基本妖怪のせいにできる世界に転生したちょっと癖強いサラリーマン(現小学5年生) 作:暇なグリッチ
「…なんか、サラッと流してたけどずっといるよな。お前」
家からの帰り道、空を見上げながら隣にいる妖怪にそう問いかける。
「当然です!私は妖怪執事!ケイジ君の執事ですから!」
「ならメェ〜って鳴くわけか」
「メェ〜!メェ〜!ってちょい待ちー!執事ですよ!し・つ・じ!」
「おう、わかってる」
「なら尚更何故?!」
なんだろう、転生してからやけにノリが良くなった気がする。これが若気の至りって奴なのか…
「ともかく!私の役目はケイジ君のお世話をすることですから!うぃす!」
「…俺お前に何かされたっけ」
「失礼な!色々してますよ!朝お布団を整えたり、机の上を整理したり、お部屋を掃除したり!」
あれ、結構やってくれてるのか…意外だ。なんか頼りないイメージがあったから。
「そうだったのか…ありがとう。助かるよ」
「どういたしまして! それに、これからは妖怪と友達になるために私もサポートしましょう!」
「あぁ、ありがとう」
また今度、なんか買ってやるか…なんて思いながら、扉を開け、家に入ると何やらリビングのほうが騒がしい様子だった。
「…? ただいま」
「たまには家事の一つくらい手伝ってくれていいじゃない! そうやって、いつも私のせいにするのね!貴方は何もせず見てるだけなのに!」
「僕だって毎日仕事で疲れてるんだ!家のことは君がやるべきだ!」
恐る恐るリビングに入ると、どうやら母さんと父さんが喧嘩している様子だった。
「…またか」
「夫婦というのは親友のようでもあり、敵のようでもあり、複雑なものです」
「なるほどな…」
なんとなく言いたいことは伝わる。恋人と夫婦は、似ているようでまるで違う。恋人はあくまで"他人同士の付き合い"だ。しかし夫婦というのはもう家族。恋人の頃には考えてなかったことばかりを考える必要がある。だから、こういう喧嘩も珍しくない。
「それにしても…あの居候は置いていて構わないのですか?」
「…居候?」
部屋を見回すが、俺達とあそこで喧嘩している両親以外何もいない。となれば…
「お二人の仲が悪いのは、この部屋に住み着いている妖怪の仕業のようです」
「…やっぱりか」
そんな妖怪までいるのか、傍迷惑だな…ただ、ホルは相手に取り憑くと「トホホ」と言いたくなるような失敗を連発させてしまうらしい。そのような存在もいる以上、やっぱりそういうことをもたらすのが存在意義な妖怪もいるんだろう。なんとも複雑なものだ。
「さぁ!こんな時こそ妖怪ウォッチの出番!妖怪レンズで妖怪を探してみましょう!」
「あぁ、わかった」
というか、さっきからもう妖怪ウォッチがビンビン反応している。特に反応が強いのは…2人が喧嘩している隣、恐らくここにいるんだろう。
「…さぁ、今度はどんな妖怪か」
反応のある所にレンズを向けると、そこから出てきたのは紫色の大きな妖怪。…いや、本当にデカいな。父さんたちくらいデカいぞ
「お前か、母さんたちが喧嘩している原因は」
「あなた、私が見えるポポジョワーン?」
目の前の妖怪がこちらにのっそり振り向く。
「あぁ、この時計のおかげでな?」
「それで、ご用はなんなのジュバーン? 出て行けなんて酷いこと言わないわよねポポジョワ〜ン?」
「あぁ、大正解だ。出ていけ。俺のプライベートを邪魔するな」
「おぉ、すっごいストレートですね…」
平静を保っているが、正直割と手が出そうだ。家の中でこんな面倒事を持ち込みよって、このデカブツ…
「酷いジュバーン… 許さないポポジョワ〜ン!」
「あらら…これは力づくで説得するしかなさそうですね!」
「あぁ、任せろ」
今回は好都合だ、俺のトレーニングの成果を見せてやろうと腕を捲ったがウィスパーに慌てて止められる。
「あぁお待ち下さい!せっかく妖怪と友達になったんですよ?試しに頼ってみては?」
「…それもそうか」
そういえば最近、ホルが一人で訓練に励んでいたのを見た。試しに呼んでみるか…と思っていると、妖怪ウォッチから突然光が放たれ、中からホルが現れた。
「ホル!」
「ボクに任せて…!」
そう言うと相手に突撃し、嘴を食らわせるが相手は微動だにしない。今度は妖術とやらを使おうとしていたらしいが体当たりでふっとばされてしまう。
「トホホ…つ、強いよぉ…」
「大丈夫か、ホル」
「ご、ごめんなさい…」
「大丈夫だ、この程度問題ない」
むしろ俺は、相手のほうが上だと思っていても立ち向かったその勇気に感心している。
「あら、もう終わりなのポポジョワ〜ン? 大した事ないジュバーン」
「…なんだと?」
「強い相手に勇気を持って立ち向かったホルが、大した事ないだと…?」
「ケイジ君…?」
天野ケイジの嫌いなこと、その4。
人の努力を、結果だけを見てただ軽視することッ!
