基本妖怪のせいにできる世界に転生したちょっと癖強いサラリーマン(現小学5年生) 作:暇なグリッチ
「あぁ、妖怪ウォッチを腕に付けるだけでは妖怪は見えませんよ」
知ってる…と言葉に出そうになるが何とか堪える。ストーリー自体はほとんど覚えていないとは言え、流石に妖怪ウォッチがどんなものかは知っている。この調子だとそのうち失言しそうで怖いな…
「妖怪ウォッチの横にボタンがありますよね? それを押していただくと…」
指示通りにボタンを押すと、妖怪ウォッチのレンズが立ち上がる。…これちゃんと見たらコ○ンの麻酔銃みたいだな
「…開いたな」
「そう!それは妖怪レンズ!そのレンズを通して見ることで、妖怪の姿を見ることができるのです!」
「なるほどな」
うむ、俺の知っている通りの妖怪ウォッチだ。
前世の頃に調べていたらいろんなタイプの妖怪ウォッチを見つけたが、やはりこのタイプが一番好きだな
「さぁ!妖怪レンズを使って、妖怪を見つけてみましょう!」
ところで、ここではなんの妖怪が出るんだろうか。正直ちょっと楽しみである。そう少し心を躍らせながらレンズを向けていると、妖怪の影が映り。分析が始まった。…が、ここで一つ疑問が湧く。
…これ、バトルになるんじゃあないのか?
「…これが妖怪、か」
出てきたのは随分暗い様子の鳥みたいな妖怪。というかこの妖怪、見たことある気がするぞ
「トホホ…気持ちよく眠ってたのになぁ…トホホ…邪魔されちゃったぁ…」
「トホホ…仕返ししないとなぁ…」
そう言いながら鳥がこちらを睨む。あぁ、これやっぱりバトルだな
「どうやら怒らせてしまったようですね…今にも襲ってきそうです…が…」
そこでウィスパーも気づいたのか、しまったというような表情をする。そう、バトルすること自体に別に何の問題もない。本当に問題なのは…
俺は妖怪なんて持ってないということだ
…これ原作だとどうしてたんだろうか。*1まさか生身で戦った訳じゃあないだろうし…
「…えっと、どうしましょうか」
「こっちのセリフだぞソフトクリーム」
まさかこんなことになるとは…俺としても予想外だった。しかし相手はそんな状況でも待ってくれはしない。
「トホホ…話長いなぁ…トホホ…完全に忘れられてるなぁ…」
「あぁ、悪い悪い」
「か、軽いなぁ…トホホ…」
…だが、先ほども言った通り。バトル自体にはっきり言って大した問題はない。そもそも原作でもこいつは大して強かった覚えはなかった。
「トホホ…本気出すしかないなぁ…!」
そう言いながら嘴を突き出して襲いかかってくる。
そう、恐れることなんて何もない。ここはゲームの中ではない。現実だ。妖怪がいなければ何もできない、と思うこと自体が間違いなのだ。本当はこんなつもりでしてはなかったのだが…
「オラァッ!!!」
「ふげぇっ?!」
「えぇ?!」
結構鍛えているのだ
その鋭い拳が奴の顔面に刺さり、後ろの木に激突する。なぜ鍛えているのか、その理由は簡単。
天野ケイジの嫌いなこと、その3。陰口を叩かれること
普通に悪口を言われるのはまだ良い、やり返すことができるから、見直させることができるから。
だが、陰口は人のいない所でグチグチと言われるのだ。嫌なら嫌だと言えばこちらも改善するというのに、見えない所でずっと…
それが嫌で、どうすればいいかと俺は考えていた。そして辿り着いたんだ。自分を磨けばいいと。何より自分自身が変わればいい話なんだと。
その結果、まず手っ取り早いのが鍛えることだと思った。鍛えるだけで人は大きく変わることができる。何事にもきっかけを大事だ。こういう地道な努力から積み重ねていくことこそ、人が変われる第一歩なんだと。
「あ、あの…結構本気で行きましたね…?」
「当然だ、仕掛けられたのなら倍にして返す。それが流儀だろう。文句は言えないはずだ」
俺は拳を握りしめながらそう言う。…なんだろう、何処となく引かれてる気がする。
「うぅ…負けちゃったぁ…焼き鳥にでもされるのかなぁ…トホホ…」
「妖怪なんて食べるわけないだろ、俺は万が一にも腹なんて下したくない」
