俺ん家の閃刀姫   作:猫好きの餅

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治療の神ディアンケトのイラストの破壊力えぐい

 

 

 

 

 

「………っ、……えっと……」

 

 どうすればいいの?

 

 静寂、というか状況が飲み込めなさすぎて息もできない。

 

 俺は呆然と、自分の上に落ちてきた2人の少女を見た。……そう、見て彼女達の状態に気がついた。

 

「…って、怪我してる…!」

「……ぅ…」

 

 急展開過ぎて目に入っていなかったけど、2人は全身傷だらけだった。服もボロボロでところどころ破けていて、目に毒と思えない程に痛々しい。

 

「…だっ、大丈夫かっ?」

 

 俺はレイらしき女の子を優しく下ろして肩を揺するが、小さい呻き声が出るだけで目を覚まさない。ロゼらしき女の子の方も見てみるが2人とも同様に目を覚ましてくれない。

 

 病院に連れてこうにも、多分連れてったら大騒ぎになる。2人が本当に閃刀姫なんだとしたら、こっちの病院で治るかもわからない。

 

 俺はとりあえず2人をベッドと来客用の布団に寝かせた。

 

 寝かせたはいいけど、本当にどうしよう。軽く見たところ、今すぐ処置しないとやばいみたいな怪我もないし、骨折とかも大丈夫だった。

 

 だからといって俺が手当するのも……途中で目を覚まされたら多分俺真っ二つでしょ。

 

 どうしたもんかと腕を組んでいると。俺の耳に聞きなれた音が届いた。きゅぴーんみたいな、光が灯る音。なんだと視点を向けると、部屋の隅に置いてあるカードケースが光ってる、え、なになに怖っ。

 

 カードケースを開けると少し古ぼけた遊戯王OCGの束が。これは俺が小学生の頃にテーマもわからずにジャンクの束を中古屋で買ったやつで、あのころはその中から適当にカードを40枚かき集めてデュエルしてたなぁ。なんだかんだ捨てるに捨てれなくてたまに眺めたりしてた。

 

 そして、その中から外枠が金色に光ってるカードがある。そう、まるでゲームで使用可能を示すような感じの光。

 

「……もう驚かんぞ…?」

 

 ちなみにまだ2人が落ちて来てから30分もたってない。故に心の整理もついてないっ。

 

 もう、どうにでもなれの精神で光ってるカードを取り出す。って、これ……。

 

「うわ懐っ」

 

 光ってたカードは2種類で6枚。「治療の神 ディアンケト」と「ご隠居の猛毒薬」でどちらもライフを回復できる魔法カードだ。昔、ただモンスターを出して殴り、魔法カードで回復してた無垢な時代にデッキに入れてたカード。ディアンケトのイラストは衝撃的だけどね。

 

 それが「今使えるよ!」と言わんばかりに光ってる。え、使えってこと?

 

「……でも、どうやって使えば…」

 

 ゲームだったらカードをタップすればいいけど紙だからなんもならない。光るなら発動マークくらい出ろよとは思って指でつついたり振ったりしてみても、何にもならない。

 

「……ってことは……。"手札から魔法カード、「治療の神ディアンケト」を発動"……っていけるんかいっ!」

 

 口で発動を宣言してみたらカードが光り、その光がレイとロゼを包み込んだ。光が収まるとちょっと傷が消えて、顔も安らかになった気がする。

 

「……こ、これで2人を治せるってこと?」

 

 見ると、残りのカードもまだ使えるようだ。今度は「ご隠居の猛毒薬」を発動してみる。自分を回復か相手にダメージを選ぶこのカード。口で自分を回復を宣言してみたら、レイとロゼの傷がまた消える。

 

 俺は残りの4枚も全て使った。2人の怪我が治るのが嬉しくて、夜の時間にカードの効果を叫ぶっていう珍妙な状況だけど、それだけ傷だらけの推しが治るのが嬉しかったんだ。

 

 そうしてぜんぶで6600ポイント回復し、2人の傷が完全に消えた。苦しそうにしてた表情も和らぎ、安らかに寝息を立てている。

 

「……よかった」

 

 なんか力が抜けた俺はその場に座り込んだ。とりあえず何とかなった。あとは2人が目を覚ませばいいけど。

 

 ひとまず布団をかけておこう。ボロボロの服をそのままにしておくのはアレだけど、俺が触るのはもっとダメだ。

 

 そこまで考えたところでやっと気持ちが落ち着いてきた。意味不明なランクマッチから始まって、閃刀姫2人が何故か怪我して落ちてきて、なんか魔法カード使えて。マジでどういうことなんだ?

