俺ん家の閃刀姫   作:猫好きの餅

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本編進めますっ。


飲み会は、二次会へ向かう道中がいちばん楽しい

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────じゃ、かんぱーい!」

「乾杯!」

 

 笑顔の美咲の声が響き、個室の席でグラスが合わせられる音がする。

 

 バイト先のカフェからバスで少し行ったところにある個室制の焼き鳥居酒屋に入った俺たちは早速1杯目の酒を飲み干した。

 

「……っはぁ〜!……生きててよかったぁ」

「それ毎回言ってるよな」

 

 タンプラーに入ったレモンサワーを半分ほど飲んだ美咲は恍惚の表情を浮かべる。そんな彼女を見ながら、俺は乾杯後のひと口で8割減らした生ビールの残りを飲み干し、次のお酒を席に備え付けてあるタブレットで注文する。

 

「あんまり呑みすぎるなよ?」

「あたしよりペース速い人に言われたくないんだけど…。……酔っ払ったら出雲くんが介抱してくれるんでしょ?」

「今はただ隣の部屋にぶっ込むだけだからね。前よりかは楽だよ色々と」

 

 前の家の時は酔い潰れたあとにそのまま俺ん家に泊まって帰ることが多いんだけど、こいつ酔い覚めてるのに家に居座るからね。酔うことは酔うけど回復が早いタイプだ。

 

 ちなみに俺は親の遺伝で結構強い。別にペースとか考えなくても最後まで呑み続けられるし、お酒好きにとってはとてもありがたいな。

 

「……そういや、ここ気になってたって言ってたけど」

「うん、個室で落ち着けるし、創作の焼き鳥がすごく美味しいんだって」

「へぇ〜、…てかお通しから上手いんだけど。野菜ってこんなに美味かったっけ?」

 

 お通しで出された人参やらラデッシュやらを味噌につけて食べると瑞々しくてめちゃくちゃ美味い。美咲もパプリカに味噌をちょっと乗っけて齧って笑顔になってる。

 

 美咲は今齧ったパプリカを見てそういえばと俺に聞いてきた。

 

「…そういえば、レイやロゼって好き嫌いあるの?」

「……そう言われると今ん所ないかも。まだ細かい野菜とかは食べてないからわからないけど」

「へぇ〜、ロゼとかゴーヤ嫌いそうなのに」

「ゴーヤは俺がきらい」

「聞いてない」

 

 確かに、今までなんでも美味しい美味しいって食べてくれるから、そこん所考えたこと無かったかも。もしかしたら無理して食べてるとかもあるかなって考えたけど、そういや最近ご飯作ってくれるのあの二人だったわ。いつもありがとうございます。

 

 そんな会話をしていると、頼んでいた料理が来る。焼き鳥はまだ焼いている用で、先に軽いサラダやつまめるおつまみ、そしておかわりのお酒が届いた。

 

 俺たちはそれに舌鼓を打ちながら会話を続ける。美咲は長芋の醤油着けをぱくりと食べ、うっとりとしてから俺に聞いてくる。

 

「……で、昨日2人となんかあったでしょ」

「う」

 

 さすがに気づいてますよね。というか隣から俺たちが風呂入ってる声聞こえたって言ってたし。昨日の風呂を思い出す限りアウトな事しかしてないな俺。逆になんで耐えれたんだろう。

 

 目を逸らした俺を見て、美咲の目が鋭くなる。彼女は、グラスを掴むと席を立った。

 

「さ、キリキリはいてよねっ?」

 

 そしてそのままずんずん歩き、俺と隣へ座ってくる。呆気にとられてた俺は個室の角と美咲に挟まれてしまった。

 

 デニムのショートパンツから出た太ももや、肩。バスの時にも当たったでっかいのが俺の身体にぶち当たり、確かなダメージを与えてくる。レイとロゼにくっつかれてそこら辺耐性がついてると思ったのに、美咲は別みたいだ。

 

「…………わ、わかった。話すから…ちょっと離れて」

「……ちょっとだけね」

「ほんとにちょっとだなおい」

 

