基本妖怪のせいにできる世界に転生したちょっと癖強いサラリーマン(現小学5年生)   作:暇なグリッチ

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おまたせ


白銀のかみどめは氷結の姫君のために

「おぉ…ぼぉ…ろぉぉぉぉぉ…!」

 

「ズラァッ!?」

 

巨人が拳を振り下ろしてくるのを、咄嗟にコマさんが避ける。相手が巨大な上にここは大して広くはない、状況は中々に不利か…

 

「焦るな!攻撃が当たらないようなるべく遠くから攻撃しろ!コマさんも、ユキもできるな?!」

 

「こ、怖いけど頑張るズラ!」

 

「任せて!」

 

コマさんの炎とユキの氷が同時に放たれ、巨人がたじろぐが、大したダメージにはなってないらしい。また一筋縄じゃいかなさそうな奴だな…!

 

「何か、俺にもできることを…」

 

「うぃす?!き、来ますよケイジ君!」

 

「わかってる!!」

 

奴が叩き潰そうと手を振り下ろしてくるが、咄嗟に横に転んで何とか避ける。一撃一撃は大して速くはない。だが範囲がデカいから大きく避けないといけないため、いつもより体力が削られる。

 

どうすれば、と考えているところに、あるものが目についた。

 

「…よし!これだ!」

 

「ズラ?何を…もんげーーーっ?!」

 

俺は近くにあった鉄骨を持ち上げ、巨人に狙いを定める。

 

「これでも喰らえッ、鉄骨!!」

 

「おぉぉぉ…!?」

 

ブオンッ!!と思いっきり奴の額に投げつけてやると、これは効いたのかうめき声を上げながらたまらず額を抑えた。いいぞ、隙ができた!

 

 

「コマさん!」

 

「わかったズラ!」

 

―――ひとだま乱舞!!

 

「おぉぉぉぼぉぉぉ…!!」

 

巨人に大量の人魂が飛んでいき、必殺技をもろに食らった巨人が大きく仰け反る。

 

「私だって!」

 

―――ゆきんこシャーベット!!

 

さらにユキによる氷柱の追撃により、巨人は苦しみながら後退りする。先ほどまで優勢だったからか、奴の顔には何処となく焦りが見える。このまま攻撃させずに畳み掛ければ…

 

「おぉぉぉっ…!!」

 

「ひ…ひぃっ!」

 

「ひぇっ!?」

 

「うぃす!?」

 

しかし奴がいきなりこちらを睨みつけ、圧により一瞬行動が遅れてしまった。そしてこのおぞましい妖気は…!

 

「ッ、マズい!全員後ろに」

 

 

―――ねこそぎばらい!!!

 

奴が咆哮と共に、凄まじい勢いで、俺たちを一掃せんと腕を薙ぎ払った。置いてあった全てのものを蹴散らしながらこちらに向かってくるが、コマさんはウィスパーの助けにより何とか避けれたようで、ユキも横に転んで避けれたらしい。

 

 

「け、ケイジ君!」

 

「あ、危ないズラ!」

 

だが俺はここに来るまでに雑魚どもを一掃した時に体力をかなり使っており、おまけにさっき鉄骨をぶん投げたせいで咄嗟に動くことができなかった。目の前に腕が迫ってくる、今から横に避けるにも、上に飛び上がるにも遅すぎる。受けるしかない、俺は

『詰み』(チェックメイト)にハメられたんだッ!

 

「クソ…ッ!」

 

「ケイジ!!」

 

「なっ?!」

 

「おぉぉぉ…?」

 

ガジャアン!!という何かが壁にぶつかった音がした。でもそれは、俺じゃあない。俺は誰かに突き飛ばされて奴の攻撃から逃れた。それは、俺を突き飛ばした人がいるというわけで…

 

 

「あ…あ…うぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

「ケ、イジ…」

 

そこには、壁に激突して虫の息になっていたユキがいた。すぐさま駆け寄り、ユキを抱きかかえる。奴の必殺技をもろに食らったんだ。ただで済むわけが…!

 

そんな時、ユキの懐からかみどめが落ちた。氷で作られたような美しいかみどめだ。あのブタと戦った時に光っていた、あのかみどめ…

 

「…これは

 

おぉぉぉ…ぼぉぉぉ…ろぉぉぉぉぉ…!!!

