面白いと思っていただけましたら、高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。
死柄木弔side
俺は今、USJのセントラル広場で脳無にイレイザーヘッドを始末させていた。
俺の目の前では、脳無がイレイザーヘッドをうつ伏せに組み伏せていた。
「〜〜っ!!!!!」
脳無がイレイザーヘッドの右腕を握り潰す。
するとボキッと枝でもへし折るような音が響き、奴は声にならない悲鳴を上げた。
「“個性”を消せる、素敵だけどなんて事は無いね。圧倒的な力の前ではつまりただの“無個性”だもの」
俺は、脳無に文字通り手も足も出ないイレイザーヘッドを見下ろして笑った。
イレイザーヘッドが残った左腕を動かそうとしたので、脳無が奴の左腕を粉砕する。
「ぐぁ…!!」
イレイザーヘッドは“個性”を発動しているようだが、無駄だ。
こいつは、対オールマイト用に改造されたパワー特化型の脳無だ。
“個性”に関係なく、こいつにはオールマイトに匹敵するパワーがある。
今はイレイザーヘッドの“個性”のせいで発動できないでいるが、こいつには『ショック吸収』と『超再生』の“個性”がある。
こいつがいれば、オールマイトだって殺せ──
――タァァン!!
「……………は?」
信じられない光景が、目に飛び込んできた。
さっきまでイレイザーヘッドを拘束していたはずの脳無が、地面に伸びていた。
なんで…なんで脳無が倒れてんだよ!?
何が起きた!?
「おい、何やってんだ!さっさと起きろ!脳無!!」
俺は、脳無に向かって叫んだ。
だが脳無は、起き上がる気配がなかった。
クソッ、どうなってやがる…!?
イレイザーヘッドの視界からは、とっくに離れてるはず…
なのになんで『超再生』が発動しない!?
どいつが、どこから攻撃してきやがった…!?
今俺の視界に映っているのは、水難ゾーンにいるガキ三人だけだ。
だったら、どうやって…
「!」
脳無の脳には、小さい錐みたいなものが刺さっていた。
何だこりゃ…弾丸か?
スナイパーでもいんのかよ、このクラスは!
クソッ、クソクソクソ!!
せっかく対オールマイト用の脳無を連れてきたってのに…
ガキにあっさりやられてんじゃねえよ!!
話が違うぞ、先生!!
脳無がやられたんじゃ、オールマイトを待ってる場合じゃない。
無理ゲーだろこんなの、もう帰るしかねえじゃねえか!
そうだ、黒霧は何をやってる…?
あいつ、13号相手に手こずってんのか?
こっちは今それどころじゃねえんだよ!
「クソッ…来い、黒霧!!」
このままオールマイトを待っても勝ち目が無いと踏んだ俺は、黒霧を呼んだ。
だがいつまで経っても、黒霧が来る気配が無い。
あいつ、まさかやられたのか…?
あり得ねえ…なんで黒霧がやられんだよ!?
おかしいだろ、あいつの所にいたのは、13号とガキだけのはずだろ!?
どうすんだよ、黒霧がいないんじゃ帰れねえじゃねえかよ!
嘘だろ、こんなところで終わりかよ…
せっかくあれだけの駒を集めて準備したってのに?
……終わってたまるか。
せめて、平和の象徴の矜持をへし折らなきゃ、終われねえ!!
俺が水難ゾーンにいた女のガキの顔に手を伸ばそうとした、その時だった。
入場ゲートの方で、一瞬何かがキラッと光った気がした。
その次の瞬間。
――パァン
肩のあたりに痛みが走り、視界がぐにゃりと歪んだ。
クソ…チートが……!!
ガキどもの中にスナイパーがいるとか、聞いてねえんだよ…!
