戦闘訓練の翌日。
祖国の司令官への定時報告を終えた俺は、地下の寝室で筋トレをしていた。
ハッチを閉めると完全防音になるので、祖国への連絡や筋トレ、あとは人には言えないような仕事とかはこの地下室で行っている。
着替えを終えて梯子を登り、洗面所でヘアセットをしているとだ。
「ごはんよ〜!」
「は〜い」
母さんが、俺と颯兎に呼びかけてくる。
母さんの掛け声に返事をしつつ、1階の食卓へ向かう。
今日は、母さんが俺の為に甘いパンと紅茶を朝食に出してくれた。
ウチの国は、ソビエト時代の影響で紅茶文化が強い。
特に、甘いお菓子と一緒にお茶を飲む習慣がある。
若年層はコーヒーを飲む人もいるけど、ちゃんとした場で飲むのは紅茶と相場が決まっている。
ミルクティーにしたり、ウォッカを入れたり、飲み方はいろいろあるけど、俺は甘いパンと一緒に紅茶を飲むのが習慣になっている。
特にパンにヴァレニエ*1をつけて、一緒に紅茶を飲むのがお気に入りだ。
紅茶を嗜みながら新聞を読もうとすると、『オールマイト雄英の教師に!!』という見出しがいの一番に目に飛び込んできた。
それを見た瞬間、思わず素で紅茶を吹き出した。
「ブーーーーーッ」
不意打ちを喰らって紅茶を吹き出し、新聞の一面を紅茶で濡らしてしまった。
すると母さんが、布巾を持ってきてくれた。
「あら、ベリちゃん大丈夫?」
「ああ、うん、平気。ちょっと咽せただけ」
それにしても、日本のマスコミは何を考えているんだ?
こんなニュースを世に流したら、雄英が
そうじゃなくても、オールマイト見たさに雄英にちょっかいをかけようというバカが大勢出てくる。
ああ、数字さえ取れれば、雄英がどうなろうと知ったこっちゃないのか。
それにしたって言論の自由を許しすぎだろ。
3年どころか、1年もせずに滅ぶんじゃねぇかな、この国。
「すみません!雄英生ですよね?オールマイトの授業に関してインタビューお願いします!!」
「オールマイトの授業はどんな感じです!?」
「教師オールマイトについてどう思ってます!?」
「うわぁ…」
正門の前で待ち構え、手当たり次第に雄英生にインタビューをする記者達に、俺は思わず顔を引き攣らせた。
なんなんだこいつら、屍肉に集るハエかよ。
やっぱりこの国、言論の自由を許しすぎだろ。
こういうTPOを弁えないインタビューを法で規制しないから、ああいう奴等が増長するんだよ。
言論の自由が無いウチの国では、こんな風にジャーナリストが押しかけたりなんかすればすぐ逮捕される。
表向きには懲戒免職、外国人なら強制送還されるって事になってるけど、実際は軍の施設に連行されて拷問されるのが実情。
そういうバカを拷問するのも、俺達の役目だったりする。
…閑話休題。
正門を塞いで待ち構えているマスゴミが邪魔臭くて、流石の俺も辟易している。
俺は技術を使えば、アイツらに捕まらずに通り抜けられるんだけどさ。
俺が気配を消してマスゴミをスルーしようとした、その時。
「オールマイトについて何か一言!!」
「えっ、ええ…?」
早速マスゴミの餌食となってしまった耳郎さんが困惑していた。
しょうがない、助けてやりますか。
別にスルーしても良かったんだけど、最低限の点数稼ぎはしておかないとね。
俺が気配を消さずにズカズカ歩いて行くと、案の定バカなマスゴミが俺に質問してきた。
「オールマイトが教壇についた事について、どう思ってます!?」
「Sorry, would you mind speaking in English?」*2
「………えっ?」
「I'm still learning Japanese. It's only been a month since I came to Japan. If you can't speak English, would you please speak in simpler sentences?」*3