 

チッ!!」

 

だがそんなところを待ってくれるほど、ボス妖怪は優しくなんてない。トドメだ、と言わんばかりに腕を振り下ろしてくる。覚悟を決めたその時…

 

突然、巨人の手に大量の切傷ができ、たまらず巨人が手を引っ込めた。

 

「おぉぉぉ…!?」

 

「な、なんです?!」

 

「い、いっぱい切られちゃったズラ!」

 

コマさんとウィスパーが困惑していると、上から何かが降りてきた。

 

頭に傘、身体にはボロボロの布、手には包帯、そしてその手に握られた妖刀。

 

「お、お前は…むらまさ!!」

 

「妙な妖気が渦巻いてるかと思えば、こんな大物と戦ってるとはな…いい血が吸えそうだ。飢えてる今にちょうどいい。空気を読むというついでに、俺と戦ってもらおうか…」

 

「おぉぉぉぉ…!!」

 

まさかの増援に呆然としていると、むらまさが目線だけをこちらに向けた。

 

「…何をしている、お前はそこのゆきおんなに集中しろ。 そこの狛犬。ビビってないでお前も戦え。そこの白玉は足手まといになるなよ…」

 

「だーれが白玉ですか誰が!!」

 

「う、うぅ…や、やるズラ!!」

 

そうだ。こんな事をしている暇はない。すぐにユキに話しかける。意識が朦朧としているのか、目の焦点が合っていない。

 

「ユキ!ユキ!!大丈夫か?!」

 

「だい、じょうぶ、だよ…ケイジ…」

 

「すまない、俺が遅かったせいで…」

 

「ここに、来るまでに…頑張って、くれてたんだもん。仕方ないよ…それより、私は、ケイジが、傷つく方が…っ」

 

「お、お前…」

 

あの一件だ。俺がつられたろう丸と戦ったあの一件。あれからユキは、前以上に俺と一緒にいることが多くなっていた。やはり怖かったんだ。俺が傷つくということが。不甲斐ないとは思わないのか。これで誰かを守れていると言うのか、お前()は…!!

 

「…そのかみどめ、気になる?」

 

「っ、いや、今はそれどころじゃ…

 

 

「それは、白銀のかみどめ。私を進化させてくれるもの…」

 

…!?」

 

「でも、その力は強大で、下手に使い方を誤ると、私自身が力に飲まれちゃう… 私ね、ずっと前から、使えるようにはなってたんだ」

 

 

「あの、光ってたのはそういうことか…」

 

「なんだ、ずっと前からバレてたんだ…そう。私の妖力に反応して、ね」

 

ユキは、震えながら言葉を続ける。それは痛みのものではない、何かへの恐れのようだった。

 

「私ね、力に溺れちゃうことは、それほど怖くない。一人になればいいだけだから。…でも、怖いの。ケイジを想えなくなるのが、怖いの…!!」

 

「ユキ…」

 

「だから、ずっと使えなかった!!ずっと、隠し…っ」

 

「あまり声を出すな、体に障るぞ…!」

 

彼女のこんな本心に、俺はずっと気づけなかったというのか?なんて薄情者だ、反吐が出る。だが、反省会はあとだ。白銀のかみどめを拾うと、そこから自分の体が凍り始めた。

 

「っ!!だ、駄目!触ったらかみどめの力でケイジが…!」

 

「ユキ」

 

「っ…」

 

「…怖いんだろ?自分でつけるのが」

 

「…うん」

 

「…じゃあ、どうしようか」

 

俺は優しく、そうユキに問いかける。ユキは少し迷った後、真っ直ぐな目で俺を見つめた。

 

「ケイジの手で、着けて。そしたら私、きっと、何も怖くない」

 

「…わかった」

 

俺はただ、そう頷くと、彼女の頭巾を脱がせ、髪をまとめ、かみどめを着けてみた。

 

「…どうだ?俺、かみどめなんて扱ったことないんだが…」

 

「うん、完璧…!」

 

すると、ユキの体が光に包まれ始めた。放たれる冷たい妖気には、何故か俺は温もりさえ感じることができた。

 

「うぃす?!こ、これはまさか…!」

 

「な、何ズラ何ズラ?!」

 

「…来たか」

 

溢れ出る妖気はやがて収束し、一つの人型となった。美しい髪、整えられた着物、そして白銀に輝くかみどめ。

 