かつて食あたりで倒れたことがあるからわかる、あんな思いは二度とごめんだ。あれから生物には入念に火を通さないと安心して食べられなくなってしまったからな
「…じゃあ、許してくれるの…?」
「あぁそうだ、起こしてしまったのはこっちだからな。後は好きにしろ」
そう言って俺は踵を返し、そろそろ筋トレの時間だな…と思っていると慌ててウィスパーに止められた。
「いやいやいや!何帰ろうとしてるんですか?!友達になるチャンスですよ?!」
「…あれで?」
俺結構本気で殴ったから、絶対ないと思ってたんだが…そうでもないらしい
「えっと…ボクじゃダメなのかなぁ…うん、やっぱりそうだよねぇ…トホホ…」
「…あー…」
…少しでも胡散臭そうだったら即帰宅してやるところだったが、どうやら本気でなりたいと思っているらしい。
「…それなら、俺からも言わせてくれ。襲われたとは言え本気で殴ってしまった。すまない」
正直友達になることより戦うことを優先してしまい、加減ができなくなってしまっていたのは完全に俺の否だ。謝らない、なんて選択肢はない。
「君…思ったより優しいんだね…」
「御託はいい…」
「えへへ…じゃあこれ、あげるよ…」
そう言って目の前の妖怪が翼を前に出してくる。
「あっ!ほらほら!手を出して!」
「おう…」
言われた通りに手を出すと、光が放たれ、中からメダルが現れた。
「ボクはトホホギスっていうんだ…君は…?」
「天野ケイジ、年齢3…いや、10歳。小学5年生だ。よろしく頼む」
そうして、俺はこの世界で初めての妖怪の友達ができたのであった。
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「97…98…99…」
そう呟きながら、俺は部屋の中で腕立て伏せをする。
「100…よし、ここまでにしておこう」
最初、この世界に来た時は十数回が限界と軟弱だったが、何ヶ月も経て気づけばここまでになっていた。
人もやればできるというものだ。自分がどんどん成長していると肌で感じられるのは素晴らしい。
「…ところで、お前はいつまで見てるんだ?」
そして、部屋の隅でずっと俺の筋トレを見ているトホホギスに話しかける。ちなみにウィスパーは散歩しに行ったらしい。
「凄いね…いつもやってるの…?」
「まぁな。継続は力なり、だ。」
「そっかぁ…凄いや、ボクにはできないなぁ…トホホ…」
そう言いながら蹲るトホホギス。…名前から察せるが、やはりネガティブなんだろう。
「…そうだな、そう思っているうちはできない。そう思っているうちはな」
「え…?」
「何事もやるためには先ず気持ちが大事だ。気持ちさえ続けば正直いくら伸びなくても続けることはできる。気持ちがなければ何も始まらないんだ」
「だが、だからといってそうそう変えられるものではない。というのはよく理解しているつもりだ。だからこそ、それを乗り越えて努力できた時の達成感は素晴らしい」
「…」
「…せっかくだし、お前にニックネームでもつけるか」
「いいの…?」
「友達だしな、そういうのもよくあるだろ。そうだな…ホル、でどうだ。天空を支配する神の名前、ホルスから取ってみた」
「えっ?!そ、そんな大層な名前…ボクにはもったいないよぉ…!」
そう言いながらあわあわと焦るホル。…ちゃんと見ると可愛いかもしれない
「…お前は、さっきの俺を努力してみようって思ったか?」
「え…? えっ、と…うん、ちょっと、思ったかなぁ…」
「…ならやってみろ。その気持ちを貫いてみてくれ。その先にある成長を期待して、お前にこのニックネームをつける」
なんて、ちょっと大層すぎるだろうか。と苦笑してしまう。だがホルは、何かを決心した様子で顔を上げた。
「…うん、やってみる…やってみるよ、ボク…!」
先程とは確かに違う、そのオーラに少し目を見開くが、それに微笑んで返す。
「あぁ、やってみろ」
これは…思ったより面白くなるかもしれない。
「…入りずらいでウィスね」
と、途中から帰ってきていたウィスパーは窓の外からそうつぶやくのであった。
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