 ほぼ腕を組んでた距離から肩が当たるくらいになった美咲に、俺は何から話そうかと悩む。客観的に聞くとただ俺がカスなだけだし…。

 

「……そ、そんなに言いたくないの…?」

「え、あいや、そういう訳じゃなくて…」

「……言えばいいじゃん」

「……え?」

 

 美咲は俺のシャツの裾を掴みながら、俯いて言ってくる。俺が聞き返すと、おもむろに手にしたグラスに口をつけて酒を一気に飲み始めた。ぷは、と息を吐き空になったグラスを卓上に置いた美咲は、さっきより赤くなった顔のまま俺に言う。

 

「レイロゼと付き合ったって、彼女できたっていえばいいでしょぉ!……うぅ…!」

「え!?」

 

 ちょ、なにか勘違いをしてないか?

 

 ……い、いや、昨日のあのシーン聞かれたら勘違いもするけども!

 

 俺は涙目で睨んでくる美咲に弁解を図る。

 

「…い、いやっ、俺、レイロゼとは付き合ってないよ…?」

「…うそ、だって昨日一緒にお風呂入ってたじゃん…!」

「あれは水着で入ったんだよ。俺が入ってるところに水着で突撃してきて、それで…」

 

 さすがに水着も全部脱いで洗いっこしましたとは言えねぇ。

 

 ただ、美咲の勢いは少し落ち着いた。

 

「……ほんとに?……付き合ってないの…?」

「…うん。どっちかと付き合うわけにもいかないし、2人と付き合うのもアレだし……今までと変わらない家族ってのに落ち着いたよ」

 

 そこまで説明すると、ようやくわかってくれたのか、美咲が離れた。おかわりの酒を頼みながら、ジト目でこっちを見てくる。

 

「……なんすか?」

「……わかってるくせに」

 

 タブレットを置いた美咲がもう一度距離を詰めてくる。さっきの一気が効いているのか赤い顔を俺に近づけながら、頬をふくらませた。

 

「…付き合ってないのは聞いたけど、でも色々あったんだ…」

「…まぁ、…うん」

 

 正直、2人の唇の感触は今でも鮮明に思い出せる。風呂も大概だけど、キスしちゃったんだもんなぁ。

 

 何から話そうかと迷っていると、席の戸が叩かれて、頼んだ焼き鳥と酒が届いた。卓上に所狭しと並んだ焼きたての串物や、キンキンに冷えたおかわりの酒をに視線が行った俺たちは、とりあえずそれぞれグラスを持った。

 

「……ひとまず、食べながら話そ?」

「お手柔らかに…」

 

 多分、全部話すことになりそうだ。心の中で2人に謝った俺は、美咲とグラスをかちりと当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………出雲、今頃美咲と呑んでるよね」

「そうだな」

 

 仰向けの体勢から視線を横に向けて時計を見ると、18時を少し過ぎたところ。彼が出発して9時間も経ってしまえば、昨日大躍進を遂げたこの2人の出雲依存性患者も禁断症状が出てくるというもの。

 

 時計を見ながら呟いたレイに頷いたロゼも、心做しか寂しそうに掛け布団を被って息を吸い込んだ。レイもそれに習ってロゼの隣で掛け布団に残る彼の香りを嗅ぐ。

 

 さも当たり前のように出雲のベッドでお昼寝をかましていた閃刀姫2人は、今頃美咲と呑みを楽しんでいるであろう彼を想像して深いため息を吐いた。

 

 これまでなら多少彼が離れていても我慢できた。……しかし、もう事情が変わったのだ。レイとロゼが彼に抱く感情は昨日までよりも更に強くなっている。

 

 というわけで家事諸々を終わらせたあと、出雲不足に陥ったロゼが出雲のベッドで1人でもぞもぞしているのを発見したレイも釣られて彼のベッドに入ってそのまま眠ったという流れだ。

 

 ふたりからしたら欠乏症のため必死に彼の匂いを取り込んでいるのだが、傍から見たらただの変態である。

 

「……お風呂入ろっか」

「……ん、そうだな」

 

