俺ん家の閃刀姫   作:猫好きの餅

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 ほら、君らがそんなに言うから書いたよエンゲージ版





キスの直後はプレミしやすい

 

 

 

 

 

 

 ───────キス。

 

 親愛表現にして、恋愛する上で避けて通れない恋人の儀式。するところは色々あれど、唇同士のキスは粘膜接触で、特に特別な意味がある。

 

 

 

 

 …………静まり返った部屋に、掛け時計の秒針が刻む音だけが響き渡る。

 

 その部屋の中にいる2人の人間。さっきまでキャッキャと話していた男女の口は、お互いの口でものの見事に塞がっていた。

 

「……ん…」

 

 レイは、確かにキスをねだった。彼の上に跨り、顔を寄せた。…だが、まさかされるとは思っていなかったレイは目の前に映る出雲の顔と、自分の後頭部を抑えた彼の大きい手。そして唇に当たる暖かくて柔らかい感触に、驚いて身動ぎをした。

 

 だが、レイはすぐに強ばった体から力が抜けるのを感じた。見開いた目も次第に閉じて、彼の唇を、キスを味わうように自分からも唇を押し付ける。

 

「…、……ん……っ」

 

 一体どれだけの時間していたのだろうか。実際は5秒くらいだが、レイの体感だとその3倍は長く感じた。唇を離し、レイは熱くなった顔のまま至近距離で出雲と見つめ合う。

 

「…ぃ、いずも…?」

「……ごめん、我慢できなかった」

「……ぇ、あっ、…その、……ぁやまらなくても…ぃいいよ…?」

「…………じゃあ、さ」

 

 レイがしどろもどろになって返すと、やけに凛々しい顔つきの出雲が顔を寄せて来た。いきなりされた1回目は違って、一気に恥ずかしくなったレイは「ちょ、ちょっと待ってぇ…?」と言おうとするが。

 

「…だめ」

「……ぁぃ…」

 

 囁くような彼の声に一気に骨抜きになってしまった。そのまま彼の唇が再度重ねられる。

 

「…ん…」

 

 きもちいい。

 

 ふわふわしたレイの頭の中は快楽で瞬く間に埋め尽くされる。普段は自分たちがアプローチする側に回っていたせいでわからなかったが、レイの守備力は紙同然なのだった。

 

(いずも…いずもぉ…)

 

 先程言ってしまった「だいすき」という言葉。美咲に言われてからはそうなのかなと疑問に持ち続け、彼を見て彼を考えるうちに知らず知らずに答えにたどり着いてしまった、彼に対しての恋慕と言うには生易しい程の恋情。

 

 そんな、最高の感情を抱えた中でするキスは極楽の一言。レイは思わず、彼をもっと求めるように抱きつき、唇を食む。

 

「…ん、……ぁむ…んぅ…」

「……ん、……んむ…」

 

 出雲も出雲で、2人とのお風呂で鉄壁の理性もボロボロにされて、トドメのレイとのベットの上の抱き合いで自分でも気付かぬうちにドロドロに溶かされた。そんな状態で止まるわけがない。止められるわけがない。

 

 2人きりのキスはそのまま朝まで続こうとした。………そう、この家にいるのが出雲とレイの2人だけならぱ。

 

「…ちゅ、……レイ」

「…ん、……うん」

 

 唇を離した2人の頭に浮かぶのは1人。向こうの部屋で寝ているロゼに少し罪悪感を感じてしまった2人は抱き合ったまま見詰め合い、くすりと笑った。

 

「……えへへ、…キスしちゃったね、遂に」

「……さすがに無理だったよ……」

「ロゼにもしないとね。……それとも、私にだけしてくれたの?」

「……そうだよっていったら怒るだろ?」

「うん、よくわかってるね?」

 

 結局、レイは出雲も出雲もだいすきだが、ロゼのことも大好きなのだ。2人を比べてどっちが好きかなんて決められない。これはロゼも同じことを言っていた。

 

