窓際の魔法   作:凪絆りぃ

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はじめまして、凪絆りぃです。
よろしくお願いします!




#1窓際の女の子

高校に入学してから、だいたい一ヶ月。

 

教室には、ようやく空気ができてきていた。

誰と話すか、どこに座るか。

それぞれの距離が、自然に決まり始める頃。

 

 

「じゃあ今日はこれから席替えなー」

 

 

朝のホームルームで、担任が言った。

 

教室が湧き、ザワザワとしている。

このクラスで初めての席替えだ。そりゃあ色んな思いが動く。せっかく近くの席の人と友達になれたのに。気になるあの子の隣になりたい。後ろの席がいい。

僕は断然後ろの席が望み。窓際だったらなおさらだ。

みんなの視線からいちばん遠い場所だからだ。

 

そして、先生が持ってきたくじを順番に引いていき、席を決める。

 

僕はくじの箱の中で少しだけズルをした。

窓際の1番後ろの席。それだけを狙って透視を使ったのだ。

 

 

 

 

-優は少しだけ魔法が使える

 

 

 

 

今みたいに紙くらいの薄さのものを透かし見たり、他にも遠くのものを少し動かせたり、少しだけいつもより力を出せたり、自分の影を少しだけ隠せたり。ふとした時にたまに溢れてしまう時もあるのだが....

 

それだけの『幻』のようなもの。普段は決して使うことは無いが、こういう時に利用するくらい誰も文句ないだろう。

 

朝から騒々しくガチャガチャ音を立てながらみんな席を移動させていく。僕は確約されたこのいちばん後ろの席は渡すものかと言わんばかりに、一番最初に着席した。

 

みんなが着席をするとみんな隣りが誰になったのか、仲良しの人はいるか、周りを見渡していると、

 

「よーし、じゃあ日直は今日から新しい席順でいくぞ。そうだな......隣同士、前回は前から回したから、今回は後ろから回そう。」

 

前の方では喜びの声が少し聞こえる。

そして、教室に視線が流れる。

 

「今日は……窓際の一番後ろ。深見、黒瀬」

 

優は小さく息を吸って、頷いた。

 

窓際、一番後ろ。

教室の端で、背後に誰もいない席。こんなに視線が集まるのは最初で最後かもしれない。

 

そして、隣を見る。

 

一緒に呼ばれた黒瀬は、静かに座っていた。

黒瀬 夏夜音(くろせかやね)。綺麗な黒髪と整った顔立ち。お人形さんくらい長めのまつ毛。いかにも清楚な風貌だが、意外にも交友関係は広く、クラスの女子の中でも人気者だ。

 

「よろしく」

 

僕が言うと、

彼女は一度だけ目を向けて、

 

「うん」

 

それだけ答えた。

 

冷たいわけじゃない。

踏み込みすぎない線が、最初から引かれている。

僕が男子だからか、それとも顔が好みじゃないのか。

僕と接する人は基本少し距離があるところから始まる気がする。

そんなことを考えながら、いつものねむい一限の授業が進んで行った。

 

 

 

 

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二時間目の途中で、

黒瀬夏夜音は机に突っ伏した。

 

窓から入る光が、彼女の髪に落ちる。

彼女はこのクラスでは「眠り姫」とも呼ばれている。

休み時間や放課後もよく寝ていることがある。

 

「起こさないであげて」

 

近くの女子が、小声で言う。

 

「分かってる」

 

誰かが答える。

 

みんなが、そうする。

彼女の存在を乱さないように、話題をひとつずつずらしていく。

 

そして、空気が少しだけ緩む。

この空間が切り取られたように。

 

 

優は黒板を見ながら、

隣の呼吸を意識しないようにしていた。

 

 

 

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 少し暑くなってくる昼休み。

 

「優ー」

 

 廊下から声がして、高橋が顔を出す。

 中学からの数少ない友達だ。

 

「一緒に食おうぜ」

 

「うん」

 

 二人で机を寄せて弁当を広げる。

 黒瀬夏夜音は、隣の席で机に伏したままだ。

 

「相変わらず後ろだな」

 

「落ち着く」

 

「だよな」

 

なんでもない話をする仲の友達の高橋。彼ですら優の魔法のことは知らない。

高橋は箸を動かしながら、ちらっと横を見る。

 

「隣、黒瀬だろ?」

 

「うん」

 

「静かだよな」

 

「静か。ずっと寝てる。」

 

 それ以上、話は広がらなかった。

 

 視線を戻す。

 

 夏夜音は、隣で眠っている。

 ずっと同じ机、同じ距離。

 

 なのに、触れられない。

 

「具合、悪そう?」

 

「いつもあんな感じ」

 

「そっか」

 

高橋は、それ以上聞かなかった。

クラスの雰囲気がそうな様に、高橋もなにか感じ取ったのかもしれない。

 

変わらない昼休み。

変わらない一日。

 

 

 

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放課後-

 

教室に残ったのは、

窓際の一番後ろの席に座る二人だけだった。

 

日直日記を書く時間。

 

黒瀬夏夜音は椅子に深く座ると、そのまま目を閉じた。

 

少しくらいは手伝えよと思いながら、優は何も言わず、ノートを開く。

 

日付

天気

特になし。

 

ペンを走らせていると、

肘に何かが当たった。

 

消しゴムが、机の端から落ちる。

床に向かって、一直線に。

 

——反射的に、力を使ってしまった。

 

ほんの少し。一瞬だけ。

 

消しゴムは床に触れる前で止まり、空中で迷うように揺れてから、優の手のひらに戻った。

 

音は、しなかった。2人以外誰もいないのだから。黒瀬は寝ているので誰にも見られてない。

 

 

 

「……今の」

 

声がした。

 

隣から。

 

夏夜音が、目を開けている。

 

 

「落ちる前に、止まった?」

 

 

淡々とした声。

 

「...え?」

 

否定できない。

僕が何と言い訳しようかと頭をフル回転させていると、

 

 

「そんな訳、ないよね。」

 

彼女が先に言った。

 

「幻だよね。」

 

「.....うん。幻だ。」

 

少し間を置いて、「でも」と小さく続ける。

 

 

「世界が揺らいでる。」

 

「.......」

 

優は彼女の目をまっすぐ見れない。全てを覗かれてしまいそうで。

だが、そのまま黒瀬はまた目を瞑った。

 

 

「……深見優くん」

 

初めて名前を呼ばれた。フルネームで。

 

「今日の日記、私書く?」

 

「……いい」

 

優は咄嗟に断ってしまった。

消しゴムを握りしめて、隠すように。

窓の外を見た。

 

普段と変わらない日。

下校のチャイムが鳴り響く。

 

 

ただひとつ違うのは

 

『隣の席の彼女に、秘密を見られてしまったこと』

 

それが、二人の関係の始まりだった。

 




優の魔法
・少しだけ透かして見える
・ものを引き寄せる

キャラ紹介
深見 優(ふかみゆう)15歳♂︎
黒瀬夏 夜音(くろせかやね)15歳♀
高橋(たかはし)15♂ 優の友達

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