「え、ええっと…」
俺は早口の英語でマスゴミを混乱させている間に、耳郎さんに『行け』とジェスチャーをした。
俺がマスゴミを足止めしている間に、耳郎さんは正門を通過した。
俺は初歩的な英語で話しているにもかかわらず、マスゴミはうまく答えられずに困惑していた。
ロシア語じゃなくて英語で話しかけただけマシだと思え。
自分本位なコミュニケーションというものがどれだけ人に迷惑をかけるのか、これで少しは実感できてるといいんだけど。
「チッ、日本語わかんねぇんなら日本に来るんじゃねぇよ」
バカなマスゴミのうちの一人が、聴こえるか聴こえないくらいかの声でボソッと呟く。
どうせ外国人だからわからないとでも思ってんのかな。
日本語を勉強中って言っただけで、話せないしわからないとは一言も言ってないのにな。
なんて思いつつ、用は済んだので気配を消してマスゴミの間を通り抜け、正門を通過する。
雄英には、雄英バリアーなるクソダサい名前のセキュリティがあるので、一度学校の敷地に入ってしまえば、通行許可証を持たないマスゴミは俺達に手出しできない。
そのまま校舎に向かおうとすると、先に正門を通った耳郎さんが話しかけてくる。
「ありがと」
「ん」
俺が片手を挙げてハイタッチを求めると、耳郎さんはハイタッチをする代わりに耳朶のジャックで俺の手にタッチした。
せっかくなので、そのまま二人で話しながら教室へ向かう。
昨日の戦闘訓練の話とか、どこに住んでるのかとか。
話しているうちに意外とご近所さんという事が判明したので、近いうちにお土産を持って挨拶に来てくれるそうだ。
父さんと母さんに言っとかないとな。
◇◇◇
そんなこんなで朝のホームルーム。
相澤先生が、教卓にプリントを置きながら話し始める。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見せてもらった。爆豪、お前もうガキみてぇなマネするな。能力あるんだから」
あ、爆豪が怒られた。
まああれだけ私怨剥き出しの言動をしたらね。
「………わかってる」
爆豪くんは、らしくもなく下を向いたまま素直に頷く。
昨日の事を彼なりに反省しているんだろうか。
そして相澤先生は、爆豪くんの後ろの席の緑谷くんに目を向ける。
「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か」
相澤先生は、今度は緑谷くんに話しかけた。
初日のように怒られると思ったのか、緑谷くんはビクッと肩を跳ね上がらせる。
「“個性”の制御…いつまでも『出来ないから仕方ない』じゃ通させねぇぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ。
「っはい!」
相澤先生が言うと、緑谷くんが元気よく頷く。
オールマイトの力を受け継いだ彼は、何としてでも祖国へ連れ帰りたいところだ。
あんまりモタモタしてると、別の欲張り者が現れないとも限らないし。
まあ他国への脅しになりさえすればいいから、制御は自分で勝手にやっといてくれとしか言えないんだけど。
なんて考えていると、相澤先生が話を続ける。
「さてHRの本題だ…急で悪いが今日は君らに…」
相澤先生の発言に、皆は抜き打ちテストかと身構える。
まだ入学3日目なのにテストなんかするか?
いや、入学初日に“個性”把握テストやるような教師だから、あり得るか。
相澤先生が何を言い出すのかと思っていると…
「学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」
うわ、熱量すごっ。
てか、学級委員長って何?