 4時間ほど寝てしまったお陰でベッドには自分たちの香りが着いてしまい彼の匂いが薄くなりつつある。潮時かと彼のベッドから抜け出した2人は揃ってお風呂に入ることにした。なんだかんだ引っ越してから別々で入っているのでふたりで入るのは久しぶりだったりする。

 

 脱衣所で服を脱ぎながら、2人は今朝のことを思い出す。主に唇に残る感触が強く記憶に残っていて、レイは無意識のうちに自分の唇を指で撫でていた。

 

「……キス、しちゃったね」

「……ああ。……してしまった」

 

 ロゼも同じ気持ちのようで、頬を朱に染めながら口元を手の甲で隠した。軽くちゅっとやっただけのレイがこんなになるのだ、ぶちゅっと行ったロゼは大変なことになっているだろう。

 

「…帰ってきたら私もロゼみたいに長くしよっかな」

「……レイは昨日沢山キスしたんだろ?…それも出雲の方から」

「……えへへ……あれはやばかったよ…?気絶しちゃったもん」

「……ずるいぞ…」

 

 そんな感じで彼とのキスエピソードを話しながら服を脱ぎ去った2人だが、ロゼの身体を一月振り位に見たレイはあることに気がついた。

 

「……あれ、…ロゼ…?」

「どうした?」

「ちょっと大きくなった?」

「ほんとうか!?」

 

 レイか指さしたのは、ロゼが出雲に日夜マッサージされている所。毎日見てる自分だと実感が湧きにくかったロゼは、自分で自分の身体を見下ろす。

 

「…た、確かに最近ブラがちょっとキツいなと」

「うん、ちゃんと成長してるみたいだよ」

「……マッサージの成果だ…!」

 

 出雲の理性の大半と引替えに大きくなった胸に、ロゼは目が輝き出す。

 

 めちゃくちゃ嬉しそうなロゼを見て、レイは羨ましそうに自分のモノを持ち上げた。

 

「……いいなぁ」

「…レイはもう大きいだろ?」

「そうじゃなくて、……その、……出雲に…」

「………まぁ、……その、なんだ……。……いいぞ」

 

 ちなみにマッサージはレイが風呂に入っている間に行われ、彼の理性がワンキルされたりされなかったりしている。その時のことを思い出したロゼがモジモジしながら言うと、レイは唇を噛んだ。

 

「羨ましいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

「……ん、……意外と入れるな」

「結構大きいよねここのお風呂。……って昨日2人で入れてたじゃん」

「確かに……昨日は……それどころじゃなかったんだっ」

 

 服を脱ぎながらの取っ組み合いもそこそこに、身体と髪を洗った2人は湯船に身を沈めて息を吐いた。

 

「…ね、ロゼ〜、この後何する?」

「……ん、…出雲は9時くらいに帰ってくるんだっけか」

「そうは言ってたけど…」

「……ちゃんと、帰ってくるのか?」

「…大丈夫だと思うよ?……帰る時連絡するって言ってたし」

 

 レイは一旦休むために立ち上がり、浴槽の縁に腰掛けた。レイの雫が滴り落ちる凸凹がはっきりした綺麗な身体に一瞬目を奪われたロゼは、自分を見下ろしてへの字口になりながら続ける。

 

「…美咲は、強敵だ」

「そうだね。すっごくかわいいし、スタイルもいいし…。美咲に正面からアタックされたら、出雲も危ないんじゃ…?」

「…わからない」

 

 傍から見ても出雲と美咲はとても仲が良い。特にあのお互いに貶し合うというか、揶揄い合うようなやり取りはレイとロゼにはできないものだ。

 

「今までも2人で酒を呑みに行くことは会ったと言っていたし、考えるだけ仕方ない」

「…まぁ、そうだね。……上がろっか」

 

 もう、2人の中の出雲の占有率は計り知れない程になっている。そうはいいつつも悶々と彼のことを考えてしまう2人だった。

 

 

 

 

 風呂から上がって少し。ラフな格好でソファに座り、ぽけーっとテレビ番組を眺めていたレイの視界の端に、イヤホンをしてタブレットを眺めるロゼが引っかかったので見てみる。

