その…あまり大きな声で、ワン・フォー・オールのことを話すのはどうか……」

 

 私は口の前で人差し指を立て、リカバリーガールにお願いをした。

 すると彼女は、呆れながら椅子をクルッと回して机に向き直す。

 

「あーはいはいナチュラルボーンヒーロー様、平和の象徴様」

 

「この姿と怪我の件は、雄英の教師側(一部のプロ)には周知の事実!ですが、“個性”の件はあなたと校長、そして親しき友人、あとはこの緑谷少年のみの秘密なのです」

 

「トップであぐらかいてたいってわけじゃないだろうがさ。そんなに大事かね。“ナチュラルボーンヒーロー”、“平和の象徴”」

 

「いなくなれば、超人社会は悪に勾引かされます。これは、この“力”を持った者の責任なのです!!」

 

「………それなら尚更、導く立場ってのをちゃんと学びなさい!!」

 

 導く立場、か…

 私は緑谷少年の気持ちを汲みたいと思うあまり、教え方を間違えていたのだろうか。

 ヒーローになるよりも前に、緑谷少年の身体が壊れてしまっては、元も子もないというのに…

 

 そう考えたその時、保健室のドアがシュイン!と開く。

 しまった、聞かれたか…!?

 私は咄嗟にドアの方を振り向くが、開いたドアの前には誰もいなかった。

 

「今、誰かが通りましたか…?」

 

「いや?ドアの誤作動かね」

 

 ドアの誤作動…か。

 そうだったら良いんだが…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

雪野ベリside

 

 訓練の後、()()()()()()()()俺は、何事も無かったかのように男子更衣室に入る。

 その直後、光学迷彩を纏ったマントがジワジワと元の白い布に戻り始めた。

 っぶねぇ〜…あとちょっとでも長く居座ってたら、染料が揮発してマントの光学迷彩が解けるとこだった。

 技術と光学迷彩を悪用して盗み聴きとか、バレたら除籍待ったなしだよ。

 それにしても…

 

「なるほどね〜」

 

 いい情報が手に入った。

 緑谷くんの“個性”、あれだけの超パワーを見せた緑谷くんを幼馴染の爆豪くんが“無個性”だと言い張っていた事、やけに緑谷くん贔屓をするオールマイト…色々不自然な点はあったけど、ようやく点と点が繋がった。

 緑谷くんは、オールマイトから“個性”を貰っていたのか。

 だったら話は早い。

 彼をオールマイトの後継として祖国に連れ帰れれば、俺の国は安泰だ。

 たとえ彼が力を使いこなせなくても、『オールマイトの“個性”を持っている』という事実さえあれば、それだけで敵国は手出しできなくなる。

 問題は、オールマイトと雄英がそれを許すわけがないって事だけど…

 期限はあと3年もあるんだ、それまでに俺の手中に収めてやる。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 情報収集(ぬすみぎぎ)を済ませ、制服に着替えた俺は、A組の教室に戻った。

 するといの一番に飯田くんが声をかけてくる。

 

「雪野くん!どこに行っていたんだ、もう反省会は始まっているぞ!」

 

「ああ、ごめんごめん。トイレ行ってたら道に迷っちゃった」

 

「ウッカリさんだね☆」

 

 俺が頭を掻いて誤魔化すと、青山くんが俺にウインクしてくる。

 青山、お前にだけは言われたくねぇんだわ。

 なんて考えていると、芦戸さんが話しかけてくる。

 

「あ、雪野おつかれ〜!今ね、ちょうど皆でアンタの“個性”の話してたの!」

 

「え?」

 

「ほら、最後の試合、アンタ大活躍だったみたいじゃん?だから何の“個性”なんだろうねって話してたんだ」

 

「俺、マジで何されたかわかんなかったぞ…」

 

 芦戸さんがノリノリで言っている後ろでは、俺にやられた砂藤くんが凹んでいた。

 …ん?皆、俺の“個性”をご存知でない?

