「…………とりあえず、ズボン履くか」
昨日のことを考えるとちょっと怖いけど、パンツ丸出しでここにいていい訳ないし。
昨日は久しぶりにあそこまで酔っ払った。元々ワインは酔いやすいし、美咲のサングリアも美味しかったからかなり進んだ記憶がある。
そっからの記憶はぶっちゃけ曖昧。途中なんかゼロがレイロゼに分離したのはうっすら覚えてる。
そんで、そこから一体どうなったら4人で一緒のベッドで寝て、俺はズボン脱がされてんの?俺別に下脱いで寝る派じゃないし、酔ったって言っても自分から脱がないと思うし…。
しかも、そこらに脱ぎ捨てられてるのがタチ悪いんだよなぁ。床に落ちてたズボンを拾い上げて履く。まだみんな寝てるかなと振り返ろうとしたところで、後ろから俺の首に腕が優しく回った。
「おはよっ」
「…レイ」
みんなを起こさないように小声で言ってくるレイ。ゼロから分かれた時に着替えたのか、肩紐の白いワンピース姿の彼女は「しーっ」と指を立ててベッドから降りる。
「……ロゼも美咲も昨日寝たの遅かったから、まだ寝かせてあげよ?」
「そうだね。…昨日は何時まで起きてたの?」
「……うーん、2時くらい?」
基本早寝のレイロゼにしては結構起きてたね。
「話が弾んでって感じ?」
「…ぅえっ、…う、うんっ。そうだよ?」
「何今の反応」
「なんでもないっ」
なにそれすごい気になる。まさか俺のズボンと関係あったりすんの?
気になりつつもレイに手を引かれてリビングへ。テーブルを見ると昨日のグラスやら食器はきたんと片付けられていた。俺が寝たあとにやってくれたみたいだ。
ソファにでも座るのかなって思ってたんだけど、レイはそのままリビングを素通りして俺の部屋へ。……ってことは。
レイは俺をベッドに座らせてくる。そしてそのまま自身は俺の膝の上へ。
「えへへ、…ぎゅーっ」
「…やっぱりか」
「んー…せっかくふたりきりだから…」
感想は言わずもがな、暖かくて柔らかくて、いい匂いの3点セットが俺のライフを著しく削る。俺もレイの脇から腕を回して抱き返すと、手のひらにレイの綺麗なブロンドの髪が掛かった。掬ってみるとシルクみたいな手触りで超気持ちいい。
そこから、俺たちは無言で抱きしめあった。腕の位置を変えたり、撫でる位置を変えたりしてお互いの匂いを刷り込むように身体を密着させる。
……あー、やばい。超気持ちいい。ドキドキするとか柔らかいとかもそうだけど、なんかとても安心する。頭や肩、腰を撫でるとその細さに改めて驚いた。
「…すぅ…はぁ〜…ん、……んぅ…」
レイもレイで、俺の首筋に顔を埋めてはずっと深呼吸して、時々身体をぶるっと震わせてる。…心配してるフリして追撃みたいに腰を触ってる俺も俺だけど。……朝だよねこれ。
ああもう、可愛すぎる。…もしかして酔いが残ってたりする?…前までだったら我慢できたのに、ちょっとこの状況は止まれる気がしない。
「レイ、…息荒いよ?」
「……そ、そんなことないよ?」
そう言いつつも顔が真っ赤だ。顔を埋めてた俺の首筋から顔を上げたレイは、自分の背中や腰を往復する俺の手に荒い息を吐いている。
そして、その手が段々と上がってレイの髪を梳く。そのままさらに上がり続け、まるで逃がさないように後頭部に添えられた。俺が顔を近付けると、目が細まる。
「…ぁ……、……んっ…」
朝だよねこれ。
キス中ってなんか逆に冷静になる。起きて直ぐにレイと抱き合ってキスするとか、朝っぱから何やってんだろ俺。しかも自分からしたし。
「…ん、…ぷぁ…、…いずもぉ…」
唇を離すと、レイの顔がさっきよりもさらに蕩けている。
「……その、朝からごめん」
「いずもからしてくれるの、…うれしぃ…」
「……ああもう、…ん」
「ぁんむっ……ん……ちゅ…」
その顔は可愛すぎるだろ。顎の下に指を当てて上を向かせると、レイの唇を少しだけ乱暴に奪う。しばし吸って唇を離し、優しく抱きしめた。
「…はぁ…ん、…これ、癖になりそうだよ…」
「…ね」
多分、レイにはもうバレてるよね。レイは俺の腰に跨ったまま意味深に腰を動かしてるのを抑える。それはやめてください本当に。
「…ちょ、一旦離れてくれる?…1回落ち着くから」
「…う、うん。……わ、私も立てないし…」
どうやらレイも腰が抜けたらしい。なんだかそれがおかしくて、2人でくすくすと笑いあった。
並んで座っていろいろ落ち着いた後。ちょっと気になった俺は立ち上がる。
「どうしたの?」
「ん、ちょっとシャワー浴びてこようかなって」
「あー」
昨日浴びたあともかなり飲んだし、一旦さっぱりしたい。今更時計を見ると8時前。まだ2人は起きないだろうな。着替えをとって脱衣場に向かう最中にちょっとレイロゼの部屋を除く。
