始まりは中国の地方で発光する赤子が生まれたというニュースだった。
今では、報告事例が最初というだけであって、これより前から、個性の発現者自体はいたと言われている。
以降、各地で超常は発見され、今でも原因は判然としない。
いつしか超常は日常に、架空は現実に、
世界の総人口の八割が特異体質者となった超人社会、ある職業が脚光を浴びていた。
それはヒーロー活動だ。
ある世界において緑谷出久と呼ばれる無個性がいた。彼はオールマイトからワン・フォー・オールという受け継ぎ、世界を救った。
しかし、数多ある並行世界の一つ結果だ。
緑谷出久が世界を救う世界は多いだろう。しかし、その道は多くの分岐が存在する。
これはその多くの分岐の物語だ。
終幕の斬撃
「……ッ!」
ヴィランが不快な笑い声を上げながら飛びかかる。その瞬間——
**ドゴォオオン!!**
出久の右手が一気に黒く染まり、鋭利なチェーンソーへと変貌する。それは先ほどの片腕変身とは比べ物にならないほど巨大で禍々しく、エンジン音が耳を劈いた。
「お前……まさか、完全に……?」
驚愕するヴィランに構わず、出久は叫ぶ。
「この街を……みんなの居場所を壊すなら——!」
ギュイイイン!
チェーンソーブレードが唸りをあげる。出久自身の身体が漆黒の装甲で覆われ始めている。顔の半分がすでに溶岩のような赤い目を持つ悪魔の仮面へと変容していた。
「うおおおおっ!!」
彼の動きは一瞬だった。重厚な変身とは裏腹に、風のように俊敏な身のこなしでヴィランの背後を取ると、
**ザシュッ!!**
鋭い音と共に左肩から右腰まで一直線に切断されたヴィランが宙を舞った。致命傷を受けたヴィランは悲鳴を上げる暇もなく地に墜落する。
**ガシャン……**
チェーンソーブレードの刃が止まった時、出久は自分の姿を見下ろした。体の大半がまだ怪物化している。冷たい汗が額を伝う。「
……抑えきれない……?」不安がよぎった刹那——すると黒い装甲がパラパラと剥がれ落ちるように消えていき、元の制服姿に戻っていく。ただ右手のチェーンソーブレードだけは残った。
「ふぅ……」安堵の息を吐いた出久は膝をついているヴィランに歩み寄る。
「……君にどんな理由があったのかわからない。でも……これ以上誰も傷つけたくなかったんだ」静かな口調だった。
ヴィランは血まみれの唇を開く。「お前……本当に“ヒーロー”なのか……?あの力……狂ってやがる……」その瞳には恐怖と諦めが混ざっていた。
「あぁ」出久は右手の刃を見つめながら頷く。「これが今の僕だ。狂ってても……それでも助けたい」
遠くからサイレンの音が近づく。警察や他のヒーローたちだろう。
**バチンッ!**
左手でチェーンソーのスイッチを切ると同時に刃が霧散する。緊張の糸が切れかけた時——
**「緑谷くんっ!!」**
聞き慣れた声に振り向くと、焦燥に駆られた麗日お茶子と飯田天哉が駆けつけてきた。
「無事かっ!?」
「あんた……またそんな無茶して!」二人の心配そうな顔を見てようやく実感が湧く。
「大丈夫だよ」と微笑む出久だが、立ち上がろうとした瞬間、足がぐらつく。疲労と変身の負荷が一気に襲ってきたのだ。
「わっ……!」
よろめいた彼を麗日が咄嗟に支える。
「まったく!ほら行くよ!」
飯田がプロテクター付きの担架を取り出し叫んだ。「ヴィラン確保は我々が!君は休息だ!」
瓦礫の中での激闘から数時間後。警察病院の一室で点滴を受けながら眠る出久の隣には常闇踏陰の姿があった。
「無茶が過ぎるぞ」低い声で呟きながら窓の外を見る常闇。
「だが……確かに“英雄”になりつつあるとも思う」
個性「チェーンソーマン」
元ネタ「チェーンソーマン」「チェーンソーの悪魔」