 耳郎さんには言ったんだけどな。

 

「あれ?耳郎さん、皆に言ってなかったの?」

 

「いや、こういうのって普通本人の口から言うもんでしょ」

 

「確かに」

 

 言われてみりゃ、そりゃそうだ。

 個人情報だしね。

 

「オレの“個性”は『ステルス』。簡単に言うと、メチャクチャ影が薄くなります。店とかでさ、いつまでも注文聞きに来てもらえない奴いるじゃん?オレのはそれを極端にした感じ」

 

「えっ、じゃあ戦闘訓練の時は、普通に歩いて近づいただけって事かよ!?」

 

「そ」

 

 俺が“個性”のネタバレをすると、砂藤くんが驚いた顔で俺を見てくるので、俺は無表情で頷く。

 

「僕が索敵をお願いした鳥達も、雪野くんを見つけられなかったよ」

 

「動物にも効くという事か」

 

「まぁね」

 

 口田くんの言葉を聞いた障子くんが質問するので、無表情で頷いておく。

 まあ“個性”じゃなくて技術なんですけどね。

 心音や呼吸音を極限まで小さくして、相手にとって一番親和性が高いテンポで動くことで、警戒される事なく至近距離まで近づく技術。

 戦闘力で勝てない相手も、『気づかれない』というアドバンテージを最大限に活かす事で、瓶の蓋を開けるくらい簡単に殺す事ができる。

 雄英では“無個性”だと逆に浮くから、その技術を“個性”って事にして“個性”届を偽造した。

 当然だけど、相澤先生の“個性”でも消す事はできないので、常時発動型の“個性”って事にしている。

 俺が“個性”の説明を終えると、エロ葡萄が犯罪者の顔つきで近づいてくる。

 

「なァ雪野ォ…その話、オイラにも詳しく教えろよ…!」

 

「いーやーでーすー」

 

 俺は葡萄の邪な要求を全面的に拒否した。

 一応“個性”じゃなくて技術だから身につけようと思えば身につけられるけど、それなりに才能と努力が要るし。

 というか、お前にだけは絶対教えねーし。

 だってお前、絶対女子相手に悪用するじゃん。

 

 なんて話をしていると、緑谷くんが保健室から戻ってくる。

 すると真っ先に気づいた切島くんが、緑谷くんに声をかける。

 

「おお、緑谷来た!!!お疲れ!!いや何喋ってるか分かんなかったけど熱かったぜおめー!!」

 

「へっ!?」

 

「よく避けたよー」

 

「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったぜ」

 

 切島くん、芦戸さん、砂藤くんが緑谷くんに話しかけに行った。

 皆勢いすごいな…

 

「俺ぁ切島鋭児郎!今、皆で訓練の反省会してたんだ!」

 

「私、芦戸三奈!よく避けたよーーーー!」

 

「蛙吹梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んで」

 

「わわ…」

 

 切島くん、芦戸さん、梅雨ちゃんが話しかけると、緑谷くんが慌てる。

 いや、いきなり話しかけられたらそうなるって。

 

「騒々しい…」

 

「机は腰掛けじゃないぞ、今すぐやめよう!!」

 

「ブレないな飯田くん!」

 

 机の上に座って傍観する常闇くんに、飯田くんが注意をする。

 そういえば初日も爆豪くんに説教してたな…

 

「麗日今度飯行かね?何好きなん?」

 

「おもち…」

 

 上鳴くんは、この状況で麗日さんをナンパしていた。

 ナンパに戸惑っていた麗日さんだけど、緑谷くんに気づくと心配そうに話しかける。

 

「あれ!?デクくん怪我!治してもらえなかったの!?」

 

「あ、いや、これは僕の体力のアレで…あの、麗日さん…それより、かっちゃんは?」

 

 カッチャン?ああ、爆豪くんの事か。

 爆豪くんは、皆で引き留めようとしたけど帰ってしまったらしい。

 実は俺も、教室に戻る途中にさっき爆豪くんとすれ違った。

 話しかけんなオーラ出してたから無視したけど。

 その話を聞いた緑谷くんは、爆豪くんを追いかけて行った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 正門に行くと、ちょうど緑谷くんが、爆豪くんに追いついたところだった。

 俺はその様子を物陰からストーキング偵察する。

 

「かっちゃん!!!」

 

「ああ?」

 

 緑谷くんが、爆豪くんに向かって叫ぶ。

 すると爆豪くんは、足を止めて緑谷くんの方を振り向く。

 

「これだけは君には言わなきゃいけないと思って…!人から授かった“個性”なんだ。誰からかは絶対言えない!言わない…でも、コミックみたいな話だけど本当で…!」

 

「…!?」

 

「おまけにまだろくに扱えもしなくて………全然ものに出来てない状態の借り物で……!だから…使わず君に勝とうとした!けど結局勝てなくて、それに頼った!僕はまだまだで…!!」

 

 あー、結局自分から言うんだ。

 てか、ここでそんな事言って大丈夫なの?

