プログラマー舐めんじゃねぇぞ   作:紅乃 晴@小説アカ

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・力の理由

 

 

や、やくざだ……!

 

目が覚めたら荷物を勝手にまとめられた上に東京に向かう車の中にいました。どうも乾 琢己です。

 

ファイズのアクセルフォームで森に突っ込んで昏睡した俺は、そのまま二人に運ばれ、呪術高専管理下の窓の方が運転する車でドナドナされていたわけだ。

 

ちょっと待ってくれ、なんて言葉を言う前にである。これは拉致なのでは?父も了承しているとやたら機嫌のいい五条の隣にいる夏油くんがそう言ってくれたが、この二人の所業を見ている時点でクズ認定である。

 

地元の呪霊に関しては父が責任を持って対応すると言ってたので、まぁ心配はしていない。

 

あの父は優しげな顔をしているが、俺の作ったライダーギア「スーパー1」を使いこなすフィジカルエリートである。素のスーパー1で一級呪霊を殴り殺した上に、ファイブハンドを解禁すれば特級にも遅れは取らないだろう。

 

それよりも俺は車で4、5時間揺られてやってきた呪術高専の人物……このクズ二人の担任をしているという人物と面会をして、嫌な汗を流していた。

 

威圧感のある体格。短い髪に剃り込み……そのただものではない存在感に黙っていると。

 

「夜蛾正道だ。この二人の担任をしている」

 

低く太い声が腹に響く。

 

横には五条悟と夏油傑。二人は助け舟を出してくれる様子もないし、特に説明もない。なんだってんだこんちくしょう。こちとら急に連れてこられたんだぞぉ。

 

「い、乾琢己です……よろしくお願いします」

 

そう答えると、夜蛾と名乗った相手はじっと俺が持っているアタッシュケースを見ているのに気付く。このアタッシュケースには、俺が作ったファイズギアが一式収納されている。

 

「君のことや、その手に持っていることについては、おおよそのことは報告を受けている」

 

五条が楽しそうに俺にピースを送った。一体どんなことをこの外見ヤクザな人に言ったのか。「俺に手も足も出なかった雑魚です⭐︎」なんて報告していたら今度こそキャンと言わせなければならない。

 

「君は──なぜこれを作った?」

 

「……なぜ?」

 

ふいに夜蛾の視線が刺さる。

まるで嘘は許さないと最初から分かっているような目だ。

 

「報告を聞く限りでも、この力はあまりにも危険だ。術式とは、時に術師自身より呪霊を呼び寄せる。そんな力をどうして生み出そうとしたのか……俺には、その根本を知る必要がある」

 

夜蛾という人物。見た目は筋ものであるが、言ってることは真っ当であり、どこか学校の先生のような公平さも感じられた。

 

真正面から理由を求められるが、別に誤魔化すようなものでもない。

 

「ぶっちゃけ、これといった目的はすでに達成されてるんですよね」

 

五条が「は?」という顔をしたが、構わず続ける。

俺が初めて呪霊と相対した時。同級生を逃して、呪霊を殴り殺したあの日。俺の中にあったのは正義の味方とか、弱き人を助けるとか、そんな理想や義務感に溢れたものじゃない。

 

「達成されている?どういうことだ?」

 

夜蛾の声に、俺はまっすぐと相手を見据えて答えた。

 

「俺は、呪術師である前にエンジニアです」

 

息が乱れ、喉が焼けつくほど叫んだ後。

血まみれの手を見つめて、俺は震えた。

 

呪霊を殴って殺し、そして同級生を助けた。

 

その瞬間、確信が芽を出した。

 

俺にとって呪力とは、ロジックを組む要素の一つでしかない。呪力が少ないなら?弱いなら?なら増幅すればいい。強化すればいい。

 

生得術式?引き継がれる由緒ある術式?そんなものないなら、作ればいい。

 

御三家じゃない?そんなこと知るか。

 

俺は俺のロジックで戦う。

 

だって、前世で見ていたヒーローは。いつだって普通の青年が、自分の手で変身していた。

 

だったら俺も。

この世界で、そうなればいい。

 

キッパリと俺は言い切る。優秀な呪術師とか、天才とか、歴史を変えるとか、そんなことはどうでもいい。

 

「無下限術式とか、呪霊操術とか、生得術式とか、御三家とか、そんなのぶっちゃけどうでもいいですし、興味もないです」

 

他の理由なんて後付けだ。エンジニアっていうものは、究極的に言えば自分の作り上げたものを他者に見せつけて「どうだ、これ以上のものが作れるのか!言ってみろ!」と叫ぶ変態だ。作り上げたものも自慰行為と何ら変わらない。

 

そこに理由なんているか。気持ちがいいから作るんだ。作れるなら作る。より良いものを、より優れたものを。

 