皆すげぇ盛り上がってるけど、俺よくわかんない。
「委員長!!やりたいですソレ俺!!」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニュフェストは女子全員膝上30cm!!」
「僕のためにあるヤツ☆」
「リーダー!!やるやるー!!」
俺以外の皆は、我こそはと名乗りを上げた。
リーダー?ああ、学級委員長っていうのは、クラスのリーダー的な立ち位置なのか。
なんか軍学校にも似たようなシステムあったなぁ。
俺が所属してたとこだと、グループごとに班長が決められていて、点呼をしたり、号令をかけたり、長官に定時報告を行ったりする決まりになっていた。
でもそれって、要は体のいい雑用係じゃん。
なんで皆そんなもんに積極的になりたがるんだか…ああ、そもそもヒーロー科に来てる時点で、こいつら目立ちたがりの集まりだった。
俺は任務に支障をきたしたくないからやりたくない。
皆は自分がやりたいだろうし、願ったり叶ったりだろうけど。
なんて思っているとだ。
「静粛にしたまえ!!」
いきなり飯田くんが声を上げ、全員が飯田くんに注目する。
「“多”を牽引する責任重大な仕事だぞ…!『やりたい者』がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら… これは投票で決めるべき議案!!!」
うわ、メッチャ手が聳え立ってる。
これツッコんでいいのかな。
「聳え立ってんじゃねーか!!何故発案した!!!」
あ、上鳴くんがツッコんだ。
やっぱり自分がやりたいんじゃん、飯田くん。
でも投票で決めるってアイディア自体は悪くないと思う。
俺の国は超常黎明期からずっと独裁政治だから、民主主義に則るって感覚があんまりわかんないけど。
軍学校での班長も、家柄とか成績で決められてたし。
そんな事を考えていると、梅雨ちゃんと切島くんがツッコミを入れた。
「日も浅いのに信頼もクソも無いわ飯田ちゃん」
「そんなん皆自分に入れらぁ!」
「だからこそここで複数票を獲った者こそが、真に相応しい人間という事にならないか!?どうでしょうか先生!!!」
「時間内に決めりゃ何でもいいよ」
飯田くんが提案すると、相澤先生は寝袋に入って寝始めた。
おい、あんた仮にも担任だろ。
授業中に寝るな。
そんなこんなで始まった投票タイム。
当然自薦はしないとして、ぶっちゃけ委員長なんて、(爆豪、緑谷、あと青山と葡萄は論外として)誰がやってくれてもいいと思ってる。
爆豪緑谷は一番リーダーをやらせちゃいけないタイプだし、青山はシンプルに何考えてるかわかんないし、葡萄は言わずもがな。
…まあ、この中だったら飯田くんかな。
優秀だし世話焼きだからっていうのもあるけど、一番の理由は彼の家柄だ。
昨日調べて初めて知った事だけど、彼の家は代々続くヒーロー一家で、長男は「インゲニウム」という名前で活動しているプロヒーローだそうな。
ブランド力のブの字もないぽっと出よりはよっぽど信頼がある。
ブランド力で言えばエンデヴァーの息子の轟くんの方が上だけど、性格的に向いてなさそうだし。
別の誰かに票が入る可能性を考えれば、2票以上は確実にほしいところ。
別に特段飯田くんに委員長になってほしいってわけじゃないけど、何かの間違いでなっちゃいけない奴が選ばれる事態だけは避けたい。
俺は、コソッと隣の席の葉隠さんに話しかける。
「ねぇ、葉隠さん。同じ人に票入れない?」
「え、なんで?」
「だって自薦だと、何かの間違いで爆豪とか峰田が委員長になっちゃうかもしれないでしょ?どうせ皆自薦するつもりだろうし、少しでもマシな人に投票した方が良くない?」
「あ〜、確かに。誰に入れる?」
「飯田くん」
「なんで?」
「投票にしようって言い出したのが飯田くんだから。自分だってやりたいのに、皆の意見を大事にしようって言い出せる人が適任だと思わない?」
「…だね」
俺がそれっぽい理由を言うと、葉隠さんは納得してくれた。
プロヒーローの弟だから選びました、なんていやらしい理由は流石にちょっとね。
俺と葉隠さんは、飯田くんに投票する事にした。
ちょっとズルだけど、結託禁止なんてルールは無い。
飯田くんは多分自薦するだろうし、3票も集まればほぼ確実に委員長になれるでしょ。
そして投票結果。
緑谷出久:3票
飯田天哉:2票
八百万百:2票
「僕三票ーーー!!!?」
最多票を獲得した緑谷くんが、一番驚いていた。
「うわ……」
黒板の一番上に書かれた「緑谷出久」の字を見て、思わず不快さを顔に出してしまった。
マジか、よりによってこいつかよ。
こいつが委員長になるくらいなら、八百万さんに票入れとけば良かったな…
とはいえ俺も投票に加担した一人だし、甘んじて受け入れよう。
そんなに緑谷くんが委員長になるのが嫌なら、はじめから民主制に反対しときゃ良かったわけだし。
「何でデクに…!!誰が…!!」
「まーおめぇに入るよか分かるけどな!」
爆豪くんがショックを受けていると、瀬呂くんが揶揄ってくるので、爆豪くんが凶悪ヅラで瀬呂くんを睨む。
いや、全面的に瀬呂くんが正しいよ。
人に『死ね』とか『殺す』とか平気で言うバカに票を入れるバカがいると思うか?
