俺ん家の閃刀姫   作:猫好きの餅

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 バグースカ全く関係ない話。

 推しに寝かしつけられます。


そりゃバグースカ禁止されますよね

 

 

 

 

 …事の発端は、ほんの15分前。

 

 昨日の夜ご飯はカレーを作り、美味しい美味しいと食べる推しをみて白米をかき込んだ次の日。

 

「…ぅ、ん、おはよぉ」

「レイ、おはよう」

 

 起きてきたレイに挨拶を返す。昨日パジャマを買ったので今の格好は白のボタンで前留めるタイプの上と、ショートパンツ姿。ロゼと色違いになってて、昨日見た時死ぬかと思った。

 

「出雲、いつも早いね」

「そうか?……レイ、ココア飲む?」

「飲む〜!」

 

 良いお返事をいただきます手早くホットココアを作る。マグカップを渡すと、レイはカーペットの上に体育座りになった。

 

 すると、レイの履いてるショートパンツの広い裾が重力によって広がり、中がガッツリ見える。レイの白い素肌と、その奥の───

 

「れ、レイ。ソファの方に座らない?」

「え、……うん。いいよ」

 

 よし、これで俺の視線の安全は保たれた。俺は立ち上がったレイにソファを譲ろうとァァアァ!?

 

 レイは、昨日と同じくそのまま俺の隣に腰かけた。

 

 昨日も言ったけど、このソファは二人で座ると狭い。お互いの身体の側面を密着させて、ココアを飲みながら俺の顔を見てにっこり笑うレイ。くっそかわいい。

 

「えへへ、こんなに美味しいの毎日飲んでたら幸せで溶けちゃうよ」

「溶けちゃえ溶けちゃえ。このままでろんでろんにさせてやる」

「もう……ほんと、あったかい」

「……ん?ココア熱かった?」

「そういう意味じゃなくて……ふふっ、なんでもないっ」

 

 推しが俺の隣でニコニコしながらココア飲んでる。最高かよ。

 

 ポケーっとしてると、レイが謎に自分の綺麗なブロンドの髪をつまみ上げて、俺の鼻元を擽ってきた。こそばゆいのと同時にレイのめちゃくちゃいい匂いが香ってきて、けらけら笑うレイと彼女の髪に大ダメージを受けた俺は思わず立ち上がる。

 

 そのまま飲み終わったマグカップを置いたレイと追いかけっこが始まりそうになったその時。インターホンが鳴った。あれ、なんだろ?

 

「誰か来たの?」

「うん。この時間だと……」

 

 とりあえず俺が出ると、予想通り通販の配達員だった。ダンボールを受けとりながら、あれ何買ったっけと思い出す。

 

「なにか届いたの?」

「うん。……何頼んだっけ…?」

「私が開けてもいい?」

 

 レイが開けたそうにしてるのでカッターを渡すと両端のガムテープを切って箱を開ける

中に入っていたのは緑色の楕円柱のようなもの。巾着のようになっていて、上に留口が……って、これはっ!

 

「れ、レイっ、これは俺の…!」

「これ、寝袋だよね」

 

 俺が取り出す前に、レイが箱の中身……俺が昨日モールから帰ってきてポチッた寝袋を取り出してしまう。

 

 違うんだと言いたかったが、レイの世界の寝袋もおんなじような見た目なんだろう。レイは訝しげな目でそれを見ていた。

 

「……寝袋…?…なんで、誰の…………」

「あの、レイさん?」

 

 レイは何かわかったのか、そのまま固まった。そしてリビングをぐるりと見回す。

 

「……ねぇ、出雲」

「……なんでしょうか」

「一昨日と昨日、私が寝てたベッドって……元は出雲のだよね?」

「……そうですね」

「それで、ロゼが使ってるのが?」

「来客用の布団ですね」

「……で、今日、寝袋が届いたんだよね?………まるで、寝床をひとつ足すみたいに」

「……」

 

 やっばい。なんか尋問みたいのが始まった。

 

 恐る恐るレイの顔を見ると、ムスッとした表情で俺を見上げてる。上目遣いだから可愛いなぁって思ってると、レイからの圧が1段強くなった。

 

「聞いてる?」

「聞いてます聞いてますっ!」

「……ふふ、じゃあ確信を聞く前に、ロゼも起こしてくるから」

「えっ、ちょ、そこまでしなくても」

「だって…?私たちの勘違いかもしれないけど……もしかしたら、私たちがこの家の家主の寝床を2日間も奪ってたかもしれないんだよ?ロゼも関係者でしょ?」

「……はい」

 

 

 

 そして、今に至る。

 

