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迫る体育祭
オールマイトside
USJの翌日、私は雄英教師陣が集まる会議に参加し、塚内くんからの調査報告を聞いていた。
塚内くんは、私と一番仲良しの警察だ。
私はあくまで
会議が始まっていの一番に、塚内くんの口から信じがたい報告を聞いた。
「消えた…!?」
「はい。
塚内くんから聞いた報告、それはUSJに現れたという
護送中は二人とも意識を失っていて、自分の意思で逃走を図れる状態ではなかったそうだ。
つまり二人は、護送中に何者かに連れ去られたという事。
「死柄木弔という名前で、20代~30代の個性登録を洗ってみましたが、該当なしです。『ワープ』の“個性”を持つ黒霧という者も同様です。無戸籍かつ偽名…個性届を出していない、所謂裏の人間」
二人が消えたという報告の後、塚内くん達警察の調査結果が発表された。
「何もわかってねえって事だな…早く対処しねえと、また死柄木とかいう主犯が暴れ出したら面倒だぞ」
スナイプ先生の言う通り、状況は芳しくない。
死柄木と黒霧は護送中に突然姿を消し、未だ行方不明。
私達は、奴等について何もわかっていない。
もしまた今回のように襲撃を仕掛けられたとしたら…
「
「何だいオールマイト?」
「いえ…死柄木弔についてです。彼が今回の襲撃の主犯だとすると、些か腑に落ちない点が…」
「それについては、ちょうど僕も気になっていたところさ」
私が口を開くと、根津校長が私の意見に賛成する。
私は校長の顔を見て相槌を打ってから、私なりの分析を塚内くん達に話した。
「思いついても普通行動に移さぬ大胆な攻撃。用意はそれなりに周到にされていたにも拘らず!脳無という
「“力”を持った子どもってわけか!!」
「小学時の『一斉“個性”カウンセリング』、受けてないのかしら…」
「で!?それが何か関係あんのか!?」
私の分析に、
すると塚内くんが、資料を取り出しながら説明をする。
「先日のUSJで検挙した敵ヴィランの数72名。どれも路地裏に潜んでいるような小物ばかりでしたが、問題はそういう人間がその“子ども大人”に賛同し付いて来たという事。ヒーローが飽和した現代、抑圧されてきた悪意達は、そういう無邪気な邪悪に魅かれるのかもしれない」
「加えて、何者かに連れ去られ、今もなお行方不明という事実。もし
校長の呟きに、思わず脳裏に最悪のシナリオが浮かぶ。
もし二人を連れ去ったのが、ただの仲間ではなく、
警察の厳重な警備を掻い潜って、二人を連れ去れる人物……一人だけ心当たりがある。
もし
そう考えると、私は不安を感じずにはいられなかった。
◆◆◆
雪野ベリside
休日明けの今日、俺達は無事登校できたわけだけれど…
「「「「体育祭…!」」」」
相澤先生の放った『体育祭』という言葉に、クラス皆のテンションのボルテージが一気に最高潮に達する。
「クソ学校っぽいの来たぁぁ!!」
特に切島くんは、両手を握りしめてガッツポーズをして気合いを入れた。
だけど前の席の上鳴くんが、前から切島くんの顔面を押さえつけて口を開く。
「待って待って!」
「
上鳴くんが切島くんを押さえつけ、耳郎さんが俺も少しは気になっていた事を相澤先生に尋ねる。
マスコミパニック、USJと二回も敵に侵入されたって時に、体育祭なんてやって大丈夫なのか?
なんて考えていると、相澤先生が話し始める。
「逆に開催する事で雄英の危機管理体制が磐石だと示す…って考えらしい。警備は例年の5倍に強化するそうだ。何より雄英の体育祭は……
「いやそこは中止しよう?体育の祭りだよ…」
いや、今回ばかりは峰田くんが正しい。
中止しろよ。
ワープの“個性”の奴に逃げられちゃった事、警察側ももう知ってるんでしょ?
