俺ん家の閃刀姫   作:猫好きの餅

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かまちょのレイロゼ

 

 

 

 

 翌朝。

 

 

「……んぅ……」

「………ん、なんだ……?」

 

 ロゼは、部屋に響く声で目を覚ました。むくりと起き上がると、その声はベッドの方から聞こえてくる。眠気まなこを擦りながらそっちを見たロゼは、だんだん眠気が飛んでいくのを自覚した。

 

「……な、なにをしてる?」

「……んっ、……こ、これは……その」

 

 昨日出雲が寝たベッドに、何故がレイがいた。

 いや、それだけならまだわかる。……しかし、ロゼはレイの体勢……。

 

 ………寝ている出雲の顔を、自分の胸に抱き寄せて、腕を脚に挟み、埋められて息ができず酸素を求めて彼が動く度にどこかが当たるのか、か細い声を上げている自分の戦友を見てロゼはちょっと引いた。

 

「……流石にそれは擁護できないぞ…?」

「ち、違うのロゼぇ!」

 

 ちなみに、何も違わないのであった。

 

 

 

 

 

 我に返ったレイがロゼも見たことないくらいに真っ赤になってリビングに逃げて行ったあと。

 

 ロゼはとりあえず、寝ている出雲の顔を覗き込んだ。

 

「……寝顔は意外とあどけないな」

 

 起きている時の出雲は優しくてしっかりしている印象。だから寝ている時はこんな子供みたいな顔になるのかとロゼは思った。

 

「…出雲は、変なやつだ」

 

 彼はロゼ達に優しくしてくれる。戦争に勝利はしたが、居場所が無くなった自分たちを受け入れてくれた。戦いの無い、ロゼが憧れていた普通の女の子の生活を与えてくれた。

 

 そして、普通の女の子が抱くべき感情も、彼は無自覚ながら教えていたのだ。

 

 つんつん。

 

 ロゼの指先が寝ている出雲の頬を突っつく。

 

 うんうん言ってるのがちょっと可愛いなと思ったロゼは自然に微笑むと、彼を起こすのも含めて色々イタズラを始める。

 

 ほっぺを引っ張ったり、髪を引っ張ったり、布団をお腹まで剥がしてみた。すると、布団の中で捲れたのか、出雲のシャツが上にあがり、素肌が見えている。

 

 ロゼはそのチラ見えする素肌に目線が釘付けになる。

 

 そういえば、女の自分と違って身体はどうなっているんだろう。この前触りはしたけど、見たことは無い。

 

 ロゼは自分の好奇心に従って手を伸ばした。

 

 捲った時に中身が見やすいように出雲のふくらはぎ辺りに股がる。彼のシャツを摘んで、中を見ようと…。

 

「……なにしてんの?」

「ひゃっ」

 

 見ようとした時、出雲がむくりと起き上がった。びっくりしたロゼはベッドから飛び降りる。

 

「い、出雲、起きてたのか」

「あんだけほっぺ引っ張られたらね。……危なかった」

「何がだ?」

「……いや、こっちの話。……レイは?」

「レイならあっちにいる」

 

 出雲はそっかと答えると、布団を腰に掛けたまま立ち上がろうとしない。どうしたのかわからないロゼは彼を立たせようとする。

 

「立たないのか?」

「え、ちょっ待っ!?」

 

 ロゼも閃刀姫。こう見えて力持ちだ。出雲の脇の下に手を入れてひょいと持ち上げる。

 

 そうすると、重力の方向とロゼが抱えた腕が支点となり2人の体が密着する。

 

 そして、ロゼの腹に知らない感触が当たった。

 

「……固い?」

「…ッ!」

 

 服の中になにか入れているのか?とロゼは首を傾げるが、逆に出雲の顔が赤くなった。

 

「ちょ、お、俺コンビニいって来るっ!」

「い、出雲?」

 