◆◆◆
雪野ベリside
「………」
手を身につけた
マスコミの時に
念の為に麻酔弾を常備しておいて正解だった。
オールマイトを殺すつもりでここに来たって事は、こいつらにはオールマイトに勝てる策があったという事。
おそらく、今撃った脳無とやらが対オールマイト兵器だったんだろうけど…
麻酔銃ひとつで無力化できるなんて、正直拍子抜けだな。
人類が多様な“個性”を持つ現代に於いても、なんで戦争では銃が第一線で通用するのか、今のでわかった気がする。
なんて考えていると、脳無がピクッと身体を動かしてゆっくりと起き上がる。
マジかよ、脳に直接麻酔弾ぶち込んだんだけどな。
自動発動型の回復系の“個性”なのか、それとも元々の回復力が高いのか…
どのみち、俺がやる事は変わらない。
俺は、特殊弾をスナイパーライフルに込めて、脳無の目に照準を合わせた。
特殊弾のシリンジに入っているのは、象とか鯨とかを眠らせる用の麻痺毒だ。
思いっきり法律違反だし、最悪殺しちゃうかもしれない。
その事について言及されたら除籍されるかもだけど、背に腹はかえられない。
俺はライフルの引き金を引き、脳無の目を撃った。
失明するかもしれないけど、知った事か。
俺の標的になった時点で、五体満足では帰れないと思え。
「${*“€>〜!!?」
「
俺が麻酔銃で脳無の目を撃ち抜くと、脳無が言葉になっていない悲鳴を上げたので、俺は再び脳無を麻酔銃で撃った。
パワーは強いようだけど、どうやら薬物に対する耐性は完全ではないらしい。
しかも“個性”を発動するのに必要な神経細胞が密集している脳に直接麻酔を撃ち込まれたら、“個性”をうまく発動できなくなるのは当然の事。
俺が脳無の頭部に6発ほど銃弾を撃ち込むと、脳無は前のめりに倒れ込んで動かなくなる。
その直後、バンッと扉が開く音が後ろから聴こえた。
「もう大丈夫。私が来t………あれ?もしかして、もう終わってる?」
既に麻酔弾をしこたま撃ち込まれて気を失っている
来るのが1分遅かったよ、オールマイト。
その後俺達は、重傷を負った相澤先生に応急処置を施し、USJ中に散らばったクラスメイトの安否確認を行った。
もちろんUSJにいる
八百万さんに“個性”で必要な道具を出してもらって、13号先生の指示に従って相澤先生の傷を治療する。
必要最低限の医療知識なら、軍学校時代に叩き込まれた。
まずは俺のポーチに入っている包帯で止血をして、八百万さんに作ってもらった添え木と包帯で両腕を固定し、次は腫れや内出血を抑える為に患部を冷やす。
「腕の腫れが酷いので、冷却しないとダメですね。轟くん、氷を出してもらえますか?」
「これでいいか」
「ありがとうございます」
俺が指示を出すと、轟くんはちょうど俺と同じくらいの大きさの氷柱を地面から生やす。
こんなに要らないんだけど…まあいいか。
俺が氷柱を砕いて氷嚢を作っていると、13号先生が話しかけてくる。
「雪野くん。今回は君のおかげで、相澤さん以外誰も大きな怪我をせずに済みました。ですが君のした事は、とても危険な行為です。下手したら、君が殺されていたかもしれなかったんですよ」
13号先生は、穏やかな口調で俺を諭してきた。
まあ、そりゃあ怒られますわな。
完全に先生の指示を無視した独断行動だもん。
任務を優先してヒーローとして正しくない行動をしたのは事実だし、素直に怒られとくか。
「……ごめんなさい。でも、相澤先生が殺されるかもしれないと思うと、怖くて…なんとかして止めなきゃって、それだけで頭がいっぱいになって……っ」
俺は、眉間に皺を寄せながらぐっと拳を握り締め、今にも泣きそうな演技をした。
