最近アルトメギアを組むためにパック回したらいつの間にドラゴンテイルが組めていた作者です。
環境とか全く知らずに組んだけど、もしかしてドラゴンテイル……強い?
「マジたすけて」
「な、なにがあったのよ」
引越しして二日目。冷蔵庫の中身を買いに行って帰ってきた俺は、その脚で美咲の家を訪ねていた。
びっくりしつつも家にあげてくれた美咲は、麦茶を起きながら聞いてくる。
「……ちょっとさ、2人の距離が近すぎるんだよ」
「ち、近すぎる?……ど、どのくらい?」
「もう、ほとんど……って、なにしてんの」
美咲はテーブルを挟んで座ってた俺の方に回りこみ、すぐ隣に座る。え、実演しなくてもいいよ?
「このくらい?」
「……いや、全然」
「ええっ、も、もっと?」
「別に実演しなくてもいいよ。……一言で言うと…」
「ひ、一言で言うと?」
「……ほぼ恋人」
「え、えええええ!?」
だから横で叫ぶなし。耳キーンなったんだけど。
「……それはまずいね」
「だろ?」
その後、美咲に2人の距離感のことをあらかた話した。俺に懐いているといえば聞こえばいいけど、やっぱし俺も男なわけで。毎日これだと身が持たない。
「……だから、美咲から説明してやってくれないか?同性から言われた方がいいだろ?」
「……まぁ、それはいいけど……。…ふ、2人とくっついちゃうとかは…考えてない…の?」
「……ん〜」
俺が悩むと、なんか美咲がすごいあわあわしてる。
「…いや、俺は2人と暮らしていくって決めたんだ。生半可な気持ちで向き合えないよ」
まぁ、昨日ロゼが夜這いしてくるやばい淫夢見たけどね。言わぬが仏。
ただ、これはマジの本心だ。2人には、やっぱり幸せな人生を歩んで欲しい。レイにも確認したところ、まだ2人は恋愛の好きと家族の好きの違いがわかってないみたいだ。だから今のうちに何とかしておきたい。
美咲は安心したように息を吐き、今度はチラチラと俺を見始める。
「…でも、出雲の方はどうなの?……だって、2人ともめちゃくちゃ可愛いじゃん。…す、好きになっちゃったりとか」
「…そりゃ何度もしそうになったよ…。でもだからってどっちかと付き合っちゃったりしたらもう一人が気まずいだろ?」
いやまず付き合える前提がおかしいんだけどもね。美咲は「ふーん、付き合いたくはあるんだ……」とジト目で見てくる。
「いや、ガチの付き合いてぇじゃないって。………美咲にも思ったことあるし」
「へぇあ!?」
「……いや、ガチな反応すんなってば。美人な人とか女優とかを見た時の漠然とした反応見たいなもんだよ」
「でも、美人って思ってんじゃん……!」
「美咲にとっては言われるの慣れっこじゃないの?」
高校では散々言われてたけど?
美咲は「ほんと、そういうとこ…!」とつぶやきながら、俺の肩をでしでししてくる。痛いです。
美咲は、おもむろにに立ち上がり、俺の腕を引っ張る。
「実際にやってみて」
「え?」
「どんくらいの距離感なのかやってみて。あたしがアウトかセーフか判別するからっ。女子大生的に」
「…えぇ、……でもまぁ、お前なら変なことにもならないか。……一応やったあとでセクハラとか無しだからな?」
「そんなの言わないからぁ!……ほらっ」
まぁ美咲ならいいやの精神で立ち上がる。……えっと、どれをやるか…。
「俺がどっち側やればいい?」
「…じゃあ、あたしがレイ達側で」
「おけ、座った俺の脚を跨いで」
「こう?」
美咲んちはソファじゃなくて座布団兼用のクッションなのでそこに座り、美咲が俺の足を跨ぎ、そのまま腰を下ろす。昨日レイにやられたヤツだ。
「……お、重くない?」
「……重いも軽いもお前体重全然かけてねぇじゃん。…ほら」
「ひゃっ」
俺は美咲の腰を持って膝の上に落とす。うん、やっぱりおかしいよねこの体勢。
「…やっぱりおかしいだろ?」
「う、うん。そうだね…」
美咲を見ると、顔が真っ赤だ。やべ、流石に美咲でもこの距離はダメか。
美咲を降ろすと、彼女はあわあわしながら机の向かいに戻った。自分のサイドテールをくるくる弄りながら、俺をちらちら見てくる。
「……な?おかしいだろ」
「うん、こんなの出雲じゃなかったらとっくに…」
美咲も今のレベルが日常的なことに戦慄の表情を浮かべる。
「…えっと、それであたしが2人に言えばいいんだね?」
「ああ。別に普通にお喋りとかもしてていいから。俺他に買うもんあるからまた出るし」
「りょーかい。……後でなんか奢ってよね」
「もちろん」
俺は美咲にお礼を言うと、鍵を渡して立ち上がる。時刻はまだ昼前だから、今から行けば間に合うだろ。
「何買いに行くの?」
「ちょっと、2人にプレゼントを。サプライズだから言うなよ?」
俺がしーっと、人差し指を口に当てて言うと、美咲は何故か深いため息を吐いた。
「……多分、2人がすごい懐いてるのは……普通に出雲くんが悪いと思う」
え、なんで?