 

「………目を覚ましたら、どうしよ」

 

 目の前に推しが気絶して落ちてきて、起きた推しとそのまま普通に話せるファンがいるなら教えて欲しい。それとこの状況をどう説明したものか。もしかしたら2人をこっちに呼んだ原因は俺にあるかもしれないし、そもそも2人が俺のデッキのレイロゼなのか確証も取れないし。

 

 時計を見るとガッツリ夜。誰もいない部屋で目を覚ましたら困惑するだろうし、このまま待つしかないか。

 

 お腹すいてるかもれないし、なんか用意しとこうと米を炊いたり色々してると、俺の部屋から声が聞こえたので顔を出す。

 

「…あれ、……ここは……」

「……えっと、目が覚めた?」

 

 見ると、レイが目を覚ましていた。むくりと起き上がり辺りを見回しているところに声をかける。彼女は俺を見て目をぱちくりさせる。

 

「……えっと、あなたは?」

「ここの家主、かな。…倒れてた君たちを保護したんだけど…君の名前は?」

「私はレイ、こっちはロゼだよ。…とりあえず、助けてくれてありがとう。…あなたはカーマのAIなの?貴方みたいな精巧な見た目のタイプは見たことないけど…」

「……あー、まぁそういう反応だよね」

 

 うーん、ロゼが起きてから話そうと思ったんだけど……。

 

「……えっとね、実は俺も人間なんだよね」

「……えっ!?……人間ってあなたが!?」

 

 レイは文字通り飛び起き、俺の両肩を掴んでくる。この時目の前に来たレイに可愛いって思っちゃった俺を誰か殴ってくれ。

 

「で、でもこの星に私とロゼ以外の人間は居ないんじゃ……」

「うん、そうなんだけど。ここは君たちが戦ってた星じゃないんだよ」

「……え…………あ、……そっか……だから…」

「思い当たる節でもあったの?」

 

 レイは頷く。とりあえずレイとの距離を離して聞いみると、それを説明しようとして口を開け、頭をかいた。

 

「その、…私たちの事は、知らないよね」

「…あー、いいや言っちゃうか。君たちのことはよく知ってるよ。閃刀を使うんだろ?」

「知ってるんだ…」

「なんで知ってるかは長くなるからとりあえず君の話から聞こうかな」

「……うん、じゃあ───」

 

 レイの話によると、レイとロゼの2人は敵国「スペクトラ」との最終決戦の最中だった。

 

 聞いた感じ、多分OCGの方の世界線なんだと思う。カーマとスペクトラはお互いの閃刀姫の導入によりほとんど共倒れの形で壊滅。その中ロゼのクローンで作られたアザレアとカメリアがスペクトラを乗っ取った。

 

 そうして閃刀姫同士の戦いへ突入し、ロゼと2人で閃刀兵器H.A.M.P.を倒して、アザレアとカメリアを倒して、最後に2人が乗ったS.P.E.C.T.R.A.を合体術式エンゲージ・ゼロで倒したまではよかった。

 

 しかし、あまりの戦闘の激しさに戦っていたビル街は崩落。連戦に連戦を続けたせいで2人まともに動けない。そんな中で、2人は一か八かをかけてゲートの中に入ったんだそうだ。

 

 閃刀姫のゲートは元来閃刀の装備を転送するもので、それの転送先を完全にランダムにして飛んだら、恐らくそれに近いデュエルをしてた俺の方に来たと。

 

 まぁ俺は俺で意味わからん状態だったけどね。あのスペクトラチーターが偶然だとは思わないし。

 

 話を終えたレイは自分の身体を見回す。

 

「……そんなわけだけど…、私たちの怪我はあなたが治してくれたの?」

「うん、俺が自分でってわけじゃないけどね」

「そうなんだ。………その、本当にありがとう」

 

 気にしないでと返していると、ロゼから呻き声が聞こえた。

 

「…ロゼっ!」

「怪我は治ってるとは思うけど…」

 

 レイが駆け寄って優しく揺すると、ロゼはゆっくりと目を開いた。

 

「…レイ…?」

「ロゼっ、大丈夫?…痛いところない?」

「……身体は大丈夫だ。……ここは」

 

 レイは起き上がったロゼに今の状況を話した。俺が人間だと知った時には疑い深そうな目を見てきたが、かさぶたの後とか古傷とか見せたら信じてくれた。

 

 本当は血を見せた方が早いから針でつついて見ようとしたんだけどレイが首をブンブン横に降ってたのでやめた。

 

 起き上がったロゼは、ベッドに座るレイの隣に腰掛けた。ナチュラル距離近なのが尊い。

 

「……それで、お前は人間で別の星だと言っていたな。何故私たちのことを知っている?」

「…それは、これを見て欲しい」

 