ワープに対する具体的な対策もないのに、この状況で体育祭を開催するとか、学習能力が無いのか?
USJの時は少人数だったからまだ大した問題にはならなかったけど、
だけど峰田くんの発言は、緑谷くんにとっては衝撃発言だったらしく、緑谷くんがドン引きした表情で峰田くんを見る。
「峰田くん…雄英体育祭見た事ないの!?」
「あるに決まってんだろ、そういう事じゃなくてよー…」
緑谷くんが質問すると、峰田くんは不安そうに口を開く。
ぶっちゃけ俺は最近まで見た事がないんだよな、ウチの国では、最高指導者の意向で雄英体育祭を放送してないから。
話題についていけないと任務に支障が出るから、入試の1ヶ月くらい前に過去のやつを倍速で見たけど。
なんか去年のやつとかは、三年生の勝ち抜きトーナメントが白熱してた記憶がある。
なんて思っていると、相澤先生が口を開く。
「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つ!!かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した…そして日本に於いて今、かつてのオリンピックに代わるのが雄英体育祭だ!!」
「当然全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね!」
「知ってるってば…」
相澤先生に続けて八百万さんも説明すると、峰田くんが若干呆れた様子で振り向く。
峰田くんの反論は、あえなく掻き消されてしまった。
要はあれだな、直接足を運んだり全国放送やらで体育祭を見たプロが、そこで活躍した学生をスカウトするってわけだ。
「
「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴あんたそーなりそう。アホだし」
「くっ!!」
耳郎さんが辛辣な返しをすると、上鳴くんが悔しそうに黙る。
耳郎さんの言う事ももっともだ。
せめて放電に指向性を持たせられない弱点はどうにか克服しとけ。
そこ直さないと、操作系“個性”のプロヒーローの充電係にされるのがオチだろうな。
「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回…計三回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」
相澤先生は、クラス皆の闘志に火をつけて、ホームルームを終えた。
いや、さっきからずっと思ってた事があるんだけどさ……
日本人は馬鹿なのか?
要は、全国の
そういうのは普通、プロの方から足を運んでもらうイベントを学内で開催して一般公開はしない、とかいう方法を取るべきだろ。
◇◇◇
そんなこんなで4限目の現代文終了後。
「あんな事はあったけど…なんだかんだテンション上がるなオイ!!」
「活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」
切島くんと瀬呂くんは、早速やる気を出していた。
他の皆…特に砂藤くん、常闇くん、瀬呂くん辺りもテンションが上がっていた。
なんか常闇くんは「狂宴……」とか呟いていたけど、どういう意味なんだろう。
あとで聞いてみよう。
「雪野くん、私、なんだか緊張してきちゃった!体育祭、目立たなくちゃ!」
「うん…葉隠さんは目立たないのがアイデンティティだと思うけど…」
葉隠さんが両腕をブンブン振りながら話しかけてくるので、俺は少し顔を引き攣らせながらツッコミを入れた。
やっぱり皆すごいノリノリだな。
俺にはその感覚がよくわからないけど。
全国放送か、嫌だなぁ……
あと二週間で体育祭、ちょっと憂鬱。
別に自分の実力に自信がないわけじゃないけど、目立つのが嫌。
本職が軍人の俺からすれば、目立つというのは致命的だ。
俺が戦場で無敵でいられるのは、目立たないからこそだ。
そういう意味で言えば、俺はヒーロー業と相性が悪い。
そもそも俺、元々目立つの大嫌いな性分だし。
目立ちたくないけど、やる気なしと思われて除籍されるのも嫌だし、どうしようかな。
なんて考えていると、緑谷くんが皆を見ながら口を開く。
「皆すごいノリノリだ…」
「君は違うのか?ヒーローになる為在籍しているのだから、燃えるのは当然だろう!?」
「飯田ちゃん独特な燃え方ね。変」
飯田くんが姿勢を低くして両手でぐっと握り拳を作ると、梅雨ちゃんがツッコミを入れた。
梅雨ちゃんほんと思ってる事何でも言うね。
「緑谷くんも、そうじゃないのかい!?」
「僕もそりゃそうだよ!?でも何か…」
「デクくん、飯田くん…」
緑谷くんが不安そうに何かを言おうとすると、麗日さんが声をかける。
緑谷くんに話しかけた麗日さんの顔はというと…
「頑張ろうね体育祭」
「顔がアレだよ麗日さん!!?」
麗日さんは…なんというか、すごい顔をしていた。
いつものポワポワした感じとは180度真逆の顔つきだ。
「どうした?全然麗かじゃないよ麗日」
「生…ぐえっ!?」
何だかすごい顔をしている麗日さんに、芦戸さんが話しかけている後ろでは、峰田くんが梅雨ちゃんにベロで引っ叩かれていた。
なんて言おうとしたんだろう……?