買い物から帰ってきたレイとロゼは、なかなか戻ってこない出雲を心配してチラチラと玄関を見る。買い忘れたものがあると言っていたが、3人で行けばいいのにとレイは唇を尖らせていた。
「………出雲、どこいっちゃったんだろ」
「……ああ、こういう時連絡できるものがあればいいんだが」
レイとロゼは携帯端末を持っていないし、この部屋に固定電話もない。つまり彼に連絡するものがないふたりは揃ってため息を吐く。
「……最近、暇さえあれば出雲のことを考えてるように感じる」
「……私も。……なんか、出雲がいないと落ち着かない……」
2人は徐々に、彼に対する気持ちが変化していくのを感じていた。昨日プチ夜這いすら成功させてしまったロゼが顔を赤くして顔をブンブン横に振る。あの時の自分はどうかしていたんだ!と言い聞かせるが、やっぱり変なことには変わらない。
そのまま少し待っていると、玄関で物音がした。がちゃりと鍵が開く。
この家の鍵を持っているのはレイと出雲だけなので、帰ってきた!と2人はいそいそと玄関前まで行く。最早犬である。
そして、空いた扉から入ってくる彼に飛びつこうと……。
「「……え?」」
「うわ、びっくりした。……えっと、おじゃま…します?」
何故か鍵を使って玄関を開けた、お隣さんにして2人の要警戒人物、美咲が顔を出した。
まさかの人物の登場に困惑したレイとロゼ。
それを見た美咲は、玄関前にスタンバってた2人の距離感に内心苦笑い。
自分の推しが家にいて、一緒に暮らしてると知った時はいいなぁとずるいと、そして少しだけ、ちくっとした感触が胸を突ついたが、美咲はちょっとだけ出雲に同情した。
「あはは、ごめんね急に。出雲から頼まれたことがあって。今日は2人とお話に来たんだ」
「お、お話?」
「うんっ、もちろんふたりが良かったらだけど。…いろいろ出雲には相談ししにくいこととかあるでしょ?」
「それは、そうだが……」
美咲の言うことにも一理ある。が、口ぶりからして出雲に直接頼まれて鍵を渡された美咲にちょっとモヤついたのと、そもそもの警戒対象の登場に少しだけ返答が詰まる。
その心当たりが大いにある美咲は、ひとつカードを切った。
「それに、まだ話してないし。あたしと出雲くんの関係とか…」
「!?」
ちょっと挑発的に言われたセリフに、レイとロゼの眉が上がる。確かに気になる情報なので、レイはロゼと頷き会うと美咲を案内した。
「わかったよ。……私たちもあなたと話してみたかったし」
「じゃあ、女子会だね?」
ひとまず、会場は出雲の部屋で行うことに。飲み物とお菓子をテーブルに並べた3人はそれを取り囲んで話し出す。
「…それで、出雲に何を頼まれたんだ?」
「それなんだけどね。……まず2人に聞いときたいことがあるんだ」
美咲は咳払いをすると、2人に向き直る。
「レイとロゼは………出雲くんのこと、好きなの?」
「うん、好きだよ」
「ああ、好きだな」
「即答なんだね」
何を当たり前のことを、みたいな顔で即答した2人に美咲は苦笑い。どういう所が好きなの?と聞くと、2人は顎に手を当てる。
「……私は、笑った顔が好き…かな」
「ほう」
「……出雲って、すごい私たちを気遣ってくれるんだよね。私達が初めての体験をいっぱいして、それを見てる時の笑った顔が…その、凄く……」
レイの、割としっかりした好きに美咲は驚く。その次はロゼが話し始めた。
「私は、…横顔が好きだな」
「横顔?」
「何かに集中してる時の真剣な顔を横から見るのが…好きだ」
「うわぁ、ちゃんと好きじゃん。……えと、2人は出雲くんのことを男の人として好きってことなんだよね?」
2人は美咲にそう尋ねられ、……うーんと首をひねる。
「え、違うの?」
「私たち、そこがよくわからないんだよね」
「なんだろう、レイにも同じことを思ったりすることはあるから……、その人間が恋をするというのとどう違うのかがわからない」
レイは「出雲にも、ロゼにも抱きつきたいよ?」と隣のロゼに飛びつき、「あ、暑いからくっつくなっ」と慌てているロゼを見てとりあえず拝んでおいた。まさかのリアルレイロゼを見れるとは。決闘者にとってはご褒美だ。
