俺ん家の閃刀姫   作:猫好きの餅

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推しが近いし摘んでくるし

 

 

 

 

 

 レイとロゼに絡んでた、ファッキンナンパ野郎を撃退した俺は、お昼ご飯を食べにお店を目指して歩く。

 

 いやー、マジで焦った。急いで戻ろうとは思ったけど、まさか本当にナンパにあってるとは。

 

 俺は2人に振り返って聞いてみる。

 

「ごめん、助けるの遅れて。なにかされなかった?」

「え、……ううん、大丈夫だよ」

「出雲が来てくれたから」

「そっか。…よかった」

 

 ひとまず安心。まぁこの2人ならやっつけちゃうと思うけど、人間がみんなあんなんじゃない事は伝えておきたい。

 

 その事を言うと、2人から「うん、知ってる」と即答された。え、そんなに人を見る機会あったの?まぁ、ショッピングモールだし、人はいっぱいいるけども。

 

 2人を心配しながら歩いていると、両袖が引っ張られる。

 

 振り返ると、レイとロゼがそれぞれ俺の袖を摘んでいた。え、何それ可愛い。

 

「な、なに?」

「…なんでもない」

 

 そう言いながらも摘んだまま離さない。ロゼは、俺を見上げながら言う。

 

「助けてくれて…ありがと」

「ああ、どういたしまして。……これからは離れないようにするよ」

「……また、守ってくれるってこと?」

「当然だろ?」

 

 つーか、推しが危ない目にあっててじっとしていられるかっての。2人の美少女が男1人の袖を摘んでるという珍妙な状況に視線が集まっているが、俺は無視してお店を目指した。

 

 

 

 

 

 

「はい、ここで昼ご飯食べようぜ」

「…わ、わぁ…!」

「…ぱ、パンケーキ…!」

 

 俺が連れてきたのはモール内にあるレストラン。クリームがどっさり乗ったパンケーキが有名なお店で、景観はカフェ寄り。見ると女性客が圧倒的に多かった。

 

「2人とも、甘いもの好きだろ? だからこういうのはどうかなって」

「…うんっ、1回食べてみたかったんだぁ」

「……出雲っ、早く行こうっ」

 

 興奮した様子の2人に連れられて、席に着く。俺は4人掛けの席に隣り合わせて座ったレイとロゼの向かいに座ると、メニューを見せた。

 

「…普通に食事もできるけど、2人はこの大きいパンケーキいっちゃう?」

「うんっ。……いっぱいあるね」

「…どれも味が想像できないな」

 

 2人とも、真剣な顔でメニューを眺めてる。眉が逆8の字になって唸ってるレイとロゼに周りの女性客もノックアウトされてる。

 

「…だいたい、チョコ系のソースかベリー系…果実類で別れてるから、ひとつずつ頼めばいいんじゃないか?気になったらお互い分け合えるし」

 

 俺の提案にこくこく頷いた2人は、パンケーキにチョコバナナが乗ったやつと、ミックスベリーが乗ったやつを頼んだ。ちなみに俺はコーヒーとクラブハウスサンド。

 

 注文が終わった後、「ちょっと、めっちゃ可愛いお客さん来てるんだけど…!」とか言いながら厨房に消えていった店員さんを何となく見ていると、そういえばとロゼが口を開いた。

 

「…さっきの不躾な男2人を処理していたが、出雲も戦えるのか?」

「…ん?ああ、昔ちょっと合気道をやってたんだよ」

「あいきどう?」

「人相手特化の間接技で、戦うよりも自衛が目的の武術。例えば腕を取って外側に捻ると、人の身体はありえない方向へ曲げられた腕を庇って、それ以外の行動が出来なくなっちゃうんだ」

「あ〜、だからさっきの人たちが動けなくなってたんだね」

「そ。…組み方を覚えれば握手からでも拘束できるから、ああいう時便利なんだよ。……まぁ俺もあんな状況初めてだったけど」

 

 普通、街歩いててナンパされてるとこに遭遇しないからなぁ。

 

「…でも、ロゼもレイも閃刀抜くのよく我慢したね。偉いよ」

「そ、そうかな…?…あのまま出雲が来てくれなかったら峰打ちして逃げる気だったけど…。柄に手がかかってたし」

「…私は一応我慢したぞ?出雲に言われたから」

「ちょ、それだと私がダメみたいじゃんっ!」

「……それに、戦ったらせっかく貰った帽子が汚れるかもしれないだろ」

 

 おっふ。え?何その理由尊すぎるだろ。

 

 思わずにやけそうになって、届いたコーヒーを流し込む。あれ、ブラックなのになんでこんなに甘いの?

 

 そんな会話をしていると、注文した料理が運ばれてきた。

 

 特にパンケーキ3枚の中央に乗っかったてんこ盛りの生クリームに、チョコソースとイチゴソースがふんだんにかかってていて、それぞれバナナと苺、ブルーベリーが沢山乗っている。

 

 レイとロゼの目はもうキラキラを通り越してギランギラン。喉をごくりとならして、今朝教えた「いただきます」をしてからいそいそとフォークとナイフを握りしめた。

 

 そして、1口サイズに切ったパンケーキに、クリームとソース、果物を乗せて1口。

 

「「…〜〜〜っ!」」

 

 口にあったようで何より。

 

 出会ってから見た中でダントツ1番の笑顔に俺もちょっと嬉しくなる。

 

 そこからはもう夢中で食べてる。一口食べるたびに悶絶してるのがすごい可愛い。

 

「……これ、ハマりそうだよぉ」

「こんなに甘いものがあったのか…。レイ、1口交換しないか?」

「いいねっ」

 

 レイは1口切り分けてクリームを乗せて、レイに差し出す。それをぱくりと食べたロゼは同じようにして例にも食べさせる。

 

 突然始まった美少女同士の食べさせあいっこに俺は浄化される。すごい、もう逆にコーヒー味しなくなったもんね。

 

 お互いのパンケーキも美味しかったようで2人とも頬が緩んでる。それを微笑ましく見ていたんだけど、ロゼが俺の視線に気がついた。

 

「出雲も食べたいのか?」

「えっ」

 

 固まる俺を他所に、もう一口切り分けたロゼは身を乗り出して俺の前にパンケーキが刺さったフォークを持ってきた。

 

「え、別に俺は大丈夫だよ?」

「あんなに見てただろ?…ほら」

 

 ちゃんと手を下にしてあーんしてくるロゼの破壊力よ。ここまでされて断るのは男としてアレなので大人しく食べる。あれ、これ2人とも口つけたフォークじゃねともぐもぐしながら思ってしまったのもあって、味なんてさっぱりわからなかった。

 

 ごっくんと飲み込み、回らない頭で感想を伝えていると、今度はレイが身を乗り出し、パンケーキを出してきた。え、そっちも?なんかレイむっとしてるし。

 

 同じく推しのあーんは断れないので、ぱくり食べるとレイは満足そうな顔をした。なんなの?2人して今日で俺を殺す気なの?

 

 店内の視線もめちゃくちゃ集めてしまったので、食べ終わると会話もそこそこに店を出ることに。会計を済ませて店を出ると、レイとロゼが次来た時何を食べるかを話してた。今度また連れてこよう。

 

「……あれ、そういえば2人とも買ったものはどうした?」

 店を出た2人が手ぶらだったので声をかけると、レイが後頭部をかきながら言う。

 

「あー、それなんだけど。私たちこっちの世界でもゲートは使えるみたいで…買ったものはそこに入れてるんだ」

「なるほど。確かに合体術式使ってたし、ゲートも使えても不思議じゃないか」

「それと、多分この国のお金も入っていた。データ化して入れていたから、ここに来る時に変換されたらしい」

「家に戻ったら、今日のお金払うね」

 

 そういう2人に頷きを返す。ここで買うものは大体買ったし、もう家に戻っちゃうか。さっきのナンパ野郎共に会ったら気まずいし。

 

「んじゃ、そろそろ帰るか。2人とも買いたいものとかはある?」

「…うーん、服は買ったしタンスとかはゲートがあるから今のところは……うん、私は大丈夫かな。ロゼは?」

「問題ない」

「了解。じゃあ帰るかぁ」

「帰ったらまたゲームしたい」

 

 そわそわしながら言うロゼに癒されながら頷く。駐車場に向かって歩き出したところで、オレ自分の買い忘れたものに気がついた。

 

 

 

 

 

 あ、やべ。ナンパされてるの見つけて慌てて駆けつけたから、自分の寝床買い忘れた。

 

 

 

 ……ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅っ。

 

「……はぁ、帰ってきたぁ。なんか疲れたなぁ」

「人混み疲れってやつかな。お疲れ様」

「…出雲の方が疲れてない?荷物待ってくれたし」

「そりゃ(推しに)持たせる訳には行かないし」

「ゲーム…!」

 

 家に帰ってきた俺たちはひとまず買ったものを整理する。服のタグを外したり、包装から取り出したりを終えてやっと一息。ロゼはふんふんしながら俺の自室の椅子に腰掛けてわくわくしてる。くっそかわいい。

 

 ゲームを付けようと近づいたところで、ロゼがベレー帽を被ったままなことに気がつく。取らないの?と聞くと、ちらっと俺を見た後に渋々取る。

 

「そんなに気にいった?」

「…うん」

 

 取ったベレー帽を膝に乗せてそっぽを向くロゼ。今日1日で何回俺を悶えさせれば気が済むの?

 

「前は何となくで被ってたから、……この帽子はなんかいい」

 

 そうロゼがもじもじしたところで、彼女があ、声を上げた。そういえばお金払わないと、とレイも呼んでくる。

 

「そういやお金入ってるって言ってたね。どのくらい?」

「えっと、…うーん……。…4と、後ろに0が8個あるけど…」

「……ん?」

 

 え、じゃあ9桁…?…4億?

 

 レイからゲートの中身が入ったウィンドウを見せて貰うと、本当に4億ある。桁を数えてもやっぱり億だ。

 

「どうしてこんな額を?」

「閃刀姫として戦ってた間の貯金だけど…。そんなにあるの?」

「人間2人が一生、不自由無く生きていけるくらいあるぞ」

「そ、そんなにあるの?」

 

 確かにお互いの国の最高戦力だった閃刀姫ならふたり合わせてそれくらい稼いでてもおかしくない……のか?

 

「…ってことは、金銭面の問題ほぼ解決じゃん」

 レイとロゼと暮らしていくにあたって一番の障害が音を立てて崩れた。こんだけお金があると話も変わってくる。

 

 俺が映された¥400,000,000という数字をじっと見てると、何やらレイとロゼが恥ずかしそうにしている。

 

「……どした?」

「あ、あのね。その、お金以外の倉庫の中身は見ないで欲しいなって…」

「お金以外…?」

 

 人間、そう言われると無意識にも確認で見てしまう。

 

 どうやらデータで入ってるものは数字で、現物で入ってるものはそのままウィンドウに映るみたいなのだが、ちょっと下に目をやると、白色の可愛らしい、上下の──。

 

 そういや買った服ここに入れてるって言ってた!!

 

 俺は爆速でウィンドウに映る下着から目を逸らした。その隣に黒の上下もあったような気がしなくは無いが、速やかに記憶から消去を試みる。…失敗。

 

「…ああ、…タンス買ってないもんな」

 

 今の俺は、何も見てませんよ?となんでもないように言うのが精一杯だ。

 

 ゲートの中身を消して、そのお金を使い道を考える。

 

「…んー、とりあえず今日はもう予定ないからゆっくりするかぁ」

「そ、そうだね。……み、見た?」

「…ごめんなさい」

「……」

 

 顔を真っ赤にしてる2人に、俺は頭を下げるしか無かった。

 

 

 

 

 ひとまず、お金は当然レイとロゼに一任した。2人は出雲に任せると言ってたので、流石に会って2日目の人間を信用しすぎと注意した。

 

 まぁでも、3人で1LDKは手狭だし俺の貯金と折半してもうちょっといい所に引っ越そうかな。空き時間に探しておこう。

 

「……出雲。この技はどうやって出す?」

「…ああ、それはこのボタンを押しながらこっちを押すと出る」

「…おお…!」

「次は私の番だからねっ!」

 

 ロゼに引き続き、レイもこのハンティングゲームに興味が出たらしい。2人できゃいきゃいしながらゲームしてるのを見てらライフを4000回復しながら、俺はリビングに戻ってソファに腰かけ、タブレットを開いてマスターデュエルを起動する。

 

 ホーム画面はもちろん閃刀姫のシザークロス。デッキには入れてないからホーム画面だけでも見たいのです。

 

 デッキ画面を開いて、閃刀姫のデッキ編集を見る。

 

 やっぱり、メインデッキの中からレイとロゼが消えていた。一応生成を試すと普通に作れてデッキに入る。…なんか、新しく入ったレイとロゼがこっちの2人とも別人の感じがする。

 

 でも、これで今まで通り閃刀姫デッキが使えるわけで、とりあえず一安心。

 

「……何してるの?」

「うわっ」

 

 一応他に無くなってるカードがないか見てると、俺のすぐ後ろから声がした。首だけで振り向くと、すぐ近くにレイの顔がある。

 

 ソファの背もたれの後ろから覗き込んでいるようで、そのまま俺の隣に座ってくる。

 

 言い忘れていたが、このソファは一人暮らし用で置いてる2人掛けのもので、1人で大きく使うようだなら二人で座ると普通に狭い。よって隣に座ったレイの脚と俺の脚が隙間なく密着して、思わずリバースカードオープンして緊急脱出装置を作動しそうだった。セットしてないのに。

 

「…あー、これが言ってたカードゲームの私たち?」

「あ、ああ」

 

 やっばい。今全神経が左脚に集中してる。

 

 あとさぁ!?…なんかレイの手が俺の腕の内側にあるんだけどぉ?これちょっと腕組まれてない?

 

「…やっぱり暖かい……」

 

「ん、なんか言った?」

「……ううん、なんでもない。…ほんとに全部私たちなんだね」

 

 レイがホーム画面やデッキのプロテクター、デッキケースまで閃刀姫尽くしの俺の画面を見て苦笑混じりに言う。

 

「しょうがないだろ、好きなんだから」

「……っ、…ほ、他のは無かったの?」

「あるにはあるけど、全部揃えてると気持ちいいじゃん?…一応他のデッキはまた違うやつだよ」

 

 そう言って他のデッキ……ドラゴンメイドと斬機を見せる。ドラゴンメイドは最初にストラクで買ってお世話になったやつ。

 

 斬機は、なんかのイベントパックで出たロイヤルアクセスコード・トーカーを行かせるデッキを探してたら「サイバー連合軍」とかいうのが出てきて、そこに斬機が乗ってたから。

 

 先攻は「斬機超階乗」と、ダークフルードで落とした「サイバース・ディセーブルム」で妨害。後攻は2回攻撃アクセスか、そのままダークフルードで墓地にマルチプライヤーを落として超火力でワンパン、もしくはファイナルシグマで貫通と色々できたのが好みだった。

 

「…こっちのメイドラゴンってなに?」

「ああ、戦う時にドラゴンに変身するメイドさんのデッキ」

「強いの?」

「おう。この前出てきた新しいメイドもいるし、結構強いよ」

「私たちより?」

 

 ………レイさん?

 

 思わず彼女の方を見ると、真剣な顔のレイ。

 

「…その時の手札もあるし、どっちが強いかは簡単に言えないなぁ」

「でも、出雲は私達の方をよく使うんだよね」

「…そうだけど…。……もしかしてヤキモチ?」

「…えっ!?……そ、そういうんじゃないよ!?」

 

 どうやら図星だったようです。なんだそれ可愛いかよ。

 

 逃げるようにソファから立ち上がったレイを見て苦笑する。

 

「安心しろって。俺の閃刀姫好きを舐めるなよ?……多分半年くらい閃刀姫しか使ってないぞ」

「…そ、そうなの?」

「おうよ」

 

 レイはあたふたした後に「そ、それならいいけどっ」とロゼの方に行ってしまった。

 

 顔をデッキの方に戻してカードを眺める。……そこで自分の発言をちょっと振り返ったんだけど、……俺、結構すごいこと言ってね?

 

 俺の言う閃刀姫が好きってのはデッキやカード達という意味で…。でも今は同じ家に閃刀姫がいる訳だし、「レイ達が好きだから!」みたいに聞こえちゃったかな……?

 

「…………晩飯つくろ」

 

 現実逃避現実逃避。

 

 やっぱりダメだ。推しを前にすると言語野からそのまま口に出ちゃう。

 

 ……もしかして、このまま行ったら引っ越すの俺だけかな?

 

 俺は晩御飯のカレーを準備を始めながら、ちょっとため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 

「……出雲?」

「はい」

 

 正座して座る俺の目の前に、腕を組んだレイと直立して俺に冷たい眼差しを送るロゼ。

 

 そして俺の前には、ついさっき通販で届いた寝袋。

 

 レイは目が笑ってない笑顔のまま、開けられたダンボールに入ったままの寝袋に手を置いて、俺の目を見てにっこり笑った。

 

 

 

 

 

「……どういうことか、説明して?」

 

 

 ………寝床を全部レイとロゼに渡して、自分はソファで寝てたのがバレました。

 

 

好きな閃刀魔法

  • エンゲージ
  • リンケージ
  • マルチロール
  • エリアゼロ
  • アフターバーナー
  • ジャミングウェーブ
  • ベクタードブラスト
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