別に命の奪り合いなんて今更だし、オールマイトを守るのが仕事だから撃っただけなんだけど、これからも潜入を続ける為には、あくまで相澤先生を守るのに必死で後先考えない行動をしてしまったと印象付ける必要がある。
俺が泣きそうな表情を浮かべると、13号先生は、俺の肩に手を置いて言った。
「とはいえ責任は、止めきれなかった僕にあります。僕には、君を責める資格はありません。それでも、君一人が危険を冒して
「……はい」
13号先生の有り難いお言葉に、素直に頷く。
その後数分遅れで、飯田くんと他の教師陣、そして警察が救援に駆けつけてきて、
◇◇◇
「16…17…18…19…20…うん、全員無事だね」
警官隊は、
俺が倒した手だらけの
そんな中、トレンチコートを着た刑事さんに集められ安否確認をされた俺達は、お互いの無事を喜んでいた。
葉隠さんは、一人で火災ゾーンに飛ばされたらしい砂藤くんに話しかける。
「砂藤くん、1人で飛ばされたんだってね…強かったんだね」
「ヒットアンドアウェイで凌いだよ…それより葉隠はどこいたんだ?」
「土砂のとこ!轟くんクソ強くてビックリしちゃった」
(服着てなかったら気づかなかった、危ねえ)
砂藤くんが尋ねると、葉隠さんは轟くんを指差しながら答える。
どうやらギリギリまで葉隠さんがいた事に気づかなかったらしい轟くんは、少し焦ったような表情を浮かべていた。
「何にせよ無事で良かったね」
「雪野くんもね!」
「僕がいたとこはね…どこだと思う!?」
俺達が無事を喜ぶ中、青山くんがしゃしゃり出る。
あまりにもしつこいし空気が読めなさすぎるので、視線を合わせずに無視する。
「そうか、やはり皆のとこもチンピラ同然だったか」
「ガキだと舐められてんだ」
常闇くんと口田くんは、切島くんと情報交換をしていた。
どうやらUSJの全域に配置されていた
「どこだと思う!?」
「どこ?」
無視された青山くんがしつこく尋ねてくるので、梅雨ちゃんが尋ねる。
梅雨ちゃん、やめときなよ…どうせ面倒臭い返事しか返ってこないから。
なんて思っていると、青山くんはキリッとポーズを決めながら答えた。
「秘密さ!!」
なんだこいつ。
教える気がないなら初めから訊くな。
こいつさては、構ってほしかっただけだな?
「とりあえず生徒らは教室に戻ってもらおう。すぐ事情聴取ってわけにもいかんだろ」
「刑事さん、相澤先生は…」
梅雨ちゃんは、恐る恐る刑事さんに尋ねた。
すると刑事さんは、病院に電話をかけてスピーカーをオンにした。
相澤先生だけは重傷で、病院での処置が必要との事で、総合病院に緊急搬送されたのだ。
『両腕上腕骨及び前腕骨の粉砕骨折、肋骨粉砕骨折、全身打撲、擦過傷多数。幸い臓器への損傷はみられず、命に別状はありません。現在は、意識を取り戻しています』
「だそうだ…」
「ケロ…」
刑事さんが担当医の言葉を伝えると、梅雨ちゃんは心配しつつも少し安心したような表情を浮かべる。
まあ、命に別状がないんなら何よりだ。
命あっての物種って言うしな。
「セキュリティの大幅強化が必要だね」
「ワープなんて“個性”、ただでさえものすごく希少なのによりにもよって
校長先生はUSJ全体を見渡しながら考え、ミッドナイト先生も悔しそうに言った。
そんな中、刑事さんが校舎の方角を親指で指しながら笑顔で校長に話しかける。
「校長先生、念の為校内を隅まで見たいのですが」
「ああ、もちろん!一部じゃとやかく言われているが、権限は警察の方が上さ!捜査は君達の分野!よろしく頼むよ!」
刑事さんが言うと、校長先生も快く捜査の許可を出した。
その後俺達は、家に帰され、翌日も臨時休校となった。
さて…と。
今回捕らえた
何の目的でオールマイトを殺そうだなんて馬鹿な事を考えたのか、きっちり聞き出さないとな。
◆◆◆
ミハイルside
A.M.0:00。