 だから、もし幸せになるなら2人1緒がいい。それがレイとロゼの出した結論。もちろんこの国では結婚できるのが1人だけと法律で決まってはいるが、それなら結婚しなければいいと考えは決まっている。

 

「………だから、明日ロゼにもキスしてあげて?……きっと喜ぶよ?」

「……う、うん」

「それに美咲にもしてあげてね?」

「……な、なんで美咲にも!?」

 

 美咲の名前を出すとびっくりした顔をする出雲。この前頬にキスをされていたのだから、気づきはしてる癖に、と頬を突っついたレイは今指で突いたところにちゅっとキスを落とす。

 

「……出雲、実は知ってるでしょ?……美咲のこと」

「…………」

 

 まるで黙秘しますと言いたげな顔でそっぽ向く出雲を見て、レイは可愛いなぁと微笑んだ。

 

 実のところ、とある訳があって美咲と出雲の関係はただの腐れ縁ではなかったりするのだが、それをレイに話すのはアレなので、出雲は黙るしかない。

 

 それでもねぇねぇ〜?と聞いてくるので、出雲はレイを物理的に黙らせた。

 

「…んっ……ん、…ふ………ちゅ…」

 

 突然キスされて、見開いたレイの目が瞬く間に蕩けていく。今さっきまで何を話していていたのかすら忘れてレイは再び出雲に絡みつくように抱きついて、胸や跨ったところを擦り付けるようにして愛情をもう一度確かめていく。

 

「…ぷぁ、…んぅ…いずも、…いきなりずるぃんむぅ…!」

 

 そして出雲は意外と攻めっけがあるタイプらしい。自分からキスすることによってレイがどんどんふにゃふにゃになっていく事に、言いようのない高揚感を感じた。息継ぎの為に顔を離しては、レイが何が言いそうになる度にもう一度口を塞ぐ。

 

 それを気づけば1時間も続けていた。

 

「……やば、やりすぎた…」

 

 腕の中でくてっと脱力して幸せそうな顔で気絶したレイを優しくベッドに寝かせた出雲は、ベッドを背もたれにしてガックリと項垂れた。

 

 遂に、同居人として一線を超えてしまった。傍から見てよく耐えた方だとは思うが、出雲の中にこれからの生活に不安が残る。

 

「……はぁ、これからどうするか……。…そもそも俺とレイとロゼの関係はどうなったんだ?」

 

 恋人、と言うには少し違う今の関係に出雲は頭を掻きむしった。

 

「……そうだ、ロゼにも話さないと…」

 

 流れで忘れそうになっていたが、ロゼにもレイトのことを話さなくてはと出雲は立ち上がる。

 

 夕方にお風呂に入ったので、時刻はまだ20時ほど。様子を見に行ってみて、もし起きてたら話してみよう。そう予定を決めてリビングの方を向き。

 

 

 ───泣きそうな顔でこちらを見ていたロゼと目が合った。

 

 

「…………」

「……っ、……ぐす……」

 

 ちなみにだが、ロゼは30分程前に自分で起き上がった。部屋にレイがいないのを見てベッドから降り、リビングまで来たところに出雲の部屋からレイの甘い声が聞こえた。そしてこっそり覗いて見たところ、出雲がレイをベッドに押さえつけ、キスをしている所をありありと見てしまったという訳だ。

 

 ロゼは何故だか涙が止まらなかった。ふたりがキスをしているのをこれ以上見たくないのに目が離せず、そのまま終わるまで見てしまった。

 

 それを察した出雲は素早くロゼに駆け寄る。ロゼはぽろぽろと涙を零しながら、出雲の胸に縋り着いた。

 

「ろ、ロゼ…、これは……」

「……うぅ、…だめ、なのか?」

「……え?」

 

 ロゼは出雲のシャツの生地を握りしめる。

 

「出雲は、私よりもレイの方が好きなのか…?……私じゃ、ダメなのか…?」

「そんなことないっ」

 

 出雲はロゼを優しく抱きしめて頭を撫でる。撫でられているうちに、だんだんロゼの涙が止まってきた。

 