「古臭いレガシーコードにこだわって、それを盾にいびってくるやつが嫌いです。古い血筋だからと威張ってるやつなんて反吐がでる。新しいものを嘲笑い、挑戦もせず、遥か昔から変わらない普遍的なものに酔って威張る。クソ喰らえだ」

 

その言葉に、夏油はわずかに苦笑する。五条家の最高傑作と言われる無下限と六眼を待つ五条悟を前に、よくそんなことを言えたものだと。だが、五条自身が、乾という男を侮っていなかった。

 

相対したからわかる。エンジニアだと宣う奴が作り上げた狂気の産物と、その意味が。

 

「より効率よく、より簡単に、よりシンプルに。一度組んだシステムをドヤってる奴らを凹ませるやつを作る」

 

この世にないものを作るのがエンジニアだ。すでに作られたものは通過点にすぎない。そんなものに何の価値がある。何で命を賭ける意味がある。

 

普遍的な物なんて掃いて捨てるほどあるこの世界で、自分の作りたいものを作り続ける。それが血吐くものであっても、それこそが生きる指針であり……俺の中の本質。

 

「俺は、俺のかっこいいと思うものを作る。それが結果的に人の助けになってるだけです」

 

ついでに人を助けているだけと言い切るぶっ飛び具合に五条は思わず笑い声を上げた。実に独善的に自分勝手で……術師の本質を突いている。

 

「それを悪用するやつがいたら?」

 

夜蛾の言葉に、乾は何の悩みもないような口調で答えた。

 

「俺の技術を盗んでドヤってるなら、そいつを超えるやつを作ってぶちのめします」

 

「はっはっはっ!やっぱりぶっちぎりでイカれてるな、お前!」

 

ついに耐え切らず腹を抱えて笑う五条、隣にいる夏油は呆れたようにため息を吐いた。

 

「うっせーな!その無下限術式もいつか突破してやるから覚悟しとけコノヤロウ!」

 

「楽しみにしてるよ」

 

五条は余裕の笑みで返した。

夜蛾は腕を組み直し、しばし黙考した後、低く告げた。

 

「なるほど。それが……君の本心か。乾琢己。ようこそ、呪術高専へ」

 

そう言われて俺は呪術高専への入学が認められたのだが……そもそも俺はここに入るなんて一言も言ってないんですけど、それは一体どうなるんですかね……。

 

 

 

 

 

「で、こいつがおもしれーやつ」

 

「紹介が雑。やり直して」

 

夜蛾先生にその辺を聞いたのだが、上層部がもう決めたことらしいので逆らうことはできないとのこと。東北出身の俺には関係ないし、そもそも乾家ってそこらへんめんどくさいから距離取ってたのに、なんでそんなことに!?と文句を言ったものの、すでにこちらに来ている以上拒否権はないと慈悲も救いもない言葉のまま、五条と夏油に引き摺られて退室することになった。

 

上層部の奴らが来たら、クリムゾンスマッシュを決めることも厭わないぞクソがよ。

 

で、そのまま連れてこられたのは学校っぽい場所の教室。木製打ちっぱなしの床という、今の小学校でもまだマシな構造をしているのに、時代に取り残された雰囲気の教室にいたのは、タバコを片手の指に挟む綺麗な女性だった。

 

「いや、いろいろ端折りすぎだろテメー」

 

前触れもない紹介のまま話を進めようとするんじゃねぇ、と五条の頭にチョップをしようとしたが、無下限に阻まれちまったよ。いつかぶち抜いてやるから覚悟しとけ。

 

「珍しいね、五条が気にいるとか」

 

「こいつマジでぶっちぎりでイカれてるから」

 

「ぶっ飛ばすぞこの野郎」

 

ニコニコと上機嫌にいう五条に、夏油くんもどこか楽しげな感じだった。ところで呪術高専とはいえ、拉致られた俺は一体何をすることになるんだろうか。

 

「とりあえず当面は呪霊の討伐って夜蛾センも言ってたから、一人か……俺らとペアで行くんじゃね?」

 

「いや適当か」

 

運営方針が雑すぎる。せめて任務看板とか、進捗管理表とか、そういうのを用意しないと誰が何を担当するかもわからんのよ。え?そこらへんは窓の人に丸投げしてる?これだからヨォ。いつか情報間違ってて強敵とマッチングして死ぬのがオチよ?

 

「まぁ入りたてとかそんなもんよ」

 

そんな管理体制ザルな呪術高専のあり方をその言葉で片付ける彼女に俺は首を傾げた。

 

「ところで、そちらの方は?明らかに未成年喫煙を嗜んでるけど」

 

「家入硝子。よろしく」

 

「軽いなぁ」

 

こうして、俺は不本意ながらも呪術高専での生活をスタートさせるのだった。

 

 

 




というわけで久々の更新。

ぶっちゃけ五条と夏油でWがしたい欲もある。
ひとまず次回、ラウズカード、お楽しみに
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