俺は家族の目を盗んで家を出発すると、指定の港に向かった。
時間通りに待ち合わせ場所に到着した俺は、港に並んだ港湾倉庫のうちのひとつに入る。
倉庫の中には、ビニールシートが敷かれていて、錆びた鉄の椅子と、多種多様な拷問器具が並んでいる。
この国には、俺以外にも祖国から送り込まれた工作員がいる。
日本の警察に潜入した俺の仲間が、今日捕らえた
ある海運会社の名義で運営しているこの倉庫は、祖国の工作員が利用しているアジトだ。
そもそもこの倉庫を運営している事になっている海運会社も、偽装用に登録したダミー会社だ。
祖国に有益な情報や“個性”を持ってる奴がいればそのまま船に詰め込んで祖国に帰るだけだし、情報を聞き出して用済みになった奴はそのまま海に遺棄すればいいだけなので楽でいい。
どんな手を使ってでも、あんな馬鹿げた事を仕掛けた理由を、あいつらを唆した黒幕がいるのかを聞き出す。
既に倉庫にいた軍医のニコライがゴム手袋とエプロンを身につけて準備をしていたので、互いに示し合わせた仕草で挨拶を済ませ、俺も慣れた手つきでゴム手袋とエプロンを身につける。
しばらくして、一台のトラックが倉庫の前に到着した。
トラックの荷台には、顔にずた袋を被せられた男が数人乗っている。
こいつらは、今日USJを襲撃したチンピラだ。
俺はトラックの荷台からチンピラを降ろし、倉庫へと連れ込み、ベルト付きの拘束具で椅子に拘束した。
「
「
ニコライが拘束具のベルトを締めながら指示を出し、俺もステンレスの台に置かれたペンチを手に取りながら頷く。
俺とニコライがロシア語で話していると、不穏な空気を感じ取ったのか、チンピラが不安そうに呻く。
俺はチンピラの前に立ち、ずた袋は頭に被せたまま、口に嵌めた猿轡を外した。
ボイスチェンジャーを使って声を変え、尋問を開始する。
「単刀直入に言う。今からする質問に、全て嘘偽りなく答えろ」
「へ……?」
「これからお前の身に起こる苦痛を、ひとつずつ教えてやる。もし拒否したり、一つでも虚偽があると判断した場合、今から話す事が全て現実になる。わかったら『はい』とだけ答えろ」
そう言って俺は、冷たいペンチの金属部分を、チンピラの左手にトントンと当てる。
これから自分の身に起こる事を想像したのか、チンピラは全身に鳥肌を立ててブルブル震えた。
ずた袋を顔に被せられて表情は見えないが、どんな顔をしているのかは想像に難くない。
今更後悔したって、もう遅い。
あんな馬鹿げた計画に加担した時点で、お前はもう俺達の敵だ。
敵は殺す、それが俺の国でのルールだ。
「あぎっ…ぎひぃっ!!あがぁ!!」
薄暗い倉庫の中で、チンピラの情けない悲鳴が響く。
命乞いも謝罪も全て無視して、俺達は黙々とチンピラへの拷問を続ける。
「ば、ばなじまぢだ…じっでるごどぜんぶばなじまぢだ…もうゆるぢで…」
チンピラは、ベソをかいて小便を漏らしながら懇願してきた。
顔は誰だかわからない程に腫れ上がり、両手の爪は全て剥がされ、爪があった場所には釘が打ち込まれている。
軍学校で医療知識を叩き込まれた俺は、昨日の相澤先生の時のように人を治す術を熟知しているのと同時に、
どこをどう痛めつければより苦痛を与えられるか、スパイを続ける上では必須の知識だ。
「Он все рассказал, когда ему просто вырвали один ноготь. Он не смог выдержать это так же хорошо, как я думал.」*1
ニコライは、ステンレスの皿に溜まった肉片や爪の破片をゴミ袋に捨てつつ、舌打ちしながらぼやく。
チンピラの身体に尋いても、大した情報は得られなかった。
