基本妖怪のせいにできる世界に転生したちょっと癖強いサラリーマン(現小学5年生) 作:暇なグリッチ
あれから日はすっかり落ち、空には月が浮かんでいる。今はおキツネさまに言われたとおりに、工事現場へとやってきた。
「今日は月が綺麗だな…」
「何それ、告白?」
「まさか、やるならもっとちゃんとしたところで、しっかりやるよ。こんなサラッとやることじゃあない」
「流石♪」
(なんか、蚊帳の外みたいになってません?私…)
なんかウィスパーが居心地の悪そうにしているが、まぁいい。そして中に入ろうと思ったら、入り口で何やら一匹の妖怪が泣いていた。
「うぅっ、グスン…グスン…」
「…お前、こんな所で何泣いてるんだ」
「この辺りでは見かけない妖怪ですね…」
「こんな所で泣いて、どうしたの?」
ユキにそう問いかけられると、その妖怪は泣きながら顔を上げた。
「あの…オラ、コマさんズラ。住んでた神社を出てきたんだ。住むところを探しにこの辺の神様のキュウビに挨拶しに行ったズラ。 そんだら、ここさ来るように言われたんだども…中に沢山妖怪がいて、キュウビがいるところに行けないズラ…怖いズラ…グスン…」
なるほど、狛犬の妖怪で、コマさんって訳か…ともかく、やはりこの工事現場におキツネさま…キュウビがいることは間違いないらしい。
「ねぇねぇウィスパー、キュウビってあの舐め腐ったおキツネさまのことでしょ?」
「な、舐め腐ったって。相手は格上ですよ…全く、ともかく間違いないでしょう。彼はこの奥にいるんですね?」
「え…う、うん」
「行きましょう!ケイジ君!!ユキさん!!」
「あぁ」
「オッケー!」
俺達が早速中に入ろうとすると、コマさんが俺の服を引っ張って止めてきた。
「ま、待ってズラ。オラも連れてってくんろ」
「…お前も?」
「うん。怖がりじゃないところ見せて、キュウビを見返したいズラ!」
「やれやれ、仕方ないですね。 どうしますか?ケイジ君」
「いや、俺はお前の心意気が気に入った。その気があるなら喜んで連れて行こう。よろしく頼むぞ、コマさん」
「ありがとう!オラ、頑張るズラ!」
そして互いに手を突き出すと、光と共にメダルが現れた。これで友だち契約も完了。
「よし、じゃあ改めて行くぞ」
「ええ、キュウビはこの奥です。追いかけましょう!」
「おー!」
「お、おーズラ!」
――――――――――――――――――
中はコマさんが言っていた通り、妖怪の溜まり場になっていた。そして、キュウビは屋上にいると考えるべきだろう。
「一々戦ってればキリがない、できるだけ戦いは避けるぞ」
「うう、怖いズラ…」
「大丈夫、私たちがいるからね」
ユキがなんだかお姉さんっぽくなってきたな、コマさんが気弱だからさらに際立って見える。俺は面倒見とかはあまり良くないと自負しているから、こういう所で年長者として動いてくれるのはとてもありがたい。
中は物が多い上に、かなり入り組んでおり、荒らすわけにもいかないため、時に遠回りすることも多く、もちろん妖怪に絡まれることもあったため中々苦労した。
しかしそういった妖怪はユキと、時々勇気を振り絞って頑張ってくれるコマさんのおかげでそれほど苦戦はしなかった。
「お、オラだって頑張るズラ!」
「そうそう、その調子だよ!」
「ズラ?綺麗なかみどめズラね!」
「あぁ、これ? …まだ、つけれてないけどね」
「ズラ?なんでズラ?」
「えっとね、それは…」
「二人とも、ケイジ君が先に行ってしまいますよ!」
「あっ、今行く!」
「は、はいズラ〜!」
――――――――――――――――――
そして迷路のような一階を潜り抜け、二階にやってきたその時だった。
「きゃっ?!」
「ズラッ?!」
建物が三、四階ほど揺れた。地震みたいな揺れ方じゃない、もっと、誰かが足踏みしたような…
「…今のは」
「もんげーーーーっ!こ、怖いズラァ…」
「もう止まったじゃありませんか。大丈夫ですよ」
「うぅ、グスン…」
「全く、コマさんは怖がりですねえ。そんな調子だからキュウビにバカにされてしまうんですよ!」
「グスン…」
「あ、ちょっと!そんな声で話してたら…!」
思ったより二人の会話が大きくなってしまい、すっかり周りの妖怪に気づかれてしまった。暗闇から妖怪たちの目が爛々と光る。
「あ、わ、私としたことが?!」
「もんげーーーーっ!?」
「全員俺の後ろに下がれ!!」
「わかった!!」
ユキが二人の手を引いて俺の後ろに一緒に立つと、その瞬間、妖怪たちが一斉に襲いかかってきた。やるしかない…!
「オラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」
「ぎゃあ!」「うげっ!」「いぎぁ?!」
「おぉ!!早すぎて阿修羅のように…!」
「す、凄いズラ…!」
全方位から襲いかかってくる妖怪達を、俺の全力のスピードで全方位にラッシュを仕掛けて蹴散らす。*1かなり体力は消費するが、ここでリンチに遭うくらいなら全員蹴散らしてやるッ
「はぁ…はぁ…よし、これでここの階は全員片付けれたか?」
「そうみたいだね、カッコよかったよケイジ!」
「あぁ、ありがとう」
二階も入れ組んでいたが、妖怪は全員蹴散らせたおかげですぐに三階へとたどり着けた。いい加減キュウビはどこなのかと、うんざりしていると、コマさんがいきなり足を止めた。
「ね、ねえ…誰かがオラ達を見てるズラよぉ…」
「…そう?何にも感じないよ?」
「全く、コマさんは怖がりですねえ。ほーら、何もいないじゃないですか」
ウィスパーが後ろの窓を見ながら、からかうようにそう言う。
「…一応、用心しながら進もう。コマさんも、何かいたら教えてくれ」
「わ、わかったズラ…」
コマさんはどこか納得できない様子で、俺の言葉に頷いた。
――――――――――――――――――
しばらくすると、開けた場所へとやってきた。不自然な開け方だな、とも思っていると、紫煙とともにキュウビが現れた。
「み、見つけたズラ!」
「ケイジ君!いました!キュウビです!」
「これはこれは、弱虫で泣き虫のコマさんじゃありませんか。それにそっちの坊やたち、彼をエスコートしてあげたのかい? 何にしても、ここまでよく来たねェ、褒めてあげるよ」
「ほんっとうに気に食わない…!」
「あーあ、怒らないでよお嬢さん…そういえば、僕に何か用があったんだっけ?」
「なんで桜町フラワーロードにて、ボヤや事故などを起こしてるのかを聞きに来た。その真意が聞ければそれでいい」
「失礼だねェ、何にも知らないのにそんな事を言うなんてさ…」
「何だと?」
「まぁいいさ、その真意ならわかるよ。そのためにこの僕が、その悪者の住処に案内してやったのさァ!」
すると先ほどと同じように、地面が大きく揺れだした。
「これは、さっきの…!」
「さぁ、あいつを倒してごらんよ。桜町を守りたいんだろ?アッハハハハ!」
キュウビは高笑いしながら空へと舞い上がり、俺たちを見下した。
「逃がしませんよ!」
「ゆ、揺れる…!」
「落ちるなよ、ユキ」
「じゃ、さようなら。おチビさん達」
キュウビはそう言ってお辞儀をすると、後ろから振り下ろされた巨大な手を避けるように紫煙とともに消え去った。
―――おぉ…ぼぉ…ろぉぉぉぉぉ
そして目の前に現れた巨人は、そんなうめき声を出しながら俺たちの目の前に立ち塞がった。
天野ケイジ
もはや人間版スタープラチナと化した男。表には出してないが、コマさんの可愛さに癒されてる。
ユキ
コマさんのお姉さんポジになりかけてる人。利用されたのも相まってキュウビへのヘイトが凄いことになってる
コマさん
妖怪ウォッチのもう一人のマスコット。世話を焼いてくれるユキの背中を追いかけてるよ。可愛いね