峰田の事だから、どうせ下ネタだろうけど。
「皆!!私!!頑張る!!」
「おおーーーーけどどうした、キャラがフワフワしてんぞ!!」
やる気に満ちた麗日さんが拳を突き上げると、切島くんはそれに応える形で腕を挙げつつも、麗日さんを心配していた。
俺も教室の隅で、「えいえいおー」と拳を突き上げておく。
にしても麗日さん、何をそんなに気合い入れてんだろ?
そういえば彼女の家は、関西の小さな建設会社だったと記憶してるけど…
親の会社の経営状況が厳しい事と関係あるのかな?
◇◇◇
その後、俺は昼食を食べに食堂に向かった。
一度葉隠さんにコスチューム会社の紹介のお礼に食堂のビーフストロガノフを奢ってもらったんだけど、美味しかったのでまた食べに行こうと思っている。
皆に普段売っている家のお弁当の売り上げは、そのままお小遣いとして貰える事になったので、たまには浮いた分のお金を食堂の食事に使うのも悪くない。
なんて考えながら、食堂に向かうとだ。
「おお!!緑谷少年がいた!!」
ちょうどオールマイトが、HAHAHAHA!と笑いながら曲がり角から飛び出してきた。
どうやらオールマイトは、俺と同じタイミングで食堂に行こうとしていた緑谷くんに用があるらしい。
話の内容が気になるので、『技術』を使って
◇◇◇
大食堂にやって来た俺は、カレー売り場の列に並んで、注文したビーフストロガノフのセットを受け取った。
デミグラスベースのソースの上にパセリのかかったサワークリームが乗っていて、同じトレーにはポテトサラダとリンゴジュースが乗っている。
空いている席を見つけて座ると、左耳につけたイヤホンから声が聴こえる。
『君をここに呼んだのは、体育祭の話だ。君まだ“ワン・フォー・オール”の調整できないだろ。どうしよっか』
俺が左耳につけたイヤホンからは、オールマイトの声が聴こえた。
任務用に持ち歩いているデバイスには、盗聴機能がある。
オールマイトは、『ワン・フォー・オール』とやらの話をする時は、必ず仮眠室か保健室を使う。
なのでオールマイト関連のいつでも収集できるように、仮眠室と保健室に盗聴器を仕掛けておいたのだ。
俺は、昼食を食べつつ、二人の会話を盗聴する。
『ぶっちゃけ私が平和の象徴として立っていられる時間って、実はそんなに長くない』
『そんな…』
『悪意を蓄えている者達の中に、それに気付き始めている者がいる。君に“力”を授けたのは、“私”を継いでほしいからだ!』
オールマイトが平和の象徴として立っていられる時間は長くない。
だからこそ、オールマイトを少しでも長く平和の象徴として立たせる為に、俺がこの国に送り込まれた。
でもオールマイトの後継者がいるとなると、話は変わってくる。
オールマイトは、緑谷くんに何か特別な思い入れがあって、彼を後継者に選んだようだけど…正直もう少しマシな人材はいなかったのかと思わなくもない。
『体育祭…全国が注目しているビッグイベント!今こうして話しているのは、他でもない!!次世代のオールマイト…象徴の卵…君が来た!って事を、世の中に知らしめてほしい!!』
『君が来た』…ねぇ。
『僕が…来たって…でも、どうやって…』
『雄英体育祭のシステムは知っているね?』