 出雲は目にも止まらぬ早さでスマホを引っ掴み、外へ出ていった。

 

 呆然とした顔で出雲を見ていたロゼに、リビングの方からレイが顔を出す。

 

「ど、どうしたの?」

「わ、わからない。起き上がせたらいきなり……」

 

 出雲の行動のわけがわからない様子の2人。ロゼはさっき不可思議か感触を感じたお腹に手を当てる。

 

「今のはなんだったんだ…?」

「今のって?」

「出雲を持ち上げて起こしたら、出雲に固い場所があったんだ」

「固い?……服の中になにか入れてたとか?」

「さぁ…?」

 

 2人は首を傾げ、色々と意見を出し合うが、それの正体に検討もつかない。

 

 ということで、2人はネットの力を借りることにした。タブレットの検索ボックスを開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分後。

 

「………ぅうう」

「…………ぅ……」

 

 ……2人は調べた。調べられるところまで調べ尽くした。

 

 そして、知ってしまった。男性の身体の仕組みから、人の繁殖の全てまで。

 

 調べに調べ、全ての情報を吸収し、なんなら動画でその様子の映像まで見てしまい、果ては、そういう絵や漫画まで見てしまった。

 

 ここで、世に蔓延る自分たちの絵までは見なかったのが唯一の救いか。

 

 そして、ついに脳が熱暴走を起こして茹で閃刀姫が2人出来上がった。

 

「………わ、わたし、……そういうつもりで……あぅぅ…!」

「あ、あれは、……わ、私たちに…対して……ぅううう…」

 

 2人はこの数日間の自分たちが距離を詰めた時や、触った時の彼の様子を思い出していた。

 

 その時の彼の反応は、ある種当然と言えるもので。

 

 そして、彼の朝の生理現象にバッチリ一役買っていたレイは両手で顔を覆った。

 

 ロゼは脳の許容量を突破されたのかポケーっと口を開けて天井を見ている。

 

「ねぇ、ロゼ」

「……なんだ? 」

「私たち、もうちょっと気をつけようね。いろいろと」

「……ああ」

 

 2人は追加で「もし彼がそうなってしまった時」を調べ、サイトにでっかく書かれた「彼を満足させる方法!!」を読み込み、自分たちはその状態の彼に何が出来るのかを知る。そして、再度顔を熱暴走させた。

 

「……レイ」

「……なに…?」

「気をつけよう」

「……そうだね」

 

 2人は、ここで初めて男性との接し方を考え出すのだった。

 

 ちなみに検索履歴は全て消しておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の2人の出雲との距離感は、少しだけ常識的なものになった。少しだけというのは、それでも2人の中で彼と近くにいたいという欲の表れだ。

 

 出雲も最初は戸惑ったが、自分の理性の危機的状況陥ることも少し減り、胸をなでおろした。

 

 ……だが、その距離感は2人が出雲に気を遣ってのもの。2人の出雲への信頼が減ったわけではない。

 

 故に、出雲が居ない時にそれが発揮される場合か多々ある。

 

 

 

「ただいまー…あれ?」

 

 アルバイトから帰ってきた出雲が玄関を開ける。昨日までなら玄関にいた2人は来ていない。なんなら物音もしない。

 

 出かけているのかなと首を傾げ中に入る。

 

 電気もついてない室内を歩き、自室を覗くと2人はすぐに見つかった。

 

「……かっわい」

 

 思わず出雲の口から声が漏れる。それだけ今の彼女の状態が可愛らしいものだった。

 

 2人は出雲のベッドに並んで入り、すやすやと寝息を立てている。

 

 掛け布団は丁寧に口元まで上げられ、どこか幸せそうに眠る2人に出雲は胸を抑えて膝を着きそうになる。

 

「……もうちょっと寝かせとこ」

 

 彼は2人の寝顔を見て微笑むと、夕食の準備に取り掛かった。

 

 