「…い…ずも……」

「ロゼよりレイが好きとかそういうのじゃないんだ。……ロゼ…」

「……ぁ」

 

 出雲は覚悟を決めるように深呼吸をして、ロゼの頬に優しく手を当てた。そしたそのまま少し上を向かせる。何をされるのかわかったロゼは慌てつつもそのまま目を閉じて顔を傾かせた。

 

「…んっ」

 

 唇って人によって感触違うんだなぁと超展開に軽く現実逃避しながら、出雲はロゼと唇を重ねた。レイのとは違って軽く当てるだけのキス。

 

 ロゼはもっと、もっとと出雲に抱きつきもう一度キスをしてくる。出雲はそれを受け入れながらロゼの頭を優しく撫で続けた。

 

「……んっ…出雲…」

「……ん?」

「………すき」

「…うん」

 

 ロゼはキスの衝撃でぽーっと惚けながらも、そこから溢れた想いが口に出た。自分を見ながらの舌足らずな「すき」は出雲も効いた用で、思い切り赤面している。

 

「……すき、……すき…」

「っ、…ん、…うん、わかったから…」

「…すきっ、……すきぃ…」

「…っく、……わかったってばぁ……」

 

 熱に浮かされたように「すきbot」と化してしまったロゼに、出雲が観念した声をあげる。出雲にキスされた…!と、出雲が顔を赤くしてる…!のダブルアタックで過去最高に機嫌がリミッター解除したロゼは、そのまますりすりと出雲に引っ付いて彼の感触と香りを楽しむ。

 

 出雲と同じくらいレイのことも好きなロゼは、長時間抱き合ってたことによってレイと出雲の匂いが混ざった状態は最高の一言。そのまま夢中で抱きついていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、話を一旦整理しよう」

 

 あれからさらに1時間後。

 

 復活したレイとロゼを前に、俺はカーペットの上に座った。レイとロゼはお互いを見ると次に俺を見て頷いた。

 

「……まず先に。俺たちの関係についてだけど」

「うん……」

「…なんだよ、元気ないじゃん」

「…うぅ」

 

 なんか言いたそうにこっちを見る2人に笑いながら聞き返すと、2人は手をもにょもにょさせる。

 

「………その、……ごめんね…?…私たち、出雲の気持ちを考えないで行動しちゃって」

「……今日は特にやりすぎた」

「…いや、2人謝ることじゃないよ。…どちらかといえば役得だったし、今となっちゃ嬉しい事だから」

 

 事実、嫌なことなんてひとつもなかったし。推しキャラと一緒にお風呂入って、ベッドで抱き合ってキスまでしちゃって。むしろ我慢できなくて手を出して待ったことに罪悪感がある位だ。

 

 俺がそう言うと、2人は嬉しそうな、でも申し訳なさそうな顔をする。……そういう顔されるとさ。

 

「……あーもう、そういうところだぞ」

「……え」

「…出雲?」

 

 俺は君たちのそういう顔を見るとどうしても笑顔に変えたくなるのです。立ち上がった俺は両手を伸ばして2人の頭を優しく撫でた。

 

「……ぁ」

「……ん…」

「2人のそういう…アレはとりあえず気にしなくていいよ。…今から話したいのはこれからのことっ」

 

 俺はしゃがんで、2人に目を合わせながら言う。

 

「俺たち、これからどういう関係で暮らしていけばいいかな」

「……どういう関係…」

「うん、家族か、……それとも、か」

「……」

 

 2人はそのまま黙り込む。……俺の個人的な意見だけど、正直付き合うっていうのもなんかしっくりこない気がするんだよね。3人で恋人なのも変だし。………それに。

 

 俺の頭の中にお隣さんの顔が浮かぶ。なんだかんだ憎まれ口は叩いているけど、こういう時に真っ先に顔が浮かぶくらいには大事な奴だし、恩もあるんだよね。

 

 すると、ロゼが俺の顔を見て見透かした顔で言。

 

「……出雲、美咲のこと考えてるだろ」

「…え、なんでバレたの?」

「美咲と会った時から、出雲の美咲を見る目がなにか違うような気がした。……美咲のことが好きなのか?」

「そ、そうなの?」

「いや、違……くはないんだけど。……色々あるんだよあいつとは」

 

 事実、理性がバーストして流されそうになった時に奴の顔が浮かんだのも事実。

 

 ちょっと待って?……もしかして今の俺ってクソ野郎じゃね?