 

「何見てるの?」

「…ああ、これは……、…これは、………なんなんだろうな…」

「どういうこと?」

 

 ロゼが神妙な顔で見せてきたタブレットを見ると、有名配信サイトだった。その中で男性が自分をカメラで写しながら話をしたりカメラに向かってウインクをしたりしている。その度にコメント欄は盛り上がっていた。

 

「……なにこれ?」

「有名イケメン配信者…だそうだ」

「…そ、そうなんだ。…ロゼ、こういうのが好きなの?」

「違うっ!」

 

 へぇ〜とジト目を向けられたロゼは首をブンブン横に振る。ロゼはイヤホンを外すとその線を指でくるくると弄る。

 

「……その、…私たち…出雲のことが好きだろ?」

「う、うん…」

「……それで、私たちの男を見る目…?というのがどうなのか気になって……一般的に、女からモテる男というのを見学してたんだ」

 

 レイはイヤホンが引っこ抜かれて音が聞こえるようになったタブレットをもう一度見る。

 

「………うーん、…ロゼはどう思ったの?」

「…この、配信の中の彼には悪いが、……出雲の方が10倍かっこいい」

「私もそう思う」

 

 レイは即答しながら、自分のスマホの待ち受けになっている出雲の寝顔を眺める。確かに顔だけを、通行人に見せれば配信主の彼の方がかっこいいという人はいるだろう。しかし、出雲の性格は初めて人間の男というものを知った2人にどストライクだったのだ。

 

 気付いたら迷い込んでいた知らない世界に、知らない人間。それも男。

 

 最初は警戒もあった2人に、彼は驚くほど優しくしてくれた。レイ達が美味しいものを食べたり、新しいことを知ったりしている所を見るあの眼差しは、レイとロゼの脳を大いに焼いたのだ。

 

「……出雲…」

 

 気づけば、レイは自分の唇を指で触れていた。見るとロゼも同じようで、その場に立ち上がるとふらふらと彼の自室に向かっていく。

 

 当然レイもそれについて行き、まだ微かに残る彼の匂いを求めてベッドにダイブする。

 

「…って、これじゃまた同じだよっ」

「…し、しかたないだろ」

 

 レイはせめてと掛け布団を裏返した。出雲が帰ってきたら抱きついて朝のロゼよりも長いキスをしようと心に決め、出雲成分の補充をしようとした、その時。

 

 家のインターホンが鳴った。出雲が帰ってきたのだ。

 

「「出雲っ!」」

 

 レイとロゼは起床ラッパを吹かれた自衛隊員ばりの速度で跳ね起きると、協力してベッドを元の位置に綺麗に戻し、鏡を見る時間もないので玄関に早歩きで向かいながらお互いの身だしなみをお互いで直す。それをインターホンが鳴ってからわずか10秒で済ませると、玄関に並んで立って彼の入りを待った。

 

 ロゼが鍵を開けると、扉が開く。2人は満面の笑みで飛び掛ろうとして……顔をのぞかせた美咲に、目を見開いた。彼女はごめんねと謝りながら入ってくる。その奥には出雲もいた。

 

「……美咲っ?」

「…いきなりごめんっ、二次会…ここでやってもいい?」

「それは大丈夫だけど……随分帰ってくるの早かったね?」

「それはまぁ、色々ありまして…」

「ふーん……。……あれ、ロゼは?」

 

 美咲を招き入れたレイは隣のロゼがいないことに気がついた。レイきょろきょろと周りを見回して……出雲に抱きついてるロゼを見つけて声をあげる。

 

「ちょ、ロゼっ?」

「…おかえり。……すんすん、酒の匂いがするな…」

「…あーっ!…ロゼずるい!…美咲っ、ロゼの方をお願いっ!」

「えっ、…あっ、うんっ?」

 

 真剣な顔で言われた美咲は、勢いに押されて返事をした。美咲にとってもロゼと出雲がくっついてるのはいただけないので、ロゼを後ろからひっぺがそうとする。

 