『っハイ!もちろん!サポート科・経営科・普通科・ヒーロー科がごった煮になって、学年ごとに各種競技の予選を行い…勝ち抜いた生徒が本戦で競う…いわゆる学年別総当たり』
『そう!!つまり、全力で自己アピール出来る!!』
オールマイトの言葉に、緑谷くんは「はぁ…」と何とも言えない微妙な返事をした。
そして襲撃の後で乗り切れないだの、もうオールマイトに見てもらえているから目立つモチベがないだの、そもそも“個性”の制御ができないのにどう目立てだの、ブツブツと言い訳をする。
なんでオールマイトはこんな奴を後継者に選んだんだ、とツッコみたいのを堪えていると、オールマイトが口を開く。
『ナンセンス界じゃ他の追随を許さないな君は!!!常にトップを狙う者とそうでない者…そのわずかな気持ちの差は、社会に出てから大きく響くぞ』
オールマイトのその言葉は、やけに重厚感があった。
気がつけば、皿の上のビーフストロガノフがなくなっていた。
話に聞き入って、食べていたのを忘れていたらしい。
せっかく頼んだのに、もったいない事したな…もっとちゃんと味わって食べれば良かった。
でもまあ、オールマイトの話を聞けたんだから、良しとするか。
◇◇◇
そして放課後。
「うおおお……何事だあ!!?」
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
ドアの前にいた麗日さんと峰田くんが、驚いた様子で声を上げる。
教室の外には、B組や他科の人達が屯していた。
うわ、邪魔だなぁ…帰れないじゃん。
なんて思っていると、爆豪くんが前に出てくる。
「敵情視察だろ、ザコ。
「アワワ…!」
「知らない人の事をとりあえずモブっていうのやめなよ!!」
爆豪くんの暴言に対して、緑谷くんがアワアワし、飯田くんが注意をする。
おい爆豪、お前が他クラス連中をどう思うと勝手だけど、そいつらが見てる前で暴言を吐くのはやめろ。
こっちはお前のせいで俺まで悪目立ちするのが嫌なんだよ。
なんて思っていると…
「どんなもんかと見に来たが、随分偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴はみんなこんななのかい?」
「ああ!?」
青紫色の髪を逆立てた長身の男子生徒が、ずいっと前に出てくる。
普通科の男子の言葉に反応する爆豪くんの後ろでは、緑谷くんと飯田くんがブンブンと首を横に振っている。
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構いるんだ。知ってた?体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ。敵情視察?少なくとも
(((この人も大胆不敵だな!!)))
普通科の男子の発言に、飯田くん、麗日さん、緑谷くんの顔が強張る。
編入か……まあ、頑張ればいいんじゃない?
俺は別にこのクラスに思い入れなんて1ミリもないから、誰が入れ替わっても気にしない。
ま、俺はヒーロー科のイスを譲る気は全くないんだけどさ。
なんて思っていると、今度は銀髪と金色の睫毛が特徴的な男子生徒がぐおっと拳を挙げて自己主張する。
「隣のB組のモンだけどよぅ!!
(((また大胆不敵な人キタ!!)))
