遅くなってごめんなさい〜
評価、感想お待ちしております!
昨日は正直めっちゃ焦った。
突然「あなたは何者?」なんて聞かれるものだから、バレたと思い必死に誤魔化した。彼女が感じたことは多分無意識に作ってしまう空間のズレなのだろう。最近はあまり意識していなかったから尚更焦った。黒瀬夏夜音の目はほとんど見れなかったし、どんな表情で聞いていたかはあまりわからないが、疲れだかなんだかだと言ったら"何もなかった"と納得してくれたので良かった。
でも少し親しくなれたと思う。友達とは何気ないところから始まるものだ。まだ友達と言える関係ではないが、昨日の「また明日」はそう感じることができた。ちなみに僕は男女の友情はあると思う派だ。
「深見優くん、おはよう」
「あ、ああ。おはよう」
席につくなりいきなり声をかけてきた。フルネームで呼ばれるのはびっくりする。怒られてるかのように思ってしまう。
「その黒瀬さん、フルネームで呼ぶのやめない?優でいいからさ。ちょっとビックリしちゃうんだよね」
「確かにそうかも....ごめんね?優...優くんで。私のことも夏夜音でいいよ」
いきなり名前で呼び合う仲になってしまった。これこそ違和感が半端ないが、彼女がクラスメイトとの距離感であるとも思う。確かに彼女が話しているのを見ると名前呼びしている気がしてきた。
「か、夏夜音......さん」
自分でもびっくりするくらいぎこちない呼び方になってしまった。
舌が上手く回らず、語尾が少し浮いて聞こえる。
黒瀬夏夜音は一瞬だけこちらを見て、それからふっと小さく首を横に振った。
「……無理しなくていいよ」
声は相変わらず静かで、どこか眠たげだった。
「慣れるまで、ゆっくりで」
そう言って、彼女は前を向く。
それだけのやり取りなのに、胸の奥に残った違和感がなかなか消えなかった。
チャイムが鳴り、朝のホームルームが始まる。
担任の声が教室に響くけれど、いつもより少し遠く感じた。
ふと、隣を見る。
夏夜音は机に肘をつき、顎に手を当ててぼんやりと黒板を見ている。
起きている。けれど、完全に目が覚めているようでもない。虚ろな視線。
——眠そうだな。
そう思った瞬間、また。
教室の空気が、ほんの一拍遅れて流れた気がした。
音が少しだけ柔らかくなる。
窓から差し込む朝の光が、現実よりも淡く教室を満たす。
まずい。
優は無意識に肩を強張らせる。
意識しないようにしていた分、反応が遅れた。
彼女の雰囲気に飲まれ、一瞬世界がぼやけた。クラスのみんなは眠気を感じたと思っているのだろう。
夏夜音が、ゆっくりと瞬きをした。
「……今」
小さな声。優の心臓が跳ねる。
「今、夢みたいだった」
責める調子ではなかった。むしろ、感想に近い。圧倒的に綺麗な夜景を初めて見た時のような。子供のころからの憧れの有名人と話した時のような。
「……」
何も言えずにいると、夏夜音がこちらを向いて、視線が重なった。
夏夜音はニンマリ笑う。
え......?何その笑顔怖いんですけど?この後何か言われるの?まるで悪いことを思いついた小学生のような笑顔に優はもう5月なのに、身震いをする。
そこでメモ帳に何かメモ帳に書き始めた夏夜音。書き終えたあと、少し考えたかと思うと「はい」という感じで渡された。なになに?と紙を見てみると、
[なんか、良かった]
丁寧で少し角が取れていて無邪気さも感じる文字。
優は気づかれてるよな.....?という疑問が、事実になりつつあることを知らされた。
すかさずもう1枚渡される。
[昼休み、弁当もって体育館横に来て。お話があるの。]
話ってなんだ!?秘密を握って脅されるのか!?金か!金が目当てか!?
「夏夜音さんこれは、「はーい授業始めるぞー」
そこで一限の日本史の先生が入ってきて優の言葉を遮った。夏夜音はそこからほとんどの時間をいつも通り寝て過ごしたが、耳は少し赤くなっていたような気がする。
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昼休み。
言われた通り体育館横に来てみた。彼女は本当に来るのだろうか。優が教室を出る時はまだ寝ていたので、騙されているのではないか?と思っている。そして何より何を言われるのか。今朝のいかにも悪巧みしてそうな笑顔が優の心を揺さぶっている。
影になっている階段に腰掛け、弁当を広げる。
普段来ない場所だから少し気恥ずかしくなって、魔法で影を薄くし、あまり見られないようにする。別に他に人なんていないのだが。
あっ....とここで思い出す。高橋に何も言ってないな。探すだろうか?ま、奴もクラスに友達くらいいるだろうしそいつらと食べるだろう。いなかったらぼっち飯なのはちょっと可哀想だなとか考えていると、後ろから足音が近づいてきた。
「はぁ、あっ、こんなところにいた!来てくれた、んだね!」
どうやら走ってきたのか少し息が切れている。それか影を薄くしていたから探し回ったのかもしれない。
「大丈夫だよ」
その言葉を聞くと、少し安堵したように息を吐き、夏夜音は当たり前のように隣に座り、弁当袋を膝に置いた。少し乱れた髪と、まだ完全に目が覚めていない表情。その全部が「さっきまで寝ていた人」そのものなのに、座った瞬間から場を支配する感じは変わらない。
よいしょという言葉と弁当を開ける音だけがあった。彼女の弁当箱はそれで足りるのか?と思うくらいには小さい。
そしたら不意に話しかけられた。
「……今朝のさ」
来た、と思った。けれど声色は落ち着いていて、あくまで“話題のひとつ”のトーンだった。優は自分のウインナーを掴み、前を向いたまま続きを待つ。
「綺麗だった。ほんと」
夏夜音はそう前置きしてから、
「ちょっと得した気分だった」
「得した」という言葉が意外で、思わずそちらを見る。いつの間にかこちらをじっと見ていた夏夜音の顔は至って真面目だった。
「夢を二度見した、みたいな。朝ってさ、眠くてテンション低いでしょ。それで一瞬だけ、世界が夢みたいだったから。みんなは気が付かないだろうね。」
追及はない。正体を知ろうともしない。ただ、“そう感じた”という事実だけを置いていく。
「....そ、そうだね。バレちゃったんだ.....その話は他の人にしないでほしい...」
「うん、わかってる。私たちだけの秘密ね。」
夏夜音はフフンと何故かドヤ顔をしている。そしてやはりバレてしまっていた......仕方ない。奥の手だ。これが僕の出せる切り札!