 ………さて、一見微笑ましいエピソードのように見えるが、実際の詳細は出雲の印象とは異なる。

 

 それは、数時間前の話。

 

 

 

「……んー、ロゼこれからどうする?」

「そうだな……」

 

 出雲がアルバイトに行って数時間。今日も地球の勉強をしていた2人は座ったまま伸びをする。

 

 2人はあれから、より積極的にこの世界のことを調べるようになった。もしかしたら自分たちの知らないことで彼に迷惑をかけていないか不安になったからだ。

 

 今日は彼の住んでる日本の歴史をちょっと勉強していた。人間がいるとこんなにも歴史が違うのかぁとか、こっちも戦ってばっかだなぁとか、今は平和でよかったなぁと色々知りながら進めていた。

 

 それが一段落し、2人は暇になる。ゲームをしてもいいのだが、やっぱり彼が居ないと元気が出ない。

 

「もしかして……私たち、出雲のこと…好きすぎ?」

「今更気がついたのか?」

 

 昨日のネットサーフィンで恋というものを知った2人だが、それが自分たちもそうなのかという所にはあまりピンと来てない。レイだってロゼに抱きつきたいし、一緒にいたい。それが出雲との気持ちにどう違うのかはまだわかっていなかった。

 

 そんな状態の2人は、自然と彼の自室のベッドを見た。何となく近くに寄ってみて、そのまま寝っ転がる。

 

 そのまま息を吸うと、彼の香りがした。出会った初日に寝た時も同じ香りがしたはずなのだが、前と今で効きようが違う。掛け布団までして堪能してるレイを見たロゼもつられてやってきて、いそいそとベッドに入った。

 

「……ふー…」

「……私たち、……変態だな」

「…あんまり思わないようにしてたのに…」

「出雲の寝床に勝手に入って匂いを嗅いでるのは変態としか言いようがない」

「じゃあロゼはやめる?私はもう変態でいいもん」

「……やめるとは言ってない」

 

 ロゼも結局はレイと同じらしく、掛け布団を顔まで上げて頬を朱に染めている。

 

 2人はそのまま、堪能しすぎて夢の世界に旅立つのだった。

 

 

 

 そして、起きた時に呆れ顔の出雲と目が合って顔を真っ赤に染めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん………ん?」

「おはよ、出雲」

 

 朝。目が覚めた俺に天使の声が届く。目を開けると、レイが俺の顔を覗き込んでいた。見るとロゼも起きてエプロンをつけている可愛い。

 

「……ん、朝ごはん作ってくれたの?」

「うんっ、私たちも練習してるから」

 

 朝起きたら同居してる美少女2人が朝ごはん作ってくれるって天国かな?しかも起こしてくれるし、レイもエプロンしてるし可愛いし。

 

 顔洗ってきて?って言われてはーいと返事をして立ち上がろうとして……あることに気がついて座り直す。………あ、朝だからね??

 

 レイは座り直したを見て首を傾げ、……急に顔を赤くした。

 

「そ、そうだよね…ま、まだそのままで大丈夫だから…!」

 

 そう言って足早にリビングに戻って行った。

 

 

 ……え、しってんの?これ。

 

 

 いや昨日ロゼに言われた時は思わずランニングしに行ったけど。え、アレがどういうのか知ってるの?

 

 ………俺、知らず知らずのうちになんかしてないよね?

 

 急に不安になってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こういったことはありつつも、俺とレイ、ロゼの生活は軌道に乗ってきた。2人は基本的に家のことをやってくれる。

 

 そしてバイトに行って、帰ってきてレイとロゼに癒される。空いた時間は3人で映画見たりゲームしたりしてのんびり過ごす。

 

 そんな日々が続き、今日は……。

 

 

 

 

「この後ちょっと人と通話してもいい?」

「通話?」

 

 夕食のオムライス(レイロゼ作)を美味しく食べながら2人に言うと、もちろんと頷いてくれる。

 