緑谷くんは暴言を吐いたりしないし、咄嗟の分析力はあるから、彼に票が入る方がまだ理解できる。
腕壊すとか頭おかしいし、動機がキモいから俺は好きになれないけど。
「二票も…どうして僕に…誰が入れてくれたんだ!?」
そして二票を獲得して八百万さんと同率二位になった飯田くんも、投票結果に驚いていた。
俺と葉隠さんが投票したのに二票しか入ってないって事は、飯田くん、他に入れたのか。
自薦してたらワンチャン委員長になれてたかもしれないのに、勿体ない…
てなわけで、委員長は一位の緑谷くん、副委員長は二位の飯田くんか八百万さんがやる事になったわけだけど…
「ちょっといいかな」
副委員長を決める前に、俺は手を挙げて発言した。
「オレは飯田くんが副委員長をやるべきだと思う」
「雪野くん!?」
「だって飯田くん、『二票も』って言ったって事は、自分には票を入れなかったんだよね?民主制に則るなら、自薦ナシで二票獲った人がやるべきだよ。あ、もし八百万さんも自薦してないなら、余計な事言ってごめんね?そうだったら、公平にジャンケンでもして決めればいいよ」
俺が自分の意見をハッキリと伝えると、飯田くんはジーンと感動していた。
別に特段飯田くんにやってほしかったわけじゃなかったけど、協力してくれた葉隠さんの為にも、これはちゃんと言うべきだと思った。
自薦と他薦じゃ、票の重みが違う。
民主制を重んじるなら、自薦込みの二票と、自薦ナシの二票を同列に扱っていいわけがない。
なるべき人がなるのが正しいというなら、自薦ナシで二票獲った飯田くんが副委員長になるべきだ。
まあ、八百万さんも自薦ナシで二票獲ってたら、その前提も崩れるんだけど。
「じゃあ委員長緑谷、副委員長飯田だ」
「はい!この飯田天哉、責任を持って1年A組副委員長を務めさせていただきます!!」
「ママママジで、マジでか…!!」
相澤先生がのそっと立ち上がると、飯田くんがビシッと背筋を伸ばしながら改めて挨拶をし、緑谷くんは緊張でガクガクしていた。
結局俺の意見が通って、飯田くんが副委員長になった。
◇◇◇
そんなこんなで昼休み。
俺が代金と引き換えに葉隠さんに天津飯弁当を渡し、自分の席で八宝菜弁当を広げようとすると、梅雨ちゃんが葉隠さんに話しかけた。
「あら透ちゃん、今日はお弁当?」
そう話しかける梅雨ちゃんの手には、水玉柄の風呂敷で包まれた弁当箱が握られていた。
どうやら梅雨ちゃんも、今日は教室で食べるつもりらしい。
「うん、これ雪野くん家のお弁当なの!」
「雪野ちゃんのお家のお弁当?」
「雪野くん家、中華屋さんなんだけど、お弁当も売ってるんだって。それで、私も食べたいって言ったら、お弁当を学校で売ってくれる事になったの。だから今日は、雪野くん家のお弁当を買ったんだ〜」
「ケロ、じゃあ雪野ちゃん、私も明日お願いしてもいいかしら」
「マイドアリー」
梅雨ちゃんも俺ん家の弁当を食べてみたいそうなので、明日持ってくる事になった。
どこからか、チャリーンとお金の音がした気がした。
そのまま三人で一緒に昼食を食べようとするとだ。
「俺も一緒にいいか?」
「砂藤くん、うんドーゾ」
砂藤くんが話しかけてきたので、俺達は快く彼を歓迎した。
砂藤くんの手には、『Sugar』と書かれた風呂敷に包まれた弁当箱が握られている。
女子二人と一緒で気まずかったから、男子が来てくれるのは大歓迎だ。
本音は、さっきから血涙を流しながらこっちを見てくる葡萄が鬱陶しいからだけど。