「夏夜音さん、なにか奢ります」
「口封じのつもり?じゃあ、今度チョコアイス買ってもらおうかなー」
「.....はい」
「やったー!」
夏夜音は子供のように笑ってガッツポーズをして喜んだ。眠り姫と呼ばれ、普段物静かなイメージの夏夜音とはかけ離れた反応だと思った。
そこで少し間があきしばらくしてから、夏夜音は弁当の中のトマトを転がしながら、ぼそっと話し始めた。
「それでね、あのね話ってのは.....」
え、これから本編?今までのはただの世間話だったのかい?
「授業、最近ぜーんぜん分かんないの!」
そりゃ授業が分からないのは寝ているからじゃん....とツッコミしようとしたところで夏夜音が言葉を続けた。
「分からないっていうより、追いつけない。文字は読めるけど、内容が置いていかれる感じ」
「......?どういう意味?」
「例えるとね、洋画を英語の字幕で見ている感じ。」
なるほど....?的を得ていそうで何か少しズレている例え。
「しかも途中で急に別の話が始まる」
「それはもう映画じゃなくない?」
「でしょ?もう訳わかんない」
「授業中起きてればわかると思うけど...」
「.....っ!そうだよね....」
「どうしていつもずっと寝ているの?夜寝れない?」
ずっと気になっていた。授業中どうしてあんなにも寝ているのか。朝は多少眠いのはわかるが、今日のように昼になっても寝ている時もある。
「.....内緒。女の子には秘密があるんだよ」
夏夜音は肩で優の肩にトンッと寄せてきて誤魔化した。彼女にも何かあるのかな....優はそんな気がした。
弁当の中身がだいぶ減ったころ、夏夜音は急に思い出したように言った。言い出した。
「そうだ....!」
箸を止め、こちらを見る。今度はさっきまでより少しだけ真面目な目をしている……気がする。
「今週の土曜日——うち来て勉強教えてよ」
「……うち?」
聞き返すと、彼女は当然でしょ、という顔をした。
「うん。私んち」
あまりにもさらっと言うから、一瞬意味を理解するのが遅れた。夏夜音さんの家ってことか!?
「え、いや……いいの!?」
「? いいよ?」
首を傾げる。本当に、何も疑問に思っていない。というか、この子は「家に男の人を呼ぶ」というイベントの重さを分かっているんだろうか。
普通、もう少し——こう、段階というか。
「家近いし、楽だし」
理由はそこだった。初めてのアルバイトの面接かな?
「学校だと眠くなるし、静かすぎてもダメだし。うちはちょうどいいよ。多分それに——」
一瞬だけ言葉を区切ってから、
「優くんは何もしなさそうだし。一緒にいると色んなの見れそう」
さらっと。悪気なく。その一言で、色々と突き刺さる。
「……信用されてるのか?それ」
「たぶん?」
やっぱり曖昧。何なんだ、この安心感のなさと、妙な信頼。まだ関わって4日くらいだぞ?確信もないのに人を誘って、確信もないのに受け入れられている気がする。
でも、嫌じゃなかった。
むしろ——。
「じゃ、明日、土曜の昼でいい?」
夏夜音はもう予定を確定させにきている。
「午前は絶対寝てるから」
正直だ。
「土曜日も寝てるのね……それは起きれるのか?」
「それは分かんない」
即答だった。いや分かんないんかい。どうやらこの約束、彼女が起きるかどうかという大きな運要素を含んでいるらしい。
「……じゃあ、今日帰ったら連絡して」
「了解」
軽く敬礼まがいの動きをして、夏夜音は笑った。
こうして優は夏夜音とイソスタとRINEを交換した。
全然重くない。でも、確実に一歩踏み込んだ感じはある。ようやく、知り合い程度になれたような。
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。
「じゃ、戻ろっか」
そう言って立ち上がる夏夜音の背中は、少しだけ軽やかだった。
そして、優の魔法の存在を共有する人が一人増えたのだった。
教室に戻った時に高橋から「どこいった!」というメッセージと、夏夜音から「ウインナー!」と言ってる謎のうさぎのスタンプがスタンプが送られてきていた......
優の魔法
・少しだけ透かして見える
・ものを引き寄せる
・自分の影の形を変えられる(影を薄くすることも出来る)
・幻を見せる
キャラ紹介
深見 優(ふかみゆう)15歳♂︎ 魔法が使える
黒瀬 夏夜音(くろせかやね)15歳♀ 眠り姫
高橋(たかはし)15♂ 優の友達