「…誰と通話するの?」

「…ん、美咲……同じバイトのやつとゲームするよ」

「……ふーん」

「…え、どうしたの?」

 

 通話する人の名前を言うと、急に黙り込んでじっと見てくる2人。

 

 でもやっていいとは言うので食べ終わった後に通話アプリで美咲に掛ける。すると1コールで出た。

 

『もしもし』

「お、おつかれ。…つか出るの早くない?スタンバってたん?」

『ち、ちがうし。たまたまスマホ持ってたけだし』

「その割にはビデオ通話だしイヤホン付けてるのな」

『うるさいっ。………出雲くんはなんでカメラオンにないの?」

「…ちょっとまだ盛れてなくて?」

『そんなこと、したことないでしょ。もうっ』

 

 いやね。なんでカメラオンにできないのかと言いますと。

 

 ……あの、離れていただいてもいいですか??

 

 俺の顔が映る画角内にレイとロゼが入り込み、なんかすごいビデオ通話に映る美咲の顔を見てる。

 

 いや、2人がいるとカメラオンに出来ない……。

 

 2人の背中を押して何とか画角内から出すとカメラをオンにした。

 

「わり、またせた」

『待った待った。……あ、もうちょいカメラ上にして?頭が見切れてる』

「別に良くないそんくらい」

『よく見えないと負けた時の出雲くんの顔が見えないじゃん』

「最悪」

 

 そんな会話している間にも、タブレットの向こう側からすごい2人の視線を感じる。

 

 ただそれを顔に出す訳には行かないのでそのままデュエル開始。

 

 俺は閃刀姫で、向こうは寿司だ。あいつの豪運により先行を取られる。くそが。

 

『よぉし、じゃあ何から食べたい?』

「酢飯で」

『おーけー。酢飯いくらトッピングのり添えで!』

「それを寿司って言うんだよ貴様」

 

 俺の注文を聞かずにいくらの軍艦(文字通り)がシャリとネタ並ぶことでエクシーズ召喚。

 

 そして罠カードを伏せてターンを返す。見ると純構築の寿司かな?

 

 そんで俺のターン。ドローして…。

 

「手札から閃刀姫-レイを通常召喚」

 

 やめて、後ろで呼んだ?呼んだ?みたいな顔しないで可愛いから。

 

 で、美咲は俺の召喚にチェーンして増殖するGを発動。

 

「おいこの寿司屋ゴキブリいるじゃねえか!」

『あははっ、衛生管理終わってるねぇ』

「この店板前が機械(アーゼウス)だし、食べログ星1だろ」

 

 そんな会話しながらデュエルを続けているとらなんか、レイとロゼがやかましいんだけど。

 

 さっきから、2人とも「ねぇ、構って?」と言わんばかりに画角に入らない程度に邪魔してくる。

 

 それが可愛いのなんの。どっちかというと緩んだ顔を美咲に見られたくない。

 

 思わず手が伸びてロゼの頭を撫でてた。ロゼはちょっとびっくりしながらも目を閉じて受けて入れてくれる。レイも来たので同じく撫でる。

 

『ん、手伸ばして、なんか取ってるの?』

「今の体勢だと飲み物にギリ届かなくて」

『あはは、わかる』

 

 今まさに画面の中で戦ってる閃刀姫達が俺の目の前にいるのが、なんというか、最高です。

 

 すると、ロゼがかまちょをさらに仕掛けて来た。俺は今リビングのテーブルで足を伸ばしてやってるんだけど、なんか机の反対側から下に潜り込んで俺の脚の方に来る。それに対抗して、レイも潜り込んで、最終的に俺側の机の下から並んで顔を出した。

 

 いや、くっっそ可愛いななんだそりゃ。

 

 そのせいで間違えてフリーチェーンのウィドウアンカー発動しちゃったじゃん。

 

 俺は何食わぬ顔で2人の頭をなでなでしながらデュエルを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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