デメリット有りの能力で、可愛い子達を曇らせたいぞ! 作:片桐きな粉
シィヤ=リュードペルは何ひとつとして不自由なく生まれてきたリュードペル家の次女であった。
両親や兄弟の愛を多量に受け、愛されながら成長した普通の人物だった。
ある日ひとつ上の兄が「お土産を貰ってきた」といい、アクセサリーを着け始めた時から、全てが少しずつ狂い始めた。
一瞬、話し方が変わった。
それまで優しい、思いやりのある声だったのが、一時期だけ、湿気がある陰気な声にすり変わっていたのだ。
そのことをシィヤが聞こうとすると「?どうしたんだい?」といつもの声色に戻っていたのでその時は気にしなかったシィヤだったが、気づければなにか変わっていたのかもしれない。
兄の部屋にものが増えた。
魔法に目覚めた、と彼は言い、自分の部屋で練習をするからシィヤはあまり入らないでくれ、と言ってきた。
これまで自分の部屋に来られることはあれど来るなとは言われたことがなかったシィヤは驚いたがそれを了承し、なるべくその周囲に入らないようにした。兄の集中を妨げるのを防ぐために。
またある日、今度は「私の部屋に来てくれ、シィヤ」とこれまで拒否されてきた部屋への招待がシィヤに届いた。
久しぶりに見る兄の部屋には無数の木箱が置かれていた。
「これも私の魔法の1つさ。見てみるかい?」
得意げに彼女の兄は言う。シィヤ自身は魔法を会得しておらず、また女の子ということもありそういった怪我の恐れのあるものを避けられていたのだ。
それを見せてくれると言うのだからシィヤは喜び、是非見せてくれと兄に言った。
兄は満足そうに頷くと、片手を操作してシィヤの周りに半透明な四角い膜を張らせた。
その膜はつついたり、軽く叩いてみたりしても破れることはなく、強度は十分であった
「シィヤ、その空間に私が介入することを承諾してくれるかい?」
兄にしては遠回りな言葉使いで少し戸惑ったが、シィヤはそれを了承した。
その瞬間、シィヤの視界は暗転し、身体中の痛みとともに意識が無くなった。
無くなる直前、兄の顔に邪悪な笑みが貼られていたことには気付かなかった。
「ん...ここは...いだっ”!?」
全身に打ち付けるような痛みが走り目が覚める。痛覚に任せて体を動かそうとするが何かに拒まれ無理やり背が丸まった状態から抜け出すことができない。
真っ暗。うっすらと木の匂いがする空間だった。
「ッ兄様!近くにいらっしゃったらお返事を__」
悶え苦しみたい思いを一先ずおき、先程までいた兄に助けを求める。
近くで声がした。どうやら場所自体は先程と変わっておらず、シィヤは安心をした。
「兄様、いらっしゃるのですね...私をたすけて頂けないでしょうか...っ」
体の何ヶ所かは折れ、力を込めることが出来ないために援助を求める。
この箱の中は密閉されているため、話している最中も自分の息が循環して生暖かい空気が戻ってくるのを感じる。
「__ん?__あぁ、なんだシィヤかぁ。....クックックッ」
あの時に聞いた、兄ではあるが兄とは似つかない声だった。
「貴方...誰ですかっ」
「んー...」
カツカツと靴の鳴音がした後、シィヤを囲む箱に人一人分の体重が乗るのを感じた。
「まさか気付くなんてねぇ...本当に可愛い妹だよぉ...いひっ」
「っ...貴方の妹などではありません!早く私の兄を呼びなさい!」
怒気を帯びる声を上げるが上に乗る男には何処吹く風で聞きやしない。
「このまま私が相手するのも良いが....遠くから観察するとしよう。....さらばだ、シィヤ....ちゃん?」
「兄様はちゃんなんて付けない!ふざけるな!!ふざ..ぃ”っ”」
大声を出すと同時に動いた体に痛みが走り、その後の言葉がつっかえた。
またもや靴の音がなり、今度はその音が離れていく。
どうやら本当に遠くに行ったらしい。つまり___助けが来ない。
「っお父様っ!お母様っ!!だれか!!」
叫べど叫べどその声は届かない。ただ彼女の空間の酸素濃度を奪っていくだけ。
最後の抵抗と唯一動く掌で木の外壁を削り、穴を開けようとする。
爪を使い、それを割りながら光が見えるまで。がり、がりと削る。
意識が朦朧とする中、何日が経ったのか何分経ったのか分からない暗闇の中、その抵抗は静かに終わりを告げた。
「兄さま...だれ...か....」
私たちに近寄ってくる
しっ!こっち来るんじゃありませんよまったく!そんな異常が歩くんじゃありません。
遠くを見ると主人公ちゃん達が立方体型のリングみたいなので蜘蛛と戦っている。ん?あれって....
箱男じゃん!?
箱男。ハコオ。通称の名前でホントの名前は明かされてない。
宝石商の運び屋で任意の空間に指定したものを詰め、許可を得られれば生物も空間移動できるほとんど4次元のポッケみたいな性能してるからボスに重宝されてたやつ。....なんだけどこんな見た目だったか?
首元をよく見てみると....宝石のペンダント。
あー、そういう感じかーと思った。
意思の弱い人間...まあ弱くなくても多少なりとも宝石は影響を与える。多分第3王子に渡った時点で何らかの異常が発生して本人と箱男の精神がぐっちゃぐちゃになってこんなんになってしまったんだろう。確かそんな展開が別なキャラであったはず。
だとしてもこんな凶悪な性能になるとは...いやはや性格の悪い魔法だこと!
てかどんどん近づいてくるんですけど止めてくれませんか!?
ネクロちゃんを引っ張って後ろに後退してるけど速度の問題で追いつかれる。
やっべーーーー!!!
変態がこちらに片手を向けて来る直前、ネクロちゃんが意志を持ったはっきりとした声で、
「あ、あなたは....兄様ではありません!...倒すべき悪なのです!」
また、震える声でそういった。
お、倒しちゃってもいいのか?顕現しちゃうぞ!
口を開こうとした私の口元を覆い隠すように黒色の波が巻き付き、その言葉は出なかったが、
『...とりあえず、ぶっとばしていいんだね?』という言葉には頷いておいた。
「だからどうしたというのだ?力では勝てないのだからまた
「その名前をその姿で呼ばないでください!」
武器を持つ手が強ばる。
警戒は解かない。解けない。
またあの永遠のような暗闇に閉じ込められると思うと体の震えが止まらない。
だけど、目の前には兄を奪ったナニカがいるということを脳裏の記憶が呼び覚まし、動けと命令する。
ナニカは片手を振り上げ、私とカルアさんを取り囲む膜を下ろした。
あの時と同じ感覚。
フラッシュバックした記憶が蘇り、更に震えが酷くなった体に近付いてくる。
「いや、来ないで……」
「んふふ...そんな顔しなくてもいいじゃないかぁ...兄様だぞ?...それじゃあ、もう1回。私がその空間に介入することを承だ____ぶべらっ!」
目を瞑り、痛みと衝撃に耐えようとしても変な声が聞こえただけでなにもない。
恐る恐る目を開け、気配のする方をむくと、兄の姿を借りたナニカが情けない声を上げながら無様に転げ回っていた。