浅はかな考えでUSJに突撃して返り討ちに遭った上に、爪を一枚剥がしてやっただけであっさり仲間を売り、少し考えれば想像がつくような情報しか持っていないとは、文字通りの屑だな。
わかった事といえば、こいつらが死柄木と黒霧という奴に、『ガキの相手をするだけの簡単なバイトがある』と唆されて作戦に参加した事、そして死柄木曰く、脳無が対オールマイト用の秘策だという事だ。
死柄木と黒霧…顔に手をつけた奴と靄の奴か。
俺の思った通り、あいつらが主犯だったか。
だが、やはりこれ以上の情報は、本人を直接拷問しないと手に入りそうにない。
そう考えていると、死柄木と黒霧を連れてくる手筈だったアレクセイ、グリゴリーの両名から連絡が入る。
「Э́, Что они сбежали?」*2
いの一番に耳に飛び込んできたのは、死柄木と黒霧が脱走したという報告だ。
何でも、警察の話では二人が何の前触れもなく消えたらしく、回収に来た時には既に護送車の中にはいなかったらしい。
警察に連行された時点では、二人とも逃げられるような状態じゃなかった。
となると、第三者が奴等を逃がしたとしか考えられない。
考えるまでもない、
そしてこいつらの黒幕は、大方予想がついている。
オール・フォー・ワン。
超常黎明期に猛威を振るい、世界中を大混乱に陥れたネームド
オール・フォー・ワンは6年前にオールマイトに討ち取られ、巷では死亡説が有力となっているが、祖国の軍の上層部は、奴が生きていると確証を持っている。
雄英を襲撃するなどという馬鹿げた事を仕掛け、対オールマイト兵器なんてものを寄越してくるクソがいるとすれば、オール・フォー・ワン以外に考えられない。
死柄木と黒霧を逃がしたのも、おそらくオール・フォー・ワンだ。
もしそうなら、今回の失敗を踏まえ、今度は精鋭を集めて近いうちにまたオールマイトを殺しに来るだろう。
『Мы позаботимся о последствиях этого дела. Продолжай скрытое расследование в его нынешнем виде.』*3
「Понятно.」*4
今後のスパイ活動の指示を受けた俺は、手袋とエプロンを脱いで、ひと足先に倉庫を後にする。
その後ろでは、ニコライと彼の部下が、用済みとなったチンピラを処分しようとしていた。
するとチンピラは、これから殺される事を悟ったのか、ガタガタ震えながら命乞いをしてくる。
「ゆ、ゆるぢで…ヴィランな゛んでもうやべるがら…」
「オレ達がヒーローや警察だと思っているなら、とんだ見当違いだ。オマエは、オレ達を敵に回した。今更後悔したって、もう遅い」
ニコライがそう言ってチェーンソーのエンジンを煽ると、チンピラは情けない悲鳴を上げる。
俺が帰る支度をしている後ろで、ニコライと彼の部下がチンピラの処分を始める。
後始末はニコライ達に任せた俺は、着てきた服に着替えて、アリさん達が待つ家に帰った。
家に着いた俺は、鼻の利く兎さんと颯兎に血の匂いを嗅ぎ取られないように、風呂場で石鹸を使って入念に身体を洗う。
ダボっとしたトレーナーに着替えて部屋に戻ろうとすると、ちょうど颯兎が部屋から出てくる。
颯兎は、寝起きだからか髪がボサボサになっていて、眠そうな目をしていた。
「あれぇ?兄ちゃんもう起きてたの?早いねぇ」
「…うん。なんか今日は早く目が覚めちゃって。気分転換にランニングしてたんだ」
「そっかぁ」
俺が笑顔を浮かべながら言い訳すると、颯兎はあくびをしながらトイレに向かう。
颯兎が去って行った後、俺は笑顔をやめて真剣な表情に戻った。
今日もまた、『雪野ベリ』を演じなければ。
◆◆◆
死柄木弔side
「っ……!?ここは…?」
気付けば俺は、薄暗くて無機質な部屋にいた。
いつものバーじゃねえ…どこだここ…?