ユキは、進化したのだ。

 

「おぉぉぉぉぉ…」

 

「あ、あれは…ふぶき姫!ゆきおんなの進化形です!!」

 

「もんげーーーーっ!凄いズラ〜!」

 

「…さぁ、後は姫君に任せるとするか」

 

巨人がそれを怪訝そうに見つめる中、むらまさは静かにその場を去った。いい仕事をしてくれたな、全く…流石俺の友達だ。

 

「…うん、大丈夫。何もかも私。むしろ絶好調!」

 

「あぁ、まだいけるか?」

 

「任せて。今までの分、きっちりやり返してあげるわ」

 

「おぉぉぉ…!!」

 

今度こそ、と言った風に腕を振り下ろす。だがもう2度もやらせはしない。指一本、触れさせはしないッ!

 

―――漆黒の瞬撃(ノワール・ドライブ)!!!

 

「おぉぉぉっ…!?」

 

奴の腕を、漆黒の妖力を纏った俺の拳で弾き、俺は奴の前まで飛び上がる。

 

「さっきのお返しだ!ゆっくり味わえ…! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!!

 

「おぉっ…おぉぉぉぼぉぉぉぉ…!?」

 

俺の怒涛の連撃で、巨人はどんどん後退り、ついに体勢を崩した。

 

「ユキ!」

 

「ええ、任せて」

 

ガキィンッ

 

その瞬間、巨人は氷漬けになり、全てが静寂に包まれた。ユキが静かに巨人の元まで近づき、手で触れる。

 

「…さようなら」

 

―――キラキラ雪化粧

 

瞬間、氷が砕け、巨人は断末魔を上げる暇もなく、紫煙と共に暗闇に沈んでいった。

 

「…あーっはっはっは!いい気味だねェ!! キュウビ様のナワバリにちょっかい出すからこんな目に遭うんだよ。ザマァ見ろ!」

 

だが、勝利の余韻に浸る間もなく、紫煙と共にキュウビが現れた。

 

「君達をここに誘い出して正解だったみたいだねェ。てっきり君達もやられると思ってたんだけど…フフ」

 

「うーん…どうやら私たちはキュウビに踊らされていたようですね」

 

「やっぱり、そうだったらしいな…」

 

「ど、どういうことズラ?」

 

「彼は私たちをおびき寄せて、あの妖怪を倒させるつもりだったようです」

 

「そこの変な顔とゴリラは察しがいいようで助かるよ」

 

「なっ?!変な顔は余計です!」

 

「マウンテンが欲しいな…」

 

「そこですか?!」

 

「フラワーロードで騒ぎを起こしたのはこの僕じゃない、別の妖怪さ。これでも桜町の住心地は気に入ってるんだ。だから君たちが真実にたどり着くまでは、守り神としての務めを果たしてあげるよ」

 

…なるほど、この事件、中々大きそうだな…

 

「それまでせいぜい頑張るんだね、応援してるからさァ!

 

「何行こうとしてるの?」

 

え?」

 

キュウビが紫煙と共に消えようとしたその時、ユキが奴の胸ぐらを掴んだ。*1

 

「ちょ、何するのさ!」

 

「私とも相手してくれるって言ったじゃない。あれは嘘だったのかしら?」

 

「いや、言ったけど。アイツが相手してくれただろ?!それでいいだろう!ちょっと、君の友達だろ!止めなよ!ちょっと!止めろってば!」

 

あんまり遅くならないようになー、とだけ言って俺達はその場から去った。自業自得だ。俺達にはどうしようもない。ちなみに翌日、凄く清々しい顔のしたユキが俺のベッドに潜り込んでいたことを伝えておく。

*1
参考:ハイパー無慈悲




天野ケイジ
イケイケ王子様ムーブをかました男
信じられるか?鉄骨とかぶん投げてるけどコイツ小5だぜ?

ユキ/ふぶき姫
ついに進化した妖怪ウォッチ随一の萌えキャラ。
ケイジにお姫様扱いされた上に、キュウビもあの後しっかりボコせて大満足

むらまさ
今回のMVP。
お前がいなかったら進化イベントがなかった。今はただ、君に感謝を…

キュウビ
あ、あの女。こんな滅茶苦茶にして…絶対に許さないからなァ…!
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