なんかうるさい奴が来たな……
エート、たしかB組の鉄哲くんだっけ。
爆豪のせいで俺まで簡単に人に喧嘩を売る奴だと思われて任務に支障が出たら面倒なので、誤解はちゃんと解いておこう。
俺は、教室の外にいる人達の前に立って頭を下げた。
「ウチのバカが失礼な態度を取って、ごめんなさい。でもA組が全員こんな奴というわけじゃないのは、理解してほしい」
「ああ!?」
「おい爆豪、お前いい加減にしとけよ。お前の下品な発言のせいで、オレや他の皆の印象まで悪くなるんだよ。敵増やしたいなら他所でやれ。オレ達を巻き込むな」
俺の言葉に反応する爆豪に、俺はハッキリと不満を伝えた。
向上心があるのは結構だけど、暴言を吐いて周りを巻き込むのが許される理由にはならない。
敵を増やして自分を追い込みたいなら、一人でやってろ。
俺をお前と同じ土俵に引き摺り込むな。
「それと…キミらにも言いたい事がある。オレ達だって、好きで
俺は、決して怒鳴らず、それでいてハッキリ聴こえるようにB組や他科の人達にそう告げた。
それに、ここで釘を刺しておかないと、後々面倒な事になる。
生き延びるのに必死って言ったけど、あんなの命の危機のうちに入らない。
俺が気にしてるのは、そこじゃない。
芦戸さんと障子くんは、俺が
もし二人がこいつらに事件の事を話したりでもしたら、俺の本当の実力がこいつらにバレる。
俺の素性がバレてないからこそノーマークの状態で
間違ってもUSJ事件の真相に辿り着かれないように、B組や他科に「詮索するな」と釘を刺した。
「わかったら、そこどいてもらえる?」
俺の言葉に、他クラスの人達は何も言えなくなり、宣戦布告してきた男子生徒ですら気まずそうな顔をしている。
俺が近づくと、他クラスの人達は道を開けてくれたので、そのまま教室を後にした。
正直言い過ぎたかもしれないけど、爆豪のせいでヘイトが集まったら、任務に支障が出る。
それにあのままだと帰れなかったし、多分あれでよかったんだ。
そういえば、今日は母さんにお遣い頼まれてるんだった。
ん…と、トイレットペーパーと…風呂掃除用の洗剤と…あとヨーグルトも買わなきゃ。
「おい白チビ」
俺が廊下を歩いていると、後ろから爆豪くんに声をかけられる。
名前で呼ばないのが不快だから無視して帰ろうかとも思ったけど、後ろから怒鳴り散らされるのも不愉快なので、足を止めて振り向く。
下の名前はロシア語で白って意味だから、『白』って渾名もあながち間違ってはいないし。
「…………何?」
「てめぇ俺の前歩いてんじゃねぇ」
こいつ、俺が前を歩いたくらいで何でこんなイラついてんの?
ああ、さっき彼の発言を遮って、先に言いたい事だけ言って帰ったからか。
「別にキミの前を歩いてるつもりはないんだけど。オレが前を歩くのが不快なら、キミが道を変えたら?」
「なんで俺がてめぇに合わせなきゃなんねえんだ、てめぇが消えろ」
俺が言うと、爆豪くんが反論してくる。
こいつ、自分を中心に世界が回ってるとでも思ってんのかな。
この際だから、俺は思っている事をハッキリ伝える事にした。
「あのさ、前から言おうと思ってたんだけど…キミ、なんでヒーロー科に来たの?」
「あ…!?」
「自分より弱い相手を見下してるから、調子乗ってるって言われるんだろ?確かに他科の人達にも非はあったし、客観的に見てもキミの方が強いと思うけど、だからって見下していい理由にはならない。ヒーローになりに来たんなら、相手を尊重するって事を少しは覚えなよ」
俺は、できるだけ言葉を選んで爆豪くんを説得しようとした。
だけど彼は、俺の説得を聞き入れず、俺の肩をぐいっと押して強引に追い抜かした。
俺がイラッとしつつも振り向くと同時に、爆豪くんが口を開く。
「関係ねぇよ………」