内心ニヤニヤしていると、2人はこちらへ向き直る。
「……そういう美咲はどうなの?」
「あ、あたし?」
「私たちは答えたんだ。当然聞く権利はあると思う」
「……うぅ」
美咲は2人に詰められ後ずさり。少しの間口と手をもにょもにょさせると。
「……誰にも言わない?」
「「もちろんっ」」
「……う」
美咲はリンゴのように顔を赤く染めながら、熱を持った肌を覚まそうと手でパタパタ仰ぐ。
そして、それでも熱暴走が止まらず、最終的には自分のサイドテールを持って顔を隠し、目を逸らした。
「……ずっと前から……大好き……だけど…」
「…っ」
そう言った美咲を見て、レイとロゼの顔をボフッと爆発した。勢いで言っちゃった美咲も床を転げまわり、2人も小っ恥ずかしさに顔を手で覆った。
全員顔を覆っているカオスな空間がしばらく続き、ようやく治まってきた美咲は「言っちゃった…誰にも言ったこと無かったのに……」と1人崩れ落ちる。
そこにレイが赤い顔のまま尋ねた。
「……その、美咲の好きって……」
「……恋愛的に…男の人として好きってこと。さっき2人が言った好きとは種類が違うの」
「……ど、どう違うものなんだ?」
ロゼの問いに、美咲の顔がさらに赤くなる。ええい、ままよとストレートに答えた。
「ふ、2人は抱きつきたい…とかでしょ?……あ、あたしは…その、…もっと…」
「も、もっと?」
「……に、匂い嗅ぎたいとか…キスしたいとか……そういうの…」
2人にとって、美咲の言葉は衝撃だった。確かに2人とも出雲の匂いが好きで、くっついた時に嗅ぐことはある。…が、美咲の言った意味はそれらとは違うものだった。
心当たりがあるロゼは尋ねてしまう。
「ほ、他にはあるのか?」
「ほ、他に?」
「…その他に出雲に思う事…とか。してみたいことか…」
「……してみたい、より……されてみたいこともあるよ?………その、出雲くんから抱きしめられてみたいし、……お、お、押し倒されてみたい…」
美咲は1度言ったのが皮切りになり、どんどん彼で妄想していたことを話してしまう。こちとら出雲に恋してる年季が違うとばかりに、高校の頃から一途に想って、果てには拗らせた美咲の欲を聞いて、2人もどんどん質問がエスカレートしていく。
「……その、私たちの好きと美咲の好きって、すばり何が違うのかな…?」
「美咲の話していた好きなところに共感出来る部分があっただけに、今いちわからない」
「え、ええ……?……うーん…」
美咲は考える。彼に抱いているこの気持ち、その執着点はどこだろうと。結婚…は気が早いとして、付き合いたい…というのも抽象的だ。それだと2人に親愛の好きと恋愛の好きの違いを教えることが出来ない。
だから美咲はもっと奥底の、自分の願望MAXで考えた。……それはつまり。
「……えっちしたい、とかじゃないかな」
「えっ!?」
「…っ!?」
「……え、今あたし変なこと言っ……ッ!?」
ぽろりと出た言葉に2人が過剰反応。テーブルに脚をぶつけて悶絶する。美咲は美咲で自分の発言に茹で上がった。
「……う、うう……、で、でもそうじゃんっ?……そこが1番じゃん?…好きな人なら身体を触って欲しいとか思うじゃん!」
「み、美咲は出雲に…その、えっちな事されたいって思ってるの!?」
「……思ってますけど!?…わ、悪いっ!?」
じゃなかったら同じ色の水筒を使って、間違えて持ち帰って飲んでみたりだの、彼とビデオ通話する時にわざと露出の多い服装で出たり、酒を飲んで出雲の部屋に泊まる時に薄着で寝たりなんてしていない。
実際、ただ美咲が拗らせむっつり娘なだけなのだが、ここでの一般論は美咲の話だ。
「だから、たまに肩とか触られるだけでも凄く嬉しいんだよ?……そこでそんなに嬉しいならさ……他のところはとか、考えちゃうじゃん……!」
「………わ、わかる」
「えっ」
「ロゼ!?」
そこで頷いたのがロゼだった。身体に触れられる欲というものに心当たりがある彼女は美咲の言うことが少し理解できる。レイにとっては寝耳に水の話だ。
「………レイも出雲に触られればわかるぞ?」
「……触られ………ぁ、ちょっとわかったかも」
「え、わかったの!?」