 レイも頬を膨らませながら、出雲の身体へ腕を回す。顔を近づけてみると、彼のいつもの香りの中に少し、アルコール特有の香りが混ざっていた。結構飲んだのだろうか。顔を見ると頬が少し赤い。出雲は引っ付いてくるロゼに引き続き、一向にひっぺがさないレイに困惑の声をあげる。

 

「…レイ…?…な、なにしてんの…?」

「……ずるい」

 

 レイは彼の背中に自分の身体を押し付けながら、彼以外にはバレないように首筋に唇を落とした。ロゼから引き離すと思いきやただ抱きついただけのレイにロゼと美咲から抗議を受け、渋々離れながらも、半日離れてただけで倍増した出雲への恋情を視線に込めて流し目を送る。

 

 レイのハートマークが飛んできそうな視線を貰って出雲も平気な訳がない。酔っている上からわかるほど赤面した出雲は指で頬をかきながらお土産をレイに手渡した。

 

「…それで、二次会というのは?」

「ああ。この前ここに引っ越した時に貰ったワインがずっと冷蔵庫の中にあったからそれ飲んじゃおうかって。…2人はご飯もう済ませちゃった?」

「ううん、まだだよ?…なにかおつまみ的なの作る?」

「うん。材料は買ってきたから、私も手伝うよ」

 

 レイとロゼにしても二次会は賛成だった。2人にとって、出雲が1時間早く帰ってきてくれただけで破顔するくらいには嬉しいことなのだ。美咲からビニール袋を受け取ったロゼはそれを台所に持っていきながら言う。

 

「とりあえず、2人は着替えろ。バイト明けの格好のままだろ?」

「うん、そうするよ。美咲も1回戻ってシャワー浴びてきたら?」

「そうだね」

 

 酒を飲んだあとにシャワーを浴びても大丈夫なの?とレイが尋ねると、2人とも酒が強く、これくらいだと平気らしい。美咲も酔いはするけど復活は早いタイプだそうなので心配はいらないそうだ。

 

 風呂場へ入っていく出雲を見送ったレイとロゼは、夕飯を作ろうとしたその時、何やら美咲がこそこそと2人を手招きしてきた。

 

「……ね、ちょっと」

「どうした?」

「……2人って、酔っ払った出雲くんって見た事ある?」

 

 声を潜めてどことなく真剣に尋ねてくる美咲に目を瞬かせた2人は、何かあると部屋の隅でこそこそ話す。

 

「私たちは無いよ。…というか、家で出雲がお酒を飲んでるのも一回も見てない」

「…出雲がよっぱらうと、何かあるのか?」

「……よし、それなら話は早いね」

 

 美咲はしたり顔で続ける。

 

「出雲くんって、ビールとかハイボールとかのお酒はすっごい強いの。……でも、ワインだけは酔っ払うんだ」

「…わ、ワインだけ?」

「……うん、それでね。…本気で酔っ払った出雲くん、……………めっちゃ甘えてくるの」

「っ!?」

「…ほ、ほんと…?」

 

 美咲はこくりと頷く。それを聞いては黙っては居られない。

 

「……あ、あの出雲が甘えん坊に…!?」

 

 2人にとって得すぎる情報に、レイとロゼはごくりと喉を鳴らした。そんなの、そんなの最高にも程がある。

 

 気分が高揚していく中で、レイとロゼは美咲に気遣うような視線を向けた。

 

「……そういえば、聞き忘れてたけど…うちで二次会して美咲はいいの?……今日せっかく2人きりだったんでしょ?」

「……あー、……うん。……今日はもう満足だから……えへ…」

「……何かあったな?」

 

 すると、美咲はほんのり頬を染めてにやにやしだした。ロゼが問い詰めようとすると、慌てた美咲は自分の部屋に逃げていく。

 

「く、取り逃したか…」

「……ま、その辺もこの後聞けばいいよ。……それよりも」

「……ああ」

 

 甘えん坊の出雲。

 

 そのパワーワードに引かれた閃刀姫2人はニヤつく口元を抑えながら、彼を最大限酔わせるために、最高のつまみを作りに台所へ向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 続く。

 

 

 

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