教室にはあと一人、青山くんが残っていたので、葉隠さんが青山くんを誘った。
「青山くんも一緒に食べよー!」
「スィ☆」
当初の三人に砂藤くんと青山くんが加わって、五人で昼食を食べる事になった。
青山くんは机の上にファサァッとランチョンマットを広げ、高そうな陶器の皿に盛り付けられたフレンチのランチを机の上に並べた。
そしてワイングラスに注いだブドウジュースをクイー!と飲む。
どこからどうやって持ってきたんだ、それ。
「梅雨ちゃんの弁当って手作り?」
「そうよ」
「へぇ〜、すごい!梅雨ちゃんって自炊するんだね!」
「私はまだ小さい弟と妹がいるし、両親が共働きだからね。家事は私がする事が多いの」
「偉いな梅雨ちゃんは。俺も料理はするけど、ただの趣味だぜ?」
「それでも偉いよ!私なんて、いっつもお母さんに作ってもらってるよ〜」
梅雨ちゃん、砂藤くん、葉隠さんの三人は、弁当の話で盛り上がっていた。
一人だけ妙ちくりんなランチを持ってきたがばっかりに、青山くんはすっかり蚊帳の外となってしまった。
青山くんは、クワッと目に力を入れて俺を凝視し、助けを求めてくる。
いや、俺に助けを求められても。
なんて思っていると…
――ウゥーーーーー!!!
突然、教室中にサイレンの音が鳴り響く。
「えぇ、なになに、何これ!?」
突然の警報に、慌てる皆。梅雨ちゃんはいつも通りのポーカーフェイスだったけど。
隣のB組の教室からも、なんだなんだと騒ぐ声が聴こえる。
《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい》
同じ内容のアナウンスが、繰り返し鳴り響く。
「セキュリティ3…って何だ?」
「さぁ…」
『セキュリティ3』という単語に皆が首を傾げる中、俺は冷静に状況を分析していた。
雄英には、校舎に入るまでにセキュリティが3段階ある。
その3つ目が突破されたって事はつまり、校舎内に誰かが侵入したって事だ。
俺は外の様子を確認しようと、窓の外を覗いた。
見ると、朝のマスゴミが大勢校舎の前に押し寄せて、相澤先生とプレゼント・マイク先生が対応している。
「あれ?アイツら、今朝のマスコミじゃん」
「え、じゃあマスコミの不法侵入って事?」
「それなら避難の必要はないと思うけど…一応警察には通報した方が良いかしら」
「多分…」
警報の正体がマスゴミの不法侵入だと分かったので、梅雨ちゃんが警察に通報して事なきを得た。
そして隣のB組も、拳藤さんがクラスメイトに冷静に指示を出して騒ぎを落ち着かせたみたいだ。
……うん。まあ2億%
ただのマスコミに、セキュリティを突破するなんて大それた事ができるとは思えない。
マスコミは囮で、
俺は、軍から支給された端末を使って、
職員室に二人、不審者がいる。
俺の足なら、教室から職員室まで2秒もかからない。
とっ捕まえて情報を吐かせるか…
俺が職員室に向かおうとした、その時だった。
「うぅ、オナカイタイ…☆」
突然、顔色を悪くした青山くんが、腹を抱えながら床に膝をついた。
すると他の三人が青山くんに駆け寄って心配する。
「青山ちゃん、大丈夫?」
「マジかよ、こんな時に!?」
「大変、保健室行かなきゃ!」
よりにもよってマスコミパニックの真っ最中に青山くんの腹痛というアクシデントが重なって、砂藤くん葉隠さんは軽くパニックになっていた。
当の青山くんは、腹を抱えたまま立ち上がれないでいる。