まるで出雲にそういう所を触れられたことがあるみたいな口ぶりに今度は美咲が驚く。そういえばさっき実演させられたじゃん!と思い出し、レイとロゼも大概おかしくなってしまっていることを理解した。
「……と、とにかく。家族の好きと恋愛の好きの違いはこんな感じ。……で、やっと本題なんだけど。今日来たのは出雲くんに2人の距離が近すぎて身が持たないって相談されたから」
「出雲がそんなことを…」
「ちょっと話聞いたけど、さすがにちょっと近すぎかなって思う」
懐いてる犬や猫の距離感といえば聞こえはいいが、2人は人間で、それもとんでもない美少女だ。そんな相手が後ろから抱きついてきたり手を握ってきたり、膝に座ってきたら男はひとたまりもない。むしろ出雲はよく耐えている方だ。
そう美咲は説明する。
「……つまり、私たち抱きついたりすると、出雲はドキドキしちゃうんだね」
「そういうこと。だから、2人とも常識的な距離感で…「ちなみに、最終的に出雲はどうなるんだ?」…え?」
よしこれで話を締めれる!と思っていた矢先、もじもじしたロゼに質問される。
「……えっと、私やロゼがもう、ずーっとくっついて、抱きついて。出雲が限界を迎えたらってこと?」
「……ああ。……死ぬわけじゃないんだろう?…美咲、どうなるんだ?」
「……えと、なんて言ったらいいんだろ…」
実を言うと、そんな状況になったことなどない美咲もよくわからない。ただ想像はできるよねと、妄想をしてみる。
───飲み会の帰り、飲みすぎた美咲はそのまま出雲の部屋に泊まることに。酔っ払った美咲はその場のノリで、出雲に抱きつき押し倒す。慌てふためく出雲に言いようのない欲が湧いてきた美咲は、彼の首筋に顔を突っ込んで舌を這わせてみる。
そのまま勢い余って身体を押し付けながら抱きついていると、美咲を退かそうとしていた手が止まり、普段の彼からは考えられないような力で美咲は為す術なく押さえつけられる。びっくりして咄嗟に逃げようとするが頭の上で抑えられた手はビクともしない。そして、自分をみる彼の目が欲望に染まりきっていて。
片手で美咲の両手が抑えられているので出雲のもう片手は自由だ。彼の手がお返しとばかりに美咲の身体を撫でていく。美咲は抵抗する訳でもなく、その手が自分を染めていくのをじっと見て─────。
「……お、襲われるよ?」
「襲われるって?」
「その、多分本当に限界を迎えると出雲に襲われる。……あ、襲撃的な方じゃなくて…その、えっちな方で…」
美咲の言ってることがようやく理解できた2人はほんのりと顔を赤くする。そして昨日自分たちが彼にしたことを思い出し、再び顔を両手で覆った。
「……じゃあ、私たちもその可能性があるって事なのか?」
「そりゃ男だもん。全然あるよ。……だからちょっと気をつけてねって話」
でも、全くくっつくなって言ってるわけじゃないからねと美咲は念押しする。
うーんとこれからの距離感を考えている2人を尻目に、美咲は色々口走ったことに後悔。
「……あの、あたしが出雲のこと好きなのは言わないでね?」
「…うん、もちろん言わないよ」
「ああ」
3人は恋バナ、とは少し違うが、出雲のことを話すうちに少しずつ仲が良くなってきていた。
そのまま3人でお昼を作って食べ、出雲がいるとできない女の子同士の話に花を咲かせる。
「2人とも料理上手だね。前からやってたの?」
「ううん、向こうだと戦ってばっかだったから。出雲の負担を減らせるかなってロゼと勉強したんだ」
「いい子達…」
こんないい子達に囲まれてる出雲がやっぱり羨ましくなってきた。
2人持ち帰ろうとして逃げられていると、部屋のインターホンがなる。出雲が帰ってきたようだ。
「「出雲っ」」
「あっ、2人とも…っていないし!」
インターホンがなった瞬間には玄関にぱたぱたと早歩きで迎えに行った犬2匹に美咲は苦笑い。さっき言った距離感の話をもう忘れてるの?と遅れて玄関に行くと、2人も思い出したのか、出雲に飛びつく1歩手前で踏みとどまっている。
「ただいま。留守番ありがとう」
それだと言うのにこの男は。行く前の自分の発言を忘れたのだろうか。自然に2人の頭を撫でて赤面させている。