『おはよう、弔。してやられたようだね』
振り向くと、俺の背後に設置されたパソコンのモニターから声が聴こえる。
朧げだった記憶の片隅から、昨日ガキ共にしてやられた事が浮かんできて、怒りが込み上げてくる。
その怒りをぶつけるかのように、俺はモニターを睨みつけた。
「完敗だ…何が起こったのかわからないまま気絶させられた…脳無もやられた…手下共は瞬殺だ…子供も強かった…平和の象徴は、姿すら見せなかった…話が違うぞ先生……」
『違わないよ。ただ見通しが甘かったね』
『うむ…舐めすぎたな。
俺の失態を聞いて、先生とドクターは他人事のように笑った。
ふざけやがって…あんたらが『オールマイトを殺せる策がある』って言ったんだろうが…
先生とドクターの話を聞いていると、脳無がいきなり撃たれて戦闘不能になった事を思い出した。
俺と脳無を入場ゲートから一方的に撃ちやがった、銃使いのガキ。
黒霧をやったのも、絶対そいつだ。
あいつのせいで、俺はオールマイトにすら辿り着けなかった。
あいつさえ、あいつさえいなければ…!!
「ガキ共の中に、銃を使う奴がいた。脳無を倒したのもそいつだ」
『へぇ…?どんな子なんだい?』
「知らねえよ…俺も脳無も、遠くから麻酔弾を撃たれてやられたんだ」
『麻酔弾か…それは盲点だったね。『ショック吸収』の“個性”では、薬物の効果までは無効化できないからね。おまけに、『超再生』が発動する前に眠らされてしまえば無力というわけか…』
『せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに…まぁ…仕方ないか…残念』
苛立ちながら報告する俺を他所に、先生とドクターが話す。
せっかくオールマイト並みのパワーと『ショック吸収』と『超再生』を持ってようが、薬撃ち込まれて気絶させられたんじゃ意味ねえじゃねえか…!!
「そいつは、俺の前に姿さえ見せなかった…!あいつさえ居なきゃオールマイトを殺せたかもしれない…ガキがっ…ガキ…!」
俺は、入場ゲートにいた銃使いのガキを思い出しながら、地面を睨みつける。
ガキのくせに、麻酔銃なんか使いやがって…
作戦が失敗したのは、全部あいつのせいだ。
あいつ一人に、全部ひっくり返された。
『今回の事を悔やんでも仕方ない!今回だって無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!我々は自由に動けない!だから君のような『シンボル』が必要なんだ。死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』
先生は、俺に檄を飛ばした。
オールマイトも、銃使いのガキも、次会った時は必ず殺してやる。
◆◆◆
雪野ベリside
「死柄木弔…黒霧……無戸籍かつ偽名か」
臨時休校中、俺はチンピラから聞き出した死柄木弔と黒霧という人物について徹底的に調べ上げた。
結果は該当無し。
俺と同じ、戸籍を持たない裏社会の人間ってわけだ。
そして主犯格三名のうち唯一確保に成功した脳無に関しては、ニコライがUSJに残っていた肉片のDNAを元に調査をしてくれている。
臨時休校明けの今日。
クラスの皆は、無事A組の教室に集まる事ができた。
「ほぁぁ…」
徹夜で死柄木と黒霧の戸籍を調べていた俺は、つい睡魔に負けてあくびをした。
すると、飯田くんがいつものようにロボットのような動きをしながら話しかけてくる。
「雪野くん、今日は眠そうだな。寝不足か?」
「ああ、うん…ちょっとね」
「気をつけたまえ!保健委員だろう!?」
「うん…そうだね」
飯田くんが俺の寝不足を注意してきたので、俺は眠たげに瞬きをしつつも頷く。
確かに、保健委員の俺が眠たがってるんじゃ、示しがつかないね…
他の皆が席を立ってワイワイ話す中、俺は机に突っ伏して目を閉じていた。
一昨日といい昨日といい全然眠れなかったから、少し頭を休めておかないと…
なんて思っているとだ。
「皆ーーー!!朝のホームルームが始まる!席につけーー!!」
「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」
飯田くんが指示を出すと、瀬呂くんがツッコミを入れる。
飯田くん、USJのバスの時といい、なんかちょっと空回りしてない?