どうやら思ったより重症らしい。
……チッ、マジかよ、こんな時に。
せっかく侵入者を捕まえられるチャンスだったのに。
「オレ連れてくよ。青山くん、立てる?」
「ウィ…☆」
俺は青山くんに肩を貸して、彼を保健室まで連れて行った。
女子にやらせるわけにはいかないし、砂藤くんは軽くパニックになってたしね。
リカバリーガールは、青山くんを保健室のベッドに寝かせ診療を行った。
腹痛の原因は
「しばらく安静にしていれば治るさね。あんたは先に教室に戻ってなさい」
「はい。失礼します」
しばらく様子を見ていたら治るとの事で、俺だけ先に教室に帰らされた。
青山くんを保健室に送り届けた俺は、端末を操作して侵入者の位置情報をチェックする。
さっき位置情報を確認してから、まだ5分しか経ってない。
まだ近くにいるはずだけど…
端末で雄英の敷地内の隅々まで探ってみたけど、侵入者は見つからなかった。
それはつまり、侵入者はもう校内にはいないという事。
クソ、ワープ系の“個性”か…!
俺とした事が、油断した。
相手は雄英に侵入するなんて大それた事を実行するバカなんだ、その可能性くらい頭に入れておくべきだった。
俺が柄にもなく苛つきながら頭をガシガシ掻いていると、ちょうど相澤先生とバッタリ会った。
「先生。さっきの警報の事なんですけど…」
「ああ、あれはただのマスコミだ」
「そうですか…」
相澤先生は、俺に余計な不安を与えない為か、マスコミの仕業だと端的に言い切った。
嘘をついているようには見えない。
どうやら先生方も、本当に
まあ、先生もマスコミにこんな事ができるとは思ってないだろうし、そのうち本格的に調査が始まるだろうけど。
今は少しでも、侵入者の情報が欲しい。
ここはダメ元で、大人の力を借りるか。
「あの、一応校内の監視カメラの映像を調べておいてもらえませんか?上手く言えないんですけど、なんか嫌な予感がするので」
「確証が無いなら余計な報告はするな。『嫌な予感』だけで動くのは合理的じゃない」
俺が監視カメラの映像を調べてもらえないか頼んでみると、相澤先生はバッサリ切り捨ててきた。
やっぱり、『嫌な予感』なんてフワッとした根拠で動いてもらうのは無理があったか…
「…と言いたいところだが、今回は事情が事情だからな。俺から校長に伝えておく。わかったら教室に戻れ」
「はい」
相澤先生は、意外にも俺の頼みを聞いてくれた。
雄英に誰かが侵入するという事件自体がレアケースだからだろうか。
……ようやく頭が冷えてきた。
焦る事はない、今回はあくまで
今回の侵入の目的はおそらく、次の戦いに向けた情報収集、もしくは宣戦布告。
さっき職員室に侵入した
その時に万全の態勢で待ち伏せして、とっ捕まえて情報を吐かせてやる。
◇◇◇
その後、警察が到着してマスゴミは撤収。
…いや、逮捕して実名報道しろよ。
そんな甘い対応だから、マスゴミが増長するんだろうが。
やっぱり日本って、マスゴミに甘いと思う。
……閑話休題。
今は、午後のホームルームの真っ最中。
委員長の緑谷くんと、副委員長の飯田くんが仕切って進める事になるわけだけど…
「でっでは、他の委員決めを執り行って参ります!…………けどその前に、いいですか!委員長は、やっぱり飯田くんが良いと…思います!」
「!」
「あんな風にカッコ良く人をまとめられるんだ、僕は…飯田くんがやるのが正しいと思うよ」