 正座した俺の前に届いた寝袋。それを挟んだ向かいに腕を組んだにっこりレイと、起こされて眠そうだったけど、レイから話を書いて目がキリッとしてるロゼ。2人に見下ろされた状態だ、レイが尋ねてくる。

 

「……で、もう一度聞くよ?……私たちに貸してたベッドと布団で、この家の寝床は全部なんだね?」

「…はい」

「じゃあ、今まで出雲はどこで寝てたの?」

「………」

「出雲、答えろ」

「………そこのソファで…」

 

 2人は、同時にソファを見る。何度も言うが、このソファは二人で座るのが狭いくらいの大きさだ。

 

「……なんで?」

「…え?」

「なんで、そんな事したの?……出雲はこの家の家主なんだよ?私たちにベットを使わせなくたって…」

「……」

 

 そんなの、決まってるだろ。

 

「……せっかく戦いから解放されて、治ったとはいえ怪我もしてて。……だから、2人にちゃんとぐっすり眠って欲しかったんだよ」

「出雲…」

「……なら、なんで昨日…布団とか買わなかったの?あそこなら布団くらい沢山…」

 

 ……これ言った方がいいのかな?ちょっと迷ったが、ロゼにも聞かれて観念する。

 

「………買いに行こうと思ったら、レイとロゼが男に絡まれてたから急いで駆けつけたんだよ。その後は純粋に忘れてた」

「……ぁ」

「…そう、か…」

「先言っとくけど、自分らのせいとか思うなよ?別に、合流してから買おうと思えば買えたんだし」

 

 買えなかった理由を聞いてしゅんとする2人に先に釘を刺す。

 

「…で、でも。あのソファじゃほとんど寝れてないでしょ?…それにその寝袋じゃ…」

「……まぁ、もうすぐしたら布団かなんか買うよ。それまでだったら何とか…」

 

 それでも、2人は納得してくれない。

 

 なんならグイグイ俺を引っ張ってベッドに寝かせようとしてくる。

 

「ちょ、2人ともっ?」

「せめて今日はベッドで寝ろ。残りの布団をレイと私で使う」

「…でも、女の子と一緒の部屋はちょっと「出雲」……はい」

「「……」」

 

 レイとロゼはそれぞれ俺の手を取って、じっと見つめてくる。や、やめろっ。その目には弱いんだよっ!

 

「……私たちが出雲の寝床を使ってるせいで、もし体調崩したり、それこそ倒れたりとかしたら……そんなのイヤだ」

「ロゼ…」

「…ね?だから、自分の事を蔑ろにしないで?」

「…う」

 

 お願い、とそんなふうに懇願されて、嫌だと言えるはずもない。

 

 俺は観念して頷いた。

 

「……わかったよ。…ベッドで寝るよ…」

「…ほんとうか?」

「もし寝てなかったら私たちで寝かしつけるからね」

「それは勘弁してください」

 

 推しに寝かしつけられるとか、変な扉開きそうだ。

 

「……あ」

 

 と、そこで。もうひとつ事を思い出した。昨日言おうと思ってたのに、レイとロゼのパジャマが可愛すぎて言語野吹き飛んでた。

 

「……あの、2人とも」

「なに?」

「どうした?」

「今日、この後バイトで夜まで俺居なくなる」

「「……」」

 

 おっと、言うタイミング間違えたなこりゃ。

 

 音が消えた部屋の中に、静かにレイが聞いてくる。

 

「……バイトって、働きに行くってことだよね。……何時から?」

「……11時から?」

 

 3人で同時に時計を見る。今の時刻は7時半。

 

「……」

「……あの、2人とも?」

「……レイ」

「うん」

「あの、2人ともなに頷き合って…ってえええ!?」

 

 突如2人にぐいぐい押され、視界に映るものがムスッとした顔のレイとロゼから天井に切り替わる。ベッドの上に仰向けに倒されたと気がついた時には、天井が映る視界をロゼが大きく占領した。えっ、コレ何これ!?

 

 そしてトドメに、ロゼで埋まりそうな視界の残りにレイも入り込む。そのまま俺の頭が持ち上がったと思いきや、ものすごく柔らかい感触が後頭部に伝わった。……こ、これはもしや…!?

