基本妖怪のせいにできる世界に転生したちょっと癖強いサラリーマン(現小学5年生) 作:暇なグリッチ
入院した。
つられ太郎丸との激戦の後、俺は倒れてきた木の下敷きに…はならなかった。ヨガミ*1が咄嗟に霊魂で木を破壊してくれなかったら危なかった。まぁ骨折はしていたらしいが…そんなに酷くはなかったらしいので良かった。
「…情けないな」
さっきユキ*2とヨガミが見舞いに来たが、それはもう滅茶苦茶に怒られた。人生で怒られることにここまで恐怖を感じたのは久々だった…
「ね?無茶しちゃ駄目って散々言われてた結果がこれですよ、ケイジ君」
「返す言葉もありません…」
ウィスパーにそう言われ、思わず敬語になる。今回のことを反省して、俺は基本前線にはでないことになった。そもそも出てること自体がおかしいと言えばそうなんだが…
「…でも、ケイジ君が自分を責めることはないよ?今回はよく頑張ったと思う…」
「ホル…」
ホル*3は今、俺の横で寝転んでいる。
それは大丈夫なのか?と思うだろうがご安心を、今は人間に化けてる訳じゃないからちゃんと見えてないのだ。
彼女の優しさが本当に心に染みる。心配して怒ってくれるのは勿論嬉しいが、普通に頑張ったと褒めてくれるのも嬉しい。わざわざこんな事を言ってくれる人たちがいるのは本当に幸せなことだと思う。
「…でも今回、俺が無茶したことでお前らに心配をかけさせてしまったからな。そこは自分でも反省しなくちゃあいけない」
「ケイジ君はもう十分反省してると思うけど…そういうところもケイジ君らしくて、ボクはいいと思うよ…」
うっ、彼女の笑顔が眩しい…この笑顔を曇らせてしまった自分が憎い…
「ホルさんの言うとおりです。反省するのもいいですが、まずは前を向きましょう!」
「あぁ、そうだな」
ウィスパーが俺の方に手を置き、そう励ます。そうだ、基本前線で戦うことがなくなったとはいえ、鍛えることをやめるわけではない。もっとやれることはあるはずだ…
「ふぁぁ…ごめん、ケイジ君…一緒に寝てもいいかな?今日、その、あんまり寝れてなくて…」
「大丈夫だぞ、ゆっくり寝てくれ。どうせ誰も気づかない」
「うん…」
ユキから話は聞いている。どうやら俺のことを心配して、全然寝れなかったらしい。本当に申し訳ない…目を瞑った彼女の頭を撫でてやると、穏やかな笑みを零す。
「…メインヒロインは強いですねぇ、うぃす」
「何の話だ…」
彼女が寝息を立て、そろそろ俺も昼寝しておこうかと思っていると、誰かが病室に入ってきた。
「よう!怪我大丈夫か?!」
熊島だ。腕にはお菓子の入った袋が握られている。
「わざわざ来てくれたのか?面倒だろうからいいってのに…」
「面倒だから行かないなんてやるわけねぇだろ!ほら、お菓子!」
「あぁ、ありがとう」
中を見ると、俺の好きなお菓子が詰め合わせれていた。どうやらちゃんと選んで買ってきてくれたらしい。ありがたいことこの上ない。
「…というか、俺の好きなお菓子なんてよく知ってたな。お前に言ってたか?」
「フミちゃんが教えてくれたんだよ!あいつお前のこといっぱい知ってるからな!」
…なんだろう、少し恐怖を覚えた。木霊、お前変なことしてないよな…?