なんて思っていると、朝のチャイムが鳴る。
それと同時に、教室の前側のドアが開いた。
それにしても、今日の朝礼は誰がやるんだ?
相澤先生は、両腕骨折してるから無理だろうし……
「お早う」
「「「「相澤先生復帰早えええ!!!!」」」」
教室には、両腕にギプスをはめ、頭に包帯を巻いた相澤先生が入ってきた。
いや、相澤先生が来るのかよ。
どの状態でどうやって朝礼とかやるわけ?
「先生、無事だったのですね!!」
「無事言うんかなぁアレ……」
飯田くんが挙手しながら言うと、麗日さんが顔を引き攣らせる。
うん…どう見ても重傷だけど後には遺らないみたいだし、何より生きてこうして教室に来たのなら無事って事にはなるんだろう。
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ」
俺達の心配を他所に、相澤先生が教壇に立ってそう話す。
それを聞いた俺達は、思わず身構える。
どういう意味だ…?
「戦い?」
「まさか…」
「まだ
爆豪くん、緑谷くん、峰田くんが反応すると、相澤先生は少し溜めてから言った。
「雄英体育祭が迫ってる!」
「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」」
教室に、歓声が響き渡る。
あんな事があった後で、皆元気だなぁ。
オリ主無双終了。
オールマイトの活動時間は減らず、13号先生は無傷、相澤先生も後遺症無し。
死柄木、黒霧、脳無の主戦力3人をほぼ1人で無力化したオリ主最強説。
黒霧がワープで死柄木を撤退させるまでもなく3人まとめてオリ主にやられる作品も珍しいんじゃなかろうか。
なお、捕まった死柄木と黒霧は、何者かの手によって解放された模様。
このまま完!!ルートだと流石にアレなので、あいつを介入させました。
ちなみに、オリ主が語り部の時、潜入中と素の時とで若干口調や性格が違うのはわざとです。
雄英潜入時の方が穏やかなのは、無意識のうちにクラスに馴染みやすい性格に寄せてるからで、チンピラを拷問してる時が本来の性格です。
あと、わかりにくくて申し訳ないですが、オリ主が普段授業で使ってる麻酔弾と、死柄木達を倒すのに使った麻酔弾は別物です。
普段使ってるやつはサポート会社が提供している合法的な弾(ミッドナイトの“個性”を参考にした安全なもの)ですが、死柄木達を倒すのに使ったのは麻痺毒入りの違法な弾です。
とはいえオリ主は医者や薬剤師並みに医療知識が豊富なので、麻酔弾で敵を殺すようなヘマはしません。
USJでのそれぞれの位置
入場ゲート:13号、芦戸三奈、飯田天哉、麗日お茶子、障子目蔵、瀬呂範太、雪野ベリ
セントラル広場:イレイザーヘッド
暴風・大雨ゾーン:口田甲司、常闇踏陰
倒壊ゾーン:切島鋭児郎、爆豪勝己
水難ゾーン:蛙吹梅雨、緑谷出久、峰田実
土砂ゾーン:轟焦凍、葉隠透
火災ゾーン:砂藤力道
山岳ゾーン:上鳴電気、耳郎響香、八百万百
???:青山優雅