「人のプライベートを侵害した挙げ句、ホルの勇気が大した事ないだとッ?! あぁ上等だ。ここにいくらでもいてくれて構わない。ただし、俺たちに負けたら今すぐ出ていくんだな!!」
「いいわよポポジョワ〜ン」
「交渉は成立だ。行くぞ!ホル!ウィスパー!」
「う、うん…」
「あぁちょっと?!お待ちをー?!」
――――――――――――――――――
「あ、あんなこと言っちゃったけど…どうするの…?」
ホルがそう不安げに問いかけてくる。勿論、腹が立ったからただ出ていった訳では無い。
「今から鍛える…っていうのはあまりにも遠回りだ。となれば今すぐできることと言えば…」
「ともだち妖怪を増やす、でウィスね!」
「その通り」
そう、戦力増強である。今、質で駄目なら量で攻めるまで。量の力、というのは舐めてはいけない。どれ程銃の腕に自信がある徴兵であろうと、一人で100人の凶器を持った民間人とは戦えないだろう。
「ともかく、妖怪を探してみるか」
「えぇ!私もお手伝いしましょう!」
「ボクも探してみるね…」
「あぁ頼むぞ、二人とも」
飛んでいく二人を見送り、俺もレンズを立ち上げ、妖怪を探し始める。
「でも…そんな普通にいるものなのか?」
妖怪に出会ってまだ数日。分からないことだらけだ。もしかすると案外いるのかもしれないが、もう原作をほとんど忘れてしまった俺には全くわからん。
「…? なんだ?」
そうして妖怪をしばらく探していると、何やらあそこのゴミ捨て場から反応が現れた。それも複数。
「…全員友達にできれば良いんだがな」
レンズでそこを調べてみると、頭巾を付けた少女が何やら複数の妖怪に囲まれているようだった
「か、返してよ!」
「へっ!誰が渡すか!」
「そうやって渡すマヌケなんかいないモチ〜」
「ハハ〜!ウケる〜」
リーゼントが特徴的な妖怪*1、モチみたいな妖怪*2、そして唇がデカい妖怪*3が何やら彼女のかんざし…だろうか、を奪ったようだ。
…気に食わない。
天野ケイジの嫌いなこと、その5。
弱いものいじめ。
俺が思うもっとも情けなく、もっともくだらなく、もっともカスみたいな行動ッ!!
まさか俺の嫌いなことが1日に2回も起こるなんて…今日は厄日だ。
「あ?なんだそこの人間!まさか俺たちのことが見えて…
「オラァッ!!」
ぶげぇっ?!」
「ぐ、グレるりん?!」
殴り飛ばしたリーゼント妖怪を睨みながら、もう一度拳を握りしめる。
戦うようならホルを呼んで一緒に戦おうと思っていたが…すまない、こればかりは俺にやらせてほしい。
「おい、そこの妖怪。下がってろ」
「…あ、貴方は…?」
「この野郎!よくもグレるりんを!許さないモチ〜!」
少女の方を向きながら、モチ妖怪の拳を受け止める。
「モチッ?!」
「…ただの通りすがりだ。覚えなくていい」
まずは…この妖怪たちにお灸を据えなければならないらしい。
ケイジ、キレたッ!
コメント、評価、お気に入りのほどよろしくお願いします!僕の創作意欲を燃やしまくってくれ…!