そして、本人も今思い出したのだろう。「あ、やべ」みたいな顔で美咲を見る。そんな彼に大きなため息を吐いた美咲は、入ってきた出雲とすれ違うようにして玄関へ。
「……あれ、帰っちゃうのか?」
「うん。話は終わったし、2人とも仲良くなれたし。すごく楽しかったよ?……レイもロゼも、また遊びに来るね」
「うん、今日はありがとうっ!」
「楽しかった」
レイとロゼにとっても、こっちに来てからの初めての同性の友達。手を振ってくる2人に笑顔を返し、外に出ながら出雲も引っ張り出す。
「……ほら、送ってよ」
「隣だろ…」
昨日は送ってくれたじゃんと唇を尖らせると、荷物を置いて出てくる出雲が改めてお礼を言ってくる。
「今日はマジでありがとうな。話してくれたんだろ?」
「うん、2人も気をつけるって言ってた。証拠に出迎えの時大人しかったでしょ?出雲くんが頭撫でちゃったせいで台無しだけど」
「あ、あれはつい癖で…!」
出迎えた美少女2人にの頭を撫でる癖とはこれ如何に。じーっと見つめていると出雲はバツの悪そうな顔をしてそっぽを向く。
「……でも、ありがとうな。今度なにかお礼する」
「……じゃあ今度2人で飲みに行こ?」
「お前また泊まる気だろ」
「今ならレイとロゼもいるし、いいでしょ?」
「まぁ、賑やかなのはいいか」
そんな風に笑う彼を見て、美咲の胸がことりと揺れた。さっき2人にに話してしまったことが頭を駆け抜け、心の奥底に沈んで居た、彼と同じ部屋で暮らしていることへの嫉妬心が顔を出す。
「……ね、出雲くんに嬉しいお知らせと悲しいお知らせがあるんだけど」
「……なにそれ」
「どっちから聞く?」
「…嬉しい方で」
「……2人とも、まだ恋っていうのがなんなのかわからないみたい」
「…あー、まぁだよな。それが嬉しいお知らせ?」
「……だから、あたしは教えてあげました。2人にその気持ちは恋だよって」
「おい!?」
そう、2人と話している間に、美咲はそれを教えてしまっていた。2人ともまだピンとは来ていなかったが、それを外野から、それも実際に彼に恋をしてる人から教えられて、否応にも自覚した。それを聞いた出雲は慌てふためく。
「おま、なんてことしてくれたんだよ!?」
「えー、でもこれで出雲側から手を出してもなんの問題もないけど?」
「いや問題ありありだけど!?何よりあの子ら未成年っ!」
「この世界の人間じゃないしノーカンでしょ」
「コイツ……!……はぁ、で?悲しいお知らせってなんだよ」
「……聞きたい?」
「……まぁ」
美咲は出雲に身を寄せて、囁いた。
「……2人とも、もう手加減しないって」
「……何が?」
「2人は君のことが好きで、出雲もそれは嫌じゃない。……だから、むしろ出雲の理性をぶっ壊しちゃえばいいって考えになったみたい」
「……はい?」
鳩が豆鉄砲食らった顔になり沈黙する出雲。少しするとやっと脳に言葉の意味が届いたのかカタカタ震えだす。
「……え、それじゃあ、今日の話し合いの意味がねぇじゃねぇかよ…」
「意味はあったよ?決議の方向性が違っただけで」
「……せめて止めてくれよ……?」
「やだ」
「え」
美咲は、燻った嫉妬心に点火し、自分の背中を自分で押す。
これまでだったら決してここまで詰めなかった距離。
美咲は出雲の脇から腕を回して、ぎゅっと抱きしめた。一瞬彼の首筋で深呼吸をして、彼の香りと共に勇気を補充する。
「み、美咲?」
「……だって、君の理性を壊す同盟の中に、あたしも入ってるから…」
そういい、自分の唇を彼の頬に押し当てた。
「「……っ!?」」
美咲のハグからの頬にキス。それを少し開けた玄関の扉の隙間から見ていたレイとロゼに衝撃が走る。
「い、いいいま……」
「き、キスした……」
2人は何故かそれ以上2人の様子を見ていられなくなって、部屋に戻る。並んでソファに座り、熱を持った顔を叩いて覚ます。
どれだけ覚まそうとしても、今の光景が頭から離れない。
(……キス…)
美咲によって点火された
今後は私の他の作品も投稿していくので更新が空くことがあると思いますが、エタることは絶対ありませんので気長に落ち下さい。