始まりは中国の地方で発光する赤子が生まれたというニュースだった。
今では、報告事例が最初というだけであって、これより前から、個性の発現者自体はいたと言われている。
以降、各地で超常は発見され、今でも原因は判然としない。
いつしか超常は日常に、架空は現実に、
世界の総人口の八割が特異体質者となった超人社会、ある職業が脚光を浴びていた。
それはヒーロー活動だ。
ある世界において緑谷出久と呼ばれる無個性がいた。彼はオールマイトからワン・フォー・オールという受け継ぎ、世界を救った。
しかし、数多ある並行世界の一つ結果だ。
緑谷出久が世界を救う世界は多いだろう。しかし、その道は多くの分岐が存在する。
これはその多くの分岐の物語だ。
僕のヒーローアカデミア
緑谷出久は炎の中で膝をつき、震える手で顔を上げた。焼け焦げた制服から立ち上る煙の中、その瞳だけが燃えるように輝いている。ヴィランの大男――コードネーム『ファントム』は嘲笑った。
「クク……ようやく観念したか? どんな不死でも『消滅』までは防げまい」
確かにアンデットアンラックの不死能力は絶対的だ。だがそれは物理的な死のみを拒むもの。超高温で分子レベルまで分解された肉体を再生させるほどの時間は残されていない。緑谷は肺に吸い込む酸素が喉を焼くのを感じながら微笑んだ。
「……ああ、ようやく理解したよ」
彼の声は弱々しかったが、内側から湧き上がる確信に満ちていた。
「不死とは……死なないことじゃない」
閃光が走った。
灰塵の中に緑色の光球が瞬き、爆発的な再生エネルギーが渦巻いた。原子単位で散逸しかけた細胞が逆流するように集まり始め、超新星のような輝きと共に緑谷の身体が復元される。しかし今度は完全に同じ姿ではなかった。
左半身の筋肉組織が異常に発達し、まるで鋼鉄化した鎧のようになっている。右腕には血管のように蒼白く走るラインが浮かび、そこから微かな電磁波が放射されていた
「死ぬことを許されない――それが本当の不死なんだ!」
変貌した緑谷の拳が轟音とともに地面を穿った。衝撃波で周囲の炎が掻き消え、崩れかけたビル群がさらに陥没する。ファントムが絶叫した。
「バカな!? この炎の中で分子レベルまで……なぜ再生できる!?」
「君こそ勘違いしてる」緑谷が踏み出した。変質した左脚がコンクリートを抉りながら進む。[「『不死』は……存在証明そのものを否定する力だ。『自分が消滅する』という可能性自体を否定する力なんだ!」
ファントムが闇の刃を乱射した。漆黒のエネルギー弾が緑谷の全身に炸裂するが――
シュウウッ!
被弾点から湯気のように消えていくダメージ。まるで「傷つくこと」自体が許されないかのように。
「だから!」緑谷の背後に巨大なエネルギー場が形成された。「僕が負ける未来も否定させてもらう」
緑谷の両目が翡翠色に輝いた。空中に展開された無数の光粒が彼の掌へ収束していく。
「『存在確定(オンリーワン・ソリッド)』ッ!!」
放たれた極太ビームがファントムを直撃した。分子分解能力ごと吹き飛ばすような質量エネルギーの奔流。大男の身体が塵芥となって飛び散る───否、その塵一つひとつが即座に新たな粒子となって再結合しようとする。
「ハッ! ハハハハ! 俺の再生も不死だぜ……永遠に繰り返そうじゃねぇかァ!!」
砂嵐のような再生現象。無限ループが始まった。
緑谷が歯を食いしばった。ある似たような力を持つ先達のヒーローの言葉が脳裏を掠める。
**(記憶フラッシュ)**
*『不死者同士の殺し合いほど滑稽なものはない──我々にとって唯一の勝敗は、「相手を認めること」だけだ』*
「違う」緑谷の周囲に青白いオーラが渦巻いた。「これこそが───」
突如、再生中のファントムの核となる「意志の塊」が可視化された。緑谷の変異した右手がそれを掴む。
「君自身の『生きたい』という願望自体を……否定する!!」
パリン!
硝子が砕けるような音と共に、ファントムの身体が霧散した。再生能力そのものが「不死であることを認めた存在」に否定されたのだ。残ったのは塵山だけ。
静寂。
「終わった……?」
息絶え絶えの緑谷が膝をつく。その肩を誰かが支えた。
「良くやったぞ緑谷少年」
オールマイトが満身創痍の笑みを見せていた。「あの時の約束──覚えててくれたね」
「はい……!」
涙が頬を伝う。だが。
「必ず守ります……あなたの……平和の象徴として!」
夕陽に染まる瓦礫の中、少年の決意が空高く響いた。
再生中の緑谷出久
個性「不老不死」
元ネタ「アンデットアンラック」「アンディの不死の否定者」