もしもデクが個性を持っていたら   作:フィル

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013 個性「空間削り」

 

 

 

始まりは中国の地方で発光する赤子が生まれたというニュースだった。

 

今では、報告事例が最初というだけであって、これより前から、個性の発現者自体はいたと言われている。

 

以降、各地で超常は発見され、今でも原因は判然としない。

 

いつしか超常は日常に、架空は現実に、

 

世界の総人口の八割が特異体質者となった超人社会、ある職業が脚光を浴びていた。

 

それはヒーロー活動だ。

 

 

 

 

 

 

ある世界において緑谷出久と呼ばれる無個性がいた。彼はオールマイトからワン・フォー・オールという受け継ぎ、世界を救った。

 

しかし、数多ある並行世界の一つ結果だ。

 

緑谷出久が世界を救う世界は多いだろう。しかし、その道は多くの分岐が存在する。

 

これはその多くの分岐の物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デクは震える指先で地面を握りしめた。目の前に立ちはだかるのは「ファイアーデビル」と呼ばれるヴィランだった。全身から放たれる灼熱の炎は周囲の酸素を吸い込み、息苦しささえ感じる。人々は既に避難させているが、商業施設のガラス窓が熱で歪んでいる。

 

「よそ見してる暇はないぜ英雄くん!」

 

ファイアーデビルの右手から噴出した火柱がデクに向かって一直線に伸びてくる。その速度は常人の目には捉えられないほど速い。

 

「ザ・ハンド!」

 

瞬時に右手から飛び出した漆黒の影が前方の空間を斜めに削り取った。火柱が真空となった隙間に消えていく。

 

「ほう?空間を削り取るか。面白い個性だ」

 

だがファイアーデビルの笑みはすぐに引きつった。デクの動きが急加速する。まるで予備動作なしに移動しているようだった。

 

「縮めている……空間そのものを!?」

 

デクは自分の周囲の空間を細かく削り取りながら移動していたのだ。一歩ごとに距離が縮まり、十歩で敵との間合いはゼロになっていた。

 

「もらった!」

 

デクの右拳がファイアーデビルの胸元に向かう。しかし—

 

「甘いな!」

 

ファイアーデビルの左腕が燃え上がる。接触の瞬間に爆発的な熱エネルギーが放出された。

 

「ぐっ……!」

 

デクの拳と衝突した瞬間、閃光が走り、二人は弾き飛ばされる。

 

(なんて威力……でも—)

 

転がりながらも態勢を立て直すデク。ファイアーデビルも立ち上がり、両手を掲げる。

 

「今度こそ焼き尽くしてやる!」

 

空中に巨大な炎の球体が形成され始めた。それは直径三メートル以上になり続けている。まともに受ければ周辺一帯が焦土化するのは明らかだった。

 

デクは静かに深呼吸した。頭の中で作戦が組み上がっていく。

 

「君は炎を使う時、必ず両腕を開くんだね」

 

「何を言って—」

 

「そして君の弱点も見つけた」

 

デクは突然方向を変え、無関係な方向へ全速力で走り出した。

 

「逃げるのか!?逃げられると思うな!」

 

ファイアーデビルが巨大な火球を放とうとする。しかしその時—

 

「ザ・ハンド!削れ!」

 

デクの左手から放たれたスタンドが、火球ではなく……ファイアーデビルの背後にある壁面の一部を削り取った!

 

「なっ……!」

 

バランスを失ったファイアーデビルは前につんのめる。その瞬間—

 

「縮めて—近づいて!」

 

デクの姿がファイアーデビルの目前に出現した。驚愕する間もなく、デクの膝蹴りがファイアーデビルの顎を打ち抜く。脳震盪を起こしたヴィランは膝から崩れ落ちた。

 

「火を使えば使うほど周囲の酸素は薄くなる。だから君は定期的に大きく息を吸う癖があった。そのタイミングだけは防御が薄いと読んだんだ」

 

気絶したファイアーデビルを警察が拘束していく中、デクはふと自分の右手を見る。ザ・ハンドはまだそこにいた。

 

(この力……どこまで使いこなせるんだろう?)

 

遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。新しい危機が迫っているかもしれないという予感と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個性「空間削り」

 

元ネタ「ジョジョの奇妙な冒険」「ザ・ハンド」

 

 

 

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