始まりは中国の地方で発光する赤子が生まれたというニュースだった。
今では、報告事例が最初というだけであって、これより前から、個性の発現者自体はいたと言われている。
以降、各地で超常は発見され、今でも原因は判然としない。
いつしか超常は日常に、架空は現実に、
世界の総人口の八割が特異体質者となった超人社会、ある職業が脚光を浴びていた。
それはヒーロー活動だ。
ある世界において緑谷出久と呼ばれる無個性がいた。彼はオールマイトからワン・フォー・オールという受け継ぎ、世界を救った。
しかし、数多ある並行世界の一つ結果だ。
緑谷出久が世界を救う世界は多いだろう。しかし、その道は多くの分岐が存在する。
これはその多くの分岐の物語だ。
「まだだ!俺は……ヴィラン連合の『破壊屋』だぞ!」
ギガント・バイヤードが必死に抵抗しようとするが、覇王色の圧力に体が言うことを聞かない。
「これで終わりだ!」出久は両腕を大きく振り上げる。
「ゴムゴムの……銃弾(バレット)!!」
拳が連続で発射されるように飛び出し、巨体に次々と直撃していく。ボゴッ!グシャッ!凄まじい音と共にギガント・バイヤードの体がくの字に折れ曲がる。
「ぐああぁっ!?」
悲鳴を上げながら壁に叩きつけられるヴィラン。
「動けなくするだけだ」
出久は静かに歩み寄り、「ゴムゴムの鎖(チェーン)!」と叫びながら腕を伸ばし、巨大な体を拘束するゴム製の鎖を巻きつけていった。
「……終わったよ」
出久が肩で息をしていると、背後から聞き慣れた声がした。
「出久くん!」
飯田の顔に安堵の表情が広がる。
「よくやってくれた……けど無茶しすぎだぞ!」
「大丈夫だって!」
笑顔を見せる出久だが、突然膝から崩れ落ちた
「出久くん!?」「デクちゃん!?」
麗日が泣きそうな声で駆け寄り、三人がかりで倒れ込む出久を支えた。
「無理しすぎだぞ……でも本当に助かった」
飯田の声は震えていた。「オールマイトも間もなく来る!」
「うん……良かった」
出久は意識朦朧としながらも微笑んだ。遠くから「大丈夫か!?」というオールマイトの叫び声が聞こえてきた。
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数時間後。病院の白いベッドの上で出久は目を開けた。点滴が繋がれ、酸素マスクをつけた視界に浮かぶのは——
「デク〜!!」「緑谷〜!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの麗日と、目に涙をためた飯田の顔だった。
「……ごめんね心配かけて」
「ほんとに馬鹿野郎だぞ!」
飯田の怒った声には明らかな安堵が混じっていた。
「でも格好よかったよぉ!」
麗日が飛びついてくる。横では相澤先生が厳しい表情で立っていた。
「勝手に体を張りすぎだ」彼は腕を組んで言った。
「だが……あのヴィランを無傷で捕獲できた功績は大きい。特に『覇王色』の制御は見事だった」
オールマイトがドアから現れた。
「緑谷少年よ!」その姿はいつも通り豪快だ。
「君は今日から新たなフェーズに入ったようだな!」
「ありがとうございます……でもまだ全然ダメです」
出久は照れくさそうに笑った。
「もっともっとみんなを守れるようにならなきゃ」
窓の外では夕陽が輝いていた。廊下からはA組のみんなの声が聞こえてくる。
「退院したらすぐ特訓だぞ!」
「無理しないでね!でも応援してる!」
「なんか食べ物買ってきてあげる!」
出久は彼らの声を聞きながら思った。自分が憧れるヒーロー像とは違う道かもしれない。でも大切な人たちを守れる力があるなら—それだけで十分じゃないか。
「お腹空いたなぁ」
思わず呟くと、仲間たちが一斉に笑い出した。明日もまた新しい一日が始まる。ゴムの力を握りしめながら、出久は確信していた—この道を行こう。たとえどんな困難があろうとも。
個性「ゴム」
元ネタ「ワンピース」「ゴムゴムの実」