 

 だって我慢できずにレイの唇を奪っといて、そんでそれを見て泣いてたロゼにキスして、そんで実は美咲が脳裏によぎってたってただのカスやん俺。終わった。

 

 なんかもう一気に罪悪感が膨れ上がってきた。1回死んだ方がいいんじゃね俺。

 

 俺の表情が消え、その場に崩れ落ちた。レイとロゼが倒れた俺に慌てて駆け寄る。

 

「出雲っ、ど、どうしたの?」

「……俺はダメなやつだぁ……誰か俺を殺してくれ…」

「し、死ぬな出雲っ」

 

 いくら2人が俺を好きだって言ってくれたにしてもそりゃねぇだろ。

 

 もはや一発ビンタ食らった方が清々しいレベルの罪悪感に押し潰されそう。

 

 そんな俺を2人で起き上がらせて抱きしめてくれる2人は天使ですか?こういうことされるから俺がどんどんダメになっていくんですよ?

 

「……じゃあひとまず、私たちと出雲はこれまで通りってことでいいよね」

「……あぁ、そもそもどうなろうと私たちが家族なのは変わらない」

「……2人とも」

 

 レイもロゼも俺を見て優しく微笑んでくれた。その顔を見て、心が洗われていく感じがする。

 

「……出雲」

「…ふふ…」

「……ありがとね」

「ううん、私たちこそありがとう」

「…ん」

 

 俺たちはそのまま3人で見つめ合う。嬉しそうな、幸せそうな顔で見てくる2人があまりにも可愛すぎて、さっき墓地へ引っ込んだはずのアホな俺が顔を出そうとする。チェーンして墓穴っ。

 

 俺はこのままだといけない、と2人から離れて立ち上がろうとした。

 

「……よし、…遅くなったけど晩御飯食べようか。お腹空いたで………レイ、ロゼ?」

 

 立ち上がろうとしたんだけど、両腕がそれぞれに引っ張られてそのまま座り直される。そこに、さっきの幸せそうな顔に、ちょっと欲望に突き動かされたみたいな顔をプラスした2人が俺に近寄ってきた。なんでそんな顔してるかわかるのかって?…伏せカードの妨害残してて、いつ発動させようかニヤニヤしてる時の美咲が同じ顔してるからです。

 

「ふ、2人とも?」

「……家族なら、いっぱい抱きついてもいいもんね?」

「…ああ、家族だから…どれだけ甘えても合法だ」

「ちょ、流石に限度はありますよ…?」

 

 もしかして、俺結構やばい選択した?

 

 家族って大名義分のせいで、2人がより止まらなくなったんじゃ…?

 

 そう冷や汗を流している間にも、2人はじりじりと俺に迫ってきた。掴んでいた手も、いつの間にか恋人繋ぎになってるし。……両手捕まってるから逃げられないし。

 

「……えへへ、出雲…」

「……いずも」

 

 あっ、ダメだこれ。

 

 ハナから俺に抵抗の2文字は無い。

 

 

 

 

 直後両側から迫ってきた唇を、俺は甘んじて受け入れるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん、…ふふっ…またキスしちゃった」

「……病みつきになる」

 

 2人が離れたところで、俺はひとつ思い出したことがあった。そのままキスのショックで回らない頭のまま口に出す。

 

「……あ、俺……明日バイト帰りに美咲と呑んで帰るんだった」

「「………へぇ?」」

 

 

 あ、プレミしましたねこれは。

 

 

 

 

 

 

 続く

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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