「は?」
「上に上がりゃ、関係ねえ」
「……あっそ」
爆豪くんは、俺を追い抜かして先に帰って行った。
ここまで言っても聞かないとはね。
まあ、一言説教しただけで言う事聞くような奴だったら、最初っから暴言なんて吐いてないか。
俺は爆豪くんが帰っていって誰もいなくなった下駄箱で靴を履き替え、その足でスーパーに向かった。
◇◇◇
学校から帰った俺は、いつも通り帰りの電車に乗って、家の近所の激安スーパーで洗剤とトイレットペーパー、あとは母さんの為にアロエヨーグルトを買った。
最近食欲がないらしいけど、アロエヨーグルトなら食べられるらしくて、にんじんのジャムをつけて食べるのが好きだそうだ。
多めに買っておけば、小腹が空いた時とかに手軽に食べられるからね。
買い物を済ませた俺は、勝手口から家の中に入る。
「ただいまー。洗剤とトイレットペーパーと、あとヨーグルトも買ってきたよ」
俺が玄関のドアを開けてレジ袋を持ち上げると、母さんと颯兎が出迎えてくれた。
「あらベリちゃんおかえり!」
「兄ちゃんおかえりー!」
母さんと颯兎は、いつも通り笑顔で俺を迎えてくれた。
だけど母さんは、心なしかいつも以上に機嫌がいいような気がする。
普段から人懐っこくて穏やかな笑顔を浮かべている母さんだけど、今日は兎耳がピンと立っていて、いつも以上に頬が緩んでいる。
ここ最近体調不良が続いてるけど、今日は体調が良いのかな。
「……母さんどうしたの?機嫌良さそうだけど?」
「ふふっ、実はね…?」
俺が尋ねると、母さんは頬を緩めて話し始める。
すると颯兎は、兎耳をピンと立てて驚いた表情を浮かべる。
「えっ、赤ちゃん!?」
「そうよ。あなた達は、もうすぐお兄ちゃんになるのよ」
颯兎が驚くと、母さんはほんのりと頬を染めて腹を撫でながら微笑む。
最近体調不良が続いているので病院に行ってみたら、妊娠7週目と診断されたそうな。
なるほど、だから最近体調が悪かったのか。
俺の合格発表の日から、父さんも母さんも舞い上がってイチャイチャしてたからなぁ…(※第一話参照)
このタイミングでの妊娠は、自然な事ではあるのか…
「ねぇ、男の子?女の子?」
「まだわかんないかな〜、どっちだろうね〜」
颯兎が尋ねると、母さんが腹を撫でながらふふっと微笑む。
「この子が産まれたら、仲良くしてあげてね」
「うん!」
母さんが俺と颯兎にそう告げると、颯兎は素直に頷く。
だけど俺は、母さんの言葉に素直に『うん』と頷けなかった。
マジかよ…任務中に子供が増えるとか、クソ面倒臭いんだけど。
てか父さん何やってんの?俺がしばらく居候するのはわかってた事なんだから、避妊くらいしてくれよ。
父さんと母さんが幸せでも、それで困るのは俺なんだよ。
「……わかったよ、母さん」
俺は本心を押し殺して、新しい家族ができた事を祝福した。
父さんがこのタイミングで子供を作ったのは、俺達の任務の駒として白羽の矢が立った時点で、自分の死期を悟っていたからなのかもしれない。
自分が生きた証をひとつでも多く遺したかったのか、それとも最期に綺麗なものを見たかったのか…
なんて考えていると、母さんが話しかけてくる。
「ところでベリちゃん、もうすぐ体育祭よね?」
「ああ、うん」
「当日何か食べたいものある?お弁当作ってあげる」
そう言って母さんは、微笑みながらウインクをした。
今から体育祭の日の弁当の話は、気が早すぎないか…?
「じゃあ…唐揚げが食べたい」
俺がそう言うと、母さんはニコッと微笑む。
俺は正直体育祭で勝ち上がりたくないんだけど、純粋に俺に勝ち上がって欲しいと思っている母さんや颯兎の視線が痛い。
参加種目の決定、それに伴う個々人の準備。
そうして二週間は、あっという間に過ぎていく。