飯田くんが目を見開いて驚く中、緑谷くんが自分の意見を伝える。
すると、切島くんと上鳴くんも賛成した。
「あ!良いんじゃね!!飯田、食堂で超活躍してたし!!緑谷でも別にいいけどさ!」
「非常口の標識みてぇになってたよな」
非常口…?何の事だろう。
俺、教室でご飯食べてたから知らないな。
俺は、昼休み中に食堂に行っていた轟くんに質問してみる事にした。
「ねぇ、非常口って何の事?」
「昼の騒動の時、飯田が上から大声出して騒ぎを鎮めたんだ」
「あ〜」
なるほどね、そういう事か。
それで緑谷くんが飯田くんを委員長に指名した、と。
にしても、非常口飯田とかちょっと気になるんだけど。
今日食堂行けば良かったな。
「何でもいいから早く進めろ…時間がもったいない」
「ひっ!!!」
相澤先生が睨みつけると、緑谷くんはビクッと肩を跳ね上がらせる。
最初は緑谷くんの辞退に戸惑っていた飯田くんだったけど、緑谷くんの言葉を聞いて、責任を持って委員長の座を引き継ぐ事に決めたようだ。
「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」
「任せたぜ非常口!!」
「非常口飯田!!しっかりやれよー!!」
飯田くんが新委員長になると、皆が飯田くんを応援した。
緑谷くんが辞退して元副委員長の飯田くんが委員長になったので、副委員長はさっき落選した八百万さんがやる事になった。
まあ一番皆が納得する決め方にはなったと思う。
その後は、残りの時間で他の委員を決めた。
ちなみに俺は、保健委員に立候補した。
身体検査の手伝いの時、潜入に不都合なデータを簡単に改竄できるから。
なんか葡萄が最後まで食い下がってきたけど、最終的にはジャンケンでねじ伏せて保健委員の座をもぎ取った。
兵役で鍛えられた俺の動体視力と反射神経を舐めるな。
今回は、オリ主が職員室で死柄木と黒霧をコロして『少年兵のヒーローアカデミア -完-』とならないように、青山くんを介入させました。
ちなみに青山くんの腹痛は、オリ主を死柄木達とエンカウントさせないための演技ではなく、プレッシャーによるガチ腹痛です。
何気に本人の知らないところで連合に貢献していた青山ェ…
本作ではデクが辞退した事で、繰り上がりで元副委員長の飯田くんが委員長に、ヤオモモが副委員長になっています。
副委員長ですらない飯田くんが委員長に任命されて「私の立場は…!?」となるヤオモモなんていなかったんです。
あと原作では、葉隠ちゃんが誰に票を入れたのかが不明なので、オリ主と示し合わせて飯田くんに投票した事にしました。
ついでに投票結果載せときます。
◎が委員長、○が副委員長です。
青山優雅:1票(投票者:自分)
芦戸三奈:1票(投票者:自分)
蛙吹梅雨:1票(投票者:自分)
飯田天哉:2票(投票者:葉隠透、雪野ベリ)○ → ◎ ※繰り上がり
麗日お茶子:0票
上鳴電気:1票(投票者:自分)
切島鋭児郎:1票(投票者:自分)
口田甲司:1票(投票者:自分)
砂藤力道:1票(投票者:自分)
障子目蔵:1票(投票者:自分)
耳郎響香:1票(投票者:自分)
瀬呂範太:1票(投票者:自分)
常闇踏陰:1票(投票者:自分)
轟焦凍:0票
葉隠透:0票
爆豪勝己:1票(投票者:自分)
緑谷出久:3票(投票者:自分、飯田天哉、麗日お茶子)◎ ※辞退
峰田実:1票(投票者:自分)
八百万百:2票(投票者:自分、轟焦凍)○ ※繰り上がり
雪野ベリ:0票