 

「な、何を…」

「決めた。そのバイトの時間まで、私たちで出雲を寝かしつける」

「…え、ええっ?……だからってこんな事…、ってロゼは何してんの!?」

「……レイに起こされてまだ寝足りない。…だから私も寝る」

 

 ロゼは自分の背中に掛布団を乗せたと思いきや、そのまま半分俺に乗っかる感じで寝っ転がってきた。

 

 俺の右半身に暖かくも柔らかい感触が乗ってきて、後頭部の極楽と相まって寝る所か昇天しそう。

 

 俺と添い寝状態になったロゼは、なんとそのまま俺に身を寄せて、首筋に顔を突っ込んでくる。

 

「…おお、……ぬくぬくぬー」

「ちょ、ほんとに…息かけるなっ」

「ほら、ここから近いんだよね。10時半に起こせばいい?」

「ちょ、何本当に寝かせようとしてんの!?」

「……いいから、私たちがしたくてやってるの」

 

 そのまま頭をなでなでされる。…こんなの……こんなの、気持ちいいに決まってるだろ……!

 

 推しに膝枕でなでなでされながら、推しと添い寝だと…!?

 

 やばい、何も考えられない。暖かいし、なでなで気持ちいい、ロゼの身体柔らかいし(変態)。

 

「……ほら、寝ていいよ?」

 

 そしてトドメの優しいレイの声。なでなでされてるうちに、ここ2日の睡眠不足が………。

 

 

 

 

 

 俺の意識は、自分でもびっくりするくらいのスピードで落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ねちゃった」

 

 膝枕をしてから数分経たずに眠りについた彼を優しく撫でながら、レイは微笑んだ。

 

 レイ達に気を使ってソファで寝ていた出雲。その理由はなんとも優しいもので、昨日から少しずつおかしくなっているレイとロゼを更に変にさせていた。

 

 昨日ナンパを撃退してくれた時から、レイとロゼの出雲を見る目が少しずつ変わってきている。ロゼでさえ、昨日カレーを作っている時に出雲に野菜の切り方がどうの、味がどうのと絡んでたくらいだ。

 

 昨日のことを思い出しながら、レイは眠っている出雲の髪を撫でる。

 

 レイは苦笑混じりに、ロゼに声をかけた。

 

「……ロゼ、寝てる?」

「…寝れるわけないだろ…」

 

 出雲の隣から、顔を赤くしたロゼがむくりと起き上がる。

 

 レイからしたら、ロゼがずっと寝たフリをしているのが丸わかりだった。

 

 出雲にくっついて寝てるのがちょっと羨ましかったレイは、唇を尖らせる。

 

「今度は私がそっちだからね」

「やってみればわかるが、まともに寝れないぞ。…私は今度そっちもやってみたい」

「えへへ、足が痺れるけど、なんか良いよこれ」

 

 2人して、寝てる彼の顔を覗き込む。

 

「……私たち、そんなに近いのかな」

「でも、出会った時のレイはもっと近かったぞ?」

「そ、そうかな?……それに、出雲がまだ会って3日目の人を信じすぎって言ってたけど」

「……でも、…私たちは出雲に救われた」

「うん、私も出雲なら信じれるって思うんだよね」

「……ああ」

 

 彼は本人が自分で思うよりも遥かに彼女達の心を開かせていた。

 

 確かにまだ出会って3日目。しかし、レイたちの出雲を見る目はもう何年も一緒に過ごしてきた家族に向けるものだ。

 

「…ふふ、寝顔…結構可愛いんだね」

「…あどけないな」

 

 出雲が起きる時間までまだまだある。2人はそのまま彼の寝顔を堪能するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…それじゃ、行ってくるよ。17時までだから、18時には帰ってくると思う」

「うん、行ってらっしゃいっ」

「…」

 

 バイトに出発する出雲を見送る。ロゼはまださっきの添い寝のことで照れてはいたが、しっかり手は降っていた。

 

 がちゃんと扉が締まり、レイとロゼはふうと息を吐く。

 

「……17時までかぁ、結構時間あるね」

「ああ、何をして時間を潰すか…」

 

 でもとりあえずお腹すいたよねと朝からずっと出雲を寝かしつけていたせいで鳴るお腹をさすり、2人は台所に入る。

 

 冷蔵庫を開けて、2人は出雲から教えてもらったホットココアと食パンを焼いて食べた。

 

「……じゃあ、さっき出雲から教わったネットってやつやってみる?」

「色々調べられるやつか?…確かに、私たちはこの世界のことを知らなすぎる」

 

 食器を片して腹を洗い、寝巻きのままもアレなので昨日買った服に着替える。お互いシャツにショートパンツというラフな格好。ロゼは遊び心かオシャレ意識か、髪を結ぶ位置が閃刀モードの時のツインテールになっている。

 

 どうしたの?とレイが聞いたところ。

 

「…ただの気分だ」

 

 とのことだ。

 

 そのまま出雲が使っていたタブレットを開く。教えてもらった通りに検索ボックスを開き、適当に調べてみる。

 

「……何調べる…?」

「…いずも 由来」

「ちょ、なにしてんのっ」

 