 誰が聞いてるかわかんないよ?

 俺みたいな奴とかいるかもしれないし。

 

「だから…いつかちゃんと自分のものにして、僕の力で君を超えるよ」

 

「何だそりゃ…?借り物…?わけわかんねぇ事言って…これ以上コケにしてどうするつもりだ……なぁ!?だから何だ!?今日…俺はてめぇに負けた!!!そんだけだろが!そんだけ…氷の奴見てっ!敵わねえんじゃねぇかって思っちまった…!!クソ!!ポニーテールの奴の言う事に納得しちまった…クソが!!!クッソ!!!なあ!!てめぇもだ…!デク!!こっからだ!!俺は…!!こっから…!!いいか!?俺はここで、一番になってやる!!!俺に勝つなんて、二度とねえからな!!クソが!!」

 

 爆豪くんは、涙を拭いながら、緑谷くんに背を向けたまま叫んだ。

 爆豪くんがそのまま歩き出すと…

 

「いたー!爆!豪!少年!!」

 

 爆豪くんが帰ろうとすると、オールマイトが猛ダッシュで追いかけてきて、後ろから爆豪くんの肩を掴んだ。

 

「言っとくけど…!自尊心ってのは大事なもんだ!!君は間違いなくプロになれる能力を持っている!!君はまだまだこれから…」

 

「放してくれよ、オールマイト。歩けねえ。言われなくても!!俺はあんたをも超えるヒーローになる!」

 

「あ…うん……教師って…難しい…!!」

 

 励まそうとした爆豪くんは勝手に自分で立ち直っていたので、オールマイトはその場で立ち尽くしていた。

 てかオールマイト、活動限界がどうとか言ってなかったっけ?

 そんなにポンポン変身して大丈夫なのか?

 

 でも、これでようやく確信を持てた。

 やっぱり緑谷くんは、オールマイトに“個性”を貰っていたんだ。

 

 そしてなんで俺がこいつらを気持ち悪いと感じたのか、ようやく自分の中で言語化できた。

 「勝ちたい」、「ヒーローになりたい」って言ってるくせに、本当に勝つべき相手を全然見据えてないからだ。

 人を助けたい、(ヴィラン)を倒したい、じゃなくて、憧れた人に勝ちたい、超えたいが根っこにある…そんな感じがする。

 こいつらと、こいつらが憧れてるオールマイトとでは、目指してるゴールが違う。

 目の前の馬を追い越す為に走る馬と、走る為に走る馬じゃ、後者の方が速いに決まってる。

 それ自体は別にいいのだけれど、こいつらの場合、それをわかってなさそうなのが気持ち悪い。

 まあ、任務とは全然関係のない、ただの私情なんだけどさ。

 

 

 

 

 




いよいよオリ主が本格的にスパイムーブかまし始めました。

オリ主のニセ“個性”の正体は、『ステルス』です。
“個性”因子が無い事に関しては、そもそも認識されにくくなる“個性”だから“個性”因子が見えないって事で誤魔化してます。
オリ主が戦闘中に技術を使った場合、「き、消えたっ!?」ってなるんじゃなくて、相手の意識からすっぽり抜け落ちる感じです。
なのでトガちゃんの技術より凶悪度が高いです。

ついでに、戦闘訓練の試合表を載せときます。
白丸が勝ったチーム、黒丸が負けたチームです。

           ヒーローチーム            ヴィランチーム

第一試合 ◯ Aコンビ(麗日お茶子・緑谷出久)VS Dコンビ(飯田天哉・爆豪勝己) ●
第二試合 ◯ Bコンビ(轟焦凍・障子目蔵)  VS Iコンビ(上鳴電気・葉隠透)  ●
第三試合 ◯ Hコンビ(蛙吹梅雨・常闇踏陰) VS Jコンビ(切島鋭児郎・瀬呂範太)●
第四試合 ● Eコンビ(青山優雅・芦戸三奈) VS Cコンビ(峰田実・八百万百)  ◯
第五試合 ◯ Gコンビ(耳郎響香・雪野ベリ) VS Fコンビ(口田甲司・砂藤力道) ●
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