「ところで怪我は大丈夫か?結構ボロボロだったけど…」
「大丈夫だ、入院はそんな何日もない」
「それなら良かった。早く帰ってこいよ!皆お前らのこと待ってるぜ!」
「あぁ、わかった」
光過ぎるだろこいつ。もっとこう、ジャイアン的なのを予想していたが…律儀に沼の中で結婚指輪を探す辺り、本当に良い奴なんだと思う。
「そういうお前こそ、母さんはどうなんだ?結婚指輪は見つかったはずだが…」
「あー、それがさ…」
俺がそう聞くと、気まずそうに熊島が頬を掻く。
「…あれ、結婚指輪じゃなかったんだってよ」
「…は?」
「あれ、母ちゃんが自分で買った指輪らしくてさ…その、出ていくってのも、ただ同窓会に行くだけだったんだってよ!へ、へへへ…」
「…」
「け、ケイジ?」
………俺の…俺の…
「俺の心配を返せ熊島ぁーッ!!!」
「ひぃぃぃぃ!?」
――――――――――――――――――
悪気がなかったことは分かっているから、説教は一応短めに済ませた。全く、俺が説教する側になるとは思ってなかったぞ…
「ご、ごめんケイジ…」
「もう大丈夫だ。言いたいこと言ったしな」
全く、人騒がせな奴だ…というか、父親もちゃんと自分の買った指輪くらい覚えておけ。 ましてや結婚指輪だぞ、オイ
「…ところでよ、ちょっといいか?」
「ん?どうした」
少しすると、熊島がそう聞いてくる。何かと聞くと、熊島が俺の横を指差した
「…お前の横に寝てるその可愛い子、誰だ?」
「…」
俺の横にいる。可愛い子。
…ん?
…ん?!
「…えっと、こいつのことか…?」
ホルの頭を撫で、そう問いかける
「そうだよ、さっきから気になってたけど…その子誰だ?」
ん?!?!?!
「えっ、あー…あぁそうだ!この前お前に借りてた漫画と、お前が借りたいって言ってた漫画!ここで渡しておく!!」
「おっ!マジか、ありがとな!」
俺は咄嗟に母親に持ってきてもらっていた漫画を2冊渡し、熊島が夢中になっている間にウィスパーを引っ張り、引き寄せる。
「いたたた?!痛いですケイジ君!」
「それどころじゃあない!なんで熊島に見えてるんだ、今化けてないだろ?!さっき来たナースには少なくとも全く見えていなかった様子だ…!」
「え、えーっとですね…要因は恐らく2つあります」
俺が手を離すと、ウィスパーが丁寧に説明し始める
「一つは、強い妖気に当てられたからだと思います。Sランクの妖気にボス妖怪の妖気、2人に比べれば劣りますがケイジ君の妖気もあったわけですから、ちょっとくらい見えるようになっていてもおかしくはありません」
「そういうのもあるのか…」
目に妖気が慣れた、と言ったところだろうか。そういうのもあるんだな…
「2つ目は…単純にホルさんが、ケイジ君と一緒に寝ているせいで気が緩みまくってるからかと」
「は?関係あるのか?それ」
「ありますよ。気が緩んでると、時々普通の人間にも見えちゃうときがあるんです。うぃす」
なんだそれ?!そんなのあるのか?!俺が動揺していると、後ろから声をかけられる。
「…んで、結局その子。誰なんだよ?」
「あー…従姉妹、従姉妹だ」
「え?彼女とかじゃ
「従姉妹だ。」
え?で、でも
「い、と、こ、だ」
お、おう…」
全力で圧をかけ、黙らせる。これで良し
「ほら、もう日も傾いてきた。そろそろ帰ったほうが良いんじゃあないか?」
「あぁ、そうだな。 じゃあな!また来るぜ!」
またなー!と手を振りながら出ていく。よし、事態は切り抜けた…
「あんなに必死になる必要あります?」
「ある、噂になられると面倒なんだ」
「あー、ケイジ君苦手そうですもんねぇ、そういうの…」
そんな騒ぎの元になっているとも知らずに、ホルはぐっすり夢の中だった。
天野ケイジ
無事に怒られた我らが主人公。今回の件で一番大変だったのはなんで怪我したかをどう説明するか。妖怪のせいとか言ったらぶん殴られること間違いなし
ウィスパー
誤魔化しかた雑すぎません?大丈夫なんです…?
クマ
やっぱりあいつ彼女いるんだ、可愛かったなぁ…
ホル
我らがメインヒロイン。今回ほとんど寝ていたのにその貫禄を見せつけた。信じられるか?こいつトホホギスなんだぜ?