「…すぅ……すぅ……」
「……ん……」
案の定、美咲とロゼはまだ眠っていた。レイと色違いのワンピース姿で丸まって寝てるロゼは可愛らしいが、美咲のキャミソールの裾がめちゃくちゃ捲り上がってて目に毒だ。
「どうしたの?」
「っ、いや、よく寝てるなぁって」
後ろから話しかけてきたレイにそう返しながら脱衣場に入る。レイも入ってくる。
「…何気朝シャワー久しぶりだな」
「そうなんだ。私はよく浴びるよ?」
「へぇ、俺がバイト行った後とか?」
「うん」
確かに昼間は暑いし、起きたあとにスッキリしたくなるよね。俺はシャツを脱いだ。
「…そういえば、俺がいない間って何してるの?」
「お洗濯とかお掃除とか…、それが終わっちゃったらロゼと買い物行ったり、美咲と遊んだりしてるよ。……私たちも働けたらいいんだけど…」
「…うーん、そこらの店だと色々書類が必要になってくるからね。…自営業なら口利きで何とかなるかな」
事情を話せば、俺んとこのカフェで働けたりしないかな。今度ダメ元で聞いてみようか。
俺は脱いだシャツをカゴに入れる。レイはワンピースの肩紐を外して、そのままワンピースを────
「ちょっと待とうかレイさん」
「なんでしょうか出雲さんっ」
流れでそのまま行こうとしてたけど、やっぱりおかしいと思うんですよ俺は。あとノリいいね。
「なんで脱いでるの?ってかなんで入ってきてるの?」
「…わ、私もシャワー浴びたいし…」
そう言いながら、レイは上目遣いでワンピースのスカートを指でつまみ上げる。見えた太ももに目が吸い寄せられ…って、いやいやいや!?
「…っ、……せ、せめて水着着て」
「……一昨日全部見ちゃったんだし、…無くてもいいかなって」
「朝っぱらから俺をどうするつもり?……いいからっ」
結局、お互い水着でシャワーを浴びることに。なんなんだ今日のレイは。ATK2500くらいない?
自室に水着を取りに行きながら、出たため息は幸せなため息ってやつなのかな。
「…どう?痛くない?」
「とても気持ちいいです」
朝なんよ。
俺はこの前のようにレイに背中を現れながら遠い目をした。もちろんボディスポンジ的なのじゃなくて素手です。朝なんよ今。
そして後ろから手を回されて前を洗われてる関係で、背中に当たるシャークキャノンもしっかり追撃として入る。朝なんですよ。
なんかもう、なんかどうでも良くなってきた。投げやりって訳じゃないんだけど、こう俺がまごまごしてるのがアホらしくなってきたっていうか。この思考昨日から頻発してるな、俺ももう危ないか(賢者)。
脚やら下半身は自分で洗い、当然今度は俺がレイを洗う番になる。
椅子に座ったレイの耳が赤いのが見えてちょっと余裕を取り戻した俺は、この前みたいに水着の紐を解いてやる。
「……い、いずもっ」
レイが顔をさらに赤くするがもう知らん。そのまま無言で下の水着の紐も解くと、俺は背中を洗い出した。
レイは口を手で抑えて、なにかに耐えるように身体を震わせている。こちとらスピード勝負なんで。理性がエンドフェイズする前に身体洗わんといけないんで。
一昨日だと前は洗わなかったけど、ロゼにはやったしまぁいいか(悟)。
俺は背中の泡をシャワーで流すと、前に持って行ってた髪を後ろへ流し、ヘアゴムでまとめてやる。なんで縛れるのかって?2人にやってってよく言われるからです。
髪を縛ったことでレイの体を隠すものは何も無い。俺は悟った心と、純粋な好奇心で泡を手に乗りそのままレイの身体に手を下ろした。
「…んぅ…!」
「…レイも垢擦り苦手なんだっけ」
「…っ、ん、…そ、そうだけど…あっ、…ん、なんで平気なのぉ…?」
「そんなわけないのはわかるだろ?」
「…ん、…うん…。…すごく、わかるよ?」
なんでわかるのかはもう俺たちの体勢から察して頂きたい。……人によって感触違うんだなぁ(悟)。
「…ぁ、…んぅ…!…そ、そんなに洗うの?」
「前に触って欲しいとかいってたし」
「……ど、どう?」
「今冷静にさせないで。俺死にたくなるから。…超柔らかい」
なんだろうこの気持ち。死にたいと助けてと触りてぇと柔けえと何この状況とのミックス心。
他の場所よりもしっかりと洗って、俺はシャワーを取ろうとするとレイと目が合った。その顔はまだ何かを期待しているような、誘っているような表情で。
レイは少し、脚を広げた。当然、シャワーだし髪縛ってるしタオルそもそも持ってきてないしで湯気さんや髪さんたちのガードは望めない。というか最初から見えてたんだけどね。
「……レイ」
「…だめ?」
「勘弁してくれ」
レーディングが変わっちゃうだろ。
この前と同じセリフを吐きながら、俺はレイの手に泡を乗せた。
「……さっぱりしたぁ」
「そうだね…」
朝っぱらからなにしてんの杯があったら優勝してるようなシャワーを終えて。着替えた俺とレイはクーラーを着けたリビングのソファに並んで座っていた。
ちなみにまだロゼと美咲は寝てる。ということでまだ2人きりタイムは継続中だ。
グラスの麦茶を半分くらい飲んでテーブルに置くと、レイがしなだれかかってくる。
「えへへ、やっぱり早起きは得するね」
「得、なのかな一応」
「出雲を独り占めできたんだもん。嬉しいよ?」
「どういたしまして?」
ソファでくっついてる分にはまだ犬っぽいんだよね。さっきよりもさらにサラサラになったレイの金髪に何となく指を通す。レイは嬉しそうにして俺の膝の上に頭を乗っけた。
「ね、出雲はさ」
「……ん?」
「…今、楽しい?」
「生活がってこと?」
「うん」
「…楽しいよ。今までで1番ってくらい。家に帰ったらレイとロゼがいて、一緒に遊んだりこうしてゆっくり出来る時間が、幸せだなって思う」
(理性的に)大変なことはあるけど、幸せには違いない。レイの頭を優しく撫でると、その手を取って唇を落としてきた。
「私も幸せ。…こんなに平和で、ロゼと出雲とゆっくり暮らせるなんて。なんか未だに実感がないんだよね。…ほんとは、まだ夢の途中なんじゃないかって…ひゃっ?」
「どう、夢だった?」
むにーっとレイのほっぺを引っ張りながら聞く。
「痛くないように引っ張ってるから、わかんないよ。……ん、夢じゃない」
起き上がったレイは、俺の手を取って頬擦りをした。その幸せそうな表情に目を奪われていると、レイは「…もうちょっとだけ」と、唇を重ねてくる。
もうナチュラルにキスするようになってますやん。5秒ほど重ねて離したレイは、そのまま立ち上がった。
「…朝ごはん、つくろっか」
「美咲も食べるだろうし、多めに炊くか」
「そうだね」
2人で台所に立つのも久しぶりだな。長いブロンドの髪をポニーテールに結ったレイはプチトマトのヘタを取りながら、米を研ぐ俺を見る。ちょうど顕になったうなじを見てた俺と目が合ったので逸らした。って何うなじ見てんの俺。
そのままレイの方を見ずに米を研ぎ終わりジャーにセット。早炊を押したところでもう一度レイを見ると、サラダの下ごしらえが終わったところだ。あとは米が炊けてから色々炒めたりしたら完成。
「…ひゃ、…い、出雲…?」
早炊って言っても30分位はかかるしなぁ、何してようか……って、あれ?
ぽけっとしてたところに我に返り、下を見ると気付かぬうちにレイを後ろから抱きしめてたようだ。
いや俺になにしてんの?
そんな俺の内心を無視して身体が動く。
「…うーん、…なんとなく…?」
「そ、そうなんだ…。…うれしい…」
レイは俺の腕に自分の手を重ねて、こてんと寄りかかってくる。その顔は耳まで真っ赤で、素直に可愛いなと思った。
「なんでこんなんでそんなに赤くなってるの?」
「…い、出雲からされると…だめなのっ」
「…じゃあ、離れた方がいい?」
「やだぁ」
そう言って俺の腕を掴んで離さないレイ。それでも真っ赤な耳が、ポニーテールにしたことによって丸見えで。
あ、落ち着いたかと思ってたけど、やっぱり理性壊れっぱなしみたいだわ。
俺はそんなふうに思いながら、後ろからレイの頬を撫で、上を向かせる。
「い、いずも…?」
そして、そのまま唇を奪った。
「んっ、…ん、……んぅ」
これまでとは違う、背後からの強引なキス。それでもレイは目を閉じて、それを味わうように唇を押し付けてくる。
「ぷぁ、…はぁ、…はぁ……いずもぉ…、んっ…」
レイは唇を離すと、荒い息をは泣きながら俺と向かい合うようにして抱きつき、背伸びしてこっちの唇を食みに来る。
息が続くか限りキスを続けて唇を離し、ふにゃふにゃのレイを今度は壁に押付けて俺から唇を奪う。やっぱり俺からされるのが効果抜群のようだ。レイの反応が目に見えて違う。
「…はぁ、……はぁ…わ、私たち、…朝から…キスしすぎ…」
「…レイがそれを言うの?……じゃ、やめる?」
「その聞き方、…ずるい」
このままここでしてると俺たちの声で2人が起きそうだ。俺は本能のままに腰が抜けてたレイを自室に抱き上げで連れていく。
「……えへへ、独り占め…」
「……早起きは得するんだもんな」
そう言い、俺はレイの唇を奪った。そのまま押し倒して堪能する。レイも抱きつきながら、惚けた顔で笑った。
俺たちの朝の秘密の逢瀬は、そのままふたりが自分から自然と起きてくるまで続いた。
「……出雲、次は私のターンだ」
「うそだろ?」
2時間後の話である。