 俺は2人の前にタブレットを差し出す。やっぱりと言うかなんというか、さっきのデュエルではランクマッチで勝利扱いになっていないようだった。マスターデュエルのロビー画面を見た2人は目を見開く。そこに写ってるのはシザークロスの壁紙で。

 

「これ……」

「私…たち?」

「ここ、地球って星の人間の札遊びができるゲームだ。実際に紙で出来たやつもある」

 

 そういい、俺は2人にデッキを見せる。自分が書かれたカードがあることに驚いているレイとロゼに言う。

 

「2人は俺の世界だとカードになっていた。この遊戯王ってカードゲームで戦えるモンスターカード。だから君たちのことも知っていた」

「……だから、あんまり驚いてなかったんだね」

「まぁな。………で、情報交換が終わったところでさ」

「なに?」

「一旦その、見なりを整えた方がいいよなって。傷は治ったけど服がボロボロだし」

 

 2人の服装は激しい戦闘の跡でボロボロ。幸い際どい感じにはなってないけど、知らない人がみたらギョッとするくらいには破けてる。

 

「…確かにな。状況が変わりすぎて忘れていた。着替えはないのか?」

「あるにはあるけど、俺のだから大きいな。聞くって事は2人は持ってないのか」

「うん……最後の戦いって、思ってたし」

「…そっか」

 

 そうか、俺は画面の上から眺めてただけだけど、彼女達は本気で戦ってたんだもんな。

 

「……その、安全地帯で見てただけの俺に、遠い別の世界の人間に言われるのはアレかもしれないけど」

「…?」

「どうしたの?」

 

 俺は真剣な顔で、今まで頑張ってきた2人の推しに頭を下げた。

 

「…ありがとう」

「……!」

「……な、なんであなたがお礼を言うの?」

「言いたかったから。俺、君たち閃刀姫を凄い尊敬してたんだよ」

 

 俺は頭を上げて2人を見る。これは本心からの言葉だ。いつか、本物の閃刀姫に会えたら言ってみたかった。俺の言葉にレイとロゼは「ど、どういたしまして…?」と首を傾げながら返した。

 

「だから、……お疲れ様でした。2人はこれで一応戦いから解放されたってことだよな」

 

 レイは頷く。

 

「…うん、スペクトラもカーマも滅んじゃったから。……私たち、これからどうしようかな?」

「…そもそも、ここは私達の星じゃない。それに向こうへの戻り方もわからないし、戻ったところであそこには何も無い」

 

 そう言った2人はちょっと肩を落とした。戦いに勝ったはいいけど、そこからすることが無いのは可哀想だよな。

 

「……その、さ。……2人がもし良かったら、こっちの世界で暮らしていかないかな?」

「……いいの?」

「いいのって言うか、多分選択肢的にこっちに残るしかないでしょ?」

「……でも、私達に行くところは」

「見つかるまで、ここで過ごせばいいさ。ここで会ったのも何かの縁だし、協力するよ」

 

 レイとロゼは少し悩んでいるようだった。無理もないよね。今まで戦い尽くしだったし、いきなり住む世界が変わるんだ。特に戦うために生み出されたロゼは俺の言葉を飲み込み、よく考えているようだった。

 

「……わかった。世話になる」

「ロゼ…」

「どの道私たちに選択肢はない。ひとまずここで体勢を立て直した方が後々どうするにしてもプラスになる」

「…そう、だね。……えっと、出雲さん?…ここでお世話になってもいいかな?」

「……ああ、もちろん。あと俺は呼び捨てでいいよ。これからよろしくな」

 

 正直なところ、推しと生活できるなんて緊張よりも嬉しさが上回る。本当は飛び上がりたいところを抑えて返すと、2人は頷いて安心したように微笑んだ。その顔は俺に効く。てぇてぇ。

 

 話が纏まったところで、とりあえず2人をお風呂に入れることに。もちろん入れる前にめちゃ入念に掃除した。推しが入るので当然だ。着替えは買いに行く時間もないので申し訳ないが俺のやつを貸す。ただ2人と身長差が結構あるのでオーバーサイズになりそうだ。

 

 仲睦まじく2人で入って行った彼女達を見送り、ぽすっとソファに座った俺はこれまで状況を整理する。

 

 えーっと、遊戯王を楽してんでたら訳分からんデュエルが始まって。

 

 なんとかそれに勝ったら、女の子が2人落ちてきて。

 

 で、その女の子が俺の推しで(ここ重要)。

 

 で、なんやかんやで俺の部屋に住むことに(イマココ)。

 

「……うーん……」

 

 いや、……え?

 

 誰か助けてほしい。

 

 今、俺の中で「どうなってるんだぁあああ!?」と「っしゃあアアア!!」が同時発生してる。

 

 推しと暮らせるのは嬉しいんだけど、突然そうなるとやっぱり心の準備というか、その、色々あるだろっ!

 

 実際、向こうから聞こえる楽しげな声とシャワーの音が俺の精神が着実に削る。

 

 ぅぅ、せめてレイとロゼの前ではちゃんとしてないと…。こんな頭抱えて、耳を塞ぎつつも風呂場の方をチラ見してる姿なんか見せられない。あと何チラ見してんだ死ね俺。

 

 こうじっとしてると変なことばっか考えそうだ。俺立ち上がると、お湯を沸かして手をしっかり洗い、海苔を用意して塩を手にまぶす。さっき炊けた米を手に乗せて手早く握り、おにぎりを2つずつ作った。あとインタントで申し訳ないけど味噌汁を作る。

 

 そうしていると、風呂場の扉が空いた音がした。バッとそっちを見た俺の頬を自分で引っぱたいてると、湯上りで火照った顔のレイが顔を出す可愛い(条件反射)。

 

「あの、お風呂ありがとう…」

「どういたしまして。ロゼは?」

「今、髪を乾かしてるよ」

 

 そっかと返すと、レイは俺のほうに寄ってくる。今の彼女の格好は俺のTシャツとハーフパンツ、腰で紐を縛るタイプなので不意に脱げたりはしないと思うが、オーバーなシャツから見える首筋が十二分に破壊力がある。

 

 俺は爆速で手元に目線を戻した。

 

「何してるの?」

「2人とも起きたばっかでお腹すいてるかなって思って。簡単なもので悪いけど」

「え!…ううん、全然そんなことないよっ、ありがとう」

 

 お盆に乗せた2人分のおにぎりと味噌汁をレイに渡していると今度はロゼが顔を出した。

 

 髪は下ろしたままで、流石に俺のじゃサイズが会わなすぎたのかTシャツいっちょで目に毒すぎる。俺、もう向こう見れねぇなぁ。

 

「……ん」

「…ロゼ、出雲がご飯作ってくれたよ?」

「……感謝する」

「どういたしまして。口に合えばいいけど…」

 

 ソファの前のちゃぶ台にお盆を置いて隣会って座った2人はおにぎりを小さく1口、多分お米自体初めて食べたんだろう。でも、口にあったのか、2人は夢中になって食べだした。

 

 あのロゼですら顔を紅潮させておにぎり食べてんのがクソ可愛い。写真撮りたい。

 

 2人は程なくして食べ終わり、味噌汁を飲んでほぅと一息ついた。

 

「口にあったようで良かった」

「…うん、すっごく美味しかったよ…」

「あっちの食べ物とは次元が違う」

「そりゃ良かった。……今日は遅いし、ひとまず寝て、これからのことは起きてから考えようか。住むなら色々買わなきゃいけないものもあるし」

「…その、何から何までありがとう」

 

 頭を下げてくるレイに気にしなくていいよと返す。じっと見てくるロゼと目が合った。多分、まだ俺を警戒してるんだろう。仕方ないかと苦笑して2人にお茶を渡す。それも美味しかったようで一息で飲み干したロゼが、ちょっと恥ずかしそうにそっぽを向いてたのが可愛かった。

 

「2人はそっちの布団とベッドを使っていいよ」

「え、でもそうすると出雲の寝床が…」

「俺の分はまだこっちにあるから大丈夫。……じゃ、俺向こうの部屋にいるから、何かあったら声掛けてね」

「…うん、……あ、待って?」

 

 俺がそう言って扉を閉めようとすると、レイとロゼに呼び止められる。

 

 見ると、レイがお礼を言ってきた。

 

「…本当に色々ありがとう。あなたがいなかったら私たち、どうなってたかわからなかった」

 

 隣のロゼもこくりと頷く。

 

「別に、人として当然のことをしたまでだよ」

「……ふふっ、最初に会えた人間があなたで良かった」

 

 あっぶね涙でそう。

 

 なんとかして微笑み返し、扉を閉める。

 

 一人暮らしの俺の部屋に、来客用の布団が何個もあるわけないので、俺はコーヒーを入れてソファに座った。

 

 多分このことを言ったら2人でひとつの布団を使うから貴方もベッドで寝てとか言いそうだったし、2人は戦い明けで疲れてるから、なるべくちゃんと寝かせてあげたかった。まぁ、これも推し民の務めですから。

 

 

 

 

 

 夜が更ける中、俺はコーヒーを飲みながら、明日の予定を考えるのだった。

 

好きな閃刀魔法

  • エンゲージ
  • リンケージ
  • マルチロール
  • エリアゼロ
  • アフターバーナー
  • ジャミングウェーブ
  • ベクタードブラスト
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