 いきなり家主の名前を調べ始めたロゼをびっくりするレイ。検索をタップすると検索結果が出てくる。

 

「…美しい雲がわき出る様子から…。……あとはこの国の艦船の名前らしいぞ」

「へぇ…、出雲…そういえば、バイト先ってどこなんだっけ?」

「歩いて行ける距離と言っていたな」

 

 これも出雲から店名は聞いていたのですぐに場所がわかった。評価もよく、店内もオシャレで料理の評判もいい、なかなかの人気店だ。

 

「ここかぁ」

「ホームページもあるな」

 

 貼られたリンクからホームページページに飛ぶ。そこにはさらに詳しく店の詳細が乗っていて、普段の接客風景や調理の様子が見れる動画まであった。

 

 何となく接客の動画を再生するレイ。

 

 どうやら店内でも選ばれた店員の接客が移されているようで何人かが順番にお客の相手をしたり、会計をしたりしている。

 

 そしてその中で、レイとロゼの知る顔が映り出した。

 

「「あ、出雲」」

 

 出雲もこの動画に出ていたらしい。カフェのエプロンをつけた格好で来店したお客の案内と注文、配膳に会計まで一通り映っている。

 

 テキパキ仕事をするその彼の様子を見て、家とのギャップに何故か2人は目を奪われた。

 

「……なんか、別人みたいだな」

「…うん」

 

 家とはまた違う、彼の雰囲気。さっきまでレイの膝ですやすやと眠り、起きた時に赤面していた様子と大違いだ。

 

「……ねぇ、ロゼ」

「…ああ。ここから歩いて10分くらいだな」

「…忙しくない時間だったら、ちょっとだけ…」

 

 ちらりとお互いを見たレイとロゼは、こくりと頷きあった。

 

 

 

 

 

 

 忙しくない時間帯に、少し外から覗くだけ。

 

 そう決めたレイとロゼは昼過ぎに恐る恐る家を出発した。

 

 道はちゃんと調べたし、そんなに遠くもない。なんならこれからちょこちょこ外に出ていくつもりでもあった2人は並んで歩きながら外をキョロキョロ見回す。

 

「イーグルブースターがあれば一瞬なのに」

「出雲に怒られるぞ」

 

 冗談だよっと言うレイの隣を歩きながら、ロゼはそれとなく周りの建物を見ていると、遠くにカフェらしき看板が見えてくる。

 

「あそこじゃないか?」

「あ、そうみたい。出雲いるかな?」

 

 2人はそろりそろりと近付いて、駐車場の前から店内を覗き込んだ。少し探すと、お目当ての人物が見つかる。

 

「…いた…!」

 

 出雲は店内で誰かと喋っている様だった。ちょうど彼との影になっていて誰と話してるかまではわからないが、声が聞こえなくても楽しそうな雰囲気なのは伝わってくる。

 

「……どうする?」

「…私達が行っても出雲の迷惑になりそうだし、一旦戻ろう?…途中にコンビニ?だっけ、そこ寄ってさ」

「ああ、そうだな……………」

「どうしたの?」

 

 出雲が見れたから満足だと帰ろうとしたその時。もう一度店内を見たロゼの動きが止まる。

 

 そして、つられて見たレイも止まった。

 

 出雲が話していたのは、女性の店員だった。それもかなりの美人だ。茶色の髪をサイドテールに纏め、活発そうな顔立ち。そんな美人が出雲と何やら楽しそうに会話している。

 

 ただそれだけの事なのに。レイとロゼは何故か、その光景を見ていられなかった。

 

「あの人…」

「…恐らく同僚だろう」

 

 同僚なら、話していて当然とわかっている。それなのに彼女と話す出雲の顔がレイとロゼが見た事無いもので。

 

 2人はそのまま何も言わずに踵を返した。

 

 途中コンビニに寄ろうと言ったのにも関わらず、2人はそのまま素通りする。

 

 

 家に帰って出雲を待っている間も、レイとロゼの心の謎のモヤモヤは晴れなかった。

 

 途中でもう一度喫茶店のホームページを見る。接客の動画に映ってる店員で、出雲の次に、さっきの彼女が出演していた。

 

 動画の中の彼女は印象通り元気な接客で。じーっとその動画を二人で見ていると、途中で彼女が出雲と一緒に仕事をしている場面が映り込む。

 

「………へぇ」

「………」

 

 今、何故自分から低い声が出たかレイにはわからないが、ただ…少しだけ面白くなかった。それはロゼも一緒のようで。

 

「………まだ帰ってこないのか…」

 

 ロゼが時計を見ると、まだ帰ってくるまで3時間もある。

 

 2人はため息を吐くと、モヤモヤした気を